901分枝系統 80013世界 02795726時間断面 ISの世界 【改定作業中/第一章完結】 作:白鮭
最近、シャルルに避けられている気がする。全員と仲良くなれるなんて欠片も思ってないのでそれは良いのだが、避けられている割には良く目が合うような気がするのだ。
まあ、シャルルと一夏が同室になったのだし、後の事は一夏に任せておけば問題は無い。
八つ当たり気味だけど、篠ノ之と鈴から来る負担を俺は結構受け持っているのだから、一夏だけ負担が軽いのは不公平だ。相談が来るまでは、シャルル関係は放置決定である。
そんな事を考えながら、授業が終わった後にアリーナで訓練をしようと思って移動していると、同じ目的でアリーナに移動していたらしい乱が、俺を見つけてこっちにやって来ていた。
「こんにちは、司。今日は一人? いつもはみんなで来るのに」
「今日は篠ノ之と鈴の間に入って、
「ああ……美夜、外見は儚い系なのに、中身は天然だからね。司が居るの忘れて色々危ない話をするし」
「必要な条件を満たせば良いって考えだから、手段を択ばない傾向があるんだよ。男女の仲を進めるってお題だと色々危ない話をするから、俺が居ると周りだって話しづらいだろ? それに俺は一夏の友達で、同じ男だから肩を持ってやりたいんだけど、篠ノ之と鈴の言ってる事を考えるとなぁ……」
「おねえちゃんから話を聞いてると、色々大変なのは分かるけどね」
乱音は鈴より女の子らしくて最初は若干苦手だったのだが、簪の件もあって色々と付き合ってみると、さっぱりした物怖じをしない性格で、人見知りをする俺や簪とも時間を掛けなくとも仲良くなれるいい子だった。
そして俺と簪が落ちればなし崩しで、最近では良く俺たちと一緒に食事をしたりしているのだ。
「それにしても、乱音だけ今日の集まりにハブられたのか。イジメられてるんだったら相談に乗るぞ?」
「おねえちゃんから毎日聞いてるから行かなかっただけよ! あんまり失礼な事言わないでよね。……ただ……うん……」
お互いにこう言う軽口が言い合えるくらいには仲良くなったし、セシリアと簪の想いを分かった上で、今までと同じ生活を演じるのはそれなりストレスを感じているので、乱音は友達カテゴリーとして、一夏とは違った意味で貴重な存在で。
「……悩み事が無い訳じゃ無いんだけどね。解決出来そうに無いから、言っても仕方が無いんだけど」
「ふーん……。解決出来なくても聞くくらいは出来るぞ。それでスッキリするかもしれないから、良かったら話してみないか?」
だからこそ、乱が悩んでいるなら助けたいと思ったのだった。
***
アリーナに着いた俺は着替えてピットに向かう。俺の場合は戦闘装束を召喚すれば着替え終わるので場所なんてどこでも良いのだが、永遠神剣と違ってISはエネルギーの制約が大きいから、ISスーツの量子変換は緊急時以外はしないらしい。
そんな事を考えながら待っていると、想定していたよりかなり早く乱がやって来た。少し息を切らせているみたいなので、どうやら此処まで走って来たようだ。
「別に走らなくても良いのに。乱音を待つくらいの甲斐性は有るつもりだぞ」
「相談に乗ってもらうのに、待たせるのは良い事じゃ無いじゃない。司が気にして無くても、私は気になるんだからほっといて」
俺はピットに設置してあるベンチに座って待っていたのだが、乱音は一人分くらいスペースを空けて俺の横に座り、息を整えた後で俺の方を見ながら話し始めた。
「あのさ、私のISってどう思う?」
「どうって、
甲龍の量産機のはずなのに、甲龍と甲龍・紫煙は全然似て無いのだ。
紫煙は龍を模していて、固定武装として龍の頭に似た大型のレーザー砲と三つ又に分かれた尻尾の部分には銃火器が搭載されており、両手が空いているので多分量子変換である程度の武装を使い分けることが出来るのだと思う。
俺は乱が青龍刀を使っている所しか見た事が無いが、仮にも第三世代機の
「頭と尻尾の動きを見ると、有線式BT兵器って感じだな。全体的に手堅く纏められてると思うけど」
「うん……」
「後は……世界初の量産型第三世代機の運用テストを任されてる乱音は、重要度の高い任務を課せられていて大変なんだろうなって思うよ」
今の世代のIS学園は運用テストを行うと言う面から見れば、ある意味理想的な条件が揃っている。
日本、イギリス、中国、アメリカ、ギリシャの試作機とフランスの改修型量産機、後はドイツの試作機と束さんの第四世代機もここには揃うのだ。
テストする上でこれだけ有利な条件はそうそうないと思うのだが、その分第三世代型量産機を任されている乱音に、重責がのしかかっていると言えた。
「そっか、司はそう思ってるんだ……この前、おねえちゃんに言われたんだ。乱音は専用機も持ってないくせに、私に追い付いたつもりかって。私は鈴おねえちゃんに憧れてIS搭乗者の道に入って、お姉ちゃんに認めて欲しいからがんばって来たのに、今更そんな事言われてもって思ったのよ」
話し終わった乱はいつもの元気な姿とは全く違って、自分ではどうにも出来ない事で苦しんでいた。
だから少しでも楽になれる様にと思って、俺は普段思っていた事を口に出す事にした。
「俺は凰姉妹がこの学園で一番すごいと思ってるんだけどな」
「えっと……そうなの?」
意外な事を聞いたと思っているのか、乱がポカンとした表情を浮かべている。
「片やコネも金もない。しかも日本で暮らしていたのに、たった一年で中国代表候補生になって専用機を預けられた正真正銘の天才少女。片や中国とは微妙な関係なのに、その状況下で親族ってハンデを乗り越えて台湾代表候補生になって、世界最高峰のIS学園に飛び級で入って来た。
ここまで飛び抜けた存在って、俺が知ってる中だと束さんだけだぞ。あの人は細胞レベルでオーバースペックって自分で言ってたけど、鈴と乱音は遺伝子自体がオーバースペックだからな。努力を重ねた上でのことだとは思うけど、そのことに対して自信を持って良いんじゃないか?
それに台湾の代表候補生なのに、中国で作られた先行量産型を預けられてるって相当だぞ。
アニメじゃあるまいし試作機だから性能が上、量産機だから性能が下って事は無いだろ。テストパイロットって危険な役割だと思うけど、名誉な事だとも思うし。
おねえちゃんが認めてくれないなら、俺が認めてやるよ。乱音はすごいよ」
それを聞いて少しの間動きが止まっていたが、少したって嬉しそうにはにかみ始めた。
「そっか、うん、そうなんだ。あと、私も司と美夜と模擬戦したいな~って……」
「それはダメ」
「けち」
さっきの嬉しそうな表情とは一変、渋い表情をしながら勢いよく立ち上がってピットの扉の方に向かうのを目で追っていると、最後に扉の前で俺の方を振り返った乱音が、顔を赤らめながら元気に言葉を返して来た。
「元気出た。司ありがとね!」
そのまま逃げる様に乱はピットから走って出て行くのをそのまま見送ったのだが、俺も何となく恥ずかしくなって来てしまったので、心を落ち着ける為に深いため息をついたのだった。
***
空中に無数のプラズマの弾が俺に向かって飛んで来ているのだが、それにしては随分と狙いが甘い。
美夜はアリーナの反対側の空中に留まりつつ、神剣魔法を使って弾幕を作り出しているのだが、作り出した本人の表情は穏やかだった。
美夜のやつ遊んでるなぁ。そう思いつつ、俺もセシリアの
「面白い事してるな。……こんな感じか?」
俺は弾幕を避ける為に亜音速で飛び回りながらオーラフォトンを撃っていたのだが、美夜のしている事を見て、俺も空中に止まって当たりそうなプラズマ球をオーラフォトンで迎撃し始める。
俺の使うオーラフォトンの曲線を描きながら飛んで行く白い光と、美夜の使う神剣魔法の赤く輝くプラズマ球の乱舞をアリーナ全域に広げて弾幕勝負で遊んでいたのだが、美夜から雷撃が飛んでくるのを時詠みで察知、ウイングハイロゥを使って真下に向かってパワーダイブを掛ける。
パワーダイブの結果、時詠みの未来予知の通りの軌道を描く雷撃を回避しながら、アリーナの地面に着地するのと同時に地面を這う高度で六条のオーラフォトンを射出する。
射出したオーラフォトンは美夜の真下に到達した所で上昇を開始、上下左右と前後から完全に同一のタイミングで襲い掛かったオーラフォトンは最終的に四条が迎撃され、美夜の真上と背後に着弾した事で俺の勝利に終わるのだった。
「うう……。時詠みはズルいと思う」
「まあな。でも得意分野で負けるのは悔しいから、少し本気を出した。それにしても、雷撃が使えるようになったんだな」
「うん、雷撃もプラズマだから行けるかなと思って。赤の神剣魔法だけだと無理だけど、オーラフォトンと併用したら出来たんだよ」
模擬戦の勝者になった俺に向かって降りて来た美夜が、最初に言って来たのは
俺もそうは思うが、
「目指せ
「本音は?」
「みんなが見てたから勝ちたかった」
俺と美夜で模擬戦をすると言ったら、学園のみんなが場所を快く貸してくれたのだ。
最初はこのアリーナにいた人たちが見学しているだけだった筈なのに、終わった後で周りを見回してみると、何時の間にか沢山の学園生が集まって俺と美夜に対して声援を送ってくれていた。それに答えて二人で照れながらお礼を言ったりしていると、模擬戦をする原因となったみんながこっちに向かって歩いて来ていた。
「俺たちが束さんの作ったISの性能を見せてくれって言ったんだけど、でたらめな性能だな」
「その辺は流石束さんって所だと思うよ。俺と美夜の戦い方を理解した上で、それに沿ったISを組み上げてくれたからね」
俺と美夜の模擬戦を思い出しながらなのか、こっちに完全に集中出来てない状態の一夏が最初に近づいて来る。
一夏ってこう言う所が素直で好感が持てる点だよなと考えながら周りを見ると、後ろからハイライトが完全に消えているセシリアと、打鉄を使っている簪も続けてこっちに向かって来ていた。
「司さん、バルキリーかガンバスターみたいになってました」
「手からレーザー出してないし、ミサイルでもないけどね。ミサイルって言えば、弐式っていつごろ完成だっけ?」
「夏には間に合う予定みたいです。倉持技研の人がIS学園に入れないから機体は持っていかれちゃったし、調整で私も通わないと行けないから大変なんです。司さんと美夜さんにも来て欲しいって言ってましたけど、断っておきましたから」
簪はそう言いながら、はにかんだ様に笑っている。心配事が無くなったせいか、簪は明るくなって来た。人見知りは相変わらずだけど。
「司さん、今度
「あー……。俺も感覚で使ってるから、説明するのは難しいんだよ。出来るだけの事はするからそんなに落ち込まないでくれ。一緒にやろう」
「はい、お願いいたしますわ」
さっきの俺と美夜の模擬戦を見て、簪とは逆に落ち込んだ様子のセシリアを慰める。簪から打鉄弐式の大まかな性能は聞いているのだが、同じホーミング系統の武器を使う二人の様子が正反対なのは少し面白い。
「俺にもアドバイスを頼む。司は斧だし美夜は両手剣だけど、飛行しながらの近接戦闘につ…………」
セシリアと簪に場所を譲って、アドバイスを聞く順番を後に回していた一夏が最後に俺たちから話を聞こうとしていた所だったのだが、残念ながら上空から迎えが来てしまった。俺としては一夏にもアドバイスしたいのだけど恋する乙女が怖いので、引きつった笑顔を二人に向けるしか無いのだ。
「司と美夜の戦い方も見れたからもう良いでしょ? 一夏、訓練の続きをするわよ!」
まるで獲物を取ったトンビの様な勢いで、上機嫌な鈴に一夏が連れて行かれてしまう。鈴はこっちに会釈してるし嬉しそうなんだけど、見学席から不機嫌そうな篠ノ之が鈴に向かって何かを叫んでいた。
……残念ながら、今日は篠ノ之は訓練機が借りられなかったらしい。
「あの二人は仲良く出来ない……よなぁ、ライバルだし。性格的に陰湿な事をしないし出来ないから良いんだけど、あの二人は教えるのヘタクソだから一夏が可哀想なんだよな」
一夏が連れて行かれてしまったので篠ノ之と鈴の方を見ながら、残った
そもそも篠ノ之と鈴のケンカに巻き込まれて一夏の訓練が上手く行っていないと思ったので、俺の裁定で鈴が教える事になったのだが、別に近づくのを禁止した訳じゃないのでISを借りた篠ノ之が、一夏に対してちょっかいを掛けるのが常態化してしまったのだ。
放課後になれば俺が許可を出した事を言い訳にして、鈴が問答無用でクラスから一夏を毎度引っ張り出すし、篠ノ之は篠ノ之でそれに対抗してなのか放課後が来るまで一夏の傍を離れない上に、一夏の周りに他の子が近寄ると分かりやすいくらいに機嫌が悪くなる。
そんな様子が続けばクラスのみんなだって二人に対して不満を貯めてしまうし、鈴が俺の発言を言い訳に使っているのでその撤回を求めて俺に談判する子だって出て来る。
そこで最近は、クラスのみんなのガス抜きと俺の女の子慣れをする為のリハビリを兼ねて、希望者の一組と四組の子に対してISの使い方なんかを教えたりしていた。
「今日は一組と四組の人を含めて訓練機を借りられた人が多いから連携訓練をするよ。ほら、三人共そんな顔しないで一緒にやろう。俺と美夜のチームに分かれて三対三の集団戦闘をするから説明を聞いてね。まずはアタッカー、ディフェンダー、サポーターの役割について……」
説明をしながら集団戦の基礎から教える。エターナル、ミニオン、スピリットの基本戦闘の形で、俺と美夜も
そう思って教えていたんだけど物凄い注目された。IS学園って競技用の訓練校だから、こんな事は教えないのかもしれない。
***
「話があるんだけど、良い?」
緊張しているのか、乱音は少し強張った表情をしている。簪は乱音が謝った事で許してはいるのだろうが、完全に思う所を消し去れないのだろうか複雑そうな表情をしていた。
「……分かった、話は聞くよ。簪、ちょっと話をしてくるから」
そう言って乱と出ようとしたら、服の裾を簪に掴まれた。
「乱音を部屋に入れて良いですよ。反省して謝ってくれましたから。……それに、乱音は友達だから」
「あの……ありがとう、簪」
乱音のその言葉に頷いてから、簪は乱音を部屋に招待した。
***
お茶の準備をして三人分を並べるが、部屋に入って落ち着かないのか乱音はソワソワしていた。
「で、どうしたんだ改まって。また部屋替えの話か?」
緊張を解してもらおうと冗談っぽく聞いたのだが、乱音は大真面目に俺に頭を下げながら言って来た。
「私も訓練の仲間に入れて下さい!」
「……いや、そう言われても」
俺はそう言いながらため息をつく。鈴と乱音と初めて会った時に説明したと思ったんだけどな。
「ダメな理由は分かってるし、普通の訓練なら一夏とかシャルル、おねえちゃんがしてくれるから残念だけど諦めてた。だけど、今日やってた連携訓練ってなに!? あんなの大国の軍隊だって、同盟国がそろってた時にしか出来ない特別な訓練だよ! ……台湾は微妙な立場だから、あんなの望んでたって出来ないのよ」
そう言いながら頭を下げ続ける乱音を見ると、流石にいたたまれなくる。簪も日本人なのでお隣の国の状況を分かっているし、俺としても一生懸命な乱音を助けてやりたい気持ちはあるのだ。
「……交換条件だ。一夏の面倒を見てくれるなら考えるけどどうだ? この前の話を一緒に聞いてたから分かると思うけど、鈴は教え方が下手だから代わりの教官役をどうするか考えてたんだよ。乱音は流石に鈴よりはましだと思うし、毎回は無理だし仕込みに少し時間を貰うけど、それで良かったら準備するよ」
俺が話し始めると頭を上げて上目遣いで俺の話を聞いていたのだが、全部話し終わった途端に笑顔で抱き付いて来た。
「分かった、一夏の面倒を見れば良いんだよね! 鈴おねえちゃんがヘタクソ過ぎて、教えたら教えただけ退化しそうな訓練より数倍マシな訓練する! もう決めたんだからね!! 今から無しって言ったら本気で怒るからね。約束したからね! 司ありがとう!! 簪もお茶ありがとうね!」
俺に抱き付きながらそう言って、乱音は喜び勇んで部屋を出て行った。因みに俺は抱き付かれた時にのけ反りながら硬直してしまって、乱音が部屋から出て行くのを呆然と見送る事しか出来なかった。
「大丈夫なんですか、司さん? あんな約束してしまって。破ったら酷い事になりそうなんですけど」
「あー……うん。特別に訓練時間を取らなければ良いんだし、その事で仕込みに行って来るよ。多用は出来ないんだけど、抜け道は作ってあったんだ」
簪に答えながら抱き付かれたショックを抜きつつ、俺は織斑先生に協力を頼む為に部屋から出るのであった。
***
次の日の六時間目のISを使った授業の終了時、織斑先生が唐突に言って来た。
「司、今日は集中出来ていなかったから居残りだ。自分が納得するまで授業を延長してて良いぞ。終わったら報告に来い。号令」
授業をキッチリと終わらせた後で、織斑先生は真面目な表情でで俺に居残り授業を命じた後にアリーナから退出していった。
「どういうことだ?」
一組と二組の全員が織斑先生がアリーナから消えるまで目線で追った後、一夏が思わず出してしまった声に答える形で俺が返答する。
「今は居残りだけど、授業中なんだよ。ほら、セシリアと簪以外の専用機持ちとは戦わないって事にはなってるけど、授業中は例外になってる。じゃないと授業を受けるのに不便だしな。――そんな訳で、唐突だけど一組二組合同で連携訓練と希望者に対する指導を始めるよ。時間があったり暇な奴は付き合ってくれ」
ちょっとした小細工の類だけど、乱音の希望していた連携訓練と俺が一夏にしたかった実機を使った指導をこの機会にやろうと思ったのだ。それにみんなも乗ってくれて、ちょっとしたイベントみたいになってしまったのだが。
乱音も満足してくれたし、一夏もまともな指導をしてくれる
その後鈴の機嫌を直すのに、一夏を出しに使って事態を無理矢理終わらせた。まあ、コラテラルダメージと言うやつである。
そんな事をしながら訓練を重ね、遂にクラス対抗戦の日がやって来た。