901分枝系統 80013世界 02795726時間断面 ISの世界 【改定作業中/第一章完結】 作:白鮭
「五反田食堂?」
一夏に連れて来られた所は食べ物屋だった。時間はまだ十時ちょっと過ぎで、昼には大分早い。お土産に近くのスーパーでお菓子や飲み物を買って来たのだが、最初にご飯を食べるなら買い物は後にしたのに。
「ああ、ここが俺の友達の家なんだ。五反田弾って言うんだけどさ、紹介は直接会ってからな」
一夏はそう言うと裏に回る。家は別棟になっていて、ドアホンを鳴らすと赤い髪で長髪のイケメンが出て来た。
「よう、一夏待ってたぞ。先週は急に来られないって連絡があったから、心配・・・その後ろの美少女はどうした!?」
一夏がドッキリに成功したと、人の悪い笑みを浮かべている。学園では巻き込まれて流されている感じだけど、そんな訳が無いよな。
俺もそうだけど、一夏も学園だと色々と苦労してる。俺には学園に本音や愚痴を言える
「聖美夜です。織斑くんの友達で、今日は相談があるからと言われて来ました。よろしくね」
俺も続けて自己紹介を始めると、イケメンは俺の方を見て、なにやら感動しているみたいだった。
「聖司です。IS学園で一夏と同じく肩身が狭い思いをする同志で、今回の相談事を一緒に考える事になってます。よろしくな」
「五反田弾だ。一夏の中学時代からの友達で、ずっと仲良くしてる。え~っと、聖さん?」
苗字が一緒だと色々面倒なのが良く分かった。美夜からもきょうだいに間違えられるから嫌と、ぶーぶー文句を言われているので、次の分枝世界からは設定を考え直そう。
「名前呼びで良いよ、学園の人間はみんなそうだし。司と美夜で」
「そっか、じゃあ俺も弾で。よろしくな司に美夜。後で司の写真を撮らせてくれ、ついでにサインも。クラスの女子に見せるからさ」
そう言って照れ笑いをしているので、需要なんかあるのかと聞いたら、あると言っているので驚いた。テレビにで紹介されてはいたが、二人目の男性IS搭乗者は、情報が殆んど出ない謎の存在だったらしい。
そんな話をしながら弾と交友関係を深めつつ、一夏の相談事が始まった。
***
「実は告白された」
俺達には当たり前の事実確認から始まった。一夏が憔悴しつつ悩んでいるのは分かっているので、静かに聞いていたが、初耳の弾には刺激が強かったみたいだ。
「はぁ!?・・・ついに一夏にそれを認識させる事の出来る勇者が現れたか。朴念仁のお前が女の子の告白の相談をするなんて、これで告白した後に玉砕した子達の魂も浮かばれるな!!」
そう言いつつ、バシバシと一夏の肩を叩いている。弾はすごく嬉しそうで、それを見て俺たちは物凄く納得した。
「やっぱりモテてたのか。一夏から話を聞くと、全然そんな話が出なかったからおかしいと思ってた」
「織斑くん人気あるからね。傍で女の子との会話を聞いてると、すれ違い過ぎてて変な笑いがこみ上げて来る時があるよ」
俺と美夜がツッコミを入れると、弾も納得したように頷いている。
「やっぱりIS学園でもそんな感じか。こいつはいつもこんな感じで、女の子とのフラグをバキバキ折ってたから。で、相手はどんな子だ!?」
一夏は自分が周りからどんな風に見られていたのか、改めて思い知ったかのように項垂れながら言う。
「鈴とシャルルだ」
俺も美夜も最近の一夏の行動とシャルルのなつき具合から、ありうる可能性として話に出した事があったが、対外的には男だしな。女の子だって知っているのは学園内では俺と一夏、後は乱が怪しい位だと思っていたんだけど・・・
そんな事を考えていたら、弾が納得したのか、微かにああ・・・と言う声を出した。
「鈴はようやく告白したのか。しかし、シャルルって男みたいな名前の子だな?」
俺が何か言う前に一夏が答えてしまった。
「ああ、シャルルは男だしな。たd・・・」
そして、それに被せる様に女の子が飛び込んできて、弾に緊急事態が起こった事を伝えに来た。
「お兄!!お店が大変、何かすごいお客さんが並んでて・・・って、一夏さん来てたんですか!?こ、こんにちは」
赤毛で長髪の元気の良さそうな女の子が、お店の名前の入ったエプロンを付けながら、顔を引きつらせつつ挨拶して来た。目が弾を後でボコボコにすると言っている。
「ら、蘭。女の子なんだからノック位した方が・・・俺は、良いと、思うな」
弾をものすごい睨みつけいる。内心の葛藤が手に取るように分かったが、それ以上に緊急事態への対処が先のようだ。
「~~~~~!!・・・・・・良いからお店に来て、お願いね」
顔を強張らせて、頬を引きつらせつつ出て行った。俺はため息を付きながら弾に言う。
「雉も鳴かずば撃たれまいって分かるだろ、あんな事を言わなければ良かったのに」
「いや、つい言葉に出た。一夏がいるから後で誤魔化す・・・誤魔化せると良いな」
「ああ、そうなんだ」
俺はこれからの事を考えて、項垂れてしまい
「同い年の弟なんかいらん」
弾は嫌そうにそう言って、複雑そうな顔をしていた。
***
家から出て、五反田食堂側に回ると驚きの光景が待っていた。
「なるほど、こう来たか」
「平和的だからどうにも出来ないよね、これ」
俺と美夜は呆然としながら呟く。五反田食堂にギッチリ人が入っていて、入りきれない人が行列を作っているのだ。因みに全部外国人である。全員唖然としていたが、弾は我に返って店に急ぎ足で入って行って、ここに残っているのは俺と美夜と一夏だけだった。
「朝言っただろ、平穏無事に過ごせるかは運次第って。俺たちを引きずり出す為にしたんだろうと思うけど、平和的で助かった。それに、五反田食堂にお金が入るから止めろとも言えないだろ?普通のお客かもしれないし」
「成果を急ぐ一部のバカが、この家の子を誘拐しようとしてたから阻止してこの形に持って行った。これでも苦労したんだぜ?」
俺の言葉に答える人間がいた、そっちを見ると三十歳前半位の渋みの入った白人の色男が立っていて、そのまま言葉を続ける。
「うちのオルコット嬢が世話になってるし、こんな所で恨みなんて買いたくないしな。司くんと美夜くんの成果は軍と研究機関の連中が泣いて喜んでるんだぜ、他のEU諸国は歯ぎしりしてるけどな。ドイツが慌てて人員を投入したが、手遅れも良い所だろ?フランスも手古摺ってるみたいだし。それにしてもオルコット嬢は豪運だよ、迷子になったら運命の人を見つけて来たんだしな。な、色男」
そう言って俺の肩を叩きながら、一夏を見ている。シャルルの事を知ってるのか?そう思っていると、ここにいる三人に名刺を渡してくる。それを見ると
”聖司、聖美夜専属ボディーガード MI6所属 ジェームズ・ボンド”と書いてある。
「・・・ネタ?」
美夜が首を傾げながら呟くが、俺もこれは無いだろうと思う。
「オルコット嬢に聞いてくれて良いぜ。イギリスからは、司くんと美夜くんは最重要人物と目されているからな。この前の”おみやげ”が効いた、あれで懐疑的な連中も意見を変えたしな」
ISコアの事を知ってるとなると、結構上の立場の人なのかな?そう思いつつジェームズさんと話を続ける。
「手を貸してくれる以上は利益供与は絶対に必要でしょ?後、呼び捨てで良いですよ。それと台湾代表候補生の事で話がしたいです、交渉の窓口はジェームズさんで良いですか?」
ジェームズさんは肯きながら答える。
「ああ、交渉は俺が窓口で良い。連絡先の交換とかはオルコット嬢との確認しだいだろ、慎重なのは良い事だ。司は利益供与は必要だって言っただろう?連中にも利益をやってくれ」
そう言って、店の方を見る。
「ここにいる三人に直接連絡先を渡せる特典付きで、連中を納得させたんだ。楽なもんだろ?」
俺はため息を付きながら、五反田食堂の方に歩いて行く。それを見た美夜は楽しそうに、一夏は憮然としながら付いて来る。
「誘拐なんてバカな事をされるよりは、よっぽど良いですからね。一夏は不満か?」
「不満って言うか、俺たちは蚊帳の外なんだな。何かモヤモヤする」
それを横目で見ながら、俺も苦笑いする。
「楽出来た事を喜ぼうぜ、本当に誘拐されたらシャレにならないだろ。狙われて誘拐されるのは、さっきの女の子だと思うし」
それを聞いた一夏がますます悔しそうにする。
「俺はみんなを守りたいから強くなりたいのに、守られてるのが悔しいんだ。俺も司や美夜みたいに強かったら良かったのに」
一夏はこの話題になると、頑なになるから少し困る。強さって色々あると思うんだけどな。そう思っていると、ジェームズさんがその話題を引き継いだ。
「なるほど、織斑くんは守るために強くなりたいと。じゃあ、家族を守るために働くお父さんお母さんは、強くもないし守れてもいないのかな?」
「いや、それは・・・」
「俺は織斑くんが言っている強さには、汎用性が無さすぎて使いづらいんじゃないのかって思うぞ?そう言うのが役に立つのって剣と魔法のファンタジー世界とか、ポスト・アポカリプスのヒャッハァとかがいる世界だろ?今、君が手にしている紙切れだって、使い様によっては強力な武器だぞ、欲しがる連中だって多いだろうな」
一夏はジェームズさんが渡した名刺を見ている。
「セシリア嬢はお金と言う強大な力を持っているし、篠ノ之博士は技術と言う強大な力で、各国を右往左往させて楽しんでる。困ったもんだがな。力にも種類と使い方がある、若いうちに一つに絞らなくても良いと思うがね」
「・・・・・・」
一夏が考え込んでいるのを見ながら、五反田食堂の前にやってくる。全員が俺たちに名刺を渡してくるが、手書きで国の名前が追加されているのに少し笑ってしまった。ついでに写真撮影会じみたものまで始まってしまって、食材が無くなるまでお客が途切れなかった。三時過ぎになってようやく話し合いが再開したのだが、さっきの女の子がなぜかメンバーに入っていた。
***
「彼女が出来たって本当ですか?」
お客が帰って一夏からご飯を奢ってもらった後、弾の部屋に帰る途中で女の子の自己紹介を手早く済ませたのだが、この子は弾の妹の蘭と言うみたいだ。
乱音と同じ呼び方だと紛らわしいので、俺と美夜は蘭ちゃんと呼ぶ事にしているのだが、さっそく切り込んだ。泣きそうになってるし、ここにも火種があるのかよ。そう思って俺はげんなりしている所だ。
「いや、告白されて俺の返事待ちなんだ。鈴は今までそういう風に見た事が無かったから戸惑ってるし、シャルルは色々あるからな」
「待て。さっきシャルルって男だって言いかけたよな?何で選択肢に入ってるんだよ、そこがおかしいだろ?やっぱり一夏はそういう趣味だったのか!?」
弾はそう言ってツッコミを入れているし、蘭ちゃんは青白い顔をしながらコクコクと肯いている。俺は知ってるから黙っているんだけど、美夜が何も言わないんだよな。
「男装して学園に入って来たから、理由があったんでしょ?歩き方で分かるよ、女の子はお腹が重いからね」
そう美夜が言った事で一夏が訳を話し始めたのだが、それもシャルルの実家絡みのイザコザで、男装して入学してきた。本人の許可が無ければ詳しい事は話せないと言って、良く分からない感じに有耶無耶にされてしまう。
「それだとアドバイスのしようが無いんだけどな。一緒の部屋に住んでいて、色々あって告白されたって認識で良いんだよな。ん~~・・・一夏は鈴とシャルルのどっちが気になってるんだよ、気になってる子と付き合うんじゃダメなのか?」
そう言った瞬間、蘭ちゃんが食い気味に一夏に話し始めた。
「私も一夏さんが好きです!傍観したまま選択肢にすら入らないのはイヤです!!一緒の部屋に住んでいるとか、聞き捨てならない事を司さんが言っていますが、今は関係ないです。一夏さん、彼女にして下さい。お願いします!!」
そう言って蘭ちゃんが四つん這いでにじり寄っていって、一夏を壁際に追い詰めていくが、弾に足を引っ張られて一夏から離されていく・・・あ、弾を思いっきり蹴っ飛ばした。頭から転ぶと危ないので、後ろから支える。
「うう、すまん司。わが妹ながら乱暴でな。しかし、ついに蘭も言ったか」
「さっきの態度でそんな気はしてたんだけど、やっぱり一夏が好きだったのか。弾の家での話し合いは失敗だったかな?選択肢が増えて、迷惑もかけたし」
俺の方を弾は見た後で、疲れた様に力を抜いた。
「その内分かる事だし、蘭が知らない内にそんな事になったらと思うと、背筋が凍るから来てくれて良かったよ。友達も増えたしな。
迷惑ってさっきのお客さんの事か?忙しかったけど、食材が無くなるまでお客さんが来るって言うのも聞いた事が無いしな。じいちゃんも喜んでたから、その内またやってくれ」
弾はそう言って苦笑しつつ
「しっかし、俺は友達の鈴と妹の板挟みだぞ、困るに決まってるだろ?一夏は昔から好かれているのを理解しないし、俺から話を持って行っても興味無いって言うしな。むしろ現状に驚きだよ、一夏が女の子について真剣に考えるって明日は槍が降るな」
そんな事を話しつつ、俺たちは一夏と蘭ちゃんのやり取りを眺める。美夜を中心に一夏と蘭ちゃんがぐるぐる回っているが、途中で蘭ちゃんが興奮しすぎて美夜に向かって行った。
「あ」 「よっと」
その蘭ちゃんを美夜がベッドのある所に優しく投げて、暴走が止まったみたいだ。
「すみません、美夜さん。一夏さんの答えが欲しくて、頭がグルグルしちゃって・・・ううう」
そんな感じでしょげている蘭ちゃんを、美夜は抱きしめながら頭を撫でて慰めていて、美夜は俺に向かって言って来た。
「司、今日は止めよう。色々煮詰まっちゃってるし、このまま決めても良い事無いよ?」
その言葉に反応したのは一夏だった。
「いや、こんな機会は無いし。みんながいる所だと話しずらいしさ」
そう言って、悩んでいる様子を見せている一夏に向かって俺も言う。
「部屋なら俺の所に来ても良いだろ?直接関係ある人の前だと無理だと思うけど、俺と簪は一夏の悩んでる事を人には言わないよ」
「私がその中に入ってないのは疑問だけど、私も言わないよ?困ってたら私とセシリアの部屋に逃げて来ても良いよ?一夏の事を好きな人は過激な事をする子が多いしね、避難する所も必要でしょ?」
そう美夜が話を続けると一夏の肩の力も抜けたようで、それからは蘭ちゃんも含めてお互いの学校の話などで盛り上がった。
俺が六人同時に告白された上で、微妙な均衡を保っている事を話した後でスマホでみんなの写真を見せたら、弾に爆発しろ神様!と言われて拝まれたり、傍から見た一夏の様子を、美夜と蘭ちゃんが盛り上がりながら話していた。
夕食までご馳走になって、三人で帰る途中で俺は一夏に声をかける。美夜は聞こえない振りをしているみたいだ。
「で、気になる子は誰なんだ?」
一夏も肩の力が抜けて、リラックスしながら答えた。
「・・・シャル、かな?俺と境遇が被って苦労してるのが分かるし、何か脆い子で支えてあげたくなるしな」
「それで良いんじゃないのか、考える必要無いだろ?」
そこで一夏の表情が変わる、悩み事はシャルルにあるのかな?
「実家絡みで厄介な事があるみたいだ、俺にも全部話してくれないみたいだしな。何かあったら頼む」
「出来る事だったらな」
そう言いながら学園へと帰って来た。セシリアにジェームズさんの事を聞いたら、盛大に罵声が飛び出てきてびっくりしたが、その反応で知り合いだと分かって思わず笑ったら拗ねてしまった。
セシリアに機嫌を直してもらいながら、一夏関係で下手したら血の雨が降る予感がしたが、フォロー出来るかは少し疑問だった。