901分枝系統 80013世界 02795726時間断面 ISの世界 【改定作業中/第一章完結】   作:白鮭

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怒りの日と後悔の日

放課後になると、クラスのほぼ全員がアリーナに移動する。六月最終週にある学年別トーナメントの練習の為なのだが、この前の山田先生vsセシリア・鈴の対戦を見たり話に聞いた子が、みんなが俺と美夜の指導を受けたいと殺到するようになってしまったのだ。

 

「どうしよう、こんなにいっぱい面倒見切れないよ?」

 

美夜も困惑しているみたいだけど、俺も困ってしまった。

 

「何で機体を借りられた人が同じアリーナに全員集まってるんだ。狭くて危ないし、個人の特性が分からないのに指導って言われてもな」

 

上級生になるほど必死らしく、一組と四組の子との小競り合いが始まっている。俺と美夜もそれの解決の為に女の子にもみくちゃにされて、訓練する前に疲れ切ってしまった。肉体疲労は無いが、女の子苦手な奴がする事じゃねえよ。そんな感じに若干ヤサグレながらもみんなを宥めていると、助けてくれたのは意外な人物だった。

 

「おら!散れ!!司と美夜が迷惑してるじゃねぇか。何しにここに来てんだ、時間を無駄にしてんじゃねえよ。フォルテ、クジ作れ。当たった奴がこのアリーナで訓練だからな。良いな!!」

 

そう言って場を静めてくれたのは、ケイシー先輩とサファイア先輩だった。

 

***

 

「災難だったな。今年が最後の上級生ほど切羽詰まってるけど、気にするな。終わったら少しの間は静かになるよ」

 

そう言いながら俺の奢ったコーラを豪快に飲んでいるケイシー先輩と、ちびちびと紅茶を飲んでいるサファイア先輩との間で、俺は世間話と言う名の情報収集をしていた。俺の伝手だと、上級生の話を直接聞く機会と言うのは貴重なのだ。

 

「六月のトーナメントと九月のキャノンボール・ファスト・・・こっちは二年から上の奴らのイベントだな。が、手っ取り早くお偉いさんにアピール出来る場なのさ。だからお前らが付きっ切りで入学から面倒を見てるお陰で、アホみたいに成長しているセシリアにみんなあやかりたいんだよ」

 

紅茶を飲んでいたサファイア先輩も、色々教えてくれる。

 

「この時期に山田先生をなめた馬鹿が叩きのめされるのは、恒例行事ッスからね。性格と雰囲気で軽く見られがちですけど、上に行けば行くほど先生のすごさが分かるっス。その先生がこの時期のルーキーを落とし切れないって結構な異常事態ですから、それを教えた人間が無償で一年を教練してるって知ってれば、ああなるのは当然ッス」

 

俺もその話を聞きながらコーヒーを飲む。別に無償でもないし、そんな事を言われてもなぁ

 

「あれはセシリアの努力の結果ですよ?他のみんなはアグレッサーだのアドバーサリーだのと言ってますが、他国の戦術の模倣なんて俺にも美夜にも出来ませんから。まあ、その子が苦手としている戦いに追い詰めて、弱点を認識させた後でアドバイスはしてますけどね。やり方の都合上人数増やされても面倒見られないです」

 

先輩二人が唖然とした表情をしている、何か変な事言ったかな?

 

「お前ら二人は圧倒的に強いからそんな事もあるか。普通の人間は、個人の戦い方に合わせて戦闘スタイルなんて変えられないんだよ。アグレッサーなんて目じゃない位すごいぞ、それ」

 

そう言って、ケイシー先輩が連絡先のメモをくれた。

 

「俺とフォルテの分だ、何かあったら連絡しろ。お前の連絡先もよこせ」

 

そう言うので俺の連絡先を渡して、握手して別れた。先輩達も別のアリーナで訓練をするみたいで足早に出て行ったが、ここのアリーナで訓練していた一夏たちが中心になって、何か言い争いが始まっている。

 

「少しは大人しくしろ訓練しろよ・・・」

 

ため息を付きつつ、俺もISを展開しながら現場に飛んで行った。

 

***

 

一年の専用機持ちが集まって喧嘩しているみたいだが、中心は一夏とボーデヴィッヒか。

 

「どうした一夏、シャルルと訓練中じゃなかったのか?」

 

最近、鈴は一夏との訓練に拘るのを止めた。同じ代表候補生としてクラスメイトの前で、自分が落ちてセシリアが互角に戦っていたのが相当ショックだったみたいだ。

乱との訓練についてはジェームズさんとの話は付いたので、俺も美夜も直接教える事が出来るようになった。やる気と意欲がある子を教えるのは楽しいので、最近の乱の伸びは著しく、それもあって鈴も危機感を持って訓練しているのでここにはいない。

 

「シャルルとの訓練中に撃って来て、私と戦えだとさ」

 

そう言って、一夏はボーデヴィッヒへの警戒感を剥き出しにしている。この子も問題大ありだよな、闘争心が無い奴は代表候補生になれないのかも知れないけど、協調性を持ってない奴が軍人になったって役に立つのかね?そう思いつつ話しかける事にした。

 

「気に食わないと、暴力や武器を振り回して相手を従わせようとするのは止めろ。転入の時にシャルルに軍人としての資質に疑問を持たれたのに、まだそんな事をしてるのか?自分はチンピラですって、大声で喚き散らしてるようにしか見えないぞ」

 

下らない挑発だとは思うがトーナメントが近くてどこも一杯なのに、専用機持ちが大暴れして一般生徒と溝が出来たらどうするんだ。ため息を付きつつ呆れたようなに相手を見ながら、個人間秘匿通信(プライベート・チャンネル)で美夜に連絡してみんなに下がってもらう。

 

「ふん。篠ノ之博士にモルモット扱いされているのに、気が付かない間抜けの割に口だけは回るようだな?御大層なISを貰ったようだが、貴様に使いこなせるのか?」

 

やり難い。ボーデヴィッヒを見てると、クロエを思い出してやる気がガンガン下がっていく。口は悪い、態度は悪いと色々あるが、本格的に戦うとなると小さい子を虐めてる気分になるが、我慢して挑発する。

 

ママ(千冬)が恋しくて、ドイツから日本にやって来た子供ににそんな事を言われてもな。自分の事を鏡で見た事があるのか?ムカつくより先に、いたたまれない気持ちになるからこう言う事は止めろ、お嬢ちゃん」

 

暴れさせて退場を願う為に確実に激高する言葉を吐いた瞬間、リボルバーカノンをぶっ放して来た。

 

***

 

ボーデヴィッヒは連続して俺に撃ってくるが、全部オーラフォトンで止める。時詠みの封印を解きつつ分割思考で相手のタイミングを計る。

 

「避ける事も出来ないとはな。学園最強を謳われているらしいが、とんだ期待外れだな!!」

 

俺はあえて一歩も動かない、専用機持ちとは戦闘をしないとセシリアを守るために約束した。その言葉に嘘を付きたくないからだ。

 

「誰だよ、そんなデマを流してる子は。俺より強い奴なんて幾らでもいるよ・・・先ず殻を割る」

 

美夜とは互角だし、先生(トークォ)にはまともに勝った事は無い。その先生すら勝てない化け物(ローガス)だって存在するのだ。IS学園と言う学ぶ為の所にやって来て、同学年の俺や美夜に指導を頼むような子達も多いのに、ボーデヴィッヒは今強くないからと、みんなを見下しているのは態度と言葉を聞いていれば分かる・・・・・・何か腹が立ってきたな、お前は最初から強かったのか?少しきつめに行くか。

オーラフォトンに指向性を持たせて高速射出、これに自動追尾機能を持たせる事で基本的な遠距離攻撃手段としているが、別にこれだけと言う訳では無い。

 

「マナよ、わが求めに応じよ。一条の光となりて、彼の者どもを貫け!オーラフォトンビームッッ!!」

 

時詠みで見ながら威力調整して、AICの機能を止める。ボーデヴィッヒは唖然とした表情で動きを止めているので一度戦闘を止める。

 

「ドイツ御自慢のAICは止めたぞ。それと勘違いはするなよ、動けなかったんじゃない、動く必要が無かったんだ。俺はイギリス政府と契約を結んでいるんだ、専用機持ちとは戦わないと。喧嘩を売って来てただで済むと思ってるのか?はっきり言って、お前は代表候補生としても軍人としても相応しいとは思えない。選ばれた人間ならそれらしい態度があるだろ、狂犬」

 

言い過ぎたとは思うが、みんなをただ見下す奴なんて邪魔なだけだ。

 

「あああああっ!!!」

 

リボルバーカノンを乱射しながらこちらに近づいて来るので、最後に撃つタイミングを狙う。

 

ズドォン!!

 

撃っていたリボルバーカノンが爆発する。AICを止めてリボルバーカノンを撃つタイミングで、砲内にオーラフォトンを展開したのだ。火薬式の武器じゃなくとも爆発するんだなと、変な事で感心しながらボーデヴィッヒにもう一度言う。

 

「これ以上するなら手加減しないぞ、ドイツ御自慢のガラクタを粗大ゴミに変えるだけだ。修理すればトーナメントには間に合うだろ?もう止めておけ」

 

そう言って動きを止めてしまったボーデヴィッヒを見ても戦闘態勢を解除しないで立っていると、織斑先生がやって来た。

 

「そこまでにしておけ、司」

 

戦闘態勢を解除して下に降りる。不機嫌さを隠さないでいると、先生に頭を叩かれた。

 

「やりすぎだ馬鹿者。それだとお前の嫌いな弱い者虐め(・・・・・)になってるぞ。頭を冷やしてこい、グラウンド二十周だ。行け!!」

 

俺は頭を下げて、小さな声でありがとうございます、織斑先生。と呟いた後に走り出した。

 

***

 

あの場を一方的に織斑先生に任せてしまった。自己嫌悪しつつ二十周走り終わると、アリーナで訓練していたみんなが待っていた。

 

「ほれ」 「ありがとう」

 

一夏がそう言って渡してくれたのは冷えていないスポーツドリンクで、飲んだ後で温いと言ったら健康の為に必要だと、軽く説教された。

 

「司でも怒る事ってあるんだな。俺たちと同い年のはずなのにずっと年上に見える事があったから、喧嘩するとは思わなかったよ」

 

「まあ、な・・・走りながら自己嫌悪に陥ってた。それに、解決を織斑先生に任せっきりにしたからな。もうちょっと上手いやり方だってあったかもしれないのに、結局力で薙ぎ払った。これじゃボーデヴィッヒの事を悪く言えないだろ」

 

そう言ったら後悔していたら、一夏が人の悪い笑みを浮かべ始めた。

 

「じゃあ、ラウラと仲直りしてこい。ジュースおごったのはそれでチャラにしてやる」

 

高い代償だなと思いながらも、口からは別の言葉が出た。

 

「ああ、そうするよ。背中を押してくれてありがとうな、一夏」

 

一夏は黙って頷いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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