901分枝系統 80013世界 02795726時間断面 ISの世界 【改定作業中/第一章完結】 作:白鮭
目が覚めると、近くにボーデヴィッヒが座って待っていた。
「起きたか、いきなり寝始めたから何事かと・・・・・・それは何だ?」
ボーデヴィッヒの視線が向いている方を見ると、ユーに乗って空を浮かんでいるフィーがいる。じーっと見ているのが怖いのか、立ち上がると二人共ふよふよと俺の後ろに隠れてしまい、ボーデヴィッヒは露骨にガッカリした表情を見せる。
「マスター、ボーデヴィッヒさん目が怖いです」 「ぽえー」
「俺の身内でパートナーだよ。二人共、自己紹介をしてあげて」
そう言うと、おずおずと出てきて自己紹介を始めた。
「私は、ひ、ヒューマンインターフェイス?のフィエルです。IS赦しのISコア?との仲介を司っています???で、この子がISコアのアバター?のユーです」
「くおーん」
フィーは挙動不審になりながら自己紹介をしているが、カミカミである。ここの住人と一緒に生活する以上、まさか永遠神剣の神獣と言う訳にはいかないので、電脳世界で打ち合わせをしていたのだが選択肢が無かったとは言え、フィーはこう言う事に向いてないと思う。
『なあ、明らかに意味が分かってないぞ?ボロが出ないか凄く心配なんだが』
そう
『慣れていませんから仕方がありません。それに、ISの世界には魔法の言葉があるから問題ありません、司さま』
そう言っているので、黙ってフィーを見ている。
「私もユーも、IS赦しの
そう言うと、ボーデヴィッヒは少し真剣な表情になる。
「IS赦し?
そう感心した様にボーデヴィッヒが言っているのを聞いて、ユーがちょっと得意げに言う。
『魔法の言葉、篠ノ之博士謹製です』
そうユーが言っているのを内心苦笑しながら聞いていると、ボーデヴィッヒは何やら考え始めて、少したってから俺の方を真剣に見ながら聞いて来た。
「分かった、私は司の友達になるから是非聞かせてくれ。レーゲンもがんばれはユーやフィエルの様になるのか?私的には黒いウサギが良いのだが」
ボーデヴィッヒは目をキラキラさせながら聞いて来たのだが、嘘を付きたく無い為に目を逸らしながら言った。
「
「いや、軍人が使う物に不可能は無いはずだ。レーゲンも私の相棒なのだから出来るはず。私も
そう言ってレッグバンドを叩いているが、どう考えても無茶振りである。ISコアには精神が存在するらしいので、俺はレーゲンに心の中で詫びておいた。
***
俺はこの後に用事があると言ったのだが、ラウラがぜひ一緒に行きたいと言って付いて来てしまった。まあ、俺はおまけで本命は・・・
「そうか、フィーはユーの言葉が分かるのか。私もユーと話がしたいが無理なのだろうな」
「ど、どうなんでしょうね?アハハハ・・・・・・」 「ぽえー」
肩にフィーを乗せて、ユーを抱っこしてご機嫌のラウラがいる。フィーがボーデヴィッヒさんと言ったら、ラウラと呼んでくれと言って、俺にもそうしてくれと言われたのだ。
『喋れるのは内緒にするのか?』
『はい、秘密を知る人間が少ない方が良いですから。美夜さまと篠ノ之博士、後はクロエちゃん以外に明かすのは時期尚早だと思います。司さまのご命令があれば変更いたしますが?』
『いや、エターナルの事を知らない人達には黙っていよう』
そう言いながら歩いていて、着いたのは剣道場。ラウラは意外と素直みたいで、フィーとユーが緩衝材になってくれたから平和的に終わったが、篠ノ之はどうなのか心配である。なにしろ下手に篠ノ之と言い争いになると、周りが篠ノ之を悪者扱いする可能性があるのだ。
「こんにちは」
そう言って剣道場に入った瞬間、竹刀の叩き合う音が一斉に止まった。その上みんなからガン見されて、非常に居心地が悪い。行動範囲がクラスとアリーナと寮内位しか無かった上に、普段は周りに人がいるのが当たり前だったので油断した。そう思った瞬間、女の子に囲まれていた。
俺だって苦手を克服する為に努力はしている。十人ちょっとしかいないのだ、俺はやれば出来るんだ!
絶対に女の子に負けたりしない!!
「女の子には勝てなかったよ・・・」
十分位もみくちゃにされていたら、篠ノ之が助けてくれたのだ。因みに俺を助ける派のフィーが言葉でラウラに訴えて、俺を見守る派のユーに頭で動かない様に押された結果、ラウラは二人と遊ぶことを優先した。ちくせう。話があるからと篠ノ之を連れ出して、ようやく二人きりになれた所で本題に入る。
「今日はがんばったな、逃げなかったしボーデヴィッヒに助けも求めなかった。ボーデヴィッヒを連れて来たのには驚いたがな・・・要件は?」
ぶっきらぼうに言いながらも、目を伏せて後悔しているような感じだ。これなら行けるかな?
「助けてくれて、ありがとうな。仲直りしに来たんだよ。篠ノ之の言った事に理由はあるんだと思うけど、好きだって言って来た人を蔑ろになんてしないよ。でも、だからって友達を蔑ろにもしたくない。あれから時間も経ったし、冷静に話し合えるかな?と思って会いに来た」
少し震える様に躊躇した後に、篠ノ之は俺を見ながら思いをぶつけ始めた。
「・・・・・・ダメだ、仲直り出来ない。司の言いたい事は分かるし、みんなが悪くないのも分かってる。でも!・・・みんなの顔を見ていると、姉さんの事を思い出して頭から離れないんだ!!教えてくれ司、どうしてあんな人と仲良く出来るんだ。受け入れる事が出来るんだ!?」
そう訴える篠ノ之は、傷ついて追い詰められた表情をしていた。
「色々普通じゃない人だとは思ってるよ。理解するのは難しいかもしれないけど、理解する為の努力はしてる。俺は凡人だからなかなか上手く行かなくて、束さんに申し訳ないと思っているけどね。でも、愛してるとまで言われてるのに、その言葉に胡坐をかくのは嫌だ」
「それは、司も普通じゃないから言えるんだ。何が凡人だ!姉さんに匹敵する才能がある癖に!!」
確かに俺は”聖杯”を使っていろいろな能力を生み出して、曲がりなりにも使うことが出来る様になったがそれは単に時間があっただけの事であって、それ以前の事を考えれば運が良かったからに過ぎない。普通それは才能とは言わないと思うが、篠ノ之には言えない事だ。
「訓練で伸ばしただけだよ、後は周りのみんなに助けられたから今の俺があるんだ。最近、アリーナに来てないから美夜もセシリアも心配してた。顔くらい見せてやれよ、学年別トーナメントまで時間が無いぞ」
それと、言うか言わないかを最後まで迷った事を言う事にした。
「一夏は最近、告白してきた子の事を真剣に考えてる。篠ノ之はその中には入ってないけど、本当に良いのか?」
「良くない!良くないよ・・・私が間違ってたと言うのは分かってる。一夏が最終的に折れてくれるって、甘く考えてたのだってある。
だけど、私は小学校の時に転校してからずっと、一夏の事を心の支えにして今まで生きて来たんだ。都合の良い考えだって分かってたって、夢を見ていた頃の甘い考えが出て来るんだ・・・」
そう言って自嘲の笑みを浮かべている篠ノ之を見て、一夏との意識の違いに臍を噛む思いを感じていた。篠ノ之にとっては心の支えでも、一夏にとっては幼馴染で小学校の頃に分かれた友達に過ぎないのだと思う。
両者がすれ違って当然だ。何せ篠ノ之は実像の一夏を見る努力をしていると同時に、心の支えだった究極の理想に恋している状態なのだから。時間があるならそれでもいいと思う。徐々に違いを修正していって、付き合うのも別れるのも当人の問題なのだから。
だけど、一夏の事を好きなライバルが本気を出している今の状態では、篠ノ之の様に暢気に構えていたらライバルに先を越されて終わりだろう。
「鈴が転入してきてから、篠ノ之の様子が変わったのも納得がいった。みんなに応援されて、そのまま一夏と恋人同士になれると思ってたのに、そこから自分の思い通りに行かなくなったから・・・か?」
篠ノ之はそれを聞いて力無く肯いているが、そんな事を暴露されても俺にはどうにも出来ない。
「今から死ぬ気で努力するしか無い、ここから覆せるかは本当に分からないけどな。また来るから、その時には許してくれると嬉しいな。俺も美夜もセシリアも待ってるから」
俺は結構篠ノ之に肩入れしているとは思うが、鈴だって蘭ちゃんだって友達なのだ。それに一夏の想いだって聞いているから、それを無視してくっつける為に動きたくは無い。
篠ノ之は俺に何かを言いかけたが、その後は無言で去って行った。俺も胸の中がモヤモヤしながらも、ユーとフィーとラウラを回収した後でアリーナに向かう。
みんなにラウラを紹介して、少しでも仲良く出来る様に手を貸してあげようと思う。それと篠ノ之の事については悩み所だ。
周りで俺との関りが無いのはシャルル位だが、一夏はシャルルを意識しているのだから。一夏が誰を選んでも祝福して、相談されたらそれに乗る位しか出来ない。そんな事を考えてアリーナに着いたら、質問攻めにあって大変だった。
夕食の時に篠ノ之に会って来て仲直り交渉をしたと言ったら、美夜とセシリアに私も行きたかったと文句を言われてしまった。今度は三人で行こうと思う。
***
その夜、美夜と束さんとクロエに
『イャガとの敵対関係か、司も運が悪いよね。この分枝世界から離脱する必要があるかな?』
美夜も相手がエターナルだと分かると慎重になった。永遠神剣の本能がマナを集める事とは言え、それを体現する存在であるイャガと戦えば、こちらの消滅の可能性も考えなければならないし、余波でISの世界に被害が出る可能性が高いからだ。
『ユーの報告だと、イャガは別の時間樹に居てすぐに同調状態から抜けたから、こっちの居場所は分からないと言っていたけどな。慎重に動いて損は無いだろ』
『様子を見て・・・かな?最低でも学園は卒業したいよね』
そんな事を話していたら、束さんとクロエが頼み事をして来た。
『束さんも連れて行ってくれないかな?私はこの世界が嫌いだから、このチャンスを逃したくは無いのさ♪』
『私も束さまと行きたいです、一人は嫌です』
そう言って来るのは俺にも美夜にも分かっていた。今までだったら設備的に無理だったので断れたのだが、
『夏に一旦そっちに行きます。分枝世界間の通路である狭間の領域には出られませんが、ユーの能力を俺も美夜も見てみたいので、宇宙に出る予定です。その時に一緒に行きましょう』
それを聞いた途端に束さんが子供の様に歓声を上げて、向こうでクロエに抱き付いたらしく、クロエの慌てた声も歓声に混じって聞こえてくる。その後は四人でこれから何がしたいかを話し合った。
束さんの心は他の分枝世界に関心が向いていて、今すぐ出発しようと言うのを宥めるのに苦労してしまったのだが。