901分枝系統 80013世界 02795726時間断面 ISの世界 【改定作業中/第一章完結】 作:白鮭
箒Side
今日の夕方に司が来た。あいつは八つ当たりで酷い事を言った私に赦しを請うて来て、更に暴言を吐いた私を許すばかりか、みんなが待っているとまで言ってくれた。司の事を見ていると、自分の狭量さが嫌になる。
司たちは私の事情を知らないし、私も司と美夜の事情を知らない。気持ちばかりが焦って勝手に行動した挙句、UNKNOWNに襲われて死にかけたあの時の光景は目に焼き付いている。きっと司にしても美夜にしても、本当はもっと・・・理解出来ない位強いのだろう。
ただ、あの二人はそれをみんなの為に使っている。指導をしてノウハウを提供して、ボーデヴィッヒの様にみんなをバカにする人間に対して本気で怒ったのに、もう仲直りしたらしく私の所に連れて来ていた。
もっともボーデヴィッヒは司に関心があんまり無さそうで、女子に囲まれた司を助けに行かなかったのはどうかと思ったが。剣道部のみんなが一夏か司を連れて来てくれないかと言っていたので丁度良かったけど。
「一夏、か・・・」
幼馴染で心の支えだった人で、私が好きな人。司は告白した人の事を真剣に考えていると言っていた。そして、私がその中に入っていないとも。
こう言う事を一緒に考えてくれていたのは司と美夜とセシリアだけだったのに、その絆を私が壊してしまった。そして司の手を振り払って、今の私に残ったものは何もない。
自分のスマホを見つめて、私は今すごく卑怯な事を考えている。司にあれだけの事を言ったのに、私の周りにはたった一人しか残っていないのに気が付いた。
「はははっっくっ・・・ふっふっっくっはははっくっっくっ・・・」
自分の浅ましさに乾いた笑いが出て来る。往生際の悪さと、この期に及んでも自分にとっての都合の良い考え方をする私自身に自己嫌悪しか出てこない。スマホを操作して途中で手を止めて、そしてまたスマホを操作する。
何回も繰り返して、そして私は自分に負けた。
「・・・・・・・・・・・・姉さん、助けて」
「うんうん、分かったよ箒ちゃん。で、なにがして欲しいんだい?」
私は姉に望みを託した。自分の心を汚いと感じて抉り出したくなったが、自分に愛想が尽きて涙も出てこなかった。
箒Side out
***
午前四時四十五分に目が覚める。簪もフィーも良く寝ているが、ユーは早いにもかかわらず当然の様に起きていた。
『おはよう、ユー。いつも言っている通り、寝ていても良いんだぞ?』
『はい、おはようございます、司さま。いつも通りお付き合いさせていただきます』
こう言った事にはユーは厳しい。この時間に起きる様になって三日目だが、今では定番のあいさつになっていた。
『じゃあ、行くか』
『はい、行きましょう。司さま』
そう言って扉を開けて外に出るとラウラが待っていた。ラウラは生活のリズムが学園になじんでいないのか、朝早くにこの部屋に来る事が多くなった。理由はランニングのお誘い。せっかく友達になったのだからと、ラウラに付き合って走るようになったのだ。
「おはよう、ラウラ。今日も天気は良いみたいだな」
「おはよう司、ユー」
「ぽえー」
そう言いながら廊下を歩いていると、セシリアが待っていた。昨日俺たちが走っている事を話したので、一緒に走りたいと言っていたのだ。
「おはようございます。司さん、ユー、ラウラ」
「おはよう、セシリア」
「ぽえー」
「ああ、おはようセシリア」
挨拶を聞いて、俺とセシリアは顔を見合わせて少しだけ笑う。ラウラは少しずつだけど、みんなに溶け込んできている。間に俺たちが入る事で、最初のキツイ印象だけの人間でない事がみんな分かって来たのだ。ラウラが俺たちに付き合ってくれている以上、俺もラウラのする事に付き合う事にする。さて、今日も十五キロのランニングの始まりである。
***
シャワーを浴びて用意をしていると、良い時間になるので簪とユーとフィーを連れて食堂に行く。俺たちの
「セシリア大丈夫か、いきなり十五キロも走ったから疲れただろ」
「そうですわね。疲れた事がショックですわ、わたくしも大分鈍っているのですね」
そう言いながらセシリアがため息を付いている。
「環境が良いので模擬戦や実機訓練に時間を取って、日本に来てから基礎的な訓練を怠っていたようです。明日からもお願いします、少し体力も落ちてるような気がしますので」
「ああ、オーバーワークには気を付けてな。俺も注意するけど、自分で体を大事にしないと駄目だぞ」
セシリアがそんな事を言っているので、少しだけ注意する事にした。周りから見てもセシリアはかなり伸びているので、最近がんばり過ぎている所がある。怪我とかは最悪”聖緑”があるし、最近はフィーの指導で神剣魔法が使えるようになって来て、回復魔法も覚えた。まあ、肉体を持っている者には殆ど効かないのだが。
死んでなければ”聖緑”で完全に治すことが出来るが、おいそれと俺たちの正体を知る存在を増やしたくは無いし、トラブルでセシリアの笑顔が曇る所を見たくはない。
お返しにセシリアからは休むからデートをして下さいと言われて、たじたじになりつつ食後にコーヒーを飲んでいると、ユーから気になる報告をされた。
『司さま。レーゲンから話を聞いたのですが、正体不明のユニットが接続されていて気になるので調べて欲しいと言われたのですが、よろしいでしょうか』
ISコアと会話できるって言うのもすさまじいな。取り合えずユーから詳しい話を聞いてみる。
『レーゲンって意思の疎通が出来たのか。正体不明のユニットってどういう作用があるとかも分からないのかな?』
『ラウラちゃんの精神に密接に関わっているとしか分からないそうです。使用者に許可を得ないで勝手に発動する可能性が高くて、レーゲンは嫌がっています』
『ドイツの機密にかかわってる可能性が高いけど、自信はあるんならユーの思う様にして良いよ』
そう言うと、ユーは頼もしそうに返事を返してくる。ラウラに抱っこされてなければ、カッコ良さげに聞こえるんだけどな。今のユーは可愛いだけである。
『この分枝世界だと、警戒する必要があるのは篠ノ之博士位です。では、調べてみますね』
そう言って、調べ事に集中し始めて
「今月開催する学年別トーナメントでは、より実践的な模擬戦闘を行う為に二人一組での参加を必須とする。なお、ペアが出来なかった者は抽選により選ばれた生徒同士で組むものとする。締め切りは三日だ」
俺と美夜はSHRにもかかわらず、眉をな
『どう思う?』
『無謀すぎ、連携訓練を説明の一言すらこの学園で習ってないよ。シールドバリアーがあるから事故は無いって思ってるのかな?ここの学園生はみんな凄いから、私たちから学んでいる子達で上位者を独占すると思う。色々めんどくさい状況になりそうだね』
俺もそう思うので、先生に了承を貰って発言させてもらう。いくら何でもこの時期にトーナメント内容を変えるのは酷すぎる。
「俺たちは連携訓練なんてこの学園で受けていません。それに、残り日数から考えてもそんな無謀な事を強いられて、事故が起きたらどうするんですか。撤回を要求します」
織斑先生と俺の視線が空中でぶつかって、周りが息を呑んでいるし山田先生もオロオロしている。やがて織斑先生から視線を外され、発言が続けられる。
「司、決まった事だ。それと司と美夜は強制的にペアで、トーナメント時に別の仕事をしてもらう。これも決まった事だ、良いな」
「・・・はい、分かりました」
そう言われては仕方が無いと思ったが、周りから物凄いブーイングが沸き起こる。そして、みんな一夏とシャルルを見る目が獲物を狙う目に変わった。助けを求める様に一夏が俺も見ているが、どうにも出来ないので手を振って誤魔化しておいた。
***
SHRが終わって直ぐにユーから報告して来た。情報収集が終わったのはだいぶ前だったらしいが、SHRが終わるまで待っていてくれたみたいだ。
『ドイツ軍のネットワークに侵入して参りました。レーゲンの情報を抜きましたが、VTシステムと言うのが要件に合うシステムみたいですね。搭乗者が敗北した後に精神状態によって発動して、自動制御で戦うみたいです』
話を聞く限りだと、役に立つのか微妙に感じてしまう。気絶したら戦闘領域から離脱するとかなら分かるが、何で戦うんだ?無人機を作る過程で出来た物だとしても、学園で使う機体に仕込んだ訳が分からない。
『意味が分からないな。ラウラが意識を失ったら自動制御で戦闘続行して、それで勝ったら競技的に勝利になるのか?それなら・・・使える、か?』
『司さま、VTシステムはIS条約で研究開発も所持も使用も禁止されています。理由は分かりませんが、発動したら大惨事かと思われますが』
情報は入ったが、これを使ってラウラのISからVTシステムを取り外す事が出来ないんだよな。情報入手の手段が真っ黒だからなぁ・・・うう、仕方ない。仕方ないので、俺は束さんに
難産でした。今でももっと良い表現方法があったのではと考えてしまいます。