901分枝系統 80013世界 02795726時間断面 ISの世界 【改定作業中/第一章完結】 作:白鮭
「最近、マスターが相手をしてくれなくて寂しいです!!ユーとばっかり行動して、私の事ももっと大事にして下さい!!」
部屋に帰ったら、フィーに怒られてしまった。秘密の行動が多くてユーにばっかり頼っていたので、フィーが拗ねてしまったらしい。フィエルは空飛ぶ美少女フィギュアな外見だが、ガチの戦闘系神獣で、神剣魔法の運用に関しては俺など足元にも及ばないレベルだし、神剣魔法の先生でもある。おまけに”聖杯”の機能もある程度は使える。
純粋に手数が二倍になった様なもので、最初にフィーとペアを組んで美夜と模擬戦した時は、ズルいと美夜に文句を言われた位なのだ。もっとも、そのほかの事は色々と残念な神獣でもあるのだが。だが、ポンコツな所も含めて俺の相棒だと思っている。
「だよな、ごめんな。最近色々あって訓練もしてないし、今日の所は簪お勧めのアニメ鑑賞会で良いか?」
そう言って部屋にいた簪にペコペコ頭を下げていると、苦笑しながらディスクを探してくれている。
「あとリンゴも欲しいです」 「分かった、今用意する」 「ユーと簪も一緒に見ましょう」 「はいはい」 「ぽえー」
そんな感じで、ここに居るみんなでアニメを見て楽しんだ。簪にも、最近の俺は張り詰めている感じがして、少し余裕が無いみたいで心配だったと言われてしまった。反省しつつも、トーナメントを乗り切らないと休めないだろうなと思ったが。
***
深夜にみんなが寝静まった時間に寮から抜け出して、校舎の上に飛んで束さんに連絡を取る。この時間なら起きてると思うんだけどな。そう思って
『やぁ、束さんから愛の囁きの時間だよ。つかちゃんが私に連絡して来る頃だと思ったんだよ。合ってる?』
監視されてるなぁと苦笑する。これも愛が重い内に入るのだろうかと、さっき起こった事を思い出しつつ相談をし始めた。
『ドイツのシュヴァルッエア・レーゲンに関してなんだけど、VTシステムが仕込んであるんだ。発動条件が搭乗者の精神状態によるみたいで、危ないからどうにかしたいんだよ』
『良いよ、VTシステムに関しては引き受けるよ。あれはモンド・グロッソの時の、ちーちゃんの戦闘を模してるんだよね。クズどもには過ぎたシロモノなのに、まだ
声に怒りが混じっている。きちんと言わないと、被害が拡大しかねないな。少し考えてから答える。
『ドイツ代表候補生が落ち込まなければ良いよ。友達が悲しむのは嫌だから、その辺りの事を気にしてくれると俺は嬉しいかな?』
『う~ん・・・分かった、配慮はするよ。後、私も頼みごとがあるんだけどな』
そう言って束さんは頼みごとをして来たのだが、明日直接言うとの事だ。ああ、明日来るんだなと思って楽しみにしつつ雑談に突入、最後は起きて来たクロエに二人で怒られつつ部屋に戻った。束さん、明日寝不足で事故らないか少し心配だ。
***
俺と美夜とセシリアとラウラで教室に行き、みんなに挨拶しつつ雑談をしていると、急に静まり返った。美夜は少し考えながら、困った様に扉の方を見ている。セシリアはビックリしながら扉を見ていて、ラウラは扉の方を見て顔を顰めていた。
疑問に思って俺も振り返って前の扉の方を見ると、シャルルが女子の制服を着てシャルロット成っていて、一夏と腕を組んで教室に入って来ていた。一見すると仲がよさそうに見えるが、シャルルは不満そうな顔をしているし、一夏は何かフラフラしていて目に光が無い。
「ゆうべは おたのしみでしたね?」
「司、変な事言わないでくれ。大丈夫だ、それは回避したから」
一夏の声に元気と余裕が無い。既成事実からの婚約コンボは回避したみたいだけど、落ちるのは時間の問題じゃないかな?そう思っていたら乱と鈴が遊びに来て、続いて篠ノ之が登校して来た。
「「・・・・・・・・・・・・」」
沈黙が重圧を持って降り積もる。篠ノ之と鈴は一夏たちの方を見る、特に組んでいる腕の所を熱心に。涙目で睨み付けているのが鈴で、怒りで手を握りしめながら無表情で見ているのが篠ノ之だった。
乱は怖がって俺たちの方に来てしまうが、そんな事には目もくれないままで鈴が火蓋を切った。
「ねぇ、オカマの蛙食い。あんたの性別聞かせてくれない?」
涙目で睨み付けている鈴と、微笑んでいるシャルル・・・特に鈴には前科があるので、俺も美夜も緊張し始めた。こんな所でISが展開されれば、死人が出てもおかしくない。異様な空気を感じ取って、蜘蛛の子を散らすようにみんなが逃げだしている。
「私は生まれた時から女だよ。これで良いかな?」
「・・・ふふふっ、死ね!!!」
一夏のモーションを見て、俺と美夜はオーラフォトンを展開するのを止めた。その直後、一夏は雪片弐型で鈴の双天牙月を受け止めていた。
「織斑くん凄い」 「速くなったなぁ・・・」
場違いだと思うが、俺と美夜は予想以上に腕の上がっている一夏を見て思わず呟いてしまう。ただ、シャルルを庇った事に鈴が更に怒ってしまった。
「そいつは嘘を付いて学園に転入して来たんだよ!!何でそんな奴を庇うの、一夏はおかしいよ!!」
そう言って、鈴は目からポロポロと涙を流し始めた。そして、篠ノ之は怒りを見せながら一夏に指を突き付けると
「私と決闘しろ一夏!!貴様の性根を叩きなおしてやる!!!」
そう吼えた瞬間、校庭にこの前と同じ爆音が響き渡っていた。
***
爆音は束さんのにんじんロケットで、クロエも一緒に来ていたが、ラウラを見た瞬間俺の後ろに隠れてしまった。ラウラを見た時にも思っていた事だが、二人は良く似ている。何か訳があるのかも知れないと思ったが、芯がブレなければ問題無いと思って取り敢えずは無視した。何かあればクロエに味方をすれば良いだけの話なのだから。
今ここに居るのは、束さんとクロエと俺と美夜と篠ノ之だけだ。爆音によって勢いを失って、微妙な雰囲気になった教室に束さんが乗り込んできて、俺たちを連れ出したのだ。
空いているアリーナに連れて来られて、備え付けのISの整備台まで連れて来られる。そして、束さんが篠ノ之に金と銀の鈴が一対になってついている赤い紐を渡した。
「箒ちゃんにはこれが必要でしょう?IS赤椿。全スペックが現行最強!だったら良かったんだけどね。IS赦しとIS絶炎には敵わないんだよ、使ってる二人がリアルチートだから仕方ないけど」
「「束さんには言われたく無いから」」
俺と美夜がそう答えると束さんは笑っていたけど、急に声の質が変わった。激怒しているみたいで、俺と美夜はその雰囲気を感じて居心地が悪くなり、クロエは空気が悪くなったのを感じて俺の手を握って来た。
「まず、つかちゃんの昨日のお願いに対する頼みなんだけどさ。箒ちゃんと組んで
「司、何か頼んだの?」
美夜はそう言って、空気を変えようとしてくれているがあまり効果はないようだ。だが、束さんは答えってくれた。
「眼帯のISにVTシステムって言うのが搭載されててね、それの対処をするのと引き換えに、私の頼みを聞いてもらう事にしたんだよ」
そう言ってくれているが、目が殺気を帯びて炯々と輝いている。なるべく穏便に済ませたいと思うが、この状態の束さんに言っても聞いてくれるか躊躇していると、俺より速く美夜が答えた。
「そっか・・・じゃあ、それは私がやる。箒だって女の子同士の方が良いでしょ?良いよね、束さん」
「そう言うなら、みゃーちゃんでも良いよ。その代わりキツイの頼むね」
美夜の方を見ると微かに肯いているので、手加減してくれると思う。俺の担当が怒ってる束さんを宥める役なのは良いのだけど、トーナメントでお偉いさんのホスト役を一人で務める事になりそうなのがキツイ。だが、美夜だって一夏をぶちのめす役をやるのだから、どっちも憂鬱な事には違いないのだ。
篠ノ之は今の話が聞こえなかったのか、待機形態になっている赤い紐も見ながら俯いている・・・篠ノ之を慰める役は美夜とセシリアにやってもらおう。根性を叩きなおすと言っていたが、悪いけどただの八つ当たりにしか思えないんだけどな。
「で、あの
「いや、束さん待って。それをやったら織斑先生と完全に縁が切れるよ?」
篠ノ之がここに居る為に本音の部分が言えないので、そこだけ
『それと、俺と美夜が束さんと付き合っている事に篠ノ之が怒って暴言を吐いた時から、クラスメイトに良い目で見られて無いんだよ。篠ノ之は一杯一杯で気が付かなかったみたいだけど、これ以上篠ノ之がクラスから孤立するのはマズイ。美夜もセシリアも俺だって篠ノ之の事は心配してたんだ。クラスのみんなとの関係改善はするから、束さんも篠ノ之の為に少しだけ抑えて欲しい』
束さんはギリギリと歯ぎしりしつつ、その辺を歩き回って考えている。篠ノ之を傷つけた一夏をボコボコにしてやりたいが、これ以上篠ノ之が学園で孤立するのも嫌なのだろう。一夏の事も心配だがそれを言っても聞いてはくれない、だから篠ノ之の名前を利用してどうにか抑えてもらおうとする。いい気分はしないが下手したら一夏が殺られる可能性もあるので、俺も美夜もハラハラしながら見ている。
「・・・箒ちゃんはこのまま泣き寝入りするの?決闘するんだったら、そこに望みを乗せれば良いんじゃないかな。あんな
底光りする様な目で篠ノ之を見ながら、束さんがそう囁く。俯いていた篠ノ之が顔を上げた時、その眼は暗く淀んでいるように感じた。
「・・・そうするよ、姉さん。シャルルに勝って一夏を取り戻す。邪魔する相手は赤椿で落とせば良いんだ。シャルルは私から一夏を取ったんだ・・・・・・取り返して何が悪いんだ!!」
クロエは怖がって本格的に俺にくっついて来たし、俺と美夜も居た堪れない気持ちになってその場に立ち尽くしていた。篠ノ之の言ってる事は、的外れで自分の事しか考えて無い。一夏がこれまで悩んでいた事に、篠ノ之の名前など出てこなかったのだから。ただこの篠ノ之の今の姿は、俺を好きだと言ってくれた子にも起こりえる事なのだ。
それを考えれば、俺も加害者同然の立場だ。だから、一方的に篠ノ之を断罪する事は俺には出来なかった。
それから赤椿の
特にユーが自分の生まれた過程を考えて、束さんの事を母さん、クロエの事を姉さんと呼んだら二人共大喜びしていた。
***
午前中には終わって、束さん達も帰って行った。時間が無いので美夜と打ち合わせした後に、昼休みに適当にパンを買って一夏とシャルルを昼食に誘う。美夜にはセシリアと一緒に篠ノ之を誘ってもらって、仲直りと決闘を考え直すように説得してもらう。もっとも、こっちは焦らない様に頼んだが。
屋上に連れ出してパンを食べながら決闘の話をすると、一夏もシャルルも納得行かないと顔に書いてあった。
「いや、その顔を見れば納得してないのは分かるけど、大人しく受けておいてくれ。束さんを抑えるの大変だったんだぞ。なあ、一夏はバラすのと焼くのと煮るのどれが良い?」
訳が分からないのだろう、首を傾げている。
「煮るかな。魚の話か?」
俺は、疲れた様にため息を付いた後で言った。
「理不尽だと思うけど、一夏への制裁の話だ、お前は束さんに命を狙われたんだぞ。取り合えず、今度のトーナメントで決着を付けられるように美夜が説得してる。相手は美夜と篠ノ之のペアだけど、美夜は一夏しか狙わないから。決着はシャルルが付けてくれ」
一夏は現状を理解して真っ青になるが、シャルルは真剣な顔をして頷いていた。
「司、私たちの為にごめん。こんなに良くしてくれるのに、私は・・・」
落ち込んでしまったシャルルに、苦笑しながら言う
「気にするな、俺は一夏がシャルルを選んだ事を応援してるから。まあ、思う所があるのかも知れないけど、仲良くしてくれると嬉しいかな?」
「うん、ありがとう司。それと、女の子の恰好をしてるんだからシャルロットだよ。シャルって呼んでね」
こうしてシャルとの和解も出来た。後は美夜が上手くやってくれる事を祈るのと、織斑先生に対する説得が残っている。トーナメントまで残り時間はあまり無いが、余計なトラブルがもう無い事を願っていた。