901分枝系統 80013世界 02795726時間断面 ISの世界 【改定作業中/第一章完結】 作:白鮭
朝の五時三十分、遂に学年別トーナメントの日がやって来た。簪も同じ時間に起きて雑談しながら準備を始める。
「こんなに早く起きなくても簪は平気だろ?付き合ってもらって悪いな」
「ううん、朝の挨拶とお見送りくらいはしたいし、司さんは知らない人が苦手でしょ?私と話す事で緊張が少しでも収まれば良いなって思ってたから平気」
そう言って少しだけ顔を赤らめながらも、はにかむ簪に感謝しながら準備を終わらせる。
「マスター・・・眠いですー・・・ん~」
半分寝ながらも俺の肩にしがみついて離れないフィーと、反対側の肩の上辺りでふよふよ浮かんでいるユーも含めて準備が完了した後で、簪が俺に上着を手渡してくれた。
「正装しないと文句を言う人もいるから持って行って。じゃあ、がんばって来てね。行ってらっしゃい」
「ああ、簪も怪我が無いようにな。今まで努力してたんだから成績上位は間違いないから、後は悔いが無いようにな。行ってきます」
そう言って小さく手を振りながら部屋から出ると、朝にいつもラウラが立っている場所に、見知った顔の二人が立っていた。
「・・・・・・おはようございます、ジェームズさん。ここ、ほぼ女子寮なんですけど・・・」
苦笑しながら俺と簪の様子を見ているジェームズさんと、にこやかに笑いながらも、申し訳なさそうな表情の山田先生が扉の前に立っていたのだった。
***
今日は朝から、三日間俺の事を手伝ってくれる山田先生と最終打ち合わせの予定だったのだが、外に出る時に護衛をしてもらっているジェームズさんが寮に入って来てるので、かなり混乱している所だ。来賓の入場って九時からだったはずだけど、山田先生が認めているみたいだし良いのかな?
「昨日の深夜に少し不味い情報が拡散してな。無理を言って入れてもらったんだ・・・ここは大丈夫か?」
今いるのは寮の談話室で、意図を察したユーが念の為に調べているが大丈夫だろう。
『司さま、寮内と学園を調べましたが問題ありません。防壁に侵入しようとした痕跡がありますが、撃退されていますから。私が作ったエージェントに追撃されて、派手に機材を失ったでしょうからいい気味です』
「ここは安全ですよ。山田先生はどうします?聞いてても良いですけど外に漏らさないで下さいね」
そう言うと、私は誰か入ってこないか見てますねと言いながら、慌てて談話室の外に出て行った。それを二人で見送った後で、改めて誰かが聞いてないか確認した後で、ジェームズさんが話し始めた。
「デュノア嬢と織斑くんの情報が拡散して、中国から国際IS委員会へ正式に抗議が入った。欧州連合が事前準備していたから、フランス大統領のスキャンダルの証拠が芋づる式に挙がったんだが、”余計な情報”にまで手を出した国があってな・・・台湾に対してISコアが流れた証拠を掴まれたぞ、デュノア社に新規のラファールを発注していたみたいだ」
タイミングの悪さにため息を付く。出来れば研究用に使って欲しかったのだけど、乱は三個しかないって言ってたからな。防衛戦力に回せるISが一機じゃ不安だと思うし、台湾はフランスから戦闘機を買っていた事もあるから順当だとは思うんだけど・・・
「欧州連合全体が情報を共有してるんですか、それとも一部の国だけですか?」
「一部だな、司と美夜の対応を見るつもりらしい」
いくら束さんにコアを融通してもらえると言っても、所詮は個人なのだ。国の権力には勝てないし、武力で対抗なら出来るが、そんな事をしたら束さんの所に逃げ込んだ後に、ISの世界からの離脱しか選択肢は残らないだろう。束さんはそれを狙って嬉々として手を打っているみたいだけど、俺も美夜もまだこの分枝世界に居たいからなぁ
「で、だ。実は
ジェームズさんに詳しい話を聞いて、俺はしぶしぶ話に乗る事にした。
***
ジェームズさんと話が終わった後で、山田先生を呼び戻して打ち合わせ兼、雑談をするついでに山田先生にジェームズさんに紹介する。
「改めまして、ジェームズです。司くんと美夜くんの護衛として、イギリスから派遣されました。貴女の様な美しい方と仕事が出来て嬉しく思います」
そう言ってにこやかに微笑みながら先生と握手し、先生も嬉しそうに握手に応えていた。ジェームズさん美形だからなぁ・・・出会いが少なそうなIS学園の教師だと、ジェームズさんの存在自体が猛毒だと思う。
「先生もジェームズさんも朝食まだでしょ?食堂もそろそろ開く時間だし、一緒にどうです?」
六時を少し過ぎたくらいの時間になっており、三人で食堂に移動する。俺は余りしゃべらずに食べていたが、先生とジェームズさんを見ているだけで結構面白かった。食事が終わって移動している最中、少しだけ顔を赤くしながら、先生がジェームズさんの事を教えて欲しいって言って来たのは驚いたけど。山田先生が本気だったら、手伝ってあげようと思う。
ジェームズさんがどこかに連絡をして、三人で学園内の貴賓室に移動する。こういう学園なので必要な事は分かるのだが、あまりにも豪華な内装に関心しながら見て回る。先生の方を見ると、顔が青くなってきているし大丈夫なのだろうか?ジェームズさんは迎えに行って来ると言って外に出ているし、ここには俺と先生しかいないので、改めて挨拶しておくことにする。
「先生、三日間よろしくい願いします」
そう言うと先生の方も覚悟が決まったのか、表情が変わった。
「はい、三日間がんばりましょうね」
そう言って笑顔を見せてくれるのだった。
***
少し待っていると、ジェームズさんは三人の男女を連れて来た。一人はジェームズさんと同い年くらいの白人男性、一人は二十代後半くらいの白人男性、そして、最後の一人は二十代前半の白人女性だった。
「初めまして聖司くん、私はクリストファー・スコット、クリスと呼んでくれ。よろしく頼む」
「マリオ・ロッシだ。何でも女の子の扱いが苦手で、苦労してるってジェームスから聞いているよ。イタリア人の俺に任せてくれ、色々仕込んでやるぜ!」
「クララ・シューマンです、よろしくお願いします」
俺が話を聞いて、気に入ったら雇って欲しいと言っている。給料も要らないと言っているのだが、護衛ならジェームズさんがいるから要らないんだよな。ただ、今の時点でマリオさんなら雇っても良いと思った。女の子の扱い方はぜひ教えて欲しい。それと、クララさんにも見覚えがあるんだよな・・・ああ、彼女が日本に来たのか。
「それぞれアメリカ、イタリア、ドイツから派遣された人員だな。司を脅すなんて、神が許しても篠ノ之博士が許すはずないのに、ここにやって来た。命知らずにも程があると思ってるんだがね」
ほんの少しだけ毒を混ぜながらジェームズさんが紹介してくれるが、俺も同感である。ただ、だからこその俺の部下にして下さいと言う事なのだと思う。涙ぐましい努力だとは思うが、人見知りの俺に三人の部下って言うのはなぁ・・・
それぞれCIAとSISMIとBDN所属だと紹介されたが、それ以前に知らない人間が近くに居るのは、人見知りな俺としては看過出来ない問題なのだ。全員断ると後で何があるか分からないから怖いし・・・役に立つなら雇うってスタンスで、少し仕掛ける事にする。少なくとも、マリオさんのスキルは絶対に欲しい。
「話を聞いてもらう為の機会を設けて欲しいって事でしたけど、雇ってもやってもらう事が無いんですよ。護衛はジェームズさんがいますし、ここの学園に入ってから、学園外に出たのが片手の指の数より少ないです。ただ、全員断るのも皆さんの面子があるでしょうから、マリオさんは雇っても良いと思ってます。俺は女の子の扱いが苦手で困ってますから、ぜひ教えて下さい。お願いします」
そう言うと、マリオさん笑顔で握手を求めて来たのでそれに応じる。ジェームズさんは立って俺の後ろに控えていたのだが、自主的にマリオさんもそっちに移動した。さて、クリスさんとクララさんはどう対応してくるかな?そう思っていると、クリスさんが苦笑しながら言って来た。
「なるほど、司くんが困っている事への対応ですか・・・では、私は日本政府を受け持ちましょう。かなりお困りとお見受けいたしましたが?」
「・・・よろしくお願いします、クリスさん。困ってましたから助かります。後、半島への対応も出来たらお願いして良いですか?」
そう言うと、笑顔で任せておけと言いながらハグして来たので、俺もハグし返す。そして、クリスさんも俺の後ろに回った。
束さんの全世界に向けての映像を見ても、対応が変わらなかった国が三つだけある。日本と半島だ。俺と美夜は自由国籍権を取得しているにも拘わらず、日本政府による干渉を受け続けている。全部では無くて、ごく一部の勢力だけだったので、俺と美夜は対応をどうするのか決めかねているのだ。
マスコミの取材に応じろとか、政治家のパーティーに出ろとか言われていて、全部無視しているのだが、ストーカーじみた執念深さでしつこく言い寄って来るので嫌になってくる。
IS学園に対する国際規約なんて初めから信用してなかったが、俺も美夜も日本人だから要請を受けて当然と思われていて、辟易していた所である。
半島は俺と美夜が日本人と言う事と、束さんの庇護を受けたと言う事で執拗に干渉して来た。お決まりの文言の後で、二国ともコアを寄越せと言って来るのでうんざりしている。クリスさんには是非がんばってもらおう。
「それでどうしますか、クラリッサ・ハルフォーフ大尉?瞳の色と髪の色が違うから、最初誰かと思いましたよ。マリオさんとクリスさんは、俺が出来ない事をしてくれますから喜んで雇いますけど、貴女はトラブルメーカーだから要りません。今後のご活躍をお祈り申し上げます」
そう言ってにこやかに微笑むと、クラリッサは涙目になった。心の動きが表情に出過ぎである。
「待って下さい!私は強いです。司さんを狙って来る人間を返り討ちにしますよ」
「・・・もしかして、ISを持ち込んでいるのですか?」
「はい、 シュヴァルツェア・ツヴァイクを持ち込みました」
後ろの三人が動揺しているのが分かる。俺だって、多分無許可で日本国内に最新鋭のISを持ち込んだと言われて頭が痛くなってきたが、そう言う事なら話は別だ。
「なるほど、そう言う事なら雇います。狙われる事は多分無いでしょうけど、備えるのは大事ですからね。これからよろしくお願いしますね・・・クララさん」
「ええ、よろしくお願いします司さん。敵には指一本触れさせませんから」
そう言って笑顔で握手を求めて来るので、俺も笑顔で握手し返した。国内で俺がISを展開すると、外野が足を引っ張りかねないので、こういう人員も大歓迎だ。
ジェームスさんの口ぶりから言って、断ったら何をして来るか分からないので雇うしかなかったのだが、軽い主導権争いのついでにこちらの要求を伝えておいた。後は少しづつ様子を見ようと思う。
***
全員を雇う事にしたのでお茶を頼んだ後に、ジェームズさんを含む全員でディスカッションを交わす。急造チームなので、得意な事とかが分からないと話にならないからだ。それと俺に対する質問にも答える、エターナル関連以外で話せない事など余り無いのだが、ISやユーとフィーに関する事など興味がある事が四人とも多く、それらの説明にかなり時間を使った。
余裕が有ったら、みんなの顔を見に行きたかったのに。そう思っている内に時間が過ぎて、遂に各国政府の人間との面会時間がやって来た。全員が配置について、最初に来る政府関係者を待つ。最初はイギリス政府の人間で、誰が来るかドキドキしながら待っていると、ノックが聞こえて来たので出迎えた。
扉を開けると男女二人で、おまけに良く知っている人達だった。
「よろしくお願いするよ、ジェームズ・オルコットだ。前から司とは友達だったから紹介は必要ないかな?」
そう言って、ドッキリ成功したぜとか言いながら俺に握手を求めているのは、さっき別れたジェームズ・ボンドさんで、苦虫を噛み潰したような表情で、頬を膨らませながらジェームズさんを見ているのはセシリアだった。
「ジェームズお・じ・さ・んは、わたくしの叔父ですの・・・こんな性格ですので、司さんが迷惑してないか心配ですわ」
そう言ってセシリアが拗ねているので、お茶を頼んで席に案内した後で、改めてセシリアに言った。
「おはようセシリア、今日が本番だからみんなに会いたかったんだけどな。セシリアにこの時間に会えて良かった。怪我しない様に気を付けて楽しんで、後で話を聞かせてくれ」
そう言うと、セシリアは嬉しそうにはにかんだ。
「わたくしも試合前に司さんに会えて良かったです。絶対良い成績を残しますから、楽しみにしていて下さいね」
そう言って、少しだけ赤くなりながら答えてくれたのだが・・・ジェームズさんがイイ表情でサムアップしているので台無しだ。それに気が付いたセシリアに、手の甲を抓られながらイギリス政府代表のジェームズさんとの話し合いがスタートする。
ただ、こういう人員配置をしてくれたイギリス政府には、俺は内心感謝していた。
一週間に一話くらいは更新したいんだけどなぁ・・・