901分枝系統 80013世界 02795726時間断面 ISの世界 【改定作業中/第一章完結】   作:白鮭

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がんばって、のそのそ書いていきますので、これからもよろしくお願いしますね。


嫌な現実と連続攻撃

貴賓室に戻ると、ジェームズさん、クリスさん、マリオさんがニヤニヤしながら待っていた。ちくせう、出入り口が一つしか無いからセシリアに思いっ切り抱き付かれたまま、アリーナに移動したのは見られてるんだよな。

 

「良くやった義弟、で、結婚式はいつだ?」

 

ジェームズさんは俺に近づきながら、すんごい嬉しそうに聞いて来る。言いたい事は分からないでもないけど、ここでの年齢は十五って事になってるから無理だし。

 

「結婚って……セシリアが俺を受け入れるかなんてまだ分かりませんよ。それに俺は、二股かけてるクソ野郎ですよ? ……美夜にもセシリアにも合わせる顔が無いですよ」

 

そう言いながら、ため息を付く。ここでセシリアの事は好きですよ? とか言いながら逃げるのは簡単だが、あれだけ俺の事を思っていたセシリアに対してそんな事はしたくないし、この人たちは全員が諜報機関の人間だ。

どこかで必ずバレるから、嘘を付く意味が無い。それに、ジェームズさん経由でセシリアに話が事が伝わったら、今度こそどうなるか……お仕置きだとか言って俺をボコボコにするのはまだ良いが、わたくしが至らないせいだとか言って泣かれたら、その方が俺の心に来るものがある。

 

「……なあ、司、まさか嫁が二人で済むなんて思ってないよな」

 

「は?」

 

ジェームズさんに真顔で言われて、素で返事を返してしまった。いや……何言ってるんだ?

 

「マリオ、司の嫁がうちのセシリアと美夜だけだったらどうする?」

 

「そんなの抗議するに決まってるだろ? 嫁が美夜だけだった場合、篠ノ之博士の件があるから何も言えないが、セシリアの場合はイギリスに抗議出来るしな。司と美夜の成果を独り占めした挙句に、男性IS搭乗者の子供までイギリスの独占とか言われたら……まあ、色々あるだろうな」

 

それを聞いてクリスさんの方を見ると、当然だと言う顔をしながら肯いている。

 

「いや、え? は?」

 

ジェームズさんもこれから言う事には思う所があるらしく、顔を顰めながら目線を逸らして言って来た。

 

「例えは悪いが、優秀な競走馬の子供の親が二頭とかありえない。俺も自分のかわいがってた姪っ子を競走馬扱いしてるクソ野郎だが、この仕事はそう言う事も必要だからな。

面談にしたってISコアの事もあるが、司の人となりを見る事も重要だと思ってる奴が大半だぞ。来年に司と織斑くん好みの女の子を、どれだけIS学園に送れるのかは重要な要素だからな……二年次のクラス替えの時期は、先生方に接待攻勢とか脅迫とかあるぞ」

 

山田先生は、今までの話が完全に男目線だったので困った様に聞いていたが、いきなり自分に関係のある話になったので、ものすごい勢いで慌てている。

 

「もしかして、私も巻き込まれるんですか!?」

 

山田先生がそう言うと、早速マリオさんとクリスさんが山田先生にちょっかいを掛けに行く。冗談っぽく振舞ってるけど、あの二人は本気で自分の国の人間を、俺と一夏のクラスにねじ込むつもりだろうな。山田先生がんばれ。

そんな感じで半分冗談、半分本気の話をしているのだが、雑談に乗ってこない人がここには一人いた。

 

「クララさん大丈夫? 調子悪いなら少し休んでて良いよ。次の面会相手は台湾だし、めんどくさい事は起きないと思う。俺は動けないからラウラの様子を見てきて、これは命令だから」

 

俺がそう言うと、少し躊躇した後に頭を下げて部屋から出て行った。何も無いとは思うけどラウラの事も心配だし、後で様子を聞いておこう。

 

「優しいですな。ああいう子が好みですか?」

 

山田先生をマリオさんと一緒になってからかっていたクリスさんが、何時の間にか俺の横に立って話しかけて来た。俺の懐に入ろうとしているマリオさんに対して、クリスさんは一歩引いて助言者に徹しようとしているんだよな。

ジェームズさんもそう言う事をしてくれているけど、あの人は俺が身内扱いし始めているから、部外者でこう言う事をしてくれるのはありがたい。ただ、アメリカに手を借りると後が怖そうなのがな。

 

「思春期のガキが言う事じゃ無いですけど、何でも恋愛に絡めないで下さいクリスさん……と言うか、嫁を増やせとか本気ですか? 女尊男卑主義者に殺されそうなんですけど」

 

「最近大きな顔をしているのは事実ですが、声が大きいだけの人間が大半ですよ? 少なくとも現場でISを使っている人間は現実が見えていますから。

企業のテストパイロットの思想は分かりませんが、我々が圧力を加えれば黙ります。現代社会は金が無ければ何も出来ませんから。嫁を増やすのが嫌なら、生殖細胞の提供という線もありますよ」

 

耳触りの良い事しかない、胡散臭い提案を考えるが、感情的には嫁を増やすのは嫌だ。良く知らない人間にウロチョロされるのは、色々キツイものがある。

それと、生殖細胞の提供って多分不可能なんだよな。体から流れ出た血液がマナに帰るんだから、アレも多分マナに帰るんじゃないのか? そう考えると、ユーフォリアが生れたのって本当に奇跡なんだな。

 

「不用意に敵を作りたく無いけど、どっちも嫌な提案だね。それに忘れてるかも知れないけど、束さんにどうやって気に入られるつもり? 俺の関係者だと俺と美夜は別格扱いで、それに続いてセシリアと簪と乱音だけだよ? 他の奴なんて雑音扱いしてるから、排除されて終わりだと思う」

 

「この件に関する協力はありませんか……」

 

話を聞いてクリスさんはため息を付いているが、ため息を付きたいのはこっちの方だ。

 

「そう言う本音に近い話を聞かせてくれるのはありがたいけどね。学園で知らない女の子が近づいて来るのは、クラスのみんなが防いでくれるし。難しいんじゃないかな?」

 

俺がそう言うと、クリスさんはにやりと笑う。

 

「では司くんの気に入る女の子を用意して、篠ノ之博士を説得してもらいましょう。アメリカは多民族国家ですから、一人くらいは好みに合う子がいるでしょう……時間ですね、配置に着きます」

 

言いたい事だけ言ってクリスさんは廊下に出て行った。まあ、忠告として有り難く聞いておこう。しかし、美夜とセシリアは覚悟を決めるにしたって、簪に乱に束さんとクロエだって俺にとって大切な存在なんだから、彼女たちの幸せを考えた方が建設的なのに、知らない女の子を増やせって言われてもこっちが困る。

絶対にみんなを優先して、後から押し付けられた子から俺が一歩引くからだ。将来的にトラブルの元にしかならない提案なんて、聞く意味が無いとは思うんだけどな。

そんな事を考えながらソファーに座っていたら、ノックの音が聞こえて来たので出迎えに行く。扉を開けると、男性二人に連れられて、何故か乱音も一緒に部屋に入って来たのだった。

 

***

 

「では失礼します。さっき言った事は考えておいてください。我々台湾の国民は、聖さんが来るのを楽しみにしてますので……では、後は若いお二人にお任せしますよ」

 

そう言って台湾の担当者は帰って行った。話した事と言ったら俺と担当者の初顔合わせと、中国より台湾の事を優先してくれる俺が結構人気らしいので、夏休みにでも乱と一緒にテレビに出て欲しいって要望くらいだった。

そして当然の様に、乱を残して担当の人は帰って行った。お見合いじゃ無いんだから、止めて欲しいんだけどなぁ……

 

「おはよう乱、調子はどうだ?」

 

「まあまあね。私は結構調子良いんだけど、鈴おねえちゃんが落ち込んで大変なのよ」

 

そう言いながら、乱まで暗い顔をしている。これから試合だって言うのに、このおねえちゃん大好きっ子が……

 

「今出来る事を言え、出来る事ならしてやるから」

 

「うん……じゃあ、端っこ寄って……ん~~~……」

 

そう言ってソファーに座っていた俺の方に席を移して、ぺったりと俺にくっついた。

 

乱はスキップしてIS学園に入った天才だと俺は思っているが、強気な外面的性格に反して気遣いが出来て、人を良く見て色々言う事がある。そのせいでキツイ性格だと思われて陰口を叩かれる事もあるみたいで、ストレスが溜まったりすると俺にくっついて来る事が今までにもあったのだ。

 

目標にしてた鈴が負けたんだから、ショックだったんだろうな。そう思って、取り敢えず乱の好きな様にさせてあげる…………さっきまでセシリアの事について悩んでいたのに、今、乱に対してこんな事をしている。

その節操の無さを思うと色々な事を考えてしまうが、今は乱がリラック出来る様にいつも通りの俺を演技する。そんな感じで乱と過ごしていたら、少ししてから乱が至近距離で俺の顔を見つめながら言って来た。

 

「…………あのさ、悩んでるの隠さなくて良いんだよ? セシリアが私と美夜と簪に、さっきあった事を説明したから全部知ってるし」

 

「……………………」

 

流石に身内扱いしている乱にこう言う事を言われると、落ち込んだ内心が表に出て来る。

 

「みんながこの状態で仕方が無いって認めてるんだから、良いんじゃないの? 困ってるならみんなで考えれば良いじゃない。私も本国から司と美夜を取り込む為だからって、色々言われたんだけどね。でも司と知り合えたから、私は良いんだ……」

 

乱は俺にくっつきながらも、照れながらも嬉しそうに言って来るが、反対に俺はため息を付く。

 

「みんな俺に甘すぎだろ。普通一夏みたいに取り合って、滅茶苦茶になるものじゃないのか? あんなふうに争うのは見たくないけど、俺に都合が良過ぎてダメになりそうだ」

 

「だってそうしないと、美夜と一緒にどこかに行っちゃって、帰ってこなくなっちゃうでしょ? …………一番下の引き出しの、鍵のかかった小箱」

 

身体が強張った。乱にくっかれてなかったら、或いはバレなかったかも知れないが、今の動きで乱は確信したみたいだ。

 

「絶対に私は他の人に言ったりしないから。見ちゃったのは事実だし、セシリアが言ってた問題がこの事だって直ぐに分かった。あれを見たら絶対に美夜にかなわないって分かったけど、私だって司の事が好きだし……それだけ!!」

 

そう言ってソファーから勢いよく立ち上がって、少しだけ笑いながら俺を見る……ので、着替えて来たらしい制服の襟をつかんで、ソファーに逆戻りさせる。さっきまでは乱が俺にくっついていたが、今度は俺が乱にくっつく番だ。

 

「…………他にこの事を知ってる人はいるのか?」

 

「あはははは……シャル……かな?」

 

「「……………………」」

 

流石にこれは許容出来ない。シャルが追い詰められたら、この件を使って脅迫してくる可能性があるかな? ……そう考えつつ、取り敢えず乱に聞いてみた。

 

「乱、俺の事どう思ってる?」

 

乱は狼狽えつつ、テレテレしながら答えてくれる。

 

「勿論好き……って事じゃ無いよね……宇宙人?」

 

クロエも乱も宇宙人って言うのは何故なんだろう……その辺の良く分からない事を疑問に思ったが、寝言を言って来る位なら取り敢えずの心配はなさそうだ。

 

「証拠があるなら兎も角、無いなら俺が宇宙人とか言ったって相手にされないだろ……多分」

 

乱は身内だから怒って終わらせるが、シャルは最悪行方不明になってもらう必要がある。一夏には悪いが、俺たちの安全優先だ。と言う訳で、乱のほっぺたを伸ばしてやる事にする。

 

「モチモチだな」

 

いふぁい、いふぁい(痛い、痛い)……まうひまへんかぅあ、ゆうしへくだふぁい(もうしませんから、許して下さい)

 

反省したかを聞くと、コクコク肯いているので手を放してやる。

 

「言いたい事は山ほどあるが、トーナメント中だから五月蠅い事を言うのは止めておく。ただ、危ない橋はもう渡るな。乱に何かあると、俺は悲しいから」

 

「うん、ごめんね」

 

乱はほっぺを押さて恥ずかしそうにしているが、ションボリしながら謝って来るので、これでお仕置きは終わりにする。それと、セシリアから話を聞いたと言っていたので、改めて確認する。

 

「簪も俺に問題がある事を聞いたんだよな? ……分かった、全員(セシリア、簪、乱)にトーナメントが終わったら説明する。後の事は、俺の話を聞いてから判断してくれ。本当の事を言うからさ」

 

「うん……」

 

「もう許したから大丈夫だよ。これから試合なんだから、リラックス出来る様に協力する。やって欲しい事はあるか?」

 

そう言うと、乱はやっぱり俺にくっついて来た。乱は特に喋らないままくっついて甘えていたが、そろそろアリーナに移動しないと不味い時間になると動き出した。

 

「セシリアが戻ってきた後に話を聞いて、私も羨ましかったのよ。司を独り占めに出来るしね。じゃあ、行って来るわね……後、簪も楽しみにしてたから、私やセシリアみたいに一杯優しくしてあげるのよ!!」

 

そう言って、乱は部屋から出て行った。俺が身内扱いをしている子を優先しているのだから、次に来るのは日本なのだが、これまでのパターンから考えると簪が来るだろう。そう思って待っていたのだが……

 

ノックの音がするので日本の担当者を出迎えに行くと、簪の姿が見えなくて、代わりに三人の男性が入って来る。

その内の一人にだが見覚えがあった。確か俺と美夜にしつこくパーティーに出ろと、上から目線の招待状を送って来た政治家の一人だ。今まで相手にしてなかったのだが、ここまで乗り込んで来たのか……めんどくさい事になりそうだと、俺は話が始まる前からげんなりしてしまった。

 

 

 

 

 

 


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