901分枝系統 80013世界 02795726時間断面 ISの世界 【改定作業中/第一章完結】   作:白鮭

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本日一本目です。


終わりの始まり

急いで美夜とセシリアの部屋に行くのだが、近づくにつれてマナとエーテルが有りえないレベルで充ちているのが分かる。普通、神剣使い同士が大規模な戦闘でもしない限りこんな事にならないし、そもそもこの分枝世界には、マナもエーテルも使う技術が無い。

その事を不安に思いながら、扉をノックをして鍵を開けてもらう。出て来たのは落ち着きのない美夜と、部屋に充満しているマナとエーテル、そして青白い光を放ちながらそこに固定されているらしい門の存在だった。

 

「司どうしよう……セシリアが消えた後、急に門が現れて消えないよ。普通こんな事はありえないのに」

 

俺も目の前の門を見て唖然としてしまった。門と言うのは、分枝世界や時間樹を移動するのに用いる通路の様なものなのだが、兎に角不安定な存在なのだ。

使う場合も時間と出る場所が決まっているので、タイミングを合わせて神剣を使って門を開かなと使えないし、時間にしても百年単位で待たないと使えない場合もあるが、逆に唐突に完全に開いた挙句、運の悪い人間を門の向こう側に移動させてしまったりもする。

渡りが出来るエターナルにとっては不便極まりないのだが、その代わりに長距離を移動出来る門もあるから一長一短だ。

ただ、以前から門があるなら生活していた美夜が気が付かないはずが無いし、この部屋に遊びに来た事のある俺が気が付かなかったのもおかしい。

 

「門が新しく出来たのか。助けに行くのには都合が良いけどな。エトランジェ(勇者)として召喚されたのなら、永遠神剣と契約しているだろうし、他の時間樹に移動したのだとしたら……」

 

口には出さないでいるが、確定している最悪の事態を思って俺も美夜も沈黙した。セシリアを助けに行くとしても、ここに残るとしても、失う事が確定しているからだ。

 

「みんなに説明したらここを出るよ。セシリアを助け出して連れ戻す事に全力を出す」

 

「…………うん、そうだね。今は助けるの事だけを考えよう」

 

そうして、俺と美夜は関係者である簪、乱、束さんとクロエ、そして美夜の希望で篠ノ之をセシリアの部屋に呼ぶ為に行動を開始した。

 

***

 

取り敢えずいい時間だと言う事で、二人で食堂にやって来たのだが、食事が終わった後の生徒もなんとなくみんなで寄り添っている様だった。

原因は今テレビでやっているワイドショーにある。普段は自衛隊の事を貶している最大野党が誤射を食らったせいで、IS学園所属のISと学園生を防衛の為に一時的に所属を変えろとか無茶な事を言いだしたせいらしい。

 

「頭の悪い事言ってるな、訓練未了の人間なんて危なくて使える訳無いだろ。しかも学園生の半分は外国籍なのに」

 

テレビを見ながらそんな事を呟きながらみんなを探すと、俺たち以外のいつものメンバーである簪、乱、ラウラが、食事を終わらせた後にお茶を飲みながらテレビを見ているのが目に入る。

 

「おはよう三人とも、ここでのんびりしてても良いのか? トーナメント二日目だろ」

 

「おはよ、司には通達が無かったの? 今日は休みよ。昨日あんなことがあった上に、学生を戦力に組み込むなんてアホな事言い出した連中がいるから、先生たちも情報収集に走り回ってるみたい……日本の政治家って本当に大丈夫なの?」

 

呆れている乱や、苛立ったようにテレビを睨みつけているラウラなど、外国の生徒は大体が日本の政治家のバカな発言に呆気に取られている様だったが、日本人の簪などは不安そうにテレビを見つめていた。

 

「まともなのもいると思うけど、どうしようもない連中が目立つのはどこでも一緒だろ? あいつら自分の発言すらすぐに忘れるニワトリみたいな奴らだから、まともに相手にするのがバカバカしくなって来るよ。

ラウラも大丈夫そうで良かったよ、ISのトラブルがあったって聞いてたから心配してたんだ」

 

乱のあいさつに応えながら、ラウラに声を掛ける。俺が裏で動いた結果だから茶番も良い所だが、情報の入手方法も含めて言う訳には行かないからな。

 

「心配をかけたな、もう大丈夫だ。勝利に対する執念と言うのを見せ付けられた。一夏に負けたとは思わないが、一夏()には完敗したからな。司に周りと仲良くしろと言われたし、少しづつ強くなる対する為にみんなと仲良くなるつもりだ」

 

「強くなりたいから仲良くしたいって言うのがラウラらしいな。切っ掛けは何でも良いんだから、みんなと仲良くな」

 

そして、乱とラウラに声を掛けた後、俺の方をじっと見ている簪に声を掛ける。様子がおかしいんだけど、何かしたかな? 心当たりが無いんだよな。

 

「簪? どうかしたか?」

 

「ううん、何でも無いです……あの、どうしたんですか?」

 

「いや、みんなにちょっと告白する事があってな。付いて来てくれないか? 話したい事がある」

 

乱などは最初に告白と言う言葉を使ったせいで照れていたが、俺の表情と雰囲気を感じ取って静かになる。

 

「待って下さい!! ここで話せば良いんじゃないですか、行かないで下さい!!」

 

周りに人がいるにも拘らず、大声を出して俺を引き留める簪と俺に周りの目が集中するのを感じ取るが、俺だって余裕が無いのだ。

 

「……簪は何か知ってるのか? 兎に角セシリアと美夜の部屋で待ってるから、用意が出来たら来てくれ。俺は他に聞いて欲しい人を呼んでくるから」

 

思わず簪が掴んだらしい俺の服の裾を放してもらってから、人の居ない所に移動する。篠ノ之に関しては美夜に任せているし、俺は束さんを叩き起こして電脳空間経由で(秘密の世界)に来てもらう為に、取り敢えずモーニングコールを入れる事にした。

 

***

 

美夜が廊下で四人を待っている間に、ユーに頼んで電脳空間に通じる門を作って貰う。

 

『ユー、本体を(秘密の世界)の空に出しておいてくれ。それと話はユーの背中でする』

 

『……そこまでしなくても良いのでは? 彼女たちは普通の人間です。あまりにも力を見せ付けると、排斥されてしまう可能性があります』

 

『みんなには本当の事を言いたいからな。心残りが無いようにしたい』

 

『…………司さまは人間を信用しすぎです』

 

声に私は心配なんですと言う感情が籠っているのを感じて、俺は苦笑しながらユーを撫でる。

 

『俺を好きになってくれた子を信用出来なくなったら終わりだよ。人間を信用してるんじゃなくて、俺に思いを伝えた子を信じてるだけだ。さて、みんな来たみたいだから出迎えるか』

 

そう言って電脳空間を出た。束さんは叩き起こしてこっちに来る準備をしているたいだし、クロエにも来てもらう。俺の正体を教えるのはこれが全員で、後は静かに居なくなる予定だ。

 

部屋から廊下に出ると、美夜、簪、乱、ラウラ、篠ノ之の五人が待っていた。

 

「ここに居る子は全員揃ったよ。後は束さん待ち?」

 

「ああ、電脳空間経由で(秘密の世界)に直接呼び出した。もう少ししたら来ると思うから、中で待っていてもらおう」

 

他の子には話をする間を与えないまま部屋に入ってもらうと、全員が部屋の中の状況に絶句していた。

 

「……なに、これ……」

 

辛うじて乱だけは声を出せたみたいだが、他の子はただ門を見ているだけだった。

 

「今朝セシリアがエトランジェ(勇者)として召喚された後、いきなり出現した門だ……それも含めて全部説明するよ。簪、触ろうとするな!」

 

そろそろと門に向かって手を伸ばしている簪の手を慌てて取って、慌てて体ごと引き寄せる。体勢的に抱きしめているような形になって、周りの視線が生暖かくなったような気がするが、俺は悪くない。

 

「マナを扱えない普通の人間が触ると、狭間の領域に吹き飛ばされるか、最上の結果だとしても他の異世界……俺たちは時間樹って呼んでるけど、別の時間樹に転移して、普通の人間だとこっちに戻って来れなくなる。もう一回言うけど、絶対に触るなよ」

 

多分この先に続いているのは別の時間樹だから、説明は間違ってない。詳しく説明する意味は無いと思うので、分枝世界と時間樹の関係性は言わなくて良いだろう。

そう言ってため息をついた後、みんなを部屋の床に光で書かれている円の方に連れて行く。

 

「こっちの光の円は俺とユーの隠れ家を兼ねた場所で、これから話す事が嘘じゃ無いって証明になると思う。美夜、俺が最初に転移するから、厳重に戸締りした後で最後にこっちに転移して来てくれ」

 

そう言って最初に電脳空間に飛ぶと、既に束さんとクロエが待っていた。今まで個人間秘匿通信(プライベート・チャンネル)で話す事で済んでしまっていたのでここに呼ぶ事は無かったのだが、初めて見る電脳空間上とは言え違う世界の姿と、何より空中に浮かぶ次元鯨の姿に圧倒されて、二人共上を見上げながら口をぽかんと開けてユーの姿を見ていた。

 

「つかちゃん…………こんな凄いの束さんに隠したままって言うのは酷いじゃないか!! あの鯨は何!? 何であんなに大きいのがいるの!?」

 

束さんでもこんな驚くことがあるのかと、少し面白く感じながらも、別に隠す事じゃ無いので正解を口にする。

 

「あの次元鯨がユーの本体ですよ。こっちのユーは(ウィル)を分割した状態で、俺に付いて行きたいって心が形になったものですから……みんなもこっちに来たか。ユー、歓迎のあいさつをしてあげなよ」

 

「ボェェエエエエエエエエエエエエェェェェ!!!」

 

全員が驚いて顔を上げる中で、俺とユー、そしてこう言うのが大好きなフィーだけが、みんなの顔を見て悪戯が成功したと笑っていた。

 

 

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