901分枝系統 80013世界 02795726時間断面 ISの世界 【改定作業中/第一章完結】   作:白鮭

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本日二本目です。


闇を抱える心

みんなが驚いた所を笑っていたらポコポコ叩かれ始めたので逃げ回る。そして緊張が解けた所で、新しい光の円をユーに頼んで作って貰う。

 

「この先で話すよ、付いて来てくれ」

 

そう言って光の円を通ると、そこにあるのは中庭に巨大な木を生やしたIS学園、ただし未完成品だ。

 

「IS学園の一部施設? 寮とアリーナと整備施設しか無いけど……ここはどこなの、司?」

 

「ユーの背中の上だよ。時間樹間を移動する為の拠点として作ってたんだけど、時間が足りなくて全部作れなかった。寮とISの関連施設しか無いけど、生活する分には問題無いから良いんだけどな」

 

「…………これだけすごい物とか見せられたけどいい加減答えて、司と美夜って何者? それと一番大事な事だけど、セシリアがエトランジェ(勇者)として召喚されたってどういう事よ」

 

束さんとラウラとクロエは新しい情報を得ようと黙って聞いているし、簪と篠ノ之は圧倒されて無言になっている。結局は物怖じしない乱がさっきから話を続けているが、みんなも聞きたいだろうから話を始める事にする。

けど、その前に……俺は聖杯を使ってグラウンドに芝生を生やして、人数分のテーブルとイス、それとログ領域からデーターを読み込んで、一流店の紅茶とケーキセットを作り出した。

 

「お茶でも飲みながら話そう。この前一緒に雑誌を見ていた時に、乱が行きたいって言ってた店のケーキセットだよ」

 

聖杯を良く知っている美夜以外は、おずおずと席に座ってお茶を飲んでいるが、話すタイミングが見つからないのか、譲り合っている様なので話を始める。

 

「まず、俺と美夜は人間じゃない。エターナルと言う存在だ」

 

「エターナル、ですか?」

 

こう言う事に一番興味がありそうな簪が、俺の方を見ながら真剣に受け答えを始めた。

 

「ああ、俺は前の世界で死んだ後に行方不明になった俺の魂が、長い間高濃度のマナに晒されていた為に、スピリットに近い存在からエターナルに成った元人間だし、美夜はその前の世界で、転生を司っていた神の仕事の補佐をしていた所からエターナルに成った存在だ。ある条件に合うと、色々な生き物からエターナルに成るんだ」

 

「美夜は天使? 司さんも死んでいたって……条件って何ですか?」

 

俺は”赦し”と”聖杯”を取り出して、”聖杯”をテーブルの上に、”赦し”は壁を作ってそこに立てかけた。

 

「第三位以上の上位永遠神剣と契約する事だ。そうする事でエターナルに成る。そしてエターナルに成ると、メリットとデメリットが発生するんだ。

メリットもデメリットも色々あるけど、俺達に関係がある強烈なデメリットは一つだけだ。時間樹間を移動したら、この世界の元になっている時間樹に記録されている、エターナルの事が全て消える。

つまり、この世界に居た俺と美夜の事が全て無かった事にされるんだ。ただ、矛盾が無い様に俺とか美夜がやった事は別の誰かがやった事になって、なるべく変化が無いようになるらしいけどな」

 

「なんですかそれ!?」

 

「どういう事よそれ!? ふざけないで!!」

 

「つかちゃんとみゃーちゃんが転移したがらなかった理由はそれか。でも、分枝世界間だったら問題無いんだよね?」

 

束さんは俺と美夜から情報を得ているから、聞いて来る事が具体的で厄介だ。誤魔化しても意味無いから、本当の事を言う。

 

「俺と美夜がエターナルとして渡りをしたのは、今回が初めてだったんですよ。勘違いをしたままここから出て、俺と美夜以外のみんなから俺達の情報が消えたらどうするんですか」

 

「失敗したら全てを失うし、別に用も無いのに危険は冒せないか。でも別の世界は見たい」

 

時間があればそれでも良かったんだけど、今の状況下だと時間が足りないから無理だ。

 

「すいません、一刻も早く門を通らないとセシリアが危険なんです。孤立無援でどうにかなる世界だったら良いんですけど、一方的に召喚された以上は最悪を想定しておかないと」

 

そう言いながら話に入ってこないラウラの方を見ると、何時の間にか(ウィル)状態のユーを抱っこしながら、黙って話を聞いていた。俺がラウラの方を見ていると、疑問に思っていたらしい事を聞いてきた。

 

「司、いったい何歳だ? ……いや、何年訓練を続けて来たんだ?」

 

ラウラらしすぎる質問で、この状況下なのに笑ってしまった。この子は全然ブレないな。

 

「こっちの時間と同じかどうかは分からないけど、約五百年訓練を積んで来たよ。俺から見たらラウラなんて、ヒヨコ以前の卵の状態だ」

 

「そうか、納得出来た。こっちに帰って来たら、是非訓練に付き合ってくれ。司に負けない位に強くなりたいからな」

 

「……戻ってくると思ってるのか?」

 

「当たり前だ、セシリアを連れて帰って来るに決まっている。お前はそう言う男だ」

 

友達からそういう評価をされるのが、恥ずかしいと同時に誇らしい。だからこう言う風に返していた。

 

「良いぞ、ボコボコにしてやるから覚悟しておきな。俺だって先生(トークォ)にまともに勝った事が無いんだ。目標って言うのは、強くて大きいほど良いからな」

 

「…………そうか、楽しみにしている」

 

そう言った後で、この場ではラウラはみんなの聞き役に徹していた。それとは別に、ユーの事は手放さなかったのだが。

 

「俺と美夜の事は良いとして、セシリアの事についてだ。エトランジェって言うのは永遠神剣によって異世界に召喚される人間の事で、物凄い力を持っている為に召喚された後に隷属させられて、兵器扱いされる事が多いんだ。

呼び出された以上は永遠神剣との契約は止められないけど、隷属される前に取り戻して、出来たらこの世界まで戻って来たい」

 

話している俺の表情と、聞いている美夜の表情を見て、そんなに簡単に事が済むとは思わなかったらしくて、乱が質問して来た。

 

「難しいの?」

 

「少し前にトラブルがあって、俺は命を狙われているんだ。相手は俺達より格上で、どちらかが死ぬまで終わりが無い。セシリアはそれに巻き込まれたんだ。

そう言う背景があるから、素直に逃げられるとも思えないし、取り戻して直ぐに逃げるって言うのは希望的観測がかなり入っている。それに、それが全部上手く行ったとしても、ここまで追って来て世界ごと消滅させる事が出来る相手だ。矛盾するようだけど、確実に止めを刺さないといけない相手なんだよ」

 

「どんな相手よ、それ!!」

 

「ロウ・エターナル、”最後の聖母”イャガ、今までにも色々な世界を食った、おっかない相手だよ」

 

「……………………私じゃ司の役には立たないね、そんなのが相手じゃ」

 

「セシリアを連れて帰って来るから、それを待ってればいいよ」

 

乱は悔しそうにしていたが、それでも肯いてくれた。

 

次に質問して来たのは意外にも篠ノ之。今の話を聞いて混乱してるみたいだし、束さんに色々聞きたい事もあると思うのだけど、それでも別の事を質問して来た。

 

「私が呼ばれた理由は? 姉さんも含めた四人がここに居るのは分かる。ラウラは最近司たちと仲が良いからそれも分かる……散々司と美夜に迷惑を掛けている私が、ここに居る意味が分からない」

 

「私が呼んだんだよ。箒は不器用だから私と司が消えて、セシリアも居なくなった後どうなるか心配なんだよ。ごめんね…………一緒に居られなくなっちゃってごめんね」

 

そう言って、美夜が篠ノ之に抱き付いた。篠ノ之にしてもさっき美夜の言った意味を理解するにつれて、不安そうな表情になって行くが、それでも寂しそうにしている美夜の為に黙って抱きしめていた。それを見ながらみんなの気持ちが固まるのを待っていると、簪が質問して来た。

 

「あの……セシリアを助けに行くのは二人だけですか?」

 

「そう…… 「つかちゃんと、みゃーちゃんと、束さんと、くーちゃんだよ。そうだよね、つかちゃん!!」

 

いきなり束さんが割り込んで来て、捨てられた子犬のような眼で俺を見ている。そう言う事にしたいらしいけど、束さんは天災だけどただの人間だからなぁ……聞き届けてくれるかは分からないけど、説得するだけしてみる。

 

「セシリアがエトランジェ(勇者)として召喚されたって事は、戦いがある世界だって事です。危険だから連れて行きたくないんですよ。イャガの件だってあるし、俺と美夜でも消滅する可能性がありますから。

それに時間樹間を移動したら、超絶コミュ障時代の束さんに戻るんですよ? 戦いながら、昔の束さんの相手なんて出来ません」

 

ちゃんとダメな理由を言って説得したのも拘わらず、椅子に座っている俺の方に回り込んで来て、全力でしがみ付きながら駄々を捏ねている束さんを見ていると、とても織斑先生と同い年に見えない。でも先生に大見え切ったしなぁ……

 

「良い子にしてるから連れてってくれないと嫌だ!! お願いだよつかちゃん、くーちゃんも行きたいよね!?」

 

「はい、司さん。お願いします」

 

「…………ダメです、連れて行けません。分かって下さい、二人を危険な目に合わせたく無いんです」

 

そう俺が言った瞬間、束さんの目が据わった。

 

「ふーん……そう言う事を言っちゃうんだ…………じゃあ、つかちゃんが帰って来るまでは、これを全力起動させて待ってるからいいよ。後の事は束さん知らないからね」

 

不貞腐れた態度を取った束さんが電脳空間上に展開したのは、鎖が巻き付いた永遠神剣を青いクリスタルに突き刺して一体化している物だが、それは俺が絶対に作るなと、束さんに釘を刺していたシロモノだった。

 

「マナ・エーテルサイクル機関は作るなって言ったよな!? お前、これは文明を破壊する装置だって話しただろう、何やってんだ!!」

 

「だって、こうでもしないとつかちゃんは私を見てくれないじゃないか!? つかちゃんは、私にはずっと一線を引いてる感じがするのはどうして!? 私は他の子と一緒に扱って欲しかったのに、私一人だけ除け者にしてた!! つかちゃんの気を引こうと色々したのに、全然私の方を見てくれなかったじゃないか!!」

 

興奮して肩で息をしている束さんを見て、全員が硬直してしまった。俺だって束さんがそんな思いを抱いているなんて思わなかったのだ。束さんは行動が読みづらく、冗談か本気か分からない状態で抱き付いて来たりしていたし、何より俺自身が、”天災”という名に畏怖と敬意を覚えていた。

だから、口では束さんの事を恋人だと言ったりしていたが、それらしい行動を全然した事が無かった…………正直に言うと俺の能力目当てで、そんな気は束さんには全然無いと思っていたのだ。

 

「…………俺は束さんの事を尊敬してたけど、束さんはあくまで俺の能力目当てだと思ってたよ。束さんの気持ちを分かってなかった」

 

言った瞬間に力いっぱい殴られて、五メートルは飛んだ。止めようと思えば止められたが、束さんを蔑ろにしていたのだから、このくらいは甘んじて受けようと思う。人間なら即死するけど。

そして、俺が倒れている所にウサミミを激しく動かしながらやって来て、制服の襟を掴まれて引きずられていく。

 

「私がつかちゃんを好きだって事を証明する。子供は何人が良い? バカウサギって呼ばれてるくらいだから、私の体を改造して、一気に六人くらい産めるようにするから。取り敢えず部屋に行こう? 私は処女だけど、体のスペックは高いから何でもしてあげるよ」

 

「ちょ!? 待ってくれ!!」

 

そう言った瞬間、引きずられて倒れていた俺に束さんが圧し掛かって来て、俺の顔を完全に光の消えた目で見つめて来る。

 

「待ってくれ? せっちゃんの為の時間は取れても、私の為の時間は取れないの? じゃあ、今ここで殺してよ。こんな世界に閉じ込められるくらいなら、つかちゃん殺してよ。もうこんな所に居るのは嫌、目の前に可能性を見せ付けられたのに、それを取り上げるくらいなら殺してよ」

 

物凄い力で押さえ付けられながら、圧し掛かるように体を密着させて、俺の顔を見ながらそう呟いて来る。束さんが世の中に不満を持っていたのは知っていたけど、ここまで心に闇を抱え込んでいたとは知らなかった。

束さんに出会って一ヶ月くらいなのに、材料の提供だけで独力でマナ・エーテルサイクル機関を作ったと言うのが信じられないが、ここまで出来る束さんをこの分枝世界に残しておけない。

 

実はマナ・エーテルサイクル機関の先の技術に、永遠神剣を意図的に暴走させて極大の爆発を引き起こす、マナ消失と言うものが存在する。技術文明が発達した世界で言う所の核兵器みたいな物だが、マナ消失の方が危険性は上だ。

何しろ、マナ消失を引き起こすと世界全体のマナの総量が大幅に減るのだ。これを主に利用しているのがロウ・エターナルだと言えばどれだけ危険かは分かると思う。

 

マナ消失で完全に分枝世界を破壊した後に、その世界を構成したマナを回収して行くのがロウ・エターナルの基本戦略だ。そして、心に闇を抱え込んだ束さんの技術は、それを開発できる一歩手前まで来ている。俺は分かってたつもりだったけど、それでも”天災”を甘く見ていたらしい。

 

「…………分かった、束さんを別の時間樹に連れて行く。記憶が無くなった後の事を考えると、トラブルしか起きないと思うけど。他の奴に束さんを任せると、世界全体を巻き込んで自爆しそうだしな」

 

「……今日の所は許してあげる。でも、私を見捨てたら許さないから」

 

そう言って俺に抱き付いてキスをした後はなれると、大喜びしながらクロエに向かって突撃して行って、抱きしめながらクルクルと回っていた。それを見ていると、どちらが本当の束さんなのか分からないが、どちらも本当の束さんなのだろう。

人間関係……女の子との関係で失敗ばかりしている俺だが、今回も盛大にやらかしてしまった事にかなり落ち込んでしまうのだった。

 

 

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