901分枝系統 80013世界 02795726時間断面 ISの世界 【改定作業中/第一章完結】   作:白鮭

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学園の始まりとそれぞれの思い

 教室の扉を抜けると、そこは女の子たちの園だった。

 

 2秒で(秘密の世界)に帰りたくなった。誰か助けて。

 

 ***

 

 教室は緊張に包まれていた。織斑一夏と聖司、男性が二人もいるからだ。背は俺の方が高かった為に、無言の圧力によって最前列と最後尾の席に分かれた。

 両隣はオルコットさんと美夜。

 オルコットさんは全方位に圧力をかけて牽制してくれているが、美夜は何もしないでノンビリしている。ロウ・エターナルは基本スパルタだからだ。

 

 SHRが始まり、山田先生が自己紹介をするように言っている。が、なかなか始まらない。

 織斑がとぼけた事を言って場が和む。そして織斑先生もやってくる。視線があっちにいって圧力が減る。頼むから、そのまま撒き餌になってくれ!!

 

 「次は聖司くん」

 

 「はい……」

 

 そして現実的には織斑が視線を独占してくれる訳でも無く、順番が回ってくれば俺に視線が集中する訳なのだが。

 全員が俺をガン見している状況は胃にくる。例外は美夜と織斑、そして心配そうなオルコットさんだけだ。

 

 「聖司です。将来はISエンジニアを目指しています。運がいい事に適性があったのでここに来れました。早いうちに技術を学べることに感謝しつつ、学業に励んで行きたいと思います。三年間よろしくお願いします」

 

 別に喧嘩をしに来たのではない、俺だってコミュ障は克服したいのだ。リップサービスも含めて無難に終わらせる。後、女性権利団体に喧嘩を売らないことをアピールする為に、エンジニアを目指すと言っておく。

 

 ……まあ、女の子が苦手なのにIS学園にやって来た事自体に意味があって、ISの事について学ぶのは俺にとっては二の次なのだが。

 ただ、俺も男なのでロボットとかパワードスーツみたいな物には結構興味がある。

 幸い法の迷宮で作ったものは改造も可能なので、その内IS用永遠神剣なんて言うのを開発して見ても面白いかもしれない。

 そんな事を考えながら自己紹介と言う大仕事を終えて席に着いたら、次の美夜が爆弾を放り込みやがった。

 

 「聖美夜です。司と苗字は同じですが、血がつながってる訳ではありません。ずっと一緒に住んでいて、お互いを理解しています。

 取り敢えずの目標は、卒業するまでに司の赤ちゃんを産んでいる事です。よろしくお願いします」

 

 ほぼ初対面でクラスのみんなが距離感を掴もうとしながら、お互いを見ている所だったのに、今の発言でクラス中の人間が凍り付いたように美夜の顔を凝視している。

 なにしろ、隣のクラスの声が聞こえているくらいだ。どう考えたってこの後面倒くさい事が起こるに決まっている。

 

 我に返った織斑先生と山田先生が、慌てて俺と美夜の方にやって来た。そして、強制的に生徒指導室に連行されるのであった。

 

 ***

 

 「で、どうしてあんな事を言ったんだ」

 

 生徒指導室で織斑先生に死ぬほど説教された後、解放されて教室に戻る。隣を歩いている美夜をジト目で見ているのだが、美夜はやり切った表情で楽しそうだった。

 

 「こっち(ISの世界)に来てから、司は私に頼り過ぎ。女の子苦手なのは分かってるし頼られるのも嬉しいけど、このままじゃ何の為に来たのか分からないよ。だから、強制的に司の事を引き離す事にしたんだ」

 

 自覚があるので答えに困る。それに心配でもあるのだ。

 

 「……そうだな、美夜の言うとおりだ。だけどあんなこと言って、虐めにあったらどうするんだよ。そんな場面を見たら、自分を抑えられる自信がない」

 

 想像するだけで嫌な絵面なので、顔を顰めながらため息をついたのだが、美夜はちょっと得意げな表情を浮かべていた。

 

 「セシリアに説明を頼んでいたから平気だよ。司が女の子が苦手な事とか、私がそれを直したいと考えてるとか説明してくれる予定だし。

 このままだと、私と司が同じ部屋で過ごす事になってたんだよ? そんなのダメだよ」

 

 ぐぬぬ……

 

 「あ、あと女の子苦手なのを克服させるのに、ちょっと強めにアピールすると良いんじゃないかって提案しておいてって、セシリアに頼んでおいたから。司、人気が出ると思うんだ」

 

 美夜が虐められなくて済むと思って安堵したが、別の意味で泣きたくなった。やっぱりロウ・エターナルはスパルタで、そして周囲は敵色になるらしい。

 

 ***

 

 美夜とそんな事を話しながら教室に近づくと、織斑と篠ノ之が廊下に出て何か話しているようだったが、こちらに気が付くと織斑が手を上げてこちらに近づいてきた。

 

 「よお、司。災難だったな。みんなキャーキャー言ってて、山田先生が大変そうだったぞ」

 

 「あー、あの先生押しに弱そうだしな。その場にいた唯一の男子だったんだから、こう、ビシッと言うとか」

 

 「いや、あの状況の中でそう言うのは無理。司には出来るのか?」

 

 「俺に出来る訳が無いだろ。だから織斑に言ってるんだ」

 

 本を読んでいて多少の偏見はあったのだが、織斑自身は第一印象としては割と付き合いやすい性格だと思った。

 だけど、俺はそれよりも気になる事を聞く。

 

 「で、オルコットさん説明してくれてたか? 美夜が俺に何も相談もしないであんな事言ったから、聞いてビックリしたよ。俺がこんなのだから悪いのだけど、美夜が心配だしな」

 

 「ああ、みんな説明を聞いた後に、またキャーキャーいってた。美夜みたいな友達を持って、司は幸せだな」

 

 「友達……。いや、まあ、大切な存在ではあるけどな」

 

 それを聞いて、俺は多分変な表情で曖昧に肯いた。

 ……織斑はこんな事をしてくれる人が、友達と言う一言で終わる存在だと思っているのだろうか? 少なくとも俺は、美夜の事を愛してると言えるのだけど。

 

 ただそうやって話している俺と織斑を見つめる篠ノ之の、酷く羨ましそうな表情が気になる。その目線と表情だけで、織斑に対する気持ちが何となく分かってしまった。織斑もあれだけ分かりやすいのだから、少し気にしてやれよと思う。

 まあ原作から考えて、ちょっと難易度高そうだとも思ったけど。

 

 ***

 

 授業を受ける。分枝世界間の技術、魔法、文化、社会の発展具合はまちまちで、そして分枝世界は無数に存在している。

 そんなものを覚えるのは現実的に不可能だが、”宿命”が参考にしたのが俺の記憶の中にあったFateの聖杯で、実際のものは原型など無くなってしまうほどの魔改造がほどこされたものだ。

 ただ便利な機能は残っていて、俺が勝手にサーヴァントシステムと呼んでいる機能のように、基礎知識や必要な知識はその分枝世界に入ると自動的に入って来る便利な能力はあるし、広く扱われている学問の知識なんかも、知ろうとすれば簡単に習得出来るようになっている。

 

 美夜にしても、元々は交信の世界の転生システムの管理運営をしていた女神なのだ。頭が悪いなどありえない。

 何故そんな事を考えているかと言えば、織斑は勉強が分からないからと先生に怒られているからだ。

 教科書読む為には必須である参考書を電話帳と間違えて捨てるのは論外にしても、あの参考書を前提条件とするこの学園の生徒のエリートっぷりと、全力疾走でチートをかましている俺が言うのも何だけど、織斑の場違いっぷりが酷い。

 ……酷いのだが、元々目指していたものが違うのだ。

 他の人が時間をかけて覚えたものを、一週間で覚えろと言うのはかわいそうだとは思うが、ISの世界の主人公の宿命だと思って、がんばれとしか言えない。

 

 織斑先生が、人は集団の中で生きていかないといけないと言っている。それすら放棄するならまず人であることを辞める事だなと、とんだ皮肉だ。

 俺は心の中で自嘲する。それを放棄した結果、俺は人間ではなくエターナルになった。

 美夜や先生や”宿命”と出会えたので、永劫不変の存在になったとしても俺は問題だとは思っていなかった。ただ、こうして人間に混じって生活すれば、その事を思い知る時が来るのだろうか? 授業を聞いて、その事が心に引っかかる。

 

 授業が終わってオルコットさんに話かける。周りの女の子が牽制しあって、休み時間になると変な緊張感が生れるのが少しキツイが、美夜とオルコットさんが気にかけてくれたからこその今の状況だ。

 周りの子にも少しづつ話しかける努力をしないと、それが無駄になってしまう。

 

 「オルコットさん、美夜に頼まれて説明してくれたんだって? ありがとう。ただ、単独だとまだキツイから、まずオルコットさんの友達を紹介してくれないかな? 美夜も一緒に行こう」

 

 そう言って俺は、みんなの輪の中に入っていった。

 

 ***

 

 箒side

 

 聖美夜の大胆すぎる言葉に場が騒然となった。聞いていた私も自然と頬が熱くなる。千冬さんが二人を連れ出した後も、きゃいきゃいと騒ぐ女子達に山田先生は手をこまねいているように見える。

 千冬さんもこんな事が起こるとは、想定していなかっただろうし。

 

 「みなさん、よろしいですか?」

 

 そう言って、一人の生徒が立ち上がった。たしか、セシリア・オルコット。

 

 一夏の他に、もう一人いた男性IS操縦者である聖司。それと、今の発言をした聖美夜と一緒に学園に来た人物で、両隣でSHRが始まるまで話していた人物だ。

 他の女子達も入りたそうにしていたが、あれは部外者が入れる雰囲気ではなかったな。

 

 そして自分の実体験を含めて、発言にどういった意図があったのかを説明した。ほぼ全ての女子が、私も迷子になればよかったと露骨に表情に出ている。

 正直、無茶苦茶だと思う。自分の評価とかを気にしないのか? 周りから爪弾きにされる可能性を考えなかったのか?

 

 ……きっと考えたうえで実行したのだろう。そして、オルコットが続いて言った言葉で、教室内が爆発的に賑やかになった。

 

 「荒療治になりますが、その……少しくらい過激にしていただけますか? と、おっしゃっておりましたわ」

 発言したオルコットも、そう言いながら少し頬を染めていた。

 

 周りの女子達がまたきゃいきゃい言い出して、山田先生が静かにさせようと努力をしているけど、無理じゃないかと思う。

 そして一連の行動の裏にある言葉など、一夏を除いてここの人間全てに伝わっただろう。

 

 この人は私のだ。絶対に奪われない自信がある、と。

 

 授業が終わって、休み時間に一夏を廊下に呼び出して話していると二人が戻ってきた。一夏と話しながらも、真っ先にオルコットが説明したかを聞いている。

 そして聖の表情には、(美夜)の事が心配だと書いてあった。

 

 次の休み時間にはオルコットに仲介を頼み、(美夜)を連れて積極的に女子と交流しようと動いていた。表情がこわばっていたり、反射的に一歩下がっていたりする。

 だが女子もそういった行動が、自分が嫌われているから出る行動ではないのを知っているから、むしろ積極的に動いている。

 何も知らない人間からはひどく滑稽で、格好の悪い行動に見えるだろう。だけど私には、神聖で尊い行動に見えた。

 

 私は、一夏に対して何をしているのだろう?

 

 勝手に嫉妬して勝手に怒って、そして勝手に落胆している。同じ幼馴染だというのに、あの二人とのあまりの違いに泣きたくなる。

 一夏が()ほど察しが良いとは思わない。ただ、今とは違うやり方があるのではないか?

 

 「聖美夜か……」

 

 今度、相談してみようかな?

 

 箒Side out

 

 ***

 

 セシリアside

 

 試験が終わって少しだけ空いた時間に、三人で遊びに行く事が多くなりました。相変わらず司さんは女性にビクビクしていて、少し頼りないかな? と思います。

 ただ、ほかの男性のように、無意味に威張ったり威圧的に振舞うなどの愚かなことをする心配がありません。大型犬、ラブラドール・レトリバーみたいで少し可愛らしいです。

 

 でも、美夜から聞いた過去の話は意外なものでした。

 

 「私が今でも生きているのは、司のおかげ」

 

 きっと司さんが美夜の事を颯爽と助けたのだと思いましたが、当時の司さんは今からは考えられないほど弱く、相手はとても強かったと。

 それでも勇気を持って美夜さんを庇い、震えながら必死になって助けてくれた。

 そして、今の私たちに繋がっていると、美夜さんは言っていました。

 

 お二人が強い絆で結ばれているのに納得して、今はいない両親の事を思いました。

 父は母の顔色をうかがうばかりの人だった。

 きっと婿養子だから引け目を感じていたのだろう。そんな父を見て育ったからこそのわたくしがある。

 

 司さんは確かに少々頼りないことが多いです。でも大切な人の為に努力して、今の自分を手に入れたのでしたら、それは本当に頼りない、情けない事なのでしょうか?

 本当はとても大切な事なのではないのかしら?

 

 「もっと知りたいな……」

 

 わたくしは、そう強く思いました。

 

 ほんの少しだけ胸が痛いと思いましたが、それを気のせいだと誤魔化しながら……。

 

 セシリアSide out

 

 

 

 

 

 

 




 秘密の世界

 交信の世界の金庫を改造した司たちのホームグラウンド。トークォの姉で、”宿命”の契約者のミューギィが眠っている。
 永遠神剣第二位の使い手の中でも最強クラスの”虚空の拡散”トークォが守りについている上に、敵意を持って近づくものに対しては、”宿命”が無条件に概念攻撃をする為に実質的に近づけるのは司と美夜だけである。
 それと”聖杯”と”絶炎”のマナを分割したコピーが設置されており、万が一消滅しても(マナの霧に帰っても)、ここで復活する事ができる。
 エターナルが永劫存在、永遠存在と呼ばれている所以である。







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