901分枝系統 80013世界 02795726時間断面 ISの世界 【改定作業中/第一章完結】 作:白鮭
三時間目になって、織斑先生がクラス対抗戦に出る代表者を決めると言ってきた。
正直、篠ノ之博士に狙われていると思われる俺たちは、これ以上目立ちたくないのだが現状はかなり厳しい。と言うか無理だ。
それでも悪足掻きしたいので、どうにかして回避しようかと考えているけど、やっぱり織斑と俺の推薦がどかどかと降ってくる。
それを見て俺は泣く泣く諦めたが、諦めきれなかった織斑は、無駄な抵抗をして織斑は先生に出席簿で殴られていた。
それにしても、俺と美夜は痛くなければ覚えませぬと言うノリだったから今更何とも思わないが、織斑先生はあんなにポコポコ生徒を叩いて良いのだろうか?
……恐らく、ISは絶対防御で体にダメージが入らない安全に見える代物だとしても、万が一それを抜けた場合、痛みで動けないようだと話にならないから、あれで良いのだろう。多分。
織斑先生と織斑のやり取りを見つつ、現実逃避気味に下らない事を考えているが、今の時点だと俺にだけ専用機が無いと言って断るのは不可能だしな。
やっぱりどうにもならないと諦めの表情を浮かべて見ていると、オルコットさんがわたくしを自薦しますと言って立ち上がった。
確かこの後、オルコットさんが織斑を煽って言い争いが始まるんだったっけ?
酷いようなら中に入って止めるかと考えていたら、特に何も言わずにそのまま座ってしまった。
――この時点で、もう原作からの乖離が始まったか。
俺と美夜が原作開始前にオルコットさんに出会った事で、未来が変わったらしい。
俺はそれを確認た上で、
平安時代に生れて自分が死ぬその時すら未来視で視えてしまって、逃亡の旅を続けた結果エターナルになった事で、ようやく自分の未来を斬り開く事が出来たカオス・エターナルの一人、遠神剣第三位・”時詠”の使い手、”時詠み”のトキミも多分こんな気持ちだったのではないだろうか?
未来を知る事が幸せに繋がるとは限らない。そう思ったからこそ、美夜がブリュンヒルデに勝った時点で時詠みを使わなかったのだ。
ただ、オルコットさんが既定の線を外れてしまった場合はどうなるんだろう。
…………どうにもならなかったら、最終的には
どこか、決意を秘めた表情をしているように見えるオルコットさんを見ながらそう思った。
***
お昼時間になっても席に座っていて、お昼ご飯だと言われて始めて、ああ……って思って周りと一緒になって動き出すと、隣の席の美夜も同じ事を考えていたのか、きょとんとして、こっちを見て困った時の表情を微かに浮かべていた。
エターナルは分枝世界にマナが存在していれば、飲んだり食べたりする必要は無いし排泄も新陳代謝も無い。
「司、一緒に飯食いに行こうぜ」
織斑と篠ノ之が、後ろにぞろぞろと女の子を引き連れてこっちに向かって来る。それを見ながら凄いなと思わずつぶやいたら、織斑もげんなりした様に凄いだろと苦笑いしていた。
「休み時間ぶりだな。聖司だ。よろしくな織斑」
「ああ。織斑一夏だ、一夏でいいぞ」
「俺も司で」
この程度のやり取りだったのに、後ろでキャアキャア女の子が言っているのに密かにドン引きしていたのはナイショだ。集団の女の子は何か怖いし。
俺と一夏、美夜とオルコットさんと篠ノ之で食堂まで歩く。後ろを色々なクラスの女の子が付いて来て、カルガモの親子のようになっている。
「これに慣れるのが先か、胃潰瘍になって入院するのが先かだな。入学初日でこれとか、この学園は俺を殺したいらしい」
エターナルは病気になんかならないけど、精神攻撃だけで
「司は女子が苦手だって聞いたけど、そんなにダメなのか?」
「別に女の子だけじゃなくて、程度の問題だけど男だって得意じゃないんだよ。昔から一緒にいる美夜とか、色々と気を使ってくれてて、時間をかけて慣らしてくれたオルコットさんとかは大丈夫なんだけどな。
こう言い方が適当かどうかは分からないけど、一気に来られると正直怖い」
ある程度の事は周りの子も覚悟していたのだろうけど、怖いと言う言葉が俺から出た事で神妙な面持ちになってしまったのを察して、周りで聞いている子に慌てて言い募る。
「みんなが悪いんじゃなくて、コミュ障なのも女性恐怖症気味なのも俺のせいだから。
あー、何て言ったらいいか……。俺はこんな感じなんで、出来ればゆっくり仲良くなっていければいいなって思ってる。みんなよろしく」
朝にやった自己紹介が通り一辺倒なアピールだとしたら、これは俺自身から出て来た素直な気持ちだ。
こういう集団生活の場である所にいるのも、生前から数えたら下手したら一周期くらいたっているかもしれなくて上手く気持ちを言葉に出来ないでいると、俺と一夏の後ろで三人で話していた美夜が隣に寄り添って手を握ってきた。
「大丈夫、私が居るよ」
「……そうだな。俺には美夜が居るな」
そう言われて軽い深呼吸をすると落ち着いてきたので、手を握りながら美夜を見ていると思わずなのか、いいなーと言う声が何処からか聞こえて来た。
「いいだろ、俺の自慢の彼女さんだ。ホント、お世話になってます」
「ふふり。お世話してます」
思わず出てしまった言葉に周りからどよめきが沸き起こるが、まあ、学園内で子作り宣言までした美夜にとっては今更の事ではあるし、周りに主張出来るので俺にとってもいい機会だと思う。
それにエターナルとは言っても、俺にも美夜にも相手の心を視る能力なんて無いのだから、気持ちを言葉で表すのはとても大切な事だ。
俺と美夜のやり取りを見て呆気に取られている一夏を促して食堂に行こうとすると、美夜は俺の頬に軽く唇を当ててから後ろの二人の方に戻る。
一夏は勇者を見るような眼で俺を見てるし、後ろの三人は美夜を中心にしながら楽しそうに何かを話し始めているみたいだった。
「ほら、飯食う時間が減るだろ。行こうぜ」
「ああ。……すごいな司は」
「なんだそれ?」
「いや、何か凄いと思う」
何やら目の前で起きた事が信じられないような顔つきの一夏を促しながら、ざわめきが治まらない女の子たちを引き連れて食堂に向かって歩く。
それに大胆な事をした俺も、今更になって顔に血が上って来たのか少し熱を持っているように感じる。
アルビノなので、俺の顔はさぞや真っ赤に染まっている事だろう。
***
食事が終わった後、美夜は篠ノ之から相談を受けたと言って離れていった。
一夏は女の子に連れて行かれて、MIBに捕まった
今度、一夏が困っていた時に助けようと思う。
そしてオープンテラスに移って二人で食後のお茶をしているのだが、目の前のオルコットさんはプリプリ怒っていた。
「箒から少し話は聞きましたが、日本の男性は女性に対してどんな扱いをしておりますの!!」
美夜の事が切っ掛けになったのか、五人で食事をする筈が三人で別の所に行ってしまって、何やら話していたと思ったらそう言う話題だったらしい。
「篠ノ之がなんて言ってたのかは興味があるけど、その日本の男性って久しぶりに聞いたな。初対面の時にボロクソに言われて俺は涙目になってたし」
微妙にハイライトさんをオフにしつつ当時の恐怖体験を思い出していると、オルコットさんが慌てて良く分からないフォローをし始めた。
「つ、司さんは日本の男性っぽくないからノーカウントですわ!」
「そうだな、それに関しては同感。だけどあの時のオルコットさんの当たりは強かった。……戦艦くらい?」
「違います! け、軽自動し……小学生の遊びくらいですわ」
「まあ、オルコットさんが言うのならそうなんだろう。あれで小学生の遊びくらいだったら、本気を出されたら俺は死にそうだけど」
「うう……」
涙目になり始めたオルコットさんを見ながら、俺は話を本来の方向に戻す。
こう言うバカ話を落ち着いて出来るのは、
「ごめんね、オルコットさん。だけど、一夏と篠ノ之の事か。正直な事言って、あの二人ってどうなんだ?」
原作を知っている俺からすれば言わずもがななのだが、オルコットさんの例もあるので前提条件が変わっている可能性も有るのだ。
「一言で言うと、織斑くんが察しが悪くてイライラすると言う感じかしら? ただ、わたくしは織斑くんの事を知りませんから」
「まあ、そうだよな。今日は初日だもんな」
「ええ。初日なのに、廊下の中心で愛を叫んだ方もいらっしゃいますけど」
「そうなのか。そいつ、頭おかしいんじゃないのか。ははははは……」
「そうかしら? とても素敵だと思いますわ。うふふふふふ……」
さっきの逆襲なのか、割と痛い所を抉りに来ているが笑って誤魔化すと、一対一の痛み分けに持ち込んだ事で気が済んだのか、その後はオルコットさんと時間になるまで雑談をしつつゆっくりと過ごす。
朝から大変だったが、この平穏とした時間とリラックスできる空間を用意してたオルコットさんと、協力してくれているらしいクラスメイトに向かって会釈と小さく手を振ると、向こうも気が付いたのか手を振り返してくれる。
それを見てオルコットさんも手を振っているけど、こんなに良くしてくれているんだから何かお礼がしたいな。
***
放課後に、一夏の勉強を少し見る。
「すまん司。この借りは後で返すから」
「昼休みに女の子の盾になってくれただろ? 物凄く助かったから借りなんて無いよ。ただ今後も盾になってくれると、俺は泣いて喜ぶ」
「俺もそれは嫌なんだけど」
「そう言うなよ。良い物作ってやってるんだから、色々サービスしてくれ」
俺は”聖杯”で作った白紙のノートを取り出して、ログ領域を参照しながら電話帳くらいある参考書を使う為の参考書作りに励んでいた。
とは言っても、参考書に載っているISの専門用語に対する索引を作っているだけなのだが。
「これがあれば、最低限教科書を読むのに苦労はしない筈だ。その上での勉強も、時間が有れば教える。ただ別に俺が教えなくとも、いくらでも周りが協力してくれると思うぞ」
「……もしかして、俺が男だからか?」
「そうだよ。俺と美夜が全力で主張したから、彼女狙いとかハニトラ狙いは寄って来ないだろうけど、その分フリーの一夏にそう言うのが集まると思う。……出来た」
一夏は俺がノートを手渡すと、さっそく教科書に載っている専門用語を調べながら読み始めるが、一ページ分くらいを読み終わった時点でその出来に感嘆しているようだった。
「助かった! ありがとう、司!! だけど、もしかしてこれ全部覚えてるのか?」
「ああ。まあ、色々とな」
「そうか……。でも、俺も女子の事は分からないから困るよな!」
俺の表情から話せない事だと悟ったのか、今の話を断ち切るように明るく振舞う一夏に内心で感謝しつつ女の子の話を続けるが、一夏はどうもそう言う事に関心を持った事が無いようだった。
分かっていた事だが、これを落とすとなると相当に苦労しそうである。
雑談をしながらも少しずつ勉強を教えていると、夕方の太陽が目に入って手が止まる。その俺の様子を見て一夏が顔を上げると、廊下側からコツコツとヒールが立てる音が響いて来た。
そしてその音は俺たちの教室の前で止まり、前側の扉が開くと入って来たのは山田先生だった。
「こんにちは、織斑くんに聖くん。寮の部屋が決まりましたよ」
山田先生はそう言って最初に一夏に寮の鍵を渡した後で、俺にも鍵を差し出して来た。
「聖くんはこっちです」
俺にも鍵を渡して来るのだが、山田先生の表情には困ったような苦笑が浮かんでいたが、それを見て察したのでため息をつくと、さらに困ったようだった。
「美夜との同室はダメでしたか」
「ええ、ダメです。普通、あそこまで言った生徒と同じ部屋にはなれませんよ」
最初は美夜と同室と言う事になっていたのだが、朝の子作りの件は結構な大騒ぎになったらしい。
俺としては学園内では仕方が無いにしても、部屋の中では美夜と二人でリラックス出来ると思っていたのに盛大に梯子を外された形になった。
普通は騒ぐのだろうけど、現在、過去、未来に置いて全ての場所と時間を見たとしても、エターナル同士に出来た子供はたったの一人。
俺と美夜は子供が欲しくても出来ない身体だから問題は無いと強弁したいが、そんな事は絶対に話せないし、風紀の問題と言われたらそれで終わりだ。
実年齢はこの学園関係者の誰よりも高いけど、一応、俺も美夜も十五と言う事になってるし。
「美夜はどうなりました?」
「オルコットさんと同じ部屋になりました。ちょっと困った状況だったので助かりましたけどね」
なんでも荷物は多いわ勝手に業者の手を入れるわで、同室の子から苦情が出ていて問題になっていた所を、友達だからと言ってその子と部屋を替えてもらったらしい。
それらの事を伝える事のついでに、山田先生は鍵をわざわざ持って来てくれたようで、俺と一夏がお礼を言って山田先生が去った後も、切りの良い所まで勉強を続けた。
ただこの様子だと、この先も一夏は原作同様に苦労しそうだった。
***
「誰もいないし……」
緊張しながら部屋に行ったら誰もいなかった。
一夏と勉強していたので結構遅い時間なのだが、扉を開けたら明かりがついていなかったのだ。
部屋の中が散らかっている様子は無いのでトラブルが起こったとは考えにくいのだが、流石にこの状況で初対面の男が女の子の部屋にいたら事案である。
散歩でもするか。
そう思って適当に歩き回ることにした。結構盛りだくさんのイベントがあったように感じるが、まだ初日なのだ。ただ、悪い気はしなかった。
今日起こった事を色々と考えながら施設を見て回っていると、結構な時間になっていた。さっきの夕日もそうだったが、今の空には大きな月が浮かんでいた。
「こんばんは」
そう言って、美夜が歩いて来た。可愛らしいパジャマの上に、薄いカーディガンを羽織ってニコニコしている。
「お月見か?」
「うん、お月見。家には月が無かったからね」
近くにあったベンチに座り、今日あった色々な事を話した。詳しくは教えてくれなかったが、やっぱり篠ノ之はため込んでいて大変だったらしい。
これからは友達だから面倒見るよと言っているから、一夏は超が付くほどの難物だと教えたら、小さく唸りながら腕を組んで空を見上げていた。
「もう少し近くで見るか」
「うーん。そうだね、そうしようか」
考えながら唸るのに飽きたのか、俺の方を見て小さく肯いたので揃ってハイロゥを展開する。
夜中だとこれ自体が光を放っているので目立つのだが、こんな時間で人気の無さそうな場所に人はいないと思って、二人で空へと昇って行った。
簪side
今日も閉じこもって弐式を組む。時間の感覚も無くなって、時計を見たら結構な時間だった。
「帰ろう」
とぼとぼと寮に帰るために歩くと、遠目に二人の姿が映った。白い髪の男性と髪の長い女の人で有名人。私でさえ名前を知っている。
聖司と聖美夜。ある意味専用機を持つより希少なものを持っている人。大きな月が出ていて、その光が髪に反射してキラキラ輝いている。あれはきっと王子様とお姫様、自分の境遇と比べても惨めになる。
もう帰ろう。そう思って最後に見たら、本当に光る輪と光る翼が生えていた。
「…………へ?」
さっきまでは学生服とパジャマだったのに、男の人は白いコートと部分鎧のようなものが組み合わさった軽鎧みたいなのを着ているし、女の人は裾の短い黒いドレスと、甲冑が組み合わさっているものを着て頭に黒い帽子を被っている。
「飛んだ……」
どんどんと月に向かって飛んで行った。自分の頬を思いっきり抓る。……痛い。目を閉じてまた開くと、空に留まって月を見ているようだった。それを見ながらそろそろと離れる。
すごい! すごい!! すごい!!!
こんなアニメみたいな事が現実にあるなんて!!
私はドキドキしながら部屋に戻り、そして、少しして部屋に来た人に悲鳴をあげるのだった。
簪Side out