901分枝系統 80013世界 02795726時間断面 ISの世界 【改定作業中/第一章完結】 作:白鮭
「「おおー」」
IS整備室に入ると、真ん中に見覚えの無いISが内部構造をむき出しにして置いてあり、各種機材に接続されていた。
俺たちは未だに授業では基礎知識を学ぶ段階で、実は間近でISを見た経験などほとんどない。
例外は試験の時にそれぞれ使ったラファールと打鉄を、授業が終わった後でクラスのみんなと見学に言った時と、オルコットさんの好意でブルー・ティアーズを間近で見たくらいだった。
「新型? ……うちの学園ってISの開発までやってるのか。それにしては人が少なすぎると思うんだけど」
何せ俺たち以外誰もいないのだ。開発競争に各国が鎬を削っている現状で、こんな放置は不味いと思うんだけどな。
そう考えていると、簪さんが眉をひそめてこう言い切った。
「あいつが作るのを邪魔したんです。本当は、私も代表候補生なのに……」
「あいつ?」
外見だけで言えば、少し気の弱そうな文学少女に見える簪さんから憎しみが漏れ出すような言葉が出て来て、悔しそうに手を握りしめているのは尋常じゃない。
だけど簪さんから話を聞いてみると、流石に一夏に同情するしかなかった。
「当時唯一と思われていた男性IS搭乗者専用機を作る為に、倉持技研が無茶したんだろうな。でも、どう言ういきさつで仕事を受けたのか分からないけど、日本代表候補生の仕事を蹴ってまでする事じゃないだろ」
一夏も自分が全く関係無いのに、変な所で敵を作ったな。
そうは思っても篠ノ之博士に狙われているかもしれない現状では、実は俺たちも大差ないのだが。
「なあ、美夜」
そう声をかけて作りかけのISから美夜の方に目線を動かすと、仕方が無いなぁとでも言いたそうな表情で微笑んでいた。
「一応、友達の不始末になるのかな? 今度、織斑くんに奢らせよう」
「ああ。一夏がやめてくれと泣き叫ぶまで搾り取ってやろう」
そんな訳で、これからの一週間の行動が決定したのであった。
***
箒side
セシリアの出ている映像を、寮で一夏と一緒に見る。幸い、この学園にはこの手の資料が豊富だ。
「レーザーライフルとBT兵器のコンビネーションアタックか、司の言っていた意味が分かった。イギリス代表候補生の名は伊達じゃ無いって事か」
何せ相手が全く近づけなかったのだ。これを攻略するとなると……。
「一夏、休憩にしよう。根を詰めても効率が良くないぞ」
そう言ってお茶と甘い物を出すと、一夏が嬉しそうに私にお礼を言って来た。
「ありがとう、箒。しかし司の情報は無いし、セシリアはこれか。予想以上に厳しいな」
一夏は考え込んでいるように見えた。
……確か、美夜はいつも。……私は一夏を見て、ぎこちなく微笑みながら話をする。
「本当だったらISの訓練も出来れば良かったのだがな。私にも一夏にも実績なんて無いから訓練機の予約すら出来ないとは思わなかった。
だが手をこまねいてるわけにはいかないから、この後は剣道場に行こう。ISはイメージが明確な方が動かしやすい。きっと無駄にはならないはずだ」
私は一夏と言う都合の良い人形が欲しいの訳では無い。目の前の一夏にこっちを見て欲しいのだ。
……ただ美夜が私と一夏の仲を進めたいと、真剣に考えてくれたのは嬉しいのだが、あんなにボロクソに言わなくても良いと思うし、私の為を思ったとしてもあんなにボコボコにしなくても良いと思う。
でも、あそこまでされたお陰で考えて行動するようになって、一夏との仲が進んでいるのは事実なんだが。
「そうだな、気分転換にもなるしな」
「ふふ、私は強いからな。一夏には負けないさ」
そう言いながら、私は美夜の事を考えた。
美夜は不思議な子だ。名前は日本人の名前だし、見た目が物凄い美人だと言う事を除けば、性格は人懐っこくて付き合いやすい。
まあ手段を択ばない天然さでたまに恐ろしい事になったりするが、普段は司にしょうもない悪戯をして遊んでいる印象が強い子だ。
ただ、司も私たちに普段見せるような少し身構えたような付き合い方とは違って、自然に美夜と言い合いながら仲の良さを見せ付けているのは、この学園内だと少し毒気が強いと思うようになった。
そんな不思議な子だが、あれだけ剣に慣れていて日本人なのに、剣道を知らないと言う事があるのだろうか?
……美夜は私が想像もつかないくらいに強いし、何よりも私に対して使った技は手加減していたとは言え、多分敵対者を殺す技だと思う。
ただ私には理解出来ない術理と、日本刀ではありえない技を使っているのだけは確かだった。
「どうした、箒?」
「いや、何でもない。一夏をどうやって倒すか考えていたんだ。私も美夜に負けられないからな」
「俺だって箒には負けられなさ。でも、美夜か。……そんなに美夜って強いのか? いつも気が付いたら、司と一緒にいて遊んでるイメージしか無いんだけど」
「……どうなんだろうな。司にしろ美夜にしろ、普段の行動を見ていると強いなんてイメージは湧かないが。確かに私は美夜に負けた。だとすると、司も強いのかもしれない」
「そうか。だとすると、もっと気を引き締めていく必要があるな。これからもよろしく頼む。箒」
「ああ。時間まで精一杯鍛えるから、こちらこそよろしく」
私は美夜もそうだが、その美夜の事を大切にしている司の事も良く知らない。
だが、いつか友達として理解出来る日が来るのだろうか? 一応、私の目標は仲の良いあの二人と同じくらい、一夏と仲良くなるのが目標なのだが。
箒Side out
***
セシリアside
「はぁはぁはぁはぁ……。うっ……」
冷や汗を流しながら訓練を続けていますが、イメージに沿った飛び方が全然出来ない。ピットに戻って這うようにベンチに縋り付くと、クラスメイトが駆け寄って来た。
「なにやってるの! セシリア、あなた代表候補生じゃない!? そこまでしなくても、織斑くんにも司くんにも負けるはず無いって。無理しすぎだよ!!」
わたくしの顔色は多分、蒼白になっていると思います。それでも、足りないのです。
「はぁはぁ、そんな事ありませんわ……。く……ぅ、これでも足りません。絶対に、司さんの攻撃は当たります」
こちらの攻撃が絶対に当たらないイメージがあり、あちらの攻撃が絶対に当たるイメージがある。
みなさんは、司さんと美夜の実力を知らないからそんな事が言える。あれからお二人の飛び方を夢にまで見るようになった。
きっと聞けば、わたくしに全てを教えてくれるだろう。でも、わたくしはイギリス代表候補生なのだ。一度も挑むこともなくそんな事をすれば、今まで積み重ねたことが無駄になる。
……何か理由があるのだと思う。司さんと美夜は、極力自分たちの実力を見せないようにしている。このまま行けば司さんは、わたくしにも織斑くんにも勝たないで終わる。それが、たまらなく悔しい。
「私じゃ言う事聞いてくれない」
心配して下さって感謝しておりますが、わたくしは司さんに恥じない勝負をしたいのです。そう思って震える足で立ち上がるのを見て、クラスメイトがスマホを持ちだした。
「美夜に来てもらうよ! こんなの無理だよ!」
わたくしの口から、思わず悲鳴を上げるような声が出た。
「止めて下さい!! ……お願いです、止めてください」
彼女がわたくしを、真剣な表情で見ている。
「理由、あるんだよね?」
肯いたら、仕方が無いなぁと言う表情になった。
「学食のデザート、三回で黙っててあげるよ」
わたくしは少し微笑みながらこう言った。
「一回だけですわ」
セシリアSide out
***
簪side
二人の方を見て手が止まっている、打鉄弐式はすごい状況になっていた。
まず司さんは、実機の方は今は手を出さないと言った。私が反対すると、事故の可能性を考えなかったのかと怒られた。
一人でこんな人気のない場所に籠るなんて論外だ。下手したら死んでたと真剣に怒ってくれた。
怒られて怖いと思ったけど、同時にすごく私の事を心配してくれているのが分かって嬉しかった。
そう言って私は、制御プログラムの続きを作成し始めることにしました。
取り敢えず司さんの実力が分からないから、今まで私が作ったものをを司さんに見てもらっていたら、司さんは物凄い速さでプログラムの修正をし始めた。
それこそ答えが書いてある、クイズの本でも読んでいるような速さで間違いを指摘しています。
ギョッとしてそれを見ながら凄いと褒めたら、俺より美夜や簪さんの方が凄いと言っているのですが、美夜さんは兎も角、私は凄くありません。
逆に美夜さんは、プログラムの調整と再入力が得意。
だけど純粋にISに慣れてないみたいで、休憩中に二人で協力してみれば? と言ったら、司さんも美夜さん試してみようと言う話になって……。
「うわぁ……。すごい……」
美夜さんは空間投影デバイス四枚を使って、司さんの作ったプログラムをシミュレーションエンジンに接続して、調整しながら入力している。
多分純粋に手だけを使った場合、私より入力が早い。けどそんな事は問題じゃない。
司さんも美夜さんも、一切動きが止まらないのだ。でも、メインからサブに移ってデーターのチェックをする私にも、プログラムの齟齬は見つけられなかった。
えっと……、第三世代ISの制御プログラムはそんなに単純な物じゃないんですけど。
司さんは何時もの柔らかい表情とは違って無表情でプログラムを作り続けて、美夜さんはそのプログラムを実用に耐えられるように、シミュレーションエンジンに接続しながら調整を続けて再入力して行くのだ。
私には何であれで実用出来るプログラムが作り出せているのか理解できない。
七時くらいに一区切りついて、三人でIS整備室を出る。二人共「「遅い」」と言っていたけれど、私一人だと多分一ヶ月くらいかかるので、この二人の想定速度が良く分からなかった。
司さんは腕を組みながら、少し考えるように言う。
「多分、打鉄二式の制御システム自体は変な妨害が無ければ、四月下旬から五月の頭くらいには行けるか?」
そう言って司さんは美夜さんを見るけど、美夜さんは、うーんと言いながら考えているようだった。
「そうだね、それくらいだと思うよ。どうする、簪?」
「え! そんなに早く出来るんですか!?」
「うん。制御システム全般だけはね。でもねぇ……」
「ああ、どうするかなぁ……」
私は嬉しくて、思わず二人の手を握って大喜びしたのだけど、それを見て二人共困ったような表情を浮かべていた。
「ごめん。私たちは実績も伝手も無いから、ハード方面をいじれる人が集められない。簪、人集められる? 勿論、私も司も協力するけど」
「……人集めに関しては、俺も努力するけど戦力外だから。その分ハードウェアの組み立てはがんばるけど、システム面は兎も角、実機がいつになるかは」
私も人見知りするから他人と話すのは苦手だから、司さんの気持ちは分かります。けど、司さんも美夜さんは今おかしな事を言いました。
「あの……協力って? 今日だけじゃ無いんですか?」
「何で? 友達が困ってるのに、見ない振りなんてしないよ。司だってそうでしょ?」
「当たり前だ。用事だって無いし、あっても簪さん優先だろ。大丈夫だよ、三人で一緒にやろう」
二人共こんなに凄いのに……凄く優しい人たちだった。
二人の手を握りながら自然と涙が出て来て、恥ずかしくて下を向いていたら、美夜さんが私を抱きしめてくれて、司さんは私が恥ずかしいと思っているのを理解しているのか、後ろを向いて泣き顔を見ないようにしてくれました。
「簪さん、最後まで手伝うから安心して良いよ。よくがんばったね」
「今度、私たちの友達を紹介するから楽しみにしててね。後、織斑くんは殴って良いから。私が許すよ」
そうして次の日の朝は、私と司さんと美夜さんとオルコットさんで朝ご飯を食べました。私も、この人たちの友達になれるのかな?
PS:その日の教室であった事は、思い出したくありません。
簪Side out
Re:篠ノ之箒誕生
次回、戦闘回
戦闘、どうしよう……