901分枝系統 80013世界 02795726時間断面 ISの世界 【改定作業中/第一章完結】   作:白鮭

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粉雪のような恋

 何時もの通り、ゆさゆさと揺すられる。

 目を閉じたままで、簪さんの準備が整ったんだなと思いながらゆっくりと目を開けると、少し頬を赤く染めた簪さんと目が合った。

 

 「おはよう。簪さん」

 

 「おはようございます、司さん」

 

 簪さんと二人で暮らし始めるにあたって、色々ルールを決めようと提案した時に初めて言われたのが、寝起きを見られるのが恥ずかしいから、朝の準備が終わるまでゆっくり寝ていて下さいと要求された事だった。

 言いたい事は分かるけど、やっぱり初対面に近い男女が同じ部屋で暮らすのは色々と無理があると感じつつも、今の所はそこそこ上手くやっている……と、思う。

 そのままバスルームに入って身だしなみを整え終えると、部屋で簪さんが待っているので話しながら食堂に移動する。

 

 ……さて、上手に負けるとしますか。

 

 内心でため息をつきながら考える。俺としてはあまり気乗りのしない、クラス代表決定戦の日が遂にやって来たのだった。

 

 ***

 

 「私も見に行きたかったです」

 

 そう言って、若干簪さんが拗ねている。

 放課後に試合をするのだが男が二人も出ると言う事で、クラスメイト以外には非公開になっているのだが、初めて会った時に比べて表情が豊かになった。

 簪さんとは、一緒に暮らしている上に打鉄弐式の事もあって大分仲良くなった。同室で色々と話してみるとヒーロー・バトルアニメが趣味らしいので、二人して雑談しながらアニメ鑑賞をするのも日課になりつつあるのだが、こう言うオタク趣味も生前ぶりだから懐かしくなる。

 

 「昨日今日ISに乗った新人が、専用機持ち二人相手にどう戦えって言うのさ。しかも一人は国家代表候補生だしな。

 速攻で落とされないように努力はするけど、勝ち目はほぼ無いだろうな。あんまりカッコ悪い所見せたく無いから、俺としてはホッとしてるよ」

 

 篠ノ之博士を刺激したくない為に負けるつもりなのだが、俺の話を聞いた簪さんは少し怒り出してしまった。

 

 「またあいつですか。司さんは専用機を持ってないのにズルい」

 

 「まあ、上の判断だしな。それに扱う実力も足りないのに、そんなもの持たされても困るよ。

 ……俺はかえって一夏に悪いと思ってる。これから露出も増えて、無責任に文句を言う奴の矢面に立ってくれるんだから」

 

 「それは……そうかも知れませんけど」

 

 俺は簪さんと話していてこう言う話題になった時、出来るだけ一夏を庇うような事を言う事にしていた。

 自分が簪さんと同じ目に合わされたら許せるとは思えないけど、悪いのはこういう選択をした国であって、巻き込まれた一夏自身も被害者だと。

 それにその内、簪さんにも一夏を紹介したいと思ってるし。

 あいつ自身も良いヤツではあるし、和解も決して無理ではないと思うのだ。ただ、女心に対して致命的に色々と足りないから、かえって簪さんをもっと怒らせる結果になりかねないと危惧もしてるが。

 

 「あら、簪はわたくしもズルいと思っているのかしら? 司さんと試合をするは、専用機を持っているわたくしも入っておりますのに」

 

 俺が困っていると感じたのか、オルコットさんが苦笑しながら入ってくれた。

 専用機についてとか、一夏と簪さんの対立の事を俺が相談した事があったので、オルコットさんも色々と知っているのだ。こう言う代表候補生としての手助けは本当にありがたい。

 

 「いえ、セシリアさん「セシリア」……セシリアは努力して、実力で代表候補生になったんですから、堂々としてれば良いんです。

 実力も無いくせに、男だからって専用機を持つのがおかしいんです。司さんだって持ってないのに。……日本代表候補生だって、持ってないのに…………」

 

 簪さんは俺と美夜の事を本気で凄いと思っているみたいで、わだかまりがある一夏に負けると言っている俺の言葉を聞いて、またあの男がとか感じてしまったのだろう。

 オルコットさんにしても簪さんに本気で同情しているようだし、国家代表候補生だからこそ簪さんの気持ちが良く分かると言って、熱心に仲良くしようとしているみたいだがらな。

 

 打鉄弐式の製作を手伝い始めて一週間で、俺にも美夜にも簪さんは笑顔を見せてくれるようになった。

 だけど俺と美夜との共通の友達である、オルコットさんの前だとまだ緊張してしまうようだし、一夏と仲の良い篠ノ之を紹介するのは躊躇している。

 篠ノ之も良い奴なんだが、感情の抑制が上手くない篠ノ之と、今の簪さんが仲良くなれるかと言うと微妙なところだと感じてしまうのだ。

 

 「その辺りは簪さんには悪いけど、俺はご覧の通り拘ってないからな。ただ見れる程度の試合にはするつもりだから、簪さんも応援してくれ」

 

 「……はい、司さんもがんばって下さい。見に行けないですけど、応援してますから」

 

 「ありがとう。簪さん」

 

 それにしても、いつものメンバー(俺、美夜、オルコットさん、簪さん)で朝食を取りながら今日の事を話をしているのだが、どこかオルコットさんの雰囲気が沈んでいる様な気がする。

 そう思ってよく見れば、食欲もないようだし調子が悪いのかな?

 

 「オルコットさん、もしかして体調が悪いのか? 試合は午後からだから、それまで休んでた方が良いと思うんだけど」

 

 「いえ、体調は万全です。司さん。あの! …………今日はお互いベストを尽くしましょう」

 

 「……そうだな、お互いにがんばろう」

 

 俺を見つめるオルコットさんの瞳が揺れていて、何か大切な事を言いたいのだとは思う。

 ただ、これからの事を考えて手を抜く事ばかり考えていた俺は、オルコットさんの表情にどこか後ろめたさを感じていた。

 

 ***

 

 簪さんと別れて三人で教室に向かう。最近は女の子に徐々に慣れてきて、離れた場所から挨拶くらいなら出来るようになったのである。

 俺的には凄い進歩なのに、それを聞いたみんなの評価は微妙だった。ちくせう。

 

 ただそうやって俺たちがみんなと挨拶を交わしながら歩いていると、前の方を一夏と篠ノ之が並んで同じようにしているのを見て、原作から一番変わったのは篠ノ之だと感じる。

 

 篠ノ之は、何と言うか険が取れた。

 周りへの当たりも柔らかくなったし、一夏と他の女の子が話していても嫉妬して当たり散らすような事も無くなったから、いい方向に進んでいるのは事実なのだ。

 まあ、一夏の鈍感ぶりは相変わらずだけど、これは性格だから時間をかけるしかない。何せ当の本人である篠ノ之が、特効薬(既成事実)を拒否したから仕方が無い。

 ただなぁ……。原作のあれこれを考えると、篠ノ之は兎に角トラブルメーカーだ。

 嫉妬で要らない事をやらかして、その結果特に一夏に盛大に迷惑を掛けるのがパターンになってしまっていて、それを大人しくさせるのにも一夏を落とす事が必須みたいな考えが俺にはある。

 それとも俺と美夜が篠ノ之に対して言っているように、他の誰かが一夏を落としたら素直に諦められるのだろうか? 原作を見ていると、とてもそうとは思えなかった。

 

 色々と考えた結果、二人をどうくっつけるかを考えていると、じーっと見ていた俺の視線に気がついたようで、一夏が俺に聞いて来たから素で答えてしまった。

 

 「お前の残念っぷりを思って頭が痛くなったんだ。篠ノ之の苦労が手に取るように分かるからな」

 

 「ひでえ! 司だって似た様なものだろ!? 女子苦手だし!」

 

 「いや、まあ……。美夜とかオルコットさんに助けられてるのは事実だから、そう言われると何も言い返せないけどな。でも、少なくとも俺は二人に感謝してるぞ」

 

 「……俺だって、箒に感謝してる」

 

 「それを行動に移してるか?」

 

 一夏にそう言って篠ノ之の方を見るが、それを聞いた篠ノ之は目を細めて首を横に振ってダメ出しをしていた。

 

 「篠ノ之は足りないってさ」

 

 「司の言う通りだ。そう言うなら、司と同じフォローをして見せてくれ。

 取り敢えずは、明日の放課後に二人で食堂に行くぞ。まさか嫌とは言わないだろうな?」

 

 「はぁ!? い、嫌とは言わないさ。司だってしてるなら、俺にだって出来るし……」

 

 「そうか! 約束だからな!」

 

 滅茶苦茶機嫌が良くなった篠ノ之が、一夏に接近したせいで焦って挙動不審になっているのを見て美夜とオルコットさんとでハイタッチしながら喜んでいると、織斑先生が来たので席に着く。

 

 席に着く途中、篠ノ之は余程嬉しかったのか俺に向かって握手を求めて来たので、苦笑しながら応じた。お節介だと思うけど、相手は一夏だしな。

 これからの平穏な学園生活を送る為に、俺は篠ノ之に積極的に動いて欲しかった。

 

 そんな事をしながらいつもの日常を過ごして、いよいよクラス代表決定戦の時がやって来たのだった。

 

 ***

 

 試合をするにあたって、第三アリーナ内に設置されているブリーフィングルームに集められた俺たちは、織斑先生から説明を受けていた。

 

 「第一試合は織斑と聖、織斑の専用機の搬入が遅れているから少し待機だ」

 

 それを聞いて俺と緊張して口数が少なくなっている一夏が短い返事を返すのだが、それを見ていたオルコットさんが決意に満ちた表情で息を凝らしてから、真剣な表情俺の方を見る。そして、とんでもない事を言いだしたのだ。

 

 「あの……。織斑くんの専用機搬入が遅れているのでしたら、わたくしと司さんで戦わせて下さい」

 

 「それは……良いんだな?」

 

 「いや、良くないです! 織斑先生待って下さい!」

 

 思わず織斑先生とオルコットさんの話に割って入るが、普段ならそのまま出席簿が飛んで来そうなのに、先生はそう言う俺の方を見つめていた。

 その強い視線は、最近俺に何か言いたそうにしていたオルコットさんに良く似ていて、嫌な予感のするものだった。

 

 「先生、俺の対戦相手は一夏の筈です。お願いですから考え直して下さい」

 

 「……なあ、司。これは教育者としてのお願いだ。オルコットの為に本気を出してやれ。

 ――提案は却下する。両名はピットに行け」

 

 公然と逆らった俺を驚愕の表情で見ていた一夏が口を挟まないまま織斑先生が決定を下すと、これ以上の反論を許さないとでも言うように、俺とオルコットさんををピットから叩き出した。

 

 ***

 

 二人で並んでブリーフィングルームからピットに続く通路を歩く。分かれ道に差し掛かった所で、オルコットさんの足が止まった。それを見て、俺の足も自然と止まる。

 

 「司さん、お願いです。わたくしと本気で戦って下さい」

 

 「……」

 

 そう言ってオルコットさんは深く頭を下げた。

 最悪の事態になった。そう思って俺は臍を噛んだ。

 

 俺は未だに頭を下げているオルコットさんの顔を見る為に、膝をついて目線を合わせた後、ほんの少しの躊躇いがあったが、オルコットさんの(かいな)に触れて顔を上げてもらって、オルコットさんの目を見て話す。

 今は女の子が苦手とか言っている場合じゃない。オルコットさんの将来がかかっているのだ。

 

 「オルコットさんは人並外れた努力をして、イギリス代表候補生になっただろう。そんな事を言ったらダメだろ。こんな人目のある所で、たかが訓練機にボロ負けしたら言い訳が出来なくなる。

 ……必要な物だったら何でも用意するし、俺の知ってる事なら教える。それじゃダメなのかな?」

 

 オルコットさんは叫ぶように、今まで話せなかった想いを言葉にした。

 

 「わたくしは……。わたくしは、司さんも美夜さんも大切なお友達だと思っております。どうかお願いです。そのお二人と共に歩く権利を、どうか取り上げないで下さい」

 

 色々な思いが脳裏を(よぎ)った。しかし、それらとオルコットさんが並んでいないのを理解して、仕方が無いなと苦笑する。

 

 「分かった。良いよ、真剣勝負だ」

 

 「はい。司さん、ありがとうございます」

 

 そうして少しの間照れ臭そうにお互いを見つめ合った後、お互いのピットへと向かって行った。

 

 ***

 

 俺はISの準備をしながら、ため息をつく。

 

 この分枝世界に来る前は、俺の中の価値観はとても単純だった。大切な人(美夜、先生、”宿命”)(?)が全員揺りかごみたいな(秘密の世界)にいて、そこで穏やかに暮らしていたからだ。

 だけどISの世界に来て、初めて大切に()()()と思う人に出会ったのだ。

 俺は欠点だらけのポンコツエターナルだが、大切にしたい人の願いを叶えられないほどには情けなくは無いつもりだ。

 

 俺は篠ノ之博士をこのISの世界の支配者と見なしているし、必要以上に恐れていた。会った事も無いのに、自分の行動を縛っていたのだ。

 カオス・エターナルならそれも当然の事だ。あいつらは無数にある分枝世界をその分枝世界の住人に委ねて、余程の事が無い限り手出しをしない。

 だが俺はロウ・エターナルだ。そんな事など知った事では無いし、大切にしたい人が居るからこそ世界を砕かないと(うそぶ)ける存在だ。

 だから力の一端を見せれば警戒して、容易に手を出してこないだろう。そう思いつつラファールの拡張領域(バススロット)に、”聖杯”で作った意味有り気なガラクタを接続する。

 

 まあ、それでも俺の大切にしたい人たちに手を出すとするなら……。

 

 「来てみろ天災、全てを薙ぎ払ってやる」

 

 そうして、俺のISは空へと飛び出していった。

 

 ***

 

 美夜side

 

 「あーあ、やっちゃった」

 

 周りの凄まじいざわめきの中で、私は内心こうなると思っていた事が現実に起こって、楽しげに笑みを浮かべていた。

 

 「私もそうだけど、司もセシリアに甘いよね」

 

 交信の世界から始まった旅の中で、司にしろ私にしろ生れて初めて出来た大切な友達がセシリアだ。願い事の百や千くらいは叶えてあげようと思う。

 私の”絶炎”は破壊に特化しているけど、司の”聖杯”は願い事を叶えることが出来る、使い減りのしない願望機なのだから。

 

 「――でも」

 

 多分だけど、セシリアは司が好きなんじゃないかと思ってる。

 ただ司にはハーレム願望なんて欠片も存在しないから、私は大好きな司の願いを優先して叶えるだけだ。

 それにぽっと出の人に司を取られると思うと、お腹の中がこう……ふつふつと熱くなって来るし。

 

 「私は負けないし、司はあげないよ?」

 

 そうして二人ともがんばれと、私は無責任に応援するのであった。

 

 美夜Side out

 

 ***

 

 セシリアside

 

 「うそ!?」

 

 アサルトライフルと長柄の斧を持ったラファールが、馬鹿げたスピードで突っ込んで来ました。何でブルー・ティアーズより速いのかが全く分かりません。

 そこまでだったら何か特別な方法がある。そう思えば良いだけの話だったのに、真に驚愕したのは次の瞬間でした。

 

 「き、消えた?」

 

 目視どころかハイパーセンサーすらも欺いて完全に見えなくなったのを慌てて探すのですが全く分かりません。それでも警戒していると、突然頭頂部に出現して弾丸をわたくしに直撃させながらパワーダイブ。

 そのまま地面に墜落すると思われた瞬間に消えて、次の瞬間には最初の位置に戻っていました。

 

 「俺の本気の一端だよ。まあ、あんまり上手いとは言えないんだけどな」

 

 「これでですか!?」

 

 「ああ、俺の先生は俺より強い。だけど、今でも勝つことを諦めてない。だからオルコットさんも抗って見せてくれ」

 

 そう言った瞬間、停止状態からいきなりトップスピードまで加速しながら、わたくしをすり抜けてた後で背面飛行をしながら、ブルー・ティアーズの背面に弾丸を命中させるとそのまま消えて、次に現れた時には上面を取ったままこちらを誘うように停止しました。

 

 「絶対に

 

 「ん?」

 

 「絶対に! わたくしだって、諦めるものですか!!」

 

 「はは……。そうだな、じゃあライバルらしく行こうか。――かかってこい、相手になってやる!」

 

 誘いだとか、何故こんな事が出来るのか色々と考えなければならない事が沢山あるのは分かっています。

 でも約束した通り本当に司さんが本気を出してくれたのが嬉しくて、そのままもつれ合うようにわたくしと司さんはドッグファイトに突入しました。

 

 セシリアSide out

 

 ***

 

 ラファールは脆くて泣けてくるし、”虚空”の制御は難しい。

 それが分割思考で時詠みの時間制御と因果律操作、ついでに”虚空”の制御とラファールの操作を続ける俺の印象だった。

 最初に驚かせようとしてオルコットさんの射程に入ってロックをされる寸前に、十秒ほど時間を圧縮したらラファールが爆発しそうになったのだ。

 

 慌ててログ領域の記述の変更をして事無きを得たが、それから常時三秒ほどに抑えている。そして爆発しないギリギリまでに時間圧縮をして、”虚空”の能力を使って空間に溶け込み瞬間移動をする。

 俺はそれを”聖杯”のサポートを受ける事で可能としているが、先生は全て自身の能力だけで行っているのが信じられない。と言うか、因果律操作を使わないのに任意の場所に出現できるって言うのがデタラメだ。

 

 永遠神剣第二位・”虚空”。そして使い手は、”虚空の拡散”トークォ。

 先生の使う永遠神剣で、その能力は空間操作。物理攻撃は空間に溶け込む事によって絶対回避して、攻撃に関しては空間ごと切り裂く事によって物質全てを切り裂く事の出来る上に、先生はそれを利用して瞬間移動までするのだ。

 攻防一体どころか、移動力まで内包した永遠神剣。

 これを使って先生(トークォ)は、永遠神剣第二位の力を使うエターナルの中でも最強クラスの強さを誇っているのだ。

 

 俺の能力の法の迷宮での永遠神剣の改造品の第一弾であり、エターナルとして本気を出す以上は永遠神剣を使わなければ嘘になってしまう。

 まあ攻撃に使ったら、ブルー・ティアーズごとオルコットさんが真っ二つになってしまうので、あくまで移動の為に使っているだけだが、いい具合にオルコットさんは混乱しているみたいだ。

 

 「下に降りたか。そりゃあ、空中でドッグファイトだと勝ち目が無いしな」

 

 全能力を使い、ラファールの素材と部品精度をこの分枝世界で最高の物に変更。

 さらにPICを最適化して、速度と機動性を限界まで上げて時間圧縮を常時四秒に変更してオルコットさんを攻撃をするのだが、ハイパーセンサーで見たオルコットさんは諦めとは程遠い表情をしている。

 

 ……ん? これは……?

 

 時読みと因果律操作でオルコットさんの行動の常に先を読みしながら攻撃を続けていると、面白い選択肢が出てきた。

 俺はオルコットさんの因果律に干渉して、可能性の糸を補強して確定した未来へと変える。

 

 これは俺からのプレゼントだよ。オルコットさん。

 

 ***

 

 セシリアSide

 

 シールドエネルギー残量僅か。

 実体ダメージは本体は小破ですんでいますが、レーザービットは地上に降りて死角を減らしたうえで起動させたのに瞬時に撃ち落されて、ミサイルビットは信管を撃ち抜かれて自爆しました。

 

 「せめて、せめて一撃だけでも。…………当たって!!」

 

 わたくしは最後に残ったスターライトmkⅢで司さんを狙い撃つ。

 その瞬間に何時もの通りに消えてしまうのですが、いきなりそのレーザーが弧を描いて見知らぬ方向に飛んでいき、そこに出現した司さんに命中しました。

 

 「――あたった?」

 

 今起こった事が信じられなくて地上からハイパーセンサーで見みつめていると、高速移行を続ける確かに司さんの口が確かに動いたように思えたのです。

 

 よくやった。

 

 「あ……」

 

 それを見て嬉しくて動きが止まってしまって、次の瞬間わたくしは撃ち落されました。そしてわたくしは、わたくしの我儘の結果をその後に思い知ることになったのです。

 

 ***

 

 完膚なきまでに負けました。それでも、そこに後悔はありませんでした。

 わたくしと司さんには絶望的なまでの腕の差があるのは分かっていました。それでも諦めずにいた事で、一欠片の可能性を手に入れる事が出来たからです。

 この結果が、わたくしの将来にどう変化を及ぼすのかは分かりません。

 でも、ひとまずは成長出来た事を喜ぼう。そう思ってピットからブリーフィングルームに戻ると、司さんが織斑くんに殴り飛ばされていました。

 

 「てめえ、セシリアの事を大事にしてたよな。あれはなんだよ! なぶり殺しじゃねえか!! 何か言ったらどうなんだ、司!!」

 

 胸ぐらをつかみ乱暴に締め上げる織斑くんでしたが、司さんは織斑くんを見つめてはっきりと言いました。

 

 「あれは俺がやりたくてした結果だ。一夏に何を言われようと、やって良かったよ」

 

 「ふざけるな!」

 

 司さんは全く抵抗しません。そしてわたくしは、自分が仕出かした事がどういう結果になるのか全く分かっていなかったのです。

 

 司さんは隠していた事が表に出れば、色々と大変な事が起こるのは分かっていた筈です。それでも、わたくしの我儘を聞いてくれたのです。

 そして殴られようとする司さんを守る為に、わたくしは織斑くんを突き飛ばして、司さんを守る為に覆いかぶさりました。

 

 「ごめんなさい、司さんごめんなさい」

 

 自分の情けなさと醜さと浅ましさに涙が止まりません。そうしたら司さんが、戸惑いながらもわたくしの事を優しく撫でてくれました。

 

 「泣かないでくれ。オルコットさん、俺は大丈夫だから」

 

 司さんは、そう言いながら困ったような笑顔を浮かべています。その時に、わたくしはこう思ったのです。

 

 ああ、わたくしはこの人が好きなんだな、と

 

 でも、わたくしはこの思いを表に出してはいけないのです。なぜなら同じくらいに美夜も大好きだからです。

 

 だからきっとこれは、粉雪のような恋。表に出したら、溶けて壊れてしまうのです。

 

 そうして、クラス対抗戦は終わったのでした。

 

 ***

 

 「納得がいかない」

 

 そう織斑くんが言っていますが、知った事ではありません。司さんが許しても、わたくしは許していないのです。

 

 その日の夜に、織斑一夏クラス代表就任パーティーが開催されました。

 

 わたくしは負けて司さんは負傷退場した結果、織斑くんの不戦勝になったのです。

 

 「それと一夏。実はお前が女の子に物凄く恨まれていて、それの後始末を俺と美夜でしてるって言う事を教えておく。

 お代は俺と美夜が勝手に決めていて、一夏が泣き叫ぶまで奢らせる事になってるからからよろしくな」

 

 「はぁ!?」

 

 箒もその話に興味津々で、黒い笑みを浮かべています。

 

 「その話、ぜひ聞きたいな。司、よろしく頼む」

 

 そんな感じで司さんも、さっきまであった事を気にしないで織斑くんを出汁にして賑やかに騒いでいる所に、乱入者がやってきました。

 そして初対面にも係わらず、司さんに体を擦り付けるように密着してベタベタしています。

 

 「ふ、ふふ……」

 

 わたくしは知らず知らずの内に口の端が引きつるのを感じながら、どす黒い感情が浮かび上がって来ましたし、クラスのみなさんの怒りのボルテージも跳ね上がります。

 

 あの部外者共は、わたくしたちのクラスの鉄の掟 ”司さんにはお触り厳禁” を平然と破っているのです!

 因みにパーソナルスペースの設定でエキサイトしすぎて、血を見る寸前までいきました。

 司さんから近づいて行くのは構いません。ですがこれは、到底許せる範囲を超えていますわ!

 

 「ちょ、待て!? 助けてくれ、オルコットさん!」

 

 司さんが、わたくしを見て叫んでいます。

 

 だからわたくしは、少しの勇気を出してこう言いました。

 

 「これからずっとセシリアって呼んでくれたら、助けてさしあげますわ!!」

 

 セシリアSide out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




戦闘描写なんて初めて書きました。





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