「では、その配分で先程提示した契約金と月額使用料金で宜しいですね?」
〔う、うむ……〕
「あぁそれと、コア本体の事ですが……」
〔!ど、どうなんだ!?〕
「……失礼ながら、まだ信頼を寄せるには不十分ですね。今はαタイプISを増やして次の段階に進ませたいので、勿論データが取れた際は我々が製作する
〔そ、そうか…………すまないが、1つ聞いても?〕
「どうぞ」
〔そのデータは何時までに取れるのだ?〕
「……大凡の予測としては、約半年でしょうね」
〔!?〕
「勿論これはαタイプIS操縦者のデータが目標に到達、またはそれ以上になればの話ですが。補足しておきますが、αタイプISの譲渡条件は“代表候補生であること”と“αタイプISを家族として見れる者”というのも条件に入っておりますが」
〔な、成程……。だが何故、代表候補生なのか詳しく聞かせてもらえないか?〕
「……成長性、というのが1番の理由です」
〔成長性……?〕
「ISも成長する事で独自の【フラグメントマップ】を構築し、操縦者に合わせた機体となる。そして候補生という立場はデータの成長性が早く、我々も予想外な事を起こす
〔……いや充分に理解した。我々も、そのデータ採取の手伝いをしたい。構わないか?〕
「先ずは会社の審査、次に僕と篠ノ之博士の審査を受けなければなりませんが……それでも宜しいと?」
〔やるだけの価値ならある〕
「……成程。そうでしたら目処が立ち次第、ご連絡下さい」
〔!〕
「では、僕はこれにて」
〔あ、あぁ。態々夜分にすまなかった〕
フェンリルに映されたホログラム映像を切る。ラウラとの作戦を相談し終えた時は既に夕食の時間であったので、序でにラウラと夕食を食べたあとフェンリルから連絡が入った。
ちょうど勇はこの後寄る予定があったので、ラウラと別れてその部屋で蘭政府首相との対談を行っていた。そしてその対談を終えて、勇は一息ついたあと目の前の
「態々すみませんね、
「いえいえ。こんな何も無い場所で良ければ」
「……このご時世で、お人が宜しい御様子ですね。やはり
「そういう貴方は、先の件での活躍は如何なものでしょうか?」
そこで会話が一時終わる。今勇の目の前に居る男は、このIS学園の学園長である『轡木 十蔵』その人である。
同時に勇と1度すれ違った用務員である。
この世の中で男が目立つのも不味いので、何時もは轡木の妻が表舞台を立っている。だが勇のコア開発により、そろそろ表舞台に顔を出しても良いかと思案中でもある。
その轡木に勇は“とある提案”を持ちかける為に態々訪れた。勿論アポイントメントは取った。勇はフェンリルの量子格納域から纏められた紙束を取り出し、それを轡木に見せる。
「……これは?」
「
「ほぉ……」
轡木はその紙束を手に取り、粗方中身を拝見する。その間、勇は計画について話し始める。
「その計画書には
【このIS学園の編入試験にあるIS関連以外の指定教科】をクリアした男子学生の編入を進める趣旨です。残念ながら技術科に居る男子学生は対象に入りませんが、指定数が届かなければ技術科からの編入も視野に入れております」
「ふむ……成程。思い切った事をされますねぇ」
「そうでもしなければ、です。学園長を訪れたのは、この計画についての
「
「無理やり了承させるのは性分ではないだけです。この計画に難があるのであれば、来年度用の物を提出しますが……どうでしょうか?」
暫く思案する轡木。聞こえてくるのはフェンリルがソファに座った事で起こる擦れる音のみだが、緊張感は未だ続いている状態である。
そんな中、轡木は粗方読み終えた資料を閉じ一息つく。
「……かなり念入りに計画されている御様子ですし、検討はしておきます。但しクラス人数の関係もあるので、暫しお時間を頂ければ」
「了解しました。フェンリル、行くよ」
『わふっ』
勇の膝に顎を置いていたフェンリルは立ち上がり伸びをした後、降りて扉の前まで歩く。勇は轡木から計画書を受け取り一礼をしたあとフェンリルと共に寮へと戻って行った。
轡木はソファから立ち上がり、部屋の窓から見える外を覗く。街灯が道を照らし明るさのある光景を見ながら、少し思いつめ、口を開く。
「……緊急職員会議でも開きますかね」
それから日付が2回ほど変わった日の昼休み。まだ周囲は慣れない様子を見ているが、本人達は気にせず昼食を摂っている。
勇は趣向を変えて定食ではなく、うどんを食している。一方のラウラはオムライスを食していた。
「ふむ、オムライスも美味いな」
「因みにですが、オムライスは1953年創業の【煉瓦亭】で従業員の“賄い飯”として考案されたのが始まりなんですよ。賄いの割には美味しいですけど」
「元は賄い、今は日本でポピュラーな料理と。勉強になるな」
「因みにうどんも日本国内で幾つかの種類に別けられており、地域によって味や具材が違うんですよ。あと日本人は麺を啜る時に音を立てるのが一般的です」
「麺なのにか?」
「日本では普通なんですよ。他の国々の方は驚かれますが、ここでは
「……あとで部隊の皆に日本のマナーを教えとくとするか」
「是非日本に立ち寄る機会があれば」
意外にも和やかな雰囲気で食している。ここ3日間はラウラも食堂で勇と隣同士になって日本発祥の料理を食べている姿を確認されている。
そして昼食を終えて共にクラスに戻っていくという光景も目撃されている。ラウラが満足気になっている様子を見て勇は少し微笑むが、それをラウラに見られる。
「何だ?その顔は」
「いえ、嬉しそうな表情をされてるなと。来たばかりの頃はジャックナイフみたいに鋭い印象を受けたんですけどね」
「そんな感じだったか?」
「ええ。今じゃプラスチックナイフみたいです」
「例えが独特で分からん」
そんな他愛もない話をしていると、突然後ろから声を掛けられ後ろを振り向く2人。
「仲が良いな、お前ら」
「おや、織斑先生」
「教官ッ!?」
「ボーデヴィッヒ、ここでは先生か教論と呼べ」
そう言うと織斑千冬は勇の方に視線を移す。
「すまないが尾崎、少し来てもらえるか?」
「僕ですか?」
「場所を移して話がしたい……構わんか?」
「別に構いませんよ。あ、ラウラさんは先にクラスに戻っていて下さい」
「……う、うむ。分かった」
そう伝えるとラウラは先にクラスに戻って行った。勇と千冬は場所を移し人目があまり付かない場所で向かい合う。
「ここ最近、ボーデヴィッヒと行動しているそうだな」
「まぁペアですし、お互いの事を知ってトーナメントに望むのが最善と考えただけですよ」
「そうか…………
ボーデヴィッヒの事、感謝している」
「……はて、僕は利益になる行動をしているだけなんですが?」
「そう謙遜するな。お前とボーデヴィッヒが組んでくれて、ありがたいと思っているんだ」
「…………そうですか」
勇が返事に困る理由は幾つかある。先に篠ノ之束にラウラの経歴を勝手に教えられたが、彼女は
【
1人クラスに戻っていくラウラは、先程から感じる妙な感覚について考えていた。
━━━これは……何だ?何か足りない……のか?
━━━分からん。……だが、この感覚は何だ?
━━━あのコア開発者と離れた途端に感じた妙な感覚は何だ?
━━━……駄目だ、検討もつかん。だが…………
━━━…………足りない。一体何が?
しかしラウラは、そんな考えを止めようと皮肉の混じった笑みを浮かべる。
━━━……驚いたな、
━━━らしくないな。
彼女は、生まれながらに軍の兵器として育てられた存在である。故にその思考は兵器としての思考、人間としての思考を捨てたと思い込んでいる。
だが、今感じている感覚は
━━━そもそも、あのコア開発者と組んだのは国の為。分かっている筈だ。
━━━……分かっている、筈だが
━━━なぜアイツの笑顔ばかり思い浮かぶ?
━━━いや、ここ最近見せられているからだが……
━━━なぜアイツの笑顔で落ち着くのだ?
━━━……段々分からなくなってきたな。
━━━それに……あの時教官と話をすると聞かれた時
━━━なぜ、胸が締めつけられた?
まだ、
そして幾ばくか過ぎて、トーナメント当日。訪れてくる各国要人や企業関係者を来賓石に案内する生徒達がそこには居た。勿論、有名になった明石重工の社長やデュノア社社長のアルベールと社長夫人のロゼンタも訪れている。
そして意外や意外。準備中の生徒達の中に紛れる特徴的な髪色の持ち主が……
「へーいユウくーん!束さんがk」
「ふんっ!」
やって来た【不思議の国のアリス】の様な服装の『篠ノ之束』が勇の元に訪れたが、おもいっきり鳩尾を殴り膝を着かせる勇であった。周囲は篠ノ之束の登場に困惑している。
「あ……相変わらず、ハードな……愛…………だね」
「その口黙らせますよ兎、また何時もの如くなりたいんですか?」
この騒ぎを聴きつけた織斑千冬と篠ノ之箒が駆けつけて来た。やはり2人も余程困惑している御様子。
「束……!」「姉さん……!」
「おー……ちーちゃん、箒ちゃん。ちょうど良かった、たs」
「あ、すいません。害獣が出たので処理お願いします」
「害獣呼ばわりされた!?」
束の首根っこを鷲掴み、2人に差し出したあと勇は唐木の元に向かう。
「唐木さん」
「おぉ、勇君」
気さくに手を挙げて応える唐木。
「どうです?人員関係の方は」
「男女問わず多く来てるよ。全部雇用するなら子会社作らなきゃ」
「ま、全部は無理ですね。それでも良い兆候じゃないですか」
「あ、技術者志望の人も居るけど……どうする」
「ふむ……検討はします」
「ところで、学園生活はどう?」
「……僕がこの学園をどう思ってるか、知ってる筈ですよね?」
「まぁまぁ、それは抜きにして。友達連れてきたよね?」
「…………少し準備に入ります」
「……いってらっしゃい」
勇は一息ついて向かって行く。しかし表情は何処か優れない、というより少しだけ表情が険しくなっている。
「…………まだ、か。
まだ赦してないのね、
その頃、シャルルは父であるアルベールと義母であるロゼンタと会っている。その3人から会話という会話は殆どなく、強いて言えば戸惑いながら挨拶をした程度である。
「………………」
「………………」
「………………」
この空気感の中分かった事は、3人とも何か話すことが見つからない不器用な者であること。そんな空気を察した様にロック鳥がSDモードになって現れる。
『キューイ!』
「うわっ!……って、何で?」
『キューイ』
「これは……珍しいな。ISが自動で自立稼働をするなんて」
『キュー』
翼を広げて鳥特有の羽ばたきをして上昇すると、アルベールの肩に乗った。首を動かしてアルベール、ロゼンタ、シャルルを見て再度飛び立つ。それらを繰り返していく内に、少しずつではあるが雰囲気が良くなっている。
「おーい、シャルルー」
「あ、そろそろ……か」
『キューイ』
ロック鳥が待機状態に戻り、シャルルは一夏の元に行こうとしたが歩みを止めて2人に向き合う。
「行ってきます。
「!?」「!?」
そのまま一夏の元へと向かう。未だ驚愕している2人ではあったが、ロゼンタが涙を流しアルベールに寄りかかる。
その涙は脆く、儚く、美しい
ピット内で勇はフェンリルを撫でて、フェンリルの様子を観察している。尻尾を振っている辺り、そこは犬に似ている。
そんな中、勇は思案している。
「……なぁ、フェンリル。僕さ」
『わぅ』
「───いや、今は
目の前に集中しようか。フェンリル」
『わんっ』
フェンリルが自動的に待機状態になり、勇はフェンリルを装着する。ラウラと共にアリーナへと向かい、目の前の対戦相手を見る。
「『一夏、SEに気を付けて勝とう。勇もラウラも厄介だからさ』」
「分かってる!」
「『作戦通り、気ぃつけろよ』」
「あぁ。お前が負ければロック鳥の対処が難しくなるからな」
「『俺かよ』」
織斑一夏&シャルル・デュノア
VS
尾崎勇&ラウラ・ボーデヴィッヒ
獣と獣、人間と人間の対決が始まる。
───あー……いったい。鳩尾痛い
───束……なぜ此処に来ている?姿を現して大丈夫なのか?
───おっ?ちーちゃんが心配してくれてる!?
───話をはぐらかすな馬鹿者。
───冗談通じないなぁ。もー……姿の方は別に?ユウ君が今は対応するし、他の奴等も私よりユウ君の方が話し合いの余地があるからさ。
───……もう1つ聞こう。先程から言っている
───ユウ君のこと?そりゃ勿論
───あぁ、昔は有象無象とか言って興味無さげな態度を露わにする筈だったのだがな。
───……そうだね、うん。
───……はぁ。
───どうされました?唐木社長
───あぁ、アルベールさん。いえね、勇君のことで……
───彼が、何か?
───いや、勇君はこのままで良いのかって。彼もまだ16ですよ?
───はぁ。
───彼も色恋の1つや2つしてくれたら良いんですけど……中々上手くいかなくて。
───なぜ彼に色恋を?利益的に考えれば確かに伴侶となる人は必要になるのですが……
───それさえも作ろうとしなんです。だから無理矢理にでも…………あっ。
───何か、思いついた事でも?
───いや、どうせなら企業間の政略結婚という建前でデュノアちゃんを
───何て事考えてるんですか貴女は!?
次回『バケモノノシンイ』