昼休み。1人食堂に居る勇は目の前の定食を海老フライを箸で持ったまま見つめており、傍から見れば何をしているのか分からない状態となっている。そんな勇に対し、近付く事を試みる女子生徒が2人。
「おー居た居た。……何でボーッとしてるんだろ?」
「ね、ねぇ本音?流石に不味いんじゃ……?だってほら、何か考え事してるし……」
「大丈夫だよ〜。いーさんの持ち物から少し拝借したこのノートを使えば」
「何してるの本音!?それ窃盗じゃない!」
「細かいことは置いといて〜」
「置かない!」
「……結構響くんですが」
「おー、いーさん珍しー」
「ご、ごめんなさい。ほら本音謝って、ノート返して!」
「あ、いえ。ノートに興味を持って頂けるなら別段返さなくても構いませんよ」
意識が本音と隣に居る女子学生に向いた勇は、朝の時と同じ様に接する。本音の手にはノートがあったが、勇は咎める気は起きない。
そもそも、そのノートの内容に好感や興味を持ってくれる人物は少ないからだ。ならば興味を示してくれた者に関しては返さなくても良いと感じている。まだ他にノートはあるので、それに別のことを書いていけば良いだけである。
「あ、ごめ〜ん。いーさんの気を引く方法これしか思い付かなくて」
「あー……失礼、昔からのヤツでして。御迷惑お掛けしました」
「い、いや……迷惑かけたのはコッチ……」
「んー…………?」
急に本音の隣に居る女子生徒の方を見つめる勇、そして同時に何かを思いだそうとしている様子であった。目を瞑った途端、思い出したのか目を見開いて手を叩く。
「あぁ思い出した」
「何を?」
「そこの貴女、更識家の方ですね。んでっと……名前が『更識簪』さん、でしたね」
「ッ!?」
「おー……すごーい。当たってるー……」
「既に全世界の代表候補生の名前と機体名、あと武装や戦闘データは把握済みですから」
この発言が正しいとすれば、間違いなく勤勉という度を超えている。ある意味“研究者”としての素質が高い。しかも裏付けとしてセシリア・オルコットの身分、機体名、そして戦闘データと弱点に加えて勝率までも口にしている。
この発言を聞いていた周囲の生徒は勇に注目を集めていた。そしてその中には1組の一夏と『篠ノ之箒』も居た。簪は目の前の
何時の間に食べ終わったのか、既に定食の中身は平らげており深く息を吐いていた。その勇はというと簪に視線を向ける。
「簪さん」
「…………ハッ!な、何?」
「後日ですが部屋にお伺いしても構いませんか?」
『コイツは何を言ってるんだ!?』とその場に居た全員が思考を一致させた。当の勇に至っては真面目な態度で口にしていた。
■■■■■■□□□□
午後の授業はつつがなく終えて、今現在は教師:尾崎勇による一夏のIS復習を教室にて行っている。
「…………以下これらがISの基本構造となります。覚え方の復習として書いた内容を見ずに仰ってください」
「えーっと……」
「あ、良かった。2人とも居ますね」
副担任である山田真耶が教室内に入って来たことで、一時復習を中断する2人。何でも、2人には寮生活をしてもらう為に鍵を渡しに来たということ。一夏の方は通学と聞かれていた様だが、政府の意向で急遽変更されたそうだ。勇は既に寮生活を予想していた様子であった為か、不思議に思った一夏は勇に尋ねると返答はすぐに帰ってきた。
「今の所、僕らは世界に2人しか居ない男性操縦者。日本政府だけでは守りきれないと判断したんでしょうね、この学園に居させておけば貴重なサンプルを保護できる……大方そんなところですよ」
「さ、サンプルって……」
一夏の苦笑い、それに加えて山田の苦笑い。率直過ぎる意見だが、あながち間違いは無いと言える。事実、女にしか扱えないISを動かした
そんなことを他所に置き、指定された部屋の鍵をそれぞれ渡される。しかし勇と部屋番号が違うことを疑問に思った一夏は山田に尋ねた。帰ってきた返答には“急なことだったので”である。仕方ないといえば、そうかもしれない。さらに一夏は相部屋であった。
幾つかの注意事項を聞いた後、勇は一夏に復習しておく様にと念を押したあと別々の部屋へと向かっていく。
「……ん?」
勇は自室になる部屋の前に到着するが、その扉の前で立ち止まった。なぜ立ち止まったのかだが、勇は勘で当てるほど器用な人間ではない。どちらかと言えば
この学園自体元々女子しか居なかった為、女子の匂いというのは普通に漂っている。だが目の前の部屋からは匂いが強く感じる。
「あ、織斑先生。何か部屋に誰か居るr」
「ちょっとちょっと!待って…………あれ?」
何故かエプロンのまま外に出てきた匂いの正体。外に勇しか居ないことを確認すると、ため息をつく勇を他所に扇子を広げて口元を隠す。何故か扇子には“騙された”とだけ書いてある。
「試験以来ですね、楯無さん。また性懲りも無く……」
「今度は私の勝ちだと思ったのに……残念」
実はこの2人、初対面ではない。先程勇が言った様に試験の際に出会っているのだ。ISの実技試験でだが。結果は
まぁ、そもそもISのコンセプトからして違うため相討ちに持ってい行きやすかったというのもあるだろうが。そんな以前の事を他愛無く話し合いつつ勇は部屋に入る。
ホテルの様な内装は勿論のこと、外からの見晴らしも良し。中に入った勇はそう思いつつ自分の荷物からプラスドライバーとマイナスドライバーを両手に持って聴覚を集中させる。
「…………………あ、全部除去してくれてる」
「あら、何時盗聴器が仕掛けられてるって思ったかしら?」
「貴重なサンプルとしての扱いなので。さて……盗聴器も無いなら早速……」
2つのドライバーを仕舞うと今度は荷物から計17冊のノートを取り出すと、1番下に表紙に18と書かれているノートを差し込むと今度は表紙に5と書いてあるノートを取り出して中身をパラパラと捲っていく。
とあるページの所で止めると勇から唸り声が発せられている。そこからやはりブツブツと呟く声が聞こえてくるので、楯無はそっとノートを覗き込む。そのノートの内容を見て楯無は1つの驚愕を覚えずにいられなかった。
「打鉄弍式、倉持技研の担当だったが一夏君の白式に路線変更により制作を断念……まだ武装は不明だけど見た限り身長と体重は誤差それぞれ1cmと0.7kg。右寄りの重心は変わらずと。凡そ打鉄の改良型と考えて良いからベースを打鉄に合わせると……飛翔時の重量を0.23kg左側に増やして」
「ねぇ君、何時もこんなの書いてるの?」
「ん、えぇ。何時もの日課ですよ。勿論楯無さんの機体もありますけど……見ますか?」
「う、嬉しいけど……今は良いかな?」
そう。勇にとってノートにISの情報を書くのは日課である。所々の詳細が細かく、機体に乗っている本人でさえ気付かないことを計算して確認しているぐらいである。当の本人はまたノートに集中する。
楯無は玄関側のベッドに座り込むと地べたに座り込んでいる勇を見て、彼女らが集めた勇の情報の中の1つを思い出していた。
━━━【過集中】。これは主に
が、勇は単なる過集中とは思えない点が幾つかある。例えば授業と日課の両立。1つの物事に集中するならまだしも、2つの物事を同時に集中させるのは至難の技である。そしてISでの実技試験で、ある兆候らしき物が勇にあったのは誰しも明白であった。
【
「そう言えば簪ちゃんにお昼、何をしてたのかしら?」
「お誘いですが?」
翌日早朝、部屋で勇は起きた。全体的な伸びをしたあとバスルームで先に着替える。先に外に出て適当なベンチに座って日の出を眺める。
「─────ん?織斑先生の匂いだ」
ベンチから立ち上がり走る構えを取るが、これまた通常とは違う。つま先立ち、膝を曲げて左手を地面に付ける。
「わふっ」
姿勢を地面と並行にさせた状態で走り前に倒れそうになると片手で地面を叩き姿勢を保つ。走行中は勇の瞳孔は開きっ放しである。匂いの強い方を追うようにして走るとジャージ姿の後ろ姿が目に入ったが、勇は追い越す形で走り続けていく。
走る中、勇の体には異常な風圧を受けている。だが気にする素振りすら無い勇は獣の様に走り続ける。それを追っている織斑千冬が居るが、意外なことに並走していた。
「あの!これ!先生が!疲れません!?」
「安心しろ問題ない!それとお前の走り方は何時も独特だな!まるで獣みたいだ!」
「そりゃ機体が!あれですし!」
それから2時間、並走は続いていた。
□□□□□□□□□□
ぐったりとした様子で朝の食堂に到着した勇。口から何か白い物が出かけているのが分かる。しかし意地で起き上がり朝食を摂ることを心掛けた。死にかけみたいだが。
「お、勇だ。おーい……って真っ白!」
「へ?あぁ……一夏君、君のお姉さん凄いね。何あの速度、チーターが2時間耐久で走り続けてたよ……ゴホッ」
「ちょ、勇!?死にかけてるし!」
例えがあながち間違っていない為か、一夏も苦笑いを浮かべるしかなかった。普通のチーターは俊敏性を特化し過ぎてスタミナが無いので1分しか持たないのだが、勇から見た織斑千冬はその例えが当てはまっていた。
さらに肺内の空気が走り終えた時に殆ど消えかかっていたので体は空気を欲しているのと、体の細胞1つ1つが悲鳴を挙げているため吐血紛いをする始末である。
「……ってか、千冬姉とガチで走ったのか?」
「覚えてないです……でも」
「でも?」
「本気で並走してるのに姿がボヤけてました……」
「ガチ一歩手前じゃねぇか!」
既に食べ終えたトレーを持って立ち上がり片付ける。勇も勇で人間を辞めている様なものなのかもしれない。普通なら動ける筈が無いので。
しかし勉学となれば話は別。常時発動気味の過集中と並列思考によって真面目な態度で、尚且つ悲鳴を挙げている体と信号を受け取る脳を遮断させているかの様に普通に授業を受けている。授業が一旦終われば机に突っ伏して意識を失っている姿を目撃されている。
その状態の勇を興味本意で見た本音が、白目と表情筋がピクピクと動いていたことに驚いていた。
「コホー……コホー……」
「だ、ダース○イダー…………」
それから三日後、放課後に勇は本音に連れられてISの整備室まで案内されていた。序でに左手には5のノートを持っている。時たま勇の手の甲の装甲が楕円形の石がキラリと自発的に光っている。それを見て少しばかり微笑む勇であったが直ぐに到着する。
扉が開くと室内が廊下の灯りに照らされて多少中が見える。薄暗がりの中、1人水色の髪色の女子生徒が居た。
「か〜んちゃ〜ん!」
「本音、うるさ……い…………」
「どうも〜」
本音に近付きヒソヒソと耳打ちする簪だが、生憎勇には丸聞こえである。しかしその内容はさて置き、簪の見ていたコンピュータの方を見ていくと18のノートを取り出して高速で機体名や予定スペック、武装や修正点等をを書き写していく。
集中する勇は殆ど歯止めが効かない。が物事を1つ終えると一旦終了してノートを閉じる。そのノートを閉じる音に気付いた2人は勇の方を見るが、当の勇は簪に近付いて18のノートを差し出す。勿論、何をしているのか分からない簪は疑問を浮かべる。
「あの……これって…………?」
「貴女の機体に関する情報と修正点……ですね。このノートに書いておいたので、良ければ使って下さい」
「えっ…………!」
「早っ」
簪は恐る恐るノートを手に取り、書かれてある打鉄二式の項目を探す。それを見つけると簪は驚愕した。あの短時間で簪が悩んでいた課題点が殆ど解決されているからだ。バランスの問題、燃費性能の問題etc……それらをあの短時間で仕上げたのだ。
勇はお辞儀をして整備室から出ていこうとするが、その際簪に止められる。
「こ、これ……こんなの、受け取れない……!」
「それは自分で完成させたいから、ですか?」
「!……どうして、それを…………?」
本音に視線を向けるが首を横に振って否定する。勇はため息をついたあと呆れた様な表情で言った。
「楯無さんからです。貴女のお姉さんからの」
IS書くのが難しい……です( ´•ω•` )
三('ω')三( ε: )三(.ω.)三( :3 )三('ω')三( ε: )三(.ω.)三( :3 )コウシナイトヤッテラレネェゼ!