ウゴキハジメルモノドモ
───首尾の方はどうよ、亡国企業。
───問題無いわよ、女権の皆様方。貴女達のご要望通り、既に手筈は整ったわ。それで?あのコア開発者を拉致、若しくは……
───殺害よ。当たり前じゃない!あんな男に!しかもまだガキの分際で、ISコアの秘密を暴いて神聖なコアをその手で作り!あまつさえ世間に広めやがった!
───まぁまぁ落ち着いて。どうせ拉致すれば脅しなり何なりかけてコアを開発させれば、貴女達が贔屓してる企業に売り飛ばせるわよ。
───…………ええ、そうね。そうよね……!でもコアに男のデータなんて必要無い!作らせるのは私達だけに対応するコア……それだけよ。けど少しでも反抗の意思を見せたら人質なりなんなり取りなさい、反抗できないようにしてあげる!
午前5時、勇が寝惚けながら起床した。首を鳴らして欠伸をしたあと隣で寝息を立てて寝ているラウラを見る。そして考える。“誰が教えたのだろうか”と。
当然である。もしも一夏……それは無いので別の考えにする。もしも他の男であったのならば無防備な所を狙ってR18展開になるのがオチだ、そして勇とて男である。しなやかな曲線美というのだろうか、それが目に毒と感じている。
仕方なく勇は上のパジャマを脱ぎラウラの側に置く。ベッドから降りて顔を洗い眠気を吹き飛ばす。部屋に戻ると楯無が漸く起床した様だ。欠伸と寝癖が目立つ。
「お早うございます、楯無さん」
「ん……あぁ、勇君。おはよ……」
眠たげな表情の楯無と挨拶を交わし、制服1式を持ってバスルームに入る。
その扉が閉まる物音と同時にラウラが起床し楯無が困惑、さらに着替え終わった勇が出てきたので慌てて止めようとしたが聞かず何とも無さげにラウラと挨拶を交わし用意していたパジャマを着るように指示する。何とか大事な所は隠せた様だ。
だが勿論、楯無がラウラに尋ねる。
「ボーデヴィッヒちゃん、何で裸で居たのかしら?」
「む?夫婦が共に就寝する時はこうすると隊の者から聞いたのだが」
「……うん、分かった。取り敢えずハニトラは無いのね」
「逆に僕が引っ掛かるとでも?」
「無理矢理があるじゃない」
「フェンリルも居るので御安心を」
ハニトラに引っ掛かる要素は何処にもない。そう言わんばかりの勇はフェンリルを見せつけながら言うが、今度は溜息をついてラウラと話す。
「……一先ずラウラさん、自室に戻りましょうか。この部屋に居ると色々と不味いので」
「不味いというより犯罪1歩手前なんだけどね……」
「このままでか?」
「裸で出歩くと本当に不味いですから」
ということでラウラと共にラウラの自室へと向かう。その際ルームメイトから事情を聞かれたが、勇の性格は表面上とはいえ理解されているので説得はできた。
自室に戻ってフェンリルを介してホログラムを起動させると2件のメッセージが確認できた。勇はその内の1つを確認していくと、どうやらラウラに出すαタイプISが漸く完成したらしい。改めてホログラムにラウラに渡すISを確認した勇は、その画面を消してもう1つのメッセージを確認する。
その内容を見た瞬間、勇の体は固まった。そして廊下を走る音が近付いていきドアがノックされる。フェンリルのホログラムを消してドアを開くとシャルロットが目の前に居た。しかし慌てている様子であったが、勇はその理由を知っている。というより先程のメッセージは2人に関係している事柄であったからだ。
慌てた様子でシャルロットは勇に問う。
「ねぇ勇!これ本当なの!?」
「デュノア社とウチの会社が合意したらしいですね……唐木さん、何を企んでるんですか?というより僕達の合意も無しに……
何勝手に
朝刊のトップニュースになりそうな出来事をサラリと話した勇。聞いていた楯無はとても複雑な気分になったそうな。
午前7時頃。パジャマは既に返却済みのラウラと今朝のメッセージで眠気が吹き飛んだシャルロットと勇、何時もの様に居るセシリア、一夏、箒、鈴が席に着いて食事を摂っていた。
しかしシャルロットと勇は疲れた様子を見せている。勇は頭を抑え、シャルロットに至っては何を考えているのかブツブツと言っている。
「あの……勇さん、どうされました?」
「……いえ、ちょっと。はい」
「どうした勇、食事はキチンと摂らなければならんぞ」
「原因の1つである貴女が言える立場ですか?」
そんな事もありつつ、朝食を終えて教室に向かう。シャルロットは少し遅れて来るという。
そして朝のHRが始まるのだが、山田真耶の様子が疲れている。まぁ心当たりというより、そうさせてしまった張本人は山田真耶の近くに居るのだが。
「お、おはようございます皆さん。今日は転校生を紹介……といっても皆知ってる人なんですけど……」
誰か誰かと周囲の生徒達は騒がしくなる。入室の許可を一言入れると、そこには女子用の制服を着て現れたシャルロットが居た。全員が驚く中、シャルロットは自己紹介をしていく。
「初めまして、『
「と、というワケで。デュノア君はデュノア
心の中で謝罪する勇であったが、その後すぐに教室が騒がしくなる。そして核心に触れる一言を誰かが喋った。
「そういえば昨日……男子が大浴場使って」
「一夏ァ!」
大きな音を立ててドアが開かれると、その先には鈴が。かなり憤怒しているらしい。
「ちょ、ちょっと待て!俺は知らねぇよ!っていうか俺が出た時シャルロットは居……た…………」
首を油切れの機械の様に回し、勇に向かうと一夏は尋ねた。
「な、なぁ勇?シャルロットには……」
「……言える事は、何故あの様な行動をしたのかは理解出来ませんでした」
「あ、アンタねえええええ!」
衝撃砲が勇に襲いかかるが、フェンリルが自動で自立稼働しすぐさまグレイプニールで壁を作り事なきを終えた……かと思いきや途中で衝撃が来なかったのでフェンリルを待機状態に戻すと、ラウラがISを展開しAICを発動させていた。
「怪我は無いか?
「大丈夫ですが、その後の言葉は要らなかったです」
そしてラウラの嫁発言にセシリアが異議を唱え、かなりカオスな状況となってしまったが織斑千冬の一声により沈静化された。
そして昼休み、屋上にて食事中。セシリア、一夏、ラウラ、箒、鈴の5人は先に勇とシャルロットとの勝手に決められた約束事を発表した。といってもホログラム画面を映し、送られてきたメッセージを見せただけだが。
「「「「許嫁!?」」」」
「はい」
「あ、ははは…………」
「い、いいい勇さん!これはどどどどういう事なのですか!?」
「会社同士が勝手に決定した事項ですよ、本人の意見の尊重無視ですかそうですか案件です」
「……つまりは、シャルロットと嫁が夫婦になるということか?」
「あぅ……!そ、そうなんだけど……ハッキリ言わないでよぉ」
「勇!私というのが居て他の奴と結婚するのか!?」
「大声出さないで下さい。そして落ち着いて下さい」
「漫画みたいな事もあるんだなぁ……」
「許嫁……ハッ!そうだ政府に無理言って千冬さんに」
「貴様何を考えている!?」
この騒ぎに伝えるべきで無かったかと思う勇。しかし下手に遅く伝えてしまえば厄介極まりないという考えから、先に話せばまだ事は荒立てないと考えていた。
そんな中、フェンリルからメッセージが届いた事を知らされると勇はフェンリルを呼びホログラム画面を操作する。それを見ると数回ほど頷きホログラム画面を閉じる。
「シャルロットさん、ラウラさん」
「ッ!な、何!?」
「どうした嫁よ!?」
「今度の日曜、2人とも明石重工に向かいますよ。ラウラさんにはαタイプISの件で、シャルロットさんはロック鳥の件で来てほしいそうです」
「おぉ、完成したのか!?」
「……あぁ、うん。だよね」
「αタイプISって……って勇、何時の間に!?」
「ま、政府間との契約ですよ。契約」
「勇さん!」
「はい?」
「私も……私も行って構いませんか!?」
突然セシリアが声を荒らげて、そう勇に問いたため勇は少しの間固まって戸惑っていたそうな。
「……あの時の僕よ、選択を誤ったな」
「勇?何かキャラが……」
「壊れなきゃ、やってられないんですよ」
「疲れたなら寝た方が良いぞ」
「国連加盟国の全てと話すんですよ、寝れる時間限られましたからね?」
「「うわぁ…………」」
モノレールで外に出た4人は現在、駅に到着していたリムジンに乗り何故か勇の近くに3人が座っている状況になっている。ラウラの場合は勇の膝に乗っているのだが。因みにリムジンの方は、かなり最近に購入したもの──約900万円──である。
そうこうしている内に明石重工に到着。地下駐車場に入ったリムジンは社内入口前で止まり、4人は外に出て社内に向かう。ロビーで4人分のICカードを受け取り、社長室へと向かっていく。
社長室に到着すると唐木社長が出迎えてくれた。
「やっほー勇君。……あれ、セシリアちゃんも一緒なのね?」
「……勇?」
「……嫁?」
「1度セシリアさんを案内した事があるだけですよ。それより唐木さん、シャルロットさんと試験操縦者に選ばれたラウラさんです」
「あら!2人ともお人形さんみたいで可愛いわねぇ!」
「……で、1つ聞きますよ唐木さん」
勇はにこやかに、しかし腸が煮えくり返る様な怒りを微妙に出しつつ唐木に問う。
「なぜシャルロットさんとの許嫁が決定されたんですか?」
「いやそりゃあ、会社同士の協定結んでさ。跡継ぎが居るのにお互いが結婚しないなんて……会社自体がすると思う?」
「……もう良いです分かりました。確かに結び付きを強くさせるにはそうですね、こうしますよねハイ」
半ば諦めた様子を見せる勇を他所に、唐木はシャルロットに近付き小声で伝える。
「本当は早く勇君に結婚してもらいたいだけだから、心配しないでシャルロットちゃん」
「は、はぁ……」
「それに、満更でもないんでしょ。シャルロットちゃんも」
「!あのっ……!そのっ……!」
「分かってる分かってる。あ、勇君。この子達を案内しておくから蘭の代表候補生との話を済ませちゃいなさい」
「無論、そのつもりですよ」
3人は唐木に案内されて行き部屋を退出し、勇は社長席の机でホログラム画面を操作して通話画面に切り換える。
「束さん、そろそろ」
〔オーケーオーケー。もうすぐ着くよ〕
それと同時に社長室の扉が開き篠ノ之束が姿を現す。が、本人はオーバースペックの体を使用し勇の背後に回って腕を回した。かなり密着している。
だが勇は気にせず通話画面を切り換えて蘭から来た代表候補生に社長室へと入る様に促す。当の本人は勇の言葉で不機嫌になっている。まるで分かっていると謂わんばかりに。それでも勇は気にせず、対談する為にソファに座り束は隣に座る。
ホログラムを起動させて代表候補生のプロフィール、過去の情報、現在の専用機、過去の戦闘・訓練データを粗方読んでいく。それらを見た勇は頭を掻きながら少し唸る。
「面倒だな……エグいまでのレズビアン、自称恋人99人。男に興味無し、少しあちらよりが目立ちますね」
「ま、政府も躍起になってるって事でしょ。ISコアの解析を進めて蘭でも開発を可能にさせるためにαタイプの試験操縦者候補を選んだんだ。背に腹は変えられないってヤツさ」
「ま、何れにせよ。僕らは対談で決めるだけ、αタイプの特殊性が理解できなければ落とせば良いだけの話です」
「だよね〜」
その会話が終了したと同じ頃、社長室の前に目的の代表候補生が姿を現す。勇は操作で扉を開けて、やって来た代表候補生に対し立ち上がって礼をする。束の方は立ち上がりもしない。
「お初にお目に掛かります、『ロランツィーネ・ローランディフィルネィ』代表候補生様。知っておられるかと思いますが、男女共用型ISコア開発者の尾崎勇です。本日は」
「長苦しい挨拶は無しだ。早く済ませてくれ、待たせている恋人達が居るのだから」
「へぇ〜……政府の思わk『わんっ!』うぉぅ!」
突如フェンリルが自立稼働し、束の言葉を遮る。それに驚くが、どうでも良いという風にフェンリルを撫でる束。1度は鳴き声でフェンリルの方を見たロランツィーネだが、すぐに視線をソファに移し、ソファに向かい座る。
勇と束の第一印象は、この時点で完全に低評価であった。
───あ"〜……とっても愉快だったわ。まさか全部コア開発者の掌なんて思ってねぇだろうなぁ、あのバカども。
───おぅ、お疲れさん。
───オータムさん……あざっす。
───悪ぃな、交渉役任せちまって。スコールは名前変えて色々操作してるから迂闊に出せねぇし。
───良いんすよ全然。……ところで、【アラクネ】の方は?
───ん?普通に居るぞ。ほら頭の上。
───うぅ…………
───んだよ、まだ蜘蛛嫌い治ってねぇのかよ。
───に、苦手なモンは苦手なんすよ。どうしても蜘蛛だけは……ちょ!うわっ!飛んで来た!
───アラクネは大層お気に入りみてぇだけどな。
───嬉しくねぇっす〜!
───これが……私の…………
───何というか……
───ふふんっ、この子を侮るなかれよ。この【アルミラージ】は陸上での機動性は抜群だから!
───【アルミラージ】……兎の幻獣ですか
それぞれの出来事。過去と今。場所は地下にて。
次回『アルファノシカク』