【レゾナンス】この地域の大型ショッピングモールであり、訪れる人は多い。様々な商業施設がこのレゾナンスに集まっている為、揃わない物は殆ど無いと言っていいだろう。だが……ここに
「ほー…………」
「勇……多分、多分なんだけどさ。
「はい」
シャルロットの予想通りであった。そもそも勇はISコアの研究や機体製造の指揮などに時間を費やしていた為、この様な商業施設に訪れる機会や興味が無かったのだ。
ラウラは軍属とはいえ部隊の者達と買い物に行く機会はあった為か、勇ほど驚いた様子を見せない。この違いにシャルロットは頭を抑える。
「……勇、今日来た以外に外には?」
「学校に行く以外は何処も。地下のドーム見ましたよね?あそこで運動不足は解消できますし」
「…………セシリア、ラウラ。分かってるよね?」
「ええ……痛い程」
「効率的で良いな」
「……そうだ、ラウラはそうだね。うん」
セシリアとシャルロットが頭を抑えラウラが疑問符を浮かべている中、勇は人の多さや様々な色合いによって目を疲弊させていた。
セシリアとシャルロットの2人は勇の手を握り、勇はその感触で2人に向き合う。
「?どうされましたか」
「勇」「勇さん」
「はい」
「ちょっと付き合ってもらうよ」
「少々お付き合いして下さいまし」
「え?……ちょ」
2人は勇の手を引っ張ると何処かへと連れていかれた。
「お前達!私を置いていくな!」
『ヴー!』
自動で自立稼働状態になったアルミラージとラウラが3人を追いかける。アルミラージは兎特有の素早さで早く到着し、勇の背中を登ろうとするが服で落ちていく。アルミラージに気付いた勇は慌てて後ろに手を回して支え、後からやって来たラウラに渡そうとするが暴れる始末。
結果、アルミラージは勇に抱えられる結果となってレゾナンスを徘徊するのであった。
因みに勇がレゾナンスに来て良いのかという心配であるが、亡国企業の面子が4人ほど護衛に当たる結果となった。尚3人は未だにこの事実を知らない。しかし一般の方々は男女共用型ISコア開発者が現れた事で騒然としていた。
先に昼食を済ませ、一行は水着売り場へと向か……う前に先ずはラウラの服からであった。何せ
「服ですか……パジャマとか対談用に正装とか、研究着とか位が殆どでしたね」
「よし勇のも買おう。これ決定事項だから」
「はぁ……?」
「というより、今も対談用の服装なのですが……」
「着替えるのが面倒なので」
「だろうと思った」「だろうと思いましたわ」
『ヴー』
「アルミラージ……今だけはその体が羨ましいぞ……!」
『ヴン』
先ずはラウラの服を探す為に女性物の服売り場に到着する一行。勇は入っても良いのかをシャルロットに尋ねるが、強制的に連れていかれるそうだ。
そうしてラウラの服決め、もといラウラのファッションショーが始まったのであった。時間にして1時間半ほどであったそうな。
しかしその途中で勇のスマホに着信が入り、勇はその場を離れる事となった。ワイヤレスイヤホンに繋げて電話に出た。
「はい尾崎です」
〔はぁ〜い。久しぶりね勇君〕
「……スコール、貴女が連絡してきたという事は」
〔あら残念。折角少し世間話でもしようかと思ったのに〕
少し瞼を閉じて話すのを止める勇。瞼を開くと真剣な顔付きで尋ねた。
「……御託は結構です、
〔ざっと5000万ね。ま、残念としか言い様が無いけど。こっちは
「成程。ではそのまま目的の方を完遂させて下さい」
〔了解。あ、今度の休みに久々に居酒屋にでもどう?久々に楽しみたいわ〕
「……終わり次第なら」
〔なら決まりね。それじゃあ〕
「ご武運を」
電話を切るとまた一旦瞼を閉じて少し息を吐くが、そのままの勢いで眠りそうになった。それをアルミラージがお得意の後ろ蹴りを食らい、腹を抑えながら目を覚ます。
「あっはっはっはっ……痛かったけど、ありがとね」
アルミラージを優しく撫でると目を閉じて嬉しそうに身を寄せる。アルミラージを抱え上げ再度3人の元に向かうと、ラウラが今着ている服を見せてくる。
勇は微笑みながら似合っている事を伝えると、若干狼狽えながら嬉しそうな声でシャルロットとセシリアの元へと向かって行った。そんな様子を見ている勇は、自分の両手に力を込める。
胸に秘めるのは、たった1つの意思のみ。
今度は勇の私服決めである。シャルロットやセシリアがあれやこれやと服を決めては勇は着せ替え人形となっていた。心なしか、シャルロットとセシリアはそれを楽しんでいた。ラウラはアルミラージと共に着せ替え人形となっている勇を眺めて感想を述べたりしていた。
体感的に長い時間を掛けて決めたのは、それぞれ白、グレー、青の服と青のデニム、黒、紺のズボンの合計6つのみ。最終的に落ち着いたのが無地系のものである。
流石に選んで貰ったとはいえ自分の着る服なので、勇は財布から
「というより勇、なぜブラックカードなんてものを持っているのだ?」
「ん、あれですか?」
少し思い出す素振りを見せながら勇は言う。
「んーと……確か預金額が急激に上昇して、それからカード会社からカードの入った封筒を受け取って」
「さーて今度は水着だよ」
シャルロットが話に割り込み中断させられるが、少なくともそのカードの話はこの様な場所でして良い訳が無い。そんなシャルロットの判断にセシリアも安堵したが、この歳でブラックカードが貰える勇はどうかしている。
水着売り場だが、そこは男女別になっているため一旦3人と分かれる。行こうとしてアルミラージが足元に居ることを確認すると、仕方ないので再度抱え上げて見て回る。といっても大体が同じ様な形なので、あとはデザインだけだが。
とここで話は変わるが、兎は基本的臆病であり警戒心が強い。故に自ら知らない者の傍には近寄りはしない。
ましてや
『ヴッ!』
『ガウッ!』
「ッ!?くそっ、離せ!」
勇は後ろを向いたままであったが、声の高さなどで性別と年齢を当てる。その後金属音が聞こえたので目的の予想が付いた。
「……大方、女尊男卑の過激派ですか。貴女の年齢は20代後半で、先程の音からして僕を包丁で刺そうとしましたね」
「ぐっ…………!くっ……!」
後ろを振り向くと、ちょうど20代後半の女がフェンリルのグレイプニールによって捕まり近くには持っていた包丁が落ちていた。どうやらアルミラージは包丁を持っていた
勇は落ちた包丁を拾うと峰の方を自分に向けて刃を持つと、そのまま
言い終えると勇は離れ、フェンリルはグレイプニールを解きアルミラージはフェンリルの背中に乗る。逃げた女を見届けるかの様な視線を向けた勇は、フェンリルからホログラム画面を出現させ操作していく。
そしてホログラム画面を閉じると、勇は表情を戻してアルミラージとフェンリルに向けて笑顔で優しく撫でる。尻尾を振るフェンリルと、もっと撫でろと謂わんばかりに頭を上げるアルミラージ。フェンリルは待機状態に戻り、アルミラージを抱えて水着を選ぶ。
選んだ水着は全身に着るタイプのものを選び、サイズを確認して購入する。その際、男性店員から写真を撮っても良いかと聞かれたが勇は何時もの調子で承諾しツーショットを取られる事となった。満足そうな店員に一言挨拶をしたあと勇は3人を待つのだが、どうやら先に終わっていたらしい。
アルミラージに何かを告げた後、アルミラージは待機状態であるシュシュになり勇はラウラの手首に通す。
「では、ラウラさん」
「何だ、急に」
「いえ。アルミラージを大切にしてやって下さい、とだけ。貴女の
「無論、大切にするに決まってる!」
胸を張り堂々と応えるラウラの姿勢に、何処か安心感を覚える勇は優しい笑みを浮かべた。その笑みに一瞬何かが消えかけていた3人だったが、すぐに正気に戻った。
そうして長い1日を終えて、4人は学園に戻って行く。
これから起こる事を知らずに。
その4人が出かけていた間、IS学園では職員会議が行われていた。招集を掛けたのは轡木
「本日は教師陣の皆様にお集まり頂き感謝しております」
丁寧な口調で挨拶をする轡木(妻)。職員会議に呼び出されている1年の教師陣、果ては2・3年の教師陣もが注目する中それは話された。
「では今回の職員会議なのですが……
【二学期男子学生編入計画】についてお話したいと思います」
一瞬で辺りがザワついた。それもその筈、このIS学園は殆どが女子。つまりは前時代の
だがこの計画には、今の時代の
ザワついている中、轡木(妻)はその計画の内容を発表していく。
「この計画は先ず、男女共用型ISコアの制作に伴ったものです。幾ら尾崎勇が開発したコアが常識を変えようとも、今の学園では男子学生への適切な対応が充分では無い。
その為に何人か男子学生の編入を認め、学園の対応と偏見を変えていき最高峰の教育機関という立場を確立させる計画です。
この計画には
【編入試験でIS関連以外の指定教科】をクリアした男子学生を
ここまでで何か質問がある方は?」
颯爽と意見を申し出たのは織斑千冬であった。
「学園長、先ずは何故二学期という中途半端な時期なのでしょうか?」
「……今、時代は変わりつつあります。
本来男性が乗れることが無かったISを、ここの生徒である尾崎勇がコアを新たに開発したことで世間の認識は大きく変わりました。
ですが、その認識は
尾崎勇という
世論に良い影響が与えられているにも関わらず最高峰のIS教育機関の我々が女尊男卑という
だからこそ我々は一刻も早く男子学生の入学計画を進めなくてはならないのです。
この計画は、ある程度の新たな
織斑千冬は座る。しかしこの意見に反対の意思を持つ者も居る事を忘れてはならない。
「しかし学園長、幾ら何でも早すぎると思います。来年度に持ち越すというのは?」
「それも思案しましたが、恐らくそれでも
もし来年度に決まったとしても、その時彼らは何も知らない者達です。混乱の元に成りやすい。
ましてや2年がたった2人というのも問題が生じます。このままでは5年かかって漸く抵抗無く男子学生が入学できる可能性なんです、それでは先に女尊男卑の時代に叩かれ今の態勢に逆戻り。
だからこそ少なくても男子学生を試験的に編入させる事で、後々の混乱を減らす事ができる。私はこう考えています」
要は現在男子学生が織斑一夏と尾崎勇しか居ないこの学園に、もしも男子学生が来年に入学したとしよう。未来の事を考えれば、必ず何処かで不和が起きる。
つまりは、このIS学園に対する世間の評判や、もしもの不和の解消という事を考えた計画でもある。
多数決を取ったが、早い話織斑千冬が賛成に入った事で色々と賛成派に手を挙げる人物は多かったが反対の意見もあるのでまた後日となった。
そして反対派の中には……女権と繋がっている人物が居た。その女は怒りや不安が入り交じった感情を露にしていた。
───失敗?
───は……はい…………
───チッ!使えないわね!…………私よ、何?
━━━不味いことになりました……
───何よ、不味いことって?
━━━学園が男子学生の編入計画を進めています!
───なっ……!?それは確かなのね!?
━━━職員会議に出席していたら、突然学園長が……
─── 一体何を考えているの……?
━━━で、ですけど。やはりこの話題も、あのコア開発者の尾崎勇の影響です。
───…………ッ!アイツがッ…………!
───お困りみたいね
───?!亡国企業!
───こうなってしまえば、維持でも尾崎勇を拉致か殺害しなきゃねぇ?
───分かってるわよ!それぐらい!
───!
───おや、何か思いついたかしら?
───……えぇ!良いのが思い付いたわ!
───明石重工を餌に釣るのよ。
動き出す陰謀。それは逆鱗と知らず。
次回『ウソトワナ』