時代は一変した。いや改革
女性至上主義という風潮も世論によって殆ど弾圧され、その勢いは世界中に広がっていった。勿論、女性至上主義の中でも異性同士が配偶者となる者達は居た。その者達は互いに喜びあい祝福した。
一方、女性至上主義が広まり過ぎた日本では女性権利団体の不正発覚もあり芋づる式に犯罪者が逮捕されていく。そして内閣では主に男性議員が中心となり新たに政策を進める準備を始めている。
たった1日、然れど1日。あの1日を機に女尊男卑の者は批判を受けられる事になった。例えその人物に子どもが居ても、この出来事で過激な思想家が増えている影響か迫害を続ける者が居る。
このままでは単なるバッドエンドだ。それを予想していない
確かに女尊男卑の風潮は男性にとって生き辛く、迫害を受けてきたかもしれない。かと言って同じように迫害をしていけば、また女尊男卑の風潮に似た時代が出来上がってしまう。同じ過ちを繰り返すという事は、どう足掻いても悲劇しか生まない。
例え自分達が苛立っている中でも、復讐したいと考えていても。そんな行動をすれば救いようの無い人間になるのは自分自身になる。思いとどまって欲しいという願いを勇は全世界にぶつけた。
幸いその演説がその出来事の翌日、その時勇は明石重工で寝泊まりをし束監修の元行った為か思いとどまる者は多かった。だがこれは“人の振り見て我が振り直せ”という風に、かつての横暴であった人を振り返り自分達は
だがその数は少なかった。言い方を悪くすれば“前時代の屑になりたくない”という思いがあったというのが深く関わっているからだろう。
そんな中、その出来事を起こした当事者である勇は新たな日本政府内閣に協力したり警察機構に話をつけたりと大忙し。単一能力によって動けなくした楯無はというと、時間が経った事で動ける様になっていた。
世界を変えた。それだけで忙しくなった勇は2徹、3徹と時を過ごし我が身を削りながら国家や国際機関との対談を行ったりと多忙過ぎて学園に向かう暇が無かった。
だからこそだろうか、臨海学校間近というにも関わらず明石重工の元に幾人かの人物がやって来ている。ホログラムの使い方を覚えたシャルロットが訪問のアポを唐木に取り、ここに来ていた。
「デッッッッッカ」
「そりゃアンタ、今じゃ世界企業の仲間入り果たしてるのよ?」
「競争相手である倉持技研が倒産の一途を辿っている事もあるだろうね」
そう。女性権利団体の不正が発覚した事で巣窟とも言える倉持技研が実質権力や株価などを落としている。その事を踏まえてか唐木は一夏を連れてくるように指示を出したのだ。
「だが今回の目的は……」
「ええ。なぜ勇さんが」
「あら、皆ここで何をしてるのかしら?」
急に声を掛けられた事で慌てる6人、後ろを振り向くと更識楯無と更識簪の2人が来ていた。
「お、お前はッ!なぜここに!?」
「私は政府からの御通達があったからよ」
「……同じく」
「それより、何で貴方達がここに居るのか。だけど?」
「僕がアポを取って許可してもらったから……じゃあ駄目かな?一応デュノア社と協定結んでるし」
「便利ねぇ、そういうの。今度からそうしましようかしら?」
“仲介役”と書かれた扇子を広げて口元を隠す素振りを見せる楯無。
「あ、あのすみません。1つ聞いてmッ!?」
「あー!すいません!ちょっと良いですか!?」
「え、ええ。構わないけど……」
「どうやらお互いの要件的に都合が良いと思うので、一緒にどうかなーって!?」
「私は別に構わないけど……どう?簪ちゃん」
「……断る理由も無いから、別に良い」
「なら行きましょう今すぐ!」
一夏の口を塞いだ鈴が素早く2人の背中を押すようにして前に移動させる。何故かと問いたくなった一夏であったが、それをラウラが制する。
「いや何すんだよ?」
「一夏、分かるか?あの事は簡単に話してはならない。ましてや勇と
「……それが?」
「普通勇には既に護衛の1人や2人付いてもおかしくない。だが現状維持であった……大方、護衛が
「……って、それだと!」
「皆、ICカード着けて。えっと……」
「更識楯無よ。こっちは妹の簪ちゃん」
「ちゃん付けは辞めて。更識簪、宜しく」
こちらこそと応えてICカードを全員分渡すと、そのまま社長室までエレベーターで向かう。先頭にシャルロットが位置し社長室前の扉の傍にあるベルを鳴らすと、自動で開く。
「やー態々来てくれてありがとうね皆。あ、楯無ちゃんと簪ちゃんは座って座って」
社長席から立ち上がる唐木社長。2人は誘導される様に座り、そのまま2人に話す。
「あ、そろそろ勇君が」
「お早うございます……」
「お、勇……ってどうした!?」
勇はかなり疲弊感を覚えている様子であった。目はうつらで瞼を閉じれば直ぐに寝そうな位の様子であった。服装はシワの入った研究着の様なものを着ている勇は、来ている6人の方に視線を向ける。
「おや……?皆さんお揃いで、どうかされました?」
「……勇、まずは見てほしいのがあってね」
疑問に思う勇はシャルロットがロック鳥の量子格納域から1冊のノートを取り出す。それを受け取り確認すると、12のノートに付箋が貼られており何かと思い確認した。
「!?」
「勇、話して。全部」
「……唐木さん、少し予定変更です。面接の方をお願いします」
「あら、どうしたの?」
「
「……そっか。了解」
唐木社長は社長室に歩み、勇は手招きして6人を案内する。全員出ていった事を確認すると唐木社長はホログラムを操作して扉を閉めると、2人の前のソファに座り対談していく。
「さてと……ごめんね2人とも、急遽変更になって私になっちゃった」
「いえ、態々お忙しい中に対談の承諾をして下さり感謝しております」
「そう固くならないでほしいわ。対談といっても、簡単な質問をするだけだから」
「はぁ……」
一方の勇は6人を案内するが、社長室に続く道の途中で止まった事で何も知らない3人には不審がられる。
「どうした、急に止まって?」
「ちょっと早く……って、何してんの?」
勇は左の壁にある壁の一部を押す。その場所だけへこんだ直後、その右側の壁が両側スライドドアの様に開きエレベーターが現れる。1度地下を訪れた3人は技術力の結晶だと改めて感じ、残りの3人は驚く。
「スッゲェ!何だこれSFか!?」
「違うわよ一夏!これは……あれよ!何か特有のあれよ!」
「まるで意味が分からんぞ!?」
「3人とも、早く乗って下さい」
既に乗っている4人は気持ちは分かるから早く乗れと謂わんばかりの視線を向けており、勇に急かされて3人は業務用サイズのエレベーターに乗り込む。
地下へのボタンを押すと、そのまま一気に降りていき到着する。ドアが開かれると勇は真っ直ぐ歩いて行き、それに続いて6人も歩んでいく。
「……ホント、何だここ?」
「本当に会社なの?この施設」
「ボクらも初めて来た時は驚いたよ。設備が凄すぎて」
「ドーム状の地下訓練場まで用意されてますわよ」
勇が扉の前で止まり、右側にあるスキャナーにISを装着させた右手をかざす。解析が終わりピッという音が鳴ると、ドアが右側にスライドされて管制室と思わしき場所に出る。
開いた扉の音で7名の方に顔を向ける人物が居た。
「おー勇君、早いお帰りだね」
「少し話があるので奥様に任せてもらいました。
「……はっ?唐木?」
「あの女性と同じ苗字……それに、奥様ということは」
「ん、あぁ失礼。先に自己紹介を。
彼は『唐木
「ご紹介に預かった、唐木清司だ。宜しくな皆」
かなり気さくな態度で接する唐木清司の第1印象は残りやすい。眼鏡をかけて、あごひげを少し残している顔からは渋い大人という風格を見せ付けている。しかし服装は研究着だ。
「よ、宜しくお願いします……織斑一夏です」
「おっ、件の男性操縦者が君か」
「は、はい」
「ちょうど良かった。【リンドヴルム】も完成間近でね、皆来てくれるか?」
「……えっと、りんど…………何て?」
「ハッハッハッ!まぁ分からないのも無理は無いな!だったら尚更付いてくるべきだ」
全員を先導するかの様に招き、8名は別の廊下を進んでいく。カーブ状に曲がった廊下はドームに沿った形で設計されており、要所要所ではガラス張りの所でドームの様子を見る事が出来る。
一行は階段を降りて左の道に進み、暫くした所のドアの前に清司が立つ。傍にあるスキャナーに手をかざすと音が一瞬だけ鳴り扉が開かれる。
今度はエレベーターであり、全員それに乗り込む。
「……なぁ勇、一体何処に行くのだ?」
「そうですね……まぁ見れば驚くのは間違いありませんが」
エレベーターが下に到着して扉が開かれる。
そこには研究着を着た多くの男性と機械に加え
「うっわぁ……!凄い…………!」
「こんな設備が……明石重工にあったのか…………!」
「地下にしては設備が整いすぎですわ……!」
「ここで……αタイプが作られてるってこと?」
「だとすれば、私らは中枢に居る事になるな……」
「スゲェ……!」
「明石重工特設の【
1行は少しだけ歩き少し開けた場所に到着すると、そこから女性2人が歩み寄ってくる。
「おう……尾崎じゃねぇか」
「あら、勇君」
2人は並んで歩いていた様子だが、何処か距離が近い。そう思う6人を他所に、勇は2人に挨拶をする。
「お疲れ様です。
「「ッ!?」」
2人は驚いた様子を見せていたが、少しすると頭を抑えたり目頭を抑えたりして溜息をする。その様子に困惑していた6人であったが、勇は6人と向き合い話をする。
「ご紹介します。彼女らは
「「「「「「!?」」」」」」
6人は驚き、その2人を見やる。それぞれ『スコール』『オータム』と呼ばれた女性は何処か疲れている様子を見せている。
先に一夏が勇に尋ねた。
「……勇!何で…………何で俺の誘拐を実行した奴等を!?」
「彼女らには報酬を提示して
「ッな!?」
「雇った……?」
「ええ。契約金3億、給与もそれなりに与えて」
勇は先程シャルロットから渡された自分の12のノートを見せながら言う。
「皆さんは、僕と亡国企業との関係が知りたいと。そして何処で、何時、どうやって知り合ったのかをお聞きしたいのですよね?」
6人が顔を見合わせ、勇に頷く。確認した勇はフェンリルのホログラムを起動させ、ある人物を呼び出した。
軽快な足音がその集団に近付いており、最終的には勇の後ろから近付いている者が確認された。
「ヘーイ!ユウく〜ん!束さんを受け止めて〜!」
「姉さん!?」
「束さん!?」
一夏と箒はその声の主である束に驚くが、勇は横ステップで避けて襟首を掴んだあとに首を掴み6人に向けて差し出す様に見せる。
「あぁん!もう、恥ずかしがり屋さんめっ!」
「黙って下さい、口を閉じて下さい、顔面埋めますよ」
「あはっ!構ってくれる辺り優しいのは変わらn」
「ふんっ!」
「へぶっ!」
宣言通りに束を地面に埋めると、手を離して払う。亡国企業との関係は束が仲介して雇ったというが、詳細を聞くには束が頭を引っこ抜くまで待つしか無かった。
次回『キミハナニヲミル』