魔狼は学び舎にて   作:Haganed

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難産でした……_(:3」∠)_


キミハナニヲミル

 漸く束が復活すると先ずは顔に付いた破片を取り払い一夏と箒にハグをする。突然の出来事に戸惑う2人だが、すぐに束は離れ件の話をしていく。当事者である勇はというと……

 

 

 

 

「……篝火さん、これ」

 

 

「おー、【スリヴァルディ】がどうしたのかな?」

 

 

「いやどうしたじゃなくてですね。僕の計算だと、この出力じゃスリヴァルディが85.2%の確率で初撃破損しますよ?」

 

 

「んーそうか?」

 

 

「そうか?じゃなくて。この場合だとIS本体の出力と同調させて調整させる様に設計してますよね?なのに何でパッケージ出力を上げてるんですか?」

 

 

「あり、ホントだ」

 

 

「すぐに直して下さい。独自の考えは御自身が思案した武装なりなんなりになら構いませんが、ここでh」

「わーった、分かった!今すぐやるから!お小言だけは勘弁して!」

 

 

 

 年上らしき女性にダメ出しをしていた。

 

 

 この女性は倉持技研から()()進んで明石重工の技術者として訪れ、現在は技術者の1人として雇用されている。

 

 

 だがこの女性の前歴は、倉持技研の第2研究所()()である。まだ若干所長時代の癖なのだろうか、ここの主任である清司や他の技術者の頭痛要因になっている。

 

 

 

「さて、ユウ君があれなので先に話でも進めよっか」

 

 

「その方が良いんじゃね?さっさと済ませりゃ」

 

 

 

 ふっと短く息を吐いた束は、本題に進んでいく。

 

 

 

「んじゃ初めに、ユウ君が束さんと接点を持った話からするね。先ず知り合ったのが……

 

 

 

 

 

 

 5()()()になるのかな?」

 

 

「5年前……?」

 

 

「そうそう。ユウ君に適正が確認されたのが6()()()だったから」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「えっ……?」」」」」」

 

 

「あぁそうそう、今まで隠してたんだけどね

 

 

 

 

 

 

 ()()()()()()()()()は、いっくんじゃなくてユウ君なんだよ」

 

 

 

 6人は呆然としている。それもそうだ、世間の発表で一夏にISコアの反応があり、そこから一斉に男性の適正確認が行われたのだ。そしてそれが勇であった。

 

 

 が、実際は尾崎勇が()()()の男性操縦者として束が確認していた。しかし事の隠蔽が行われた事で公にならなかっただけなのだ。そんな様子を見つつ束は話を続ける。

 

 

 

「んで話を戻すと、発覚したその約1年後に束さんが来てね、ユウ君と出会ったのさ。

 

 

 まぁ出会ってスグに奇襲したけど避けられちった」

「何サラリと通り魔紛いの事をしてるんですか!?」

 

 

「その時は“自身の計画に支障が出るから”という理由でしたね。酷いものですよ」

「もー!掘り返すなぁ〜!」

 

 

 

 6人とも計画という単語に首を傾げると、それを見た束は話を戻す。

 

 

 

「まぁ束さんの計画っていうのが、IS(子供)達を変な事に使いまくってる世界に混乱をもたらそうとして」

「姉さん!?何を考えてるんですか!?」

 

 

「その計画の邪魔になるから……まぁ最初の男性操縦者を一夏君に仕立てあげたかったというのが理由だそうです」

 

 

「?俺か?」

 

 

「ええ。一夏君の立場とかを利用して混乱を招こうとしましたが……そこに」

 

 

「ユウ君がISコアを開発したってわけ」

 

 

 

 右手のαタイプISの【フェンリル】を見せながら束の説明を補足する。続けて勇が話し始める。

 

 

 

「コアの量産の目処が立った頃に、束さんがある提案をしてきたんです。それが亡国との契約」

 

 

 

 勇はフェンリルを待機状態にさせたままホログラムを起動し画面を移動させて6人にあるものを見せる。

 

 

 

「これが、その時の契約書です」

 

 

 

 マジマジと確認する6人。その画面には契約金3億()()と契約雇用時の給与明細などが書かれたものの1番下に、亡国企業の名が。

 

 

 

「……ってドル!?円じゃなくてドル!?」

 

 

「嘘……えっ、ちょまっ…………あ、現実だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「契約するならこれぐらいしますよね?」

「普通じゃないわよ」

「日本円で約300億を俺らに渡す馬鹿の発言がこれだぜ?」

 

 

「……まぁ話を戻しますが、それらを合意した上で1部の構成員を引き抜き表向きは社員として。裏では護衛役として活躍してもらってるワケです」

 

 

 

 ホログラムを閉じて勇は眠たげに欠伸をする。ある程度の内容を割愛しつつ話したが、6人は色々と意外な事を聞きすぎて頭の整理が付いていない。

 

 

 無理もないと言える。尾崎勇は今や男女共用型ISコア開発者の立場があるが、それ以前に世界初の男性操縦者という立場もあった。そして篠ノ之束や亡国企業との関係性がある。これだけで勇は普通の学生の立場には居ない事を改めて知らされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい勇」

 

 

 

 今度は6人の後ろから声がする。その声の発生源を見て多少の面倒事になりそうな気配がしたのを忘れない。6人は全員その声の主の方を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「千……冬姉?」

 

 

「いや……身長が。いやそれよりも!」

 

 

「なぜ織斑千冬と()()()()なのか。ですよね?」

 

 

 

 勇がその者の近くに歩み寄り、紹介した。

 

 

 

「『M』……僕は彼女をそう呼んでます」

 

 

「……あぁ、今日来る客だったか。なら私は戻っておこう」

 

 

「感謝します」

 

 

「…………あぁ、そうだ」

 

 

 

 エレベーターへと向かうMが振り返り、勇に指さす。

 

 

 

 

 

 

「時間が空いたらドームに来い。約束だったろ?」

 

 

「……僕今寝てないんですが」

 

 

「……チッ、だったら仮眠でも取ってこい」

 

 

「そうさせてもらいますよ」

 

 

 

 エレベーターに乗り込み上へと向かうM、それを見届けると勇は欠伸をして一夏の元に歩み寄り他の者に聞こえないぐらいの声の大きさで呟く。返事を聞いた勇は、すぐに切り替えて話を切り出す。

 

 

 

「さて、今僕が話せるのはこれぐらいです。今日の予定は一夏君に話があるのですし」

 

 

「それまた何でだ?」

 

 

「倉持技研が倒産の一途を辿っている状態は知ってますね?」

 

 

「ああ」

 

 

「まぁ正直言うと倉持技研が倒産した場合、一夏君の企業契約が破棄されてしまいます。つまりは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いっくんを明石重工の企業操縦者にするってこと!」

「ちょっと僕の台詞」

 

 

「つまり……引き抜くのか?」

 

 

「ええ。ですが一夏君を引き抜く場合、多少問題がありましてね」

 

 

 

 倉持技研の倒産、つまりは契約されている企業とのパイプが消滅すること。倒産になった場合、一夏の取り分である収入が無くなる事も意味する。この倉持技研が倒産になった時点で一夏にとっても不利益なのは変わりない。

 

 

 なので勇は一夏を引き抜くつもりであった。だが別企業から別企業への操縦者となる場合の制約もある。それ以前に一夏も男性操縦者であるが故、何処の企業からも引き抜こうとする。

 

 

 

「まぁ問題といっても、他の企業を黙らせる程の金額を提示すれば良いだけですがね」

 

 

 

 またもホログラム画面を出して操作し始める勇。それが終わると、一夏に見せる。

 

 

 

「契約金は……これほどで如何でしょうか?」

 

 

「えっと……ブフゥ!?」

 

 

「どうされました一夏君?」

 

 

いや何でお前はこうもエグい金額をバンバン出せるんだよ!?

 

 

「ご不満でしたか?それでしたら」

「いや充分だから!」

 

 

 

 勇はホログラムを閉じて一夏に視線を向ける。

 

 

 

「まぁすぐにとは言いませんよ。織斑先生とご相談して下さって結構です」

 

 

「そ、そうか……分かった」

 

 

「さて、これで僕の予定は一応終わりですが……」

 

 

 

 勇は未だに見ているセシリアとシャルロットとラウラの3人を見やる。まだ色々と聞きたい事があると謂わんばかりであった。先程色々な事実を明らかにされて驚いていたのにも関わらず。

 

 

 その様子を見た勇は溜息をついて額を抑えながら首を横に振る。

 

 

 

「まだ色々と聞きたい方もいらっしゃいますので……少しの間ここの見学をしたいならどうぞ。どうせ束さんが案内しますし」

 

 

「まっかされたー!」

 

 

「質問なら僕に付いてきて下さい。自室で話しましょう」

 

 

「勇、ここに部屋があんのか?」

 

 

「ええ。一応そこで6年ほど過ごしてました」

 

 

「6年って……勇に適正があるのが分かった時からか」

 

 

「はい。さて……僕は戻ります」

 

 

 

 一礼したあと勇はエレベーターに向かい、セシリアとシャルロットとラウラは付いて行く。残された3人は束が連れて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エレベーター付近の分かれ道に戻り、左の道を行く。ある程度の進んだ所の扉で止まり、その傍にあるスキャナーにISのある右手をかざす。

 

 

 

〔───α1【フェンリル】の確認

 生体認証システム異常なし

 

 

 

 

 お帰りなさいませ。現在1名が在室しております〕

 

 

「ん、1名?誰か入ったか?」

 

 

 

 勇は少し疑問に思いつつも自室へと入る。他の3人も部屋に入ると、かなり生活感がある部屋であった。

 

 

 少し膨らんでいる1人用ベッドが1つ、脚の長いテーブルと椅子に本棚。そして極めつけに台所という地下とは思えない設備である。

 

 

 

「ん?」

 

 

 

 シャルロットが先程の膨らんでいるベッドに視線を向ける。人1人分の膨らみが就寝用に使われるシーツの下にあるのだ。シャルロットはベッドまで歩み寄り覆っているシーツを動かす。

 

 

 そこには寝息を立てて寝ている少女の姿が。

 

 

 

「…………勇、誰この子」

 

 

「はい?……あぁ、クロエさんか」

 

 

 

 流れるような銀髪に端正な顔立ち。その少女『クロエ』の元に椅子を持って行き、フェンリルを自立稼動状態にさせる。

 

 

 

「あら?フェンリルさんの顔立ちが……」

 

 

「あぁ、そのことなら後々。フェンリル、他に椅子出してくれ」

 

 

『ヴぉん』

 

 

 

 シベリアンハスキー特有のイケメンな顔立ちになったフェンリルは赤い目を光らせると、扉付近の壁が自動で開きそこから椅子がちょうど3脚だけ出てフェンリルがグレイプニールで運んでいく。

 

 

 慣れた手付きならぬ()()()で椅子を置き、3人はそれに座る。座るとフェンリルの目が再度光り収納が勝手に閉まる。座っている勇はフェンリルを呼ぶと、フェンリルは傍に座った。

 

 

 勇はフェンリルの頭を撫でながら息をつき前の3人を見やる。

 

 

 

「で、先ずは何からお聞きしますか?主に2つに絞られますが」

 

 

「それじゃあ……あの子、クロエだっけ?」

 

 

「そちらからですか。彼女の名は『クロエ・クロニクル』、篠ノ之束が保護した人物です」

 

 

「保護……?」

 

 

「……そちらを説明するには、ラウラさんの出自について話さなければなりませんが」

 

 

「ッ!?」

 

 

 

 出自の事を指摘されたラウラはビクリと体を震わせるが、それを見た勇はラウラの肩を軽く叩き視線を合わせさせる。

 

 

 

「ちょっと失礼」

 

 

「ふえ?ほわ!?」

 

 

「「ッ!?」」

 

 

 

 勇はラウラを抱えて自分の席に戻り膝に座らせる。あぅあぅと困惑しているラウラを他所にポンポンと頭を撫でて落ち着かせようとしているが、セシリアとシャルロットがかなり睨みを効かせている。

 

 

 フェンリルは勇を見て目を閉じて下を向く。主とはいえ、やって良いことがあるだろうと謂わんばかりである。

 

 

 

「失礼、ラウラさん。御迷惑かもしれませんが」

 

 

「あいや……その……迷惑じゃ……ない…………

 

 

 

 か細くなっていく声に軍人の面影は無く、単に恥ずかしいと感じている少女の姿であった。しかしただ恥ずかしいだけなら離れようと藻掻く筈だが、そんな素振りは一切見せていない。

 

 

 

「……ラウラさん、僕は束さんから貴女の事を知りました。そしてクロエさんも同じような出自です」

 

 

「………………」

 

 

「……ラウラさん?」

 

 

「ッ!あ、あぁ……そ、そう…………なのか」

 

 

「……話を進めますよ」

 

 

 

 先ずクロエの出自は単なる有性生殖から産まれた人間では無く、人為的に生産されたデザインベビーであること。ラウラと同じ出生という事からラウラもデザインベビーであるのが分かるが、勇はラウラもクロエも“人間”であると認識している。

 

 

 その時の勇は()()()()()()を愛おしむ様子を見せている。無意識に優しくラウラを撫でており、何処かラウラも嬉しそうである。その様な出自とはいえ人間と認めない者には怒りを覚えている様子も見せる勇であったが、今のところセシリアとシャルロットはその様子は無い。

 

 

 そしてクロエはラウラより先に産み出された人間であり、世間的にみれば姉と妹という立場に値している。

 

 

 

「ん……んぅ…………」

 

 

 

 目を閉じたまま体を起こすクロエ。

 

 

 

「起きましたか、クロエさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、()()()。すみません、寝てました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「勇?」」」

「これは誤解です」

 

 

 

 これに関しては勝手に束が自分の夫になる存在と決めつけており、その事から束はクロエに父と呼ばせているだけであるという。

 

 

 そしてクロエにも3人を紹介した後、突然にフェンリルから通知が来たことを知らされる。勇はフェンリルを見たあと、自動でホログラムを映し画面を見る。

 

 

 

〔勇君……あー…………っと?〕

 

 

「?」

 

 

〔……だよねぇ、そうだよねぇ君は〕

 

 

 

 少し呆れながらも唐木が答える。が、すぐに表情を戻して本題を伝える。

 

 

 

〔勇君、今から2人を連れていくんだけど〕

 

 

「?なぜですか」

 

 

〔いや楯無ちゃんが急に勇君ともう1度戦いたいって。私は渋ったんだけど、条件で負けたらαタイプを諦めるって頼んできてさ……〕

 

 

「僕寝てないんですが…………あ、じゃあ代わりの人使えば良いや」

 

 

〔いや容認するんだ……でも、それだと誰に?〕

 

 

「……1人だけなら。ちょっとだけ時間を」

 

 

〔分かった〕

 

 

 

 通話を終えると、今度はホログラムを操作し始め通話を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




───そういや束さん。

───ん?何なにいっくん、何か質問でもある?

───あの、さっき清司さんが言ってたりんど……

───あぁ。【リンドヴルム】のこと?

───それです。

───αタイプIS5号機の名前のことだよ。リンドヴルムっていうドラゴンが居てね、そこから名前を取ってるんだ!中でも注目ポイントが主に爬虫類の性能を詰め込んでるのさ!

───……あれ、5号機?αタイプって今4機しか無いんじゃ

───姉さん、数え間違いですか?

───違うよ〜。束さんはボケてません!ちゃんと5機あるけど、みんな知らないだけだし。

───じゃあ……俺たちの知らない機体ってなんですか?

───それなら1機しかないから、すぐにわかるよ!




───αタイプIS3号機【バハムート】さ!









 次回『ニセモノノイキカタ』

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