幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 半年振りの投稿。
 三人称視点。
 では、どうぞ。


After S『こぁ、ここぁ』

 紅魔館の地下にある、大図書館。そこに辰上侠――縫ノ宮千里が歩いていた。彼は時たま暇な時間が出来ると、図書館に所蔵されている魔導書を読んでいる。本来ならば魔導書の一部には、適性のない人物にとって有害なものがあったりするのだが……彼は諸事情により、魔法使いの類いの種族にも適性があるのだ。何時使う機会があるかはわからないが、魔法の知識を蓄えるために大図書館に訪れている。

 

 彼は「今日はどんな本を読もうかな」と思い、適当に本棚から魔導書を吟味していたのだが――

 

『もーっ! せっかく久しぶりに来れたのに面白い事は無いんですかっ』

 

 聞きなれない声が耳に届いた。図書館にいる人物は大体把握しているが、紅魔館住民以外だと霧雨魔理沙が主にだが、彼女の声ではないことは確かだ。

 

 ふと気になり、千里は声の発生源へと足を向けた。広い図書館を歩いた先には、三人の人影が見えてくる。

 

 彼が近づいてきたことに真っ先に気づいたのは図書館の主である、少し顔が青白い魔女でもあるパチュリー・ノーレッジ。

 

「あら、侠。来ていたのね。どんな魔導書がご所望なのかしら?」

 

「そうだねー……。自分もいろんな属性を行使できるし、属性魔法かな? それで、その人……こぁさん?」

 

 軽い会話をしたのに、彼にとって見慣れない人物――いや、非常に似ている人物なのだが、パチュリーの使い魔であり、隙があれば恋愛的な意味でアタックすると宣言した小悪魔――こぁに尋ねた。

 

「あ、千里さん。来てくださったんですね! 本日もお日柄よく、ですね」

 

「うん。外はとてもいい天気だ。それで……その子、こぁさんにすごい似てるけど……誰?」

 

 千里の疑問の視線の先の人物は――目の前にいる小悪魔に姿が酷似していたのだ。

 

 彼女は小悪魔と同じスーツの服装、悪魔の翼に頭にも小さな翼。ただ、違う点を列挙するとなれば数点。小悪魔はタレ目に対して彼女はツリ目。身長で比べても違い、小悪魔を基準に考えると彼女は少し小さい。髪の毛の長さならば小悪魔がロングなのだが、彼女はショートカット。極めつけは――体の凹凸だ。千里の偏見による外界の職業で例えるならば、小悪魔はスタイルの良いOL。それにたいして彼女は中学生にも思える。外見年齢で言うならば、恋仲の霊夢と同じぐらいかもしれない、と千里は考えた。

 

 そして、ようやく千里が考察していたところに彼女は反応を示す。

 

「侠……千里――! アンタが姉様の想い人ってわけねっ! 何か実際に見てみるとひょろそうっ!」

 

「初めて会ったのにきつい言葉を飛ばしてくるね、君……」

 

 指先を千里に向けながら、どこか自信に満ち溢れた表情で高圧的に言葉を飛ばす彼女に、どこか千里は苦笑い。

 

 ちょっとした彼への非難も含めてだが、改めて自分の想い人である公言されたこぁは頬を染めながらも小さな彼女に注意の言葉を向ける。

 

「こぁっ!? 駄目よいきなりそんな風に言うのはっ。それに、いきなり想い人って……!?」

 

「だって聞いた話だと姉様を振ったんでしょこの人? それで今日にでもどんな風貌か見れたらなと思ったら……な~んかアタシのイメージと違うんだよねー。言動とか男らしくないし……」

 

 こぁの注意を気にせず言葉を続けている彼女。その彼女は千里を観察するかのように、彼の周りを回ってじろじろと見定めている。心なしか彼女にもある尾は左右へとフリフリ動いているが。

 

 未だに彼を見定めている少女の正体がわからないので、丁寧な説明と共に彼女を紹介してくれる事に期待して、千里はパチュリーに話を聞いた。

 

「それでさ、ノーレッジ……この子は誰?」

 

「んー……まぁ、単純に言えばこぁの妹ね。また名前がないみたいだったから、私達は【ここぁ】って呼んでいるけど」

 

「妹? こぁさんにも妹がいたんだ」

 

 何となく予想はしていたが、少し驚きながら千里は詳細をこぁに尋ねると、彼女は少し頬を掻きながら答える。

 

「ははは……。今日は珍しくパチュリー様の調子が良いみたいなので、時たま召喚してもらっているんですよ」

 

「時たま? 彼女もノーレッジの使い魔じゃ――」

 

「違うよ? アタシはどこも契約してない悪魔だからね。常に契約となるとパチュリー様の喘息が長引いちゃうから」

 

 千里の質問に割り込む形でここぁは彼の質問に答えながら、彼女は千里の体を確かめるようにしてポンポンと叩いている。

 

「……で、なんで君は自分の体を叩いているのかな」

 

「体の筋肉チェック。おー……見た目とは違って、筋肉がしっかりしてるー……。体としては合格基準ね、うん」

 

 さすがに許可なしの触りに問いかけるが、彼女は気にすることなくボディチェックを行っているが。それでも本題の質問があったのかパチュリーに視線を向けると、彼女は察したようで彼に説明した。

 

「普段私が契約している悪魔としては、こぁだけよ。その気になれば私の魔力だったら二重でも三重でも契約はできるけど……持病の喘息のおかげで、発症したときは凄い体力と魔力が持っていかれるのよねー……。今日は偶々調子がいいけど、そうじゃなかったら緊急時に対応できなくなるのよ。過去でいう妹様の事とか。まぁ、今じゃ静雅のおかげで余程のことが無い限りは大丈夫になったけどね」

 

「あー……だから常に紅魔館にいないんだ、彼女……」

 

「――よし、決めた!」

 

 パチュリーの説明に納得したところで、彼女――ここぁは千里から距離を取ると、人差し指を彼に向けながらこう宣言した。

 

 

 

 

 

 

 

「――アンタ、アタシの奴隷になりなさいっ!」

 

 

 

 

 

 

 

「ゑ? 断るけど」

 

「断るの早っ!? もうちょっと躊躇しなさいよっ!?」

 

「こぁっ!? こ、ここぁ!? 貴方は急に何を言い出すの!?」

 

 人権を無視するかのような命令に対して千里があっさりと拒否の言葉を出したことに驚愕を隠せていないここぁだが、彼女の言葉に、姉もまた驚愕を隠せていない。こぁは無論、彼女に焦燥を浮かべながらも問い詰めたが、ここぁは間の伸びた言い方で答えた。

 

「えー? だって姉様のモノじゃないんでしょ? それにこの体つきに、龍神の先祖返りだっけ? 外見は合格基準だし、その魔力とか精力とか美味しいじゃんきっと! だったらアタシのモノにしてもいいでしょ?」

 

「魔力はともかく、精力……?」

 

 契約云々は置いておくことにして、魔力についてはおそらく契約をすると差し引かれるものなんだろうと考察する。しかし、精力について疑問に思っていたが――ここで、ある事を思い出した。

 

「(……そういえばこぁさんって淫魔、つまりサキュバスなんだっけ……?)」

 

 だったら尚更だと縫ノ宮千里は思う。ただでさえ自分には恋人がいるのだ。よそ様の奴隷になるわけには当然いかない。

 

 それでも、ここぁにとっては納得がいかないのだろう。駄々をこねるかのように、彼女は千里に文句をぶつけた。

 

「何でー!? 別にいいじゃん、形だけでもさ! サキュバスだからこそ得られる快感がきっとあるはずなのに! アタシは魔力と精力をもらう、アンタは快感をもらう。ウィンウィンじゃん!」

 

「形だけでも君と関係を持つわけにはいかないよ――きっと? そこは別に一歩引かなくても良いことだと思うけど……」

 

 途中の言葉で不確定要素が浮かんできたので、千里はその事について追及しようとするが――

 

「……ぴゅ、ぴゅ~♪」

 

「口笛出来てないよ」

 

 露骨に気まずそうに顔をそらし、彼女なりの口笛をし始めた。彼女の様子について解説するかのように、姉であるこぁが口を開こうとしたが――

 

「ここぁはタイプは違いますが、私と同じで経験が――」

 

「えぇいっ! だったら実力行使で屈服させてあげる! 知ってるよ、今のアンタには初代龍神だかの意識が存在しなくて、大幅にパワーダウンしている事を! ただ少しだけ特別な人間なんかに、絶対負けたりしない!」

 

 わざとらしくこぁの言葉に頬を染めながら遮った後、意気揚々と弾幕ごっこを勝手に申し込み、先手必勝と言わんばかりに弾幕を千里に打ち込んでいた。彼はため息をつけながらも、応戦を始めた。

 

 

 

 

 

 

 少年少女弾幕中……

 

 

 

 

 

 

 

「――龍神の先祖返りには勝てなかったよ……」

 

「うん、まぁ……ね?」

 

 開始早々一分前後で決着がついた。すでにダメージが許容量を超えた所為か四つん這いになって息を切らしているここぁと、困惑の表情を浮かべながらどう対応したらいいか考えている千里がそこにいた。

 

 先ほど行われた弾幕ごっこを見てか、思った事を口に出しながらパチュリーは感心している。

 

「まさか魔力ではない、妖力で複数の属性を行使するなんて……」

 

「ざっと頭の中で思い浮かべた事を実行しただけだけどね。さすがに複数の属性の適合スペルは作れないから、通常状態での行使になるけど」

 

「いやいや、頭の中で思い浮かべた事を実際に実行できることって、凄いことですよ?」

 

 呼吸するくらい簡単なことのような言い方だが、それでも異常な事だと言いながらも感心しているこぁ。それに対し納得がいかない様子を浮かべているのは当然ここぁである。

 

「うぅ~……優良物件なのに。せっかく常に幻想郷にいられると思ったのに~」

 

「常に幻想郷にいられる……? それだったらいっそ、他の紅魔館の人と契約すればここにいられるんじゃないの?」

 

 悔しそうな呟きの声を拾って問いかけるが、逆に心外と言わんばかりの表情をしながら千里の言葉に異議を唱えるここぁ。

 

「アタシはサキュバスなのよ? 何が悲しくて女の主――奴隷にしなくちゃいけないのよ」

 

「(……つっこまないでおこう)いや、それだったらこぁさんはどうなんだい?」

 

「姉様は性欲が薄いのよ。尤も、最近なんか部屋に行くと一人で――」

 

「言わなくていいからっ」

 

 彼女の言葉を遮るために、ここぁの口を手で覆う姉のこぁ。さすがに察した千里は言及せず、代替案を口にしてみたが――

 

「男だったら、静雅っていう自分の親友がいるんだけ「性格で無理」一応会ったことはあるんだ……」

 

 素早く切り捨てた彼女に親友は何をしたんだと疑問を胸に抱いたが、しばらくの間傍観していたパチュリーが1つ提案する。

 

「だったら普通に魔力だけでも提供してあげたら? 彼女は幻想郷に来る事が出来るのは不定期だし、彼女曰く故郷よりも幻想郷の方が住みやすいみたいだし」

 

「……形だけ契約するみたいなもの? だったら似たようなもので、五徳と式神との関係があるんだけど……」

 

「あなたの魔力とか妖力とか馬鹿にならないぐらい多いじゃない。使い魔や式神が数人増えた程度で大した消費にはならないでしょ?」

 

 ある意味ではパチュリーの言った言葉は事実なので否定できない為か、頬を掻きながら考える千里。そして彼女の境遇を何とかしたい思いもあるのか、こぁは自然と上目遣いになりながら彼に頼み込む。

 

「千里さん、どうにか妹をお願いできますか? ここぁにも、この幻想郷の良さを伝えてあげたいんです。きっとこの子は私が帰ってこない間さみしい思いをさせていたと思うので……」

 

「べ、別に寂しくなんかないし……」

 

 恥ずかしそうにそっぽを向きながら否定するここぁの表情に、真剣に頼み込むことで折れたのか……千里はうなずいた。

 

「まぁ……自分の力を提供するぐらいだったら良いよ。でもいつでも一緒となると、霊夢が怒るから、基本紅魔館にいてもらうことになるけど……それでいいかな、ここぁ」

 

「……しょうがないわね。アタシの寛大な心で認めてあげようじゃないの! しばらくの間はご主人様でいいわよ!」

 

「「「(……しばらくの間?)」」」

 

 気になる言葉はあったものの、パチュリーとこぁによる契約にのっとり、契約が完了する。

 

「何これ……凄い力がみなぎってくる! 今ならアンタを倒せそうね! いざ、下剋上っ!」

 

「えぇー……」

 

 何故か急に反抗的になったここぁと再び対峙し。

 

「――新しい力を手に入れても勝てなかったよ……」

 

「(……契約しない方がよかったかもしれない)」

 

 開始一分を経たずに鎮圧されてのびている彼女を見て、千里は軽い後悔をし始めていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の深夜。千里はきちんと出来事を霊夢に伝え、就寝していたころ。彼は一度眠りに入ると深い睡眠に入るのだが――この日は、違った。何者かが自分の上に乗っかっている。そのような感覚に襲われ、目を覚ますと――

 

「あ……目、覚めちゃったか……」

 

「…………!? ここぁっ!?」

 

 彼の上に覆いかぶさっていたのは、契約はしたが、基本の行動場所は紅魔館になっているはずの――ここぁだった。昼間に着ていたスーツとは違い、ネグリジェを着て性をアピールするような格好だ。

 

 驚愕した彼の疑問に答えるように、ここぁはどこか頬を染めながらも言葉を発する。

 

「い、言ったでしょ。アタシはサキュバスって。契約しただけであれだけ力が湧き出てくるんだもの。だったら――こっちの方も手に入れたらどうなるかってね……」

 

「止めないかっ! 俺はそういうことの為にお前と契約したんじゃない! 姉であるこぁさんと一緒にいれるようにと契約したんだ!」

 

 普段の言葉遣いから素に戻る千里。その言葉は重みがあるが……彼女はというと。

 

「(……それだけじゃ、姉様は足りない……)」

 

「……どうした?」

 

 バツが悪そうに彼女が目を伏せたことに、疑問を覚える千里。罪悪感はどうやら感じているようだが、彼は腑に落ちない中、答えを模索する。

 

「(……一体何が俺に執着させているんだ――)」

 

『千里!? 今の声は何!?』

 

 騒ぎで同居人でもある博麗霊夢も目が覚めたのだろう。足音が千里の部屋へと近付いていく中、ここぁはすぐさま我を取り戻し、窓に手を掛けながら言葉を残す。

 

「……今回は失敗したけど、アタシはまだ下剋上は諦めていないからっ」

 

 そう言葉を残すと彼女は飛び立ち、千里は気にかかったことがあったのか、事をあやふやにしてその出来事を隠した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(――絶対姉様を幸せにするんだから……!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 彼女なりにも思う事はあるようで。

 では、また。
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