メリー「雪君が早速異変が起こっているところへ行くんですね」
行く、ではなく、行かされたが正しいのですがね
メリー「圧倒的膂力という理不尽によって、ですね」
人間と妖怪の力の差ですね
メリー「雪君は出来ることが人間離れしているだけで、不意をつかれたらただの人間ですから」
メリー&カミユ「本編へどうぞ!」
迷いの竹林内に存在する永遠亭という幻想郷の医療施設がある。迷いの竹林と言われるだけあって一度入ったら妖精でさえ迷ってしまう。永遠亭までの案内人をしている藤原 妹紅や竹林内で生活している者は迷いの竹林内を熟知しているので迷わない。永遠亭を中心として、半径100メートルの結界が張られている。永遠亭の医師である八意 永琳は目の前にいる同じ姿をした自分のドッペルゲンガーと対峙していた
「全く……!自分と同じ姿と実力と戦うのはいつまでも慣れないわね!」
「そう思うならさっさとやられてもらいたいわね!」
お互い考えることは同じなのか弾幕の色、量、軌道、威力が全てにおいて同じだった。弾幕がお互いの中心距離にて相殺される
(このままだといつも通りでジリ貧。何かあっちの私の気を引かせるようなことが起きれば……!)
永琳が心の中でそう願った時に視界の隅にスキマが開いた
スキマからは微かに土の匂いがすることから太陽の畑の幽香の家からだろうと推測する。そして、現在起こっている異変で避難場所とされている幽香の家に居る者は家主の幽香、リグル、ミスティア、メディスンの4人。その中で今の戦闘に参加できるのは、幻想郷でもトップクラスに強い幽香しか居ない。よって、幽香が来るだろうとその場に居る全員が思った
–––しかし、違った。ついさっき幻想入りしたなんて知るよしも無い全員は唖然としている
スキマから出てきたのは、雪のように真っ白な髪と肌で、前に妖怪の賢者が永琳に渡したが丁重にお断りされて四季のフラワーマスターに回された和服を身にまとい、何も持たずに出てきた見た目は中性的な人間。スキマの高さが約5メートル。そこから落ちてきたのだから普通の人間はそのまま地面まで直行で落ち、当たりどころが悪ければ気絶する高さ。その人間は1メートルほど落下したところで空中で態勢を変え、無事に着地した。立ち上がるとおよそ160cm程の身長だとわかる
(誰!?なんで幽香の家から人間が出て来るの!?)
少なからずその場に居る当の本人以外のドッペルゲンガー含め、そう思っただろう。それを知るためのスキマも、人間を放り出したらすぐに閉じてしまっている
スキマから放り出された人間はその場を一通り見回した。その後、その場に居る全員に注目されているが気にする様子はなく、無関心そうにため息をつき、呟いた
「はあ〜……。どうやって結界から出よう」
Side 雪
なんか知らないけどいきなり紫って美人にありえない膂力によりスキマというところに入れられた。いきなりの事で為すがままだったけどスキマを出たら本日二度目の浮遊感を感じた
けれど、高さは50メートルとかじゃない、5メートルほど。頭から落ちたら気絶は確定するかも……くらいの高さ
50メートルから落ちても問題ないから5メートルなんて楽勝。難易度イージー。その場で態勢を変え、地面に着地する
(なんだったんだろさっきの力。どこからあんな力が出て来るんだ?禊も似たようなものだからそこまで驚かなかったがな。世界は広い)
(先ほどの女性は私の記憶が正しければ八雲 紫です)
(へぇ。よく知ってるな)
(私も話したことがあるので)
(そうかい)
白雪と軽く雑談しながら周囲を見渡す
パッと見ただけだでわかることは全員が俺を見ていること。なんだなんだ、どうした?俺は何か目立つようなことをやったか?……………今のですね。分かっています。これも全部八雲 紫って奴のせいなんだ。だから文句は紫に言ってね
しばらく見ていると分かることがいくつかある。一つは同じ姿の人物が二人いて、同じ姿の人物同士で向かい合っていること。なんで同じ姿の人物同士で戦っていたんだと思うけど、別の人を狙うとかダメなの?それだったら早く終わりそうだが……。もしかして同じ姿の人物じゃないと倒せないとか?それともドッペルゲンガーは自分がその姿の人物を倒さないと入れ替わることができないとか
二つ目は全員が美人だという事。俺も男だ。そういうことに目が行くことは仕方がない事。当然のことだが俺は誰が誰なのかは全くわからない。事前に情報をもらうこと無く移動させられたからな………後で紫を締め上げるか
俺から近いところに弓を持った長い銀髪を三つ編みにしている女性。服が奇抜で片方が赤、反対側が青でスカートは赤と青が逆になっている服を着ている。すごいデザインだ。外でもないだろう服。欲しいとは思わないな。二人いる模様。二人とも目立った傷はないが疲労しているかな
次に銀髪の人から10メートルほど離れた場所に薄紫の髪で踵まで届くのではないだろうかと思うほど長い髪の少女。白いシャツに赤いネクタイをしており、ベルトを巻いている。青いミニスカを履いている。頭にウサギの耳があり、一瞬コスプレかと思ったが先ほどの妖怪とか付喪神により、ウサギの妖怪だと思われる。実際はコスプレ大好きな人かもしれないけど……この少女も二人いてどちらも傷があり、疲労もうかがえる
さらにうさ耳少女から一気に遠くにいるのが、多分俺が今まで生きた中で一番美しいと思う人物。大和撫子かな?と思ったね。この人は真っ黒な髪を背中まで伸ばしており、ピンクの羽織と、赤い袴を着ている。袴には竹や紅葉の模様がある。この人も二人いる。銀髪の人と同じく傷はないが疲れている
最後にここからは見辛いけど髪を肩まで伸ばした黒髪でパフワンピースを着ており、首から人参のネックレスをさげている小柄の少女。この少女にもうさ耳があり、さっきの少女の違いがあるとすれば耳の先が丸いことかな。こちらも二人いる。どちらも傷はないようだが疲れているな
まあ総じて思うんだが……誰も倒せてないんだな。同じ実力なのだからそうなるかもしれないから、近くの人の援護をしようとしたところを攻撃されるよな。てか、全員俺を見ているけどその隙に攻撃しようとは思わないのか?やり方が卑怯だろうがチャンスはちゃんと使ったほうがいいと思うが
(どうするのですか?このまま戦うこともできますが)
(どっちが本物か分からないのにか?間違えて本物倒したらさらに面倒臭いことになるだろ。そもそもどいつも初対面だぞ?その人が知っている知識なんて知るわけないし今初めてみたんだがら間違い探しはできるが本物との違いなんぞ知るか)
(……と、いうことは)
(あぁ)
俺は白雪と話しながらこの場のことはどうでもよくなったのでため息をつきながら呟く
「はあ〜……。どうやって結界から出よう」
この場から去ることだ
「さーてと〜。出口ってどこだ?そもそも結界に出口ってあるのか?」
(あるものはあるんじゃないですかね?私は結界に詳しいわけではないので何とも言えませんが)
「だよな〜」
その場を回れ右して結界から出るために歩き出す。俺の知識の中で結界は正しい方法で解除するとか、チート並みに強い奴は軽く叩いただけで破壊するとかしか知らない。こういうのは大体空間が歪んでいたりして行っても行っても先が見えなくて戻ると迷うか歩いた距離と関係なくすぐに戻ってこれるかの二択くらいだろうね。最悪斬れば問題ないな
そんな考えで回れ右した俺に誰かの声がかけられる。位置的に弓を持った銀髪の人かな
「アナタ誰かしら。私はアナタと会ったことはないのだけれど……」
「そうだね。俺もあんたと会ったことはないな。外来人と言えばわかるか?幽香の家から紫とか言う奴のスキマからここに放り込まれた人間」
振り返って、簡潔に名前を知らない美人に早口で答える。できれば早くここから立ち去りたいんだが……面倒ごとに巻き込まれそうだからね
「ここから出るには条件があるんだけれど……」
「へ〜(興味なし)」
「興味なさそうね」
「ないよ。まあドッペルゲンガーとやるなら勝手にやってね。俺はこれ以上面倒ごとに巻き込まれたくないから」
そう言ってまた回れ右して歩き出す。と、同時に首を横に倒す。何故かって?『うさ耳の少女から赤い弾丸みたいなものが出て、俺の脳天に当たりそうだった』からだ
赤い弾丸みたいなものは俺の耳の横を通り抜けて直線にある竹に当たって竹が折れた
俺は再度振り返って赤い弾丸みたいなものを放った人物に目を向ける。放った張本人は指鉄砲のような形をした手を俺に向けていた。目を見開いているな。俺が今のを避けたからか?残念ながら父さんからこんな難易度イージーな攻撃を必ず避けられるようにされたからな。まあ、これで俺が攻撃する理由ができたな
残念なことに面倒ごとが起こりそうだ
「今のは完全な不意打ちのはず……」
「はあ〜!?今のが完成な不意打ち?ぬかしおる」
そう言って右腕を水平に軽くうさ耳の少女に向けて挙げると、うさ耳の少女の脚が凍りつく
「なっ……何これ!??いきなり凍り……」
「はいはい。さっさと凍ってね」
『弓を持った銀髪の人からうさ耳の少女の目の前まで移動する』
「いつのまに……はぁ!」
一瞬で目の前に来た俺に殴りかかるが、俺は片手で抑える。と、同時に掴んだ部分がどんどん体に向かって凍っていく。脚の方も同じく
身長は俺と同じくらいだな
「い……や…いや…何これ…いやあああああああああああああ!!!!!!」
うさ耳の少女が悲鳴をあげるがどうすることもできずにしばらくすると完全に凍りついた。今すぐ解凍すればまだ死なないと思うけど放っておくと死ぬんじゃない?まあどうでもいいことだけどな
「さて、どうしようか……っと…」
今更のように銀髪の美人の方から矢が飛んで来た。俺の心臓を的確に捉えている……すごい腕だ。俺はその矢を避けた。さらに言えば矢が飛んで来た方向からは目の前で凍っているうさ耳の少女の前にいる位置にいるから……あとは分かるな?粉々に壊れたよ。ガラガラ音が鳴ってるよ
因みに俺の目の前で壊れたうさ耳の少女と同じ姿(本物かどうかは知らないけど)のうさ耳の少女は唖然として、口を開けている
また振り返ると銀髪の美人の一人が俺に向けて弓を構えている
「あ〜あ。まだ助かるかもしれなかったのに殺しちゃうなんて……かわいそうに」
「アナタがやったことでしょう?」
「一応助かるチャンスをあげたんだけどね。それをアンタが棒に振っただけだよ。まあ本物かドッペルゲンガーかは知らないけど一人消すチャンスだったから行動としては良いのかな?それとも今ので俺を殺せると思った?」
弓を構えている方の銀髪の美人に精神攻撃を与えながら足元に転がっている氷の塊を軽く蹴る。弓を構えている方は表情を一切変えていないが、弓を構えていない方は表情が暗い
他の人は呆然としている
「まあ次こうなるのはアンタだけどな?」
メリー「雪君の悪役感が凄いです」
完璧に悪役がやりそうな方法で1人倒しましたね
メリー「次回からはどんな方法で倒されるんでしょうね」
案外あっさりしたものだったり…
ではまた次回!