東方終焉雪   作:カミユ

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どうもカミユです!
そろそろこの異変終わります。何話先になるかわからないけれど……


第39話 影の世界の戦闘②

 人里の道で、雪と妖夢が同時に地を蹴り、肉薄する。白雪と楼観剣がぶつかり合う

 

「くっ……!」

「ふっ!」

 

 白雪と楼観剣が競り合い、ギリギリと音が鳴る。妖夢が素早く白楼剣を抜き、横振りに攻撃する。それを雪は体勢を低くし、足払いをする

 

「下!」

 

 妖夢は素早く後方に飛び、足払いを回避する

 が、

 

「空中に飛んじゃあただの的だぞ」

 

 雪は踏み込みのしにくい空中にいる状態を逃さず、白雪を鞘に収め、肉薄する

 

「真楼の居合 豪!」

 

 雪の腕を霊力で強化し、力任せに下から上へ、妖夢を斬りあげる

 

「う……がっ……」

 

 妖夢は楼観剣でギリギリ受け止めたが、あまりの強さに軽い身体は吹き飛ばされる

 妖夢は近くの木造の家に着地し、油断なく雪を睨め付ける

 

「チッ」

(雪。屋根の上まで跳べますか?)

「出来ない事はないが……別に跳んで相手のところまで行く必要はないな」

 

 雪は白雪を地面に刺す。その瞬間に妖夢が立っている木造の家が一瞬で凍りつく

 

「な……」

 

 妖夢は白雪が地面に刺さった瞬間に後方の家に跳ぶ

 

「危ないところでした……」

 

 妖夢が一息つくと、先ほどまでいた場所から人の気配が動かない

 

「なぜ動かないのでしょう……」

 

 少し思案しているとパキパキと周りの建物がゆっくりと下から凍っていく。しかし、この建物だけは目の前の一部だけ凍っており、それ以外は氷は見えない。一部の氷から雪が現れ、抜刀したまま一歩踏み出す。雪が現れた氷は消えていた

 

「さあ、ここなら一対一にできるな」

「……周りの建物を凍らせたのは一対一で戦う為ですか。これなら邪魔される事はないですが、貴方が別の建物に逃げる可能性がありますが?」

「そこは俺を信じてくれとしか言えないな」

 

 雪はため息をついて周りを見る。雪の視界に空中で止まっている幽々子の姿が映る。雪の視線に気付いたのか、ひらひらと手を振ってくる

 それから雪は視線を妖夢に戻し、手首を回す

 

「そろそろ終わりにしようか」

「そうですね」

 

 2人が剣を構え終わると、先に妖夢が動いた。楼観剣を下段に構えて斬りあげる。雪はそこから一歩も動かずに上段から白雪を振り下ろす

 キンッと金属同士がぶつかり合う音が鳴る

 

「おおおおお!」

「はああああ!」

 

 競り合う事なく、一旦妖夢が距離を置いてから、すぐに距離を詰め、近距離で両者が両手に持つ剣を振る

 キンキンキキキン!と何度も音が鳴る。瞬きも許さないほどの攻防に妖夢は少しづつ息が上がっていく。それに対し、雪は無表情で妖夢の剣を受け流していく

 そこに雪は少し強めに白雪を振り抜く。妖夢は楼観剣で受け流そうとしたが、あまりの強さに手から剣が飛んでしまった

 

「しまっ……」

「詰み……じゃないな」

 

 楼観剣を拾おうとしたが、それを雪が許すはずがないと妖夢は白楼剣を引き抜き、低い姿勢のまま斬りあげる

 

「よっと」

「なっ」

 

 一歩引き、白楼剣を回避する。そして白雪の柄で妖夢の手を叩き、白楼剣を飛ばす。白雪を家の屋根に突き立て、妖夢を力任せに引き寄せ、そのまま背負い投げの要領で妖夢を持ち上げ、自分も跳び、全体重をかけて、妖夢を屋根に叩きつける。部屋にヒビが入る

 

「かはっ」

「これで詰み……チェックメイトだな」

「……お、同じ意味なのでは……」

「言ってみたかっただけだ」

「そうですか」

 

 意識が飛びそうなほどの衝撃を食らっても、妖夢は踏ん張って意識をつなぎとめる

 雪は手を離し、一歩分の距離を取る

 

「で、俺はもう行くけど何かある?」

「なぜ私を倒さないのですか?」

「時間短縮」

 

 それだけ言うと雪は人里の端のところに瞬間移動する

 

「妖夢、負けてしまったわね」

「幽々子様。申し訳ありません、負けてしまいました」

「良いのよ。戦うつもりもない私が貴女に非難の言葉なんて言えるわけないじゃない」

 

 妖夢の側にふよふよと飛んでいだ幽々子が静かに降り立つ

 

「陰極様は大丈夫でしょうか」

「どうかしらね。雪は今日でたくさん戦っているからそれなりに疲れているでしょうし、分からないわ」

 

 妖夢は呟くように言うと幽々子は平然と答える

 

「ここで決着がついてしまったら私たちは消えるのですよね?」

「そうねぇ」

 

 妖夢の寂しそうな言葉に幽々子は明るく答える。自分が消えても特に気にしていないと言った風に

 

「偽物は消えてしまう定めなのでしょうか」

「んー少なくとも彼が来るまではそんな事はなかったのでしょうね。何の偶然か知らないけれど、彼が来てしまった。それも偽物とは言え、剣で人を斬っても何も思わない状態で、ね」

「そうですか」

 

 妖夢は幽々子の言いたいことを察したようにして、立ち上がる

 

「もし、できることならば、私は生きたまま彼と剣で競い合いたかったです」

「そうね。私もそう思うわよ。でも、死ぬまでは話す事はできるんじゃないかしら」

 

 何故、と妖夢が聞き返す前に、静かに何者かが妖夢の側に降り立つ

 妖夢がそちらに目を向けると先ほどまで戦っていた人物と同じ容姿をしていた。違うところを言えば、心臓部が真っ赤に染まっていることだけ

 

「博咲 雪のドッペルゲンガーです初めまして」

「………………なるほど、これならしばらくは競え合えますね」

「嫌だよ。心臓刺されたんだから戦いたいと思わないよ」

「いいじゃない。しばらくは貴方消えないんだから」

「やだよ」

 

 雪のドッペルゲンガーは妖夢から少し距離を取ると、その場に座る

 

「貴方はどちらが勝つと思いますか?」

「どうでも良い。って言いたいけど本物が勝つんじゃないか?根拠は俺の知っているマスターの情報と自分自身の情報からすれば本物が勝つだろ」

「冷静ねー」

「当たり前だろ」

 

「にしても少し寒くはないか?」

「貴方の本物がやったことなのですが?」

「知らんな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Side 雪

 

「クッソ……どこだ?幻想郷の地理に明るくないやつにこれはキツイぞ」

(一応幻想郷全域に薄く氷を張って探してはいますが見つかりません。建物の中に隠れている可能性があるか、表の方に出たのかも知れません)

「後者じゃないことを願ってるよ」

 

 人里から離れてから一番高いと思われるところに立って幻想郷全域を見渡せるようなところで、目を凝らしながら探している。とはいえ、俺の両目の視力は1.5以上なので、どれだけ目を凝らしても見える範囲に限りがある

 さっき白雪が氷を張っているって言ったが、具体的には冷気を漂わせるが正しい

 

(あの…………そういえば黒幕にあたる人物はどのような容姿をしているのでしょうか?)

「…………そういえば知らねー」

(本物の幻想郷住人の皆さんも姿を見たことがないと言っておりましたし)

「これもしかして詰んだ?」

(いえ、まだ不審な動きをしている人物を手当たり次第に当たればいいと思いますが)

「時間制限ないのが助かるなぁ」

 

 白雪と話している間にも冷気は幻想郷のすみずみまで浸透していく。それでもまだ見つからない

 

「幽々子達から容姿だけでも聞いてきた方がいいか?」

(それが一番妥当ですね)

「さて……」

 

 雪が人里の中にある氷に瞬間移動しようとした瞬間に足首を掴まれる

 

「なっ……」

 

 そのまま地面に叩きつけるように重心が後ろに傾き、地面に背中から倒れこむ。と、思ったがなぜかその衝撃がこない。代わりに妙な浮遊感と、視界が見たことのある、悪趣味極まった目の空間に区切られた空が小さくなっていくのが分かる

 

「ヤバっ」

 

 どうにか空中で反転して地面に着地する。地面といっても360度目だけがあるだけでどうなってるのかは知らないが

 

「お待ちしておりました、博咲 雪」

「お待ちしてなくてよかったです、名も知らぬ女性」

 

 その空間で待ち構えていたように立っている狐みたいな女性が話しかけてくる

 

「私は八雲 藍。紫様の式神です」

「式神?マジか初めて見た」

 

 式神と聞くと色々とあるが、魔法陣から飛び出たり……あれ?アレって魔物とか召喚するから式神じゃないよな?妖怪とかが契約したら式神になるんだったか……ふぅむ、分からん

 

「紫様から貴方を足止めするように言われているのでここで私と戦ってもらいます」

「なんか最終決戦前の前座みたいな事になってきたな」

 

 早々に決着を付けるために、白雪を居合の構えをとったまま、藍と肉薄する

 

「早いです……が!」

「うおっ!」

 

 雪が藍に一瞬で肉薄すると同時にあらかじめ発動していたのか、藍が雪から逃げるように真横に跳躍すると、雪の視界が色とりどりの弾幕で埋め尽くされた

 雪は体勢を低くして白雪を振り上げた。白雪の刀身に当たった弾幕が一瞬で凍りつき、氷が砕ける音とともに綺麗に散る。綺麗に散った小さな弾幕を覆う氷に、後方から追撃してくるように迫る弾幕が当たった瞬間に弾幕が一瞬で凍りつき、氷が砕ける音とともに散る。これが続き、藍の弾幕が全て散った

 

「まだですよ」

「させるかよ!」

 

 藍が構えたと同時に、白雪を納刀し、居合の構えを取る

 

(真楼の居合 瞬!)

 

 白雪の刀身全体に薄く、霊力を纏わせ、抜刀すると同時に霊力を針のように小さく細くし、相手に気づかれずに攻撃する。本来は相手の喉元を狙い、一瞬で勝負を終わらせる技だが、雪は藍の指に挟まれているスペカを狙う

 

「しまった!」

「そこだ!」

 

 藍のスペカが破壊されると同時に雪は凍らせ、瞬間移動し、目を見開いている藍の胴体を斬るように腕を動かす瞬間に、背後から迫る何かからの直線上から外れるように真横に跳び、距離を取る

 

 先ほどまで雪のいたところに何かが通過したと同時に雪の足元にスキマが開き、雪は手を伸ばしてスキマからの脱出を試みるが、虚しく空をきり、落下していく

 

「は!?ちょっと待て!これ何回目だ!」

 

 雪が叫ぶと同時に、どこからか男の声が聞こえる

 

『時間だ。お前はここから出ることはできない』

 

 端的にそれだけを言って男の声は聞こえなくなる。雪はそのまま落下していき、スキマの目が見えなくなると真っ暗な暗闇の中を漂う感覚に襲われた




次回はラスボス戦です。何故この異変が起きたのかは語られるかどうかはわかりませんが……

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