今回はあまり登場しなかった黒幕の過去について話します。少しだけですけどね
「上手くいったか?」
1人の男が、先ほどまで雪が影の幻想郷の山にいたところに静かに立っていた
男–––陰極は目を閉じて3ヶ月までに能力で作り出した影の幻想郷が崩壊していくのを自覚する。しかし、陰極が呟いた言葉には別の意味が込められていた
「全く。片方の陣営に1人追加されるされるだけでこうも簡単に覆されるとはな。だが、ソイツは今影の幻想郷とともに消えていっている」
陰極は下で美しく飛んでいる弾幕を観ながらため息をつく。側に誰かがいたら落胆している、と思うだろう
「そろそろか」
陰極が呟くと、後方にスキマが開き、紫、藍、橙が現れる
「こちらは指示通り終わりましたわ」
「思っていたよりもすんなりいきましたねー」
「橙。相手を倒すのではなく、足止めをする目的でなら私たちの方が利はあるのだよ」
「そうか……終わったのか」
紫たちの報告を聞きながら、微かにため息をこぼす。目下では少しづつ弾幕の数が減っていくのを観ながら陰極は能力で、陰に入って移動する
「さて、どうするかな」
弾幕が行き交う空間を安全に観れる特等席に移動した陰極は考えるようにして空を仰ぐ
「…………なぁ白雪」
「何でしょうか」
「俺、幻想郷に来る前に人殺してるじゃん?元の世界に戻ったらどうなるの?」
「恐らく面倒なことになるでしょう。雪ですし」
「ヒデェ」
「外の世界には霙と暦を殺害した組織が有りますし、もういつも通りの平和な日常に戻ることは厳しいでしょう」
「何かしら事件や面倒ごとに巻き込まれる平和な日常に対して大いに異議を唱えたいがそれは、まあ良い」
「そうですね。先のことよりも今を見ましょう」
「どうなってるんだよこれ!」
雪が大きな声で絶叫する
現在2人がいるところは雪の魂に白雪が常に人型で現れる空間。白雪が望むものは何でも出てくる。また、広さは所有者の器量によって変わる。広さは果てしなく、迷ったら戻ってくるのに時間がかかるくらいある
今、雪と白雪は隣り合って杖の上に置かれているテレビを観ている。そのテレビは雪の体の周りを映す物で白雪が背後にある物などに気づくことができるのもこれのおかげだ
その中は真っ暗。電源をつけていないと思うほどの暗さ。しかし、この空間には光があり、テレビをの電源をつけていないなら当然反射される。が、それがない。つまり–––––
「今の俺の体はこんな真っ暗な空間にあるのかよ。しかもこれ落ちているのか漂っているのかわからないぞ」
雪が頭を抱えながら呻く。そう、スキマから落ちた先は真っ暗な何もない空間だった。そこはどのような空間なのかは見当はついている
「恐らく影の幻想郷なのでしょう。藍という方は崩壊までの時間稼ぎをしていた、ということ……嵌められましたね」
「さっさと倒しておけばよかった……」
そう言って雪は立ち上がる
「さっさとここから出るぞ。ここでも『外』にある氷にはつながっているんだよな?」
「えぇ、影の幻想郷は結界を含めて完全に崩壊しています。なので問題ないですよ」
「さっさと戻ってこの異変を終わらせてやるよ」
それだけ言って雪はその空間から姿が消える
「本当に暗いな」
自分の体を動かしてもう一度辺りを見渡して素直な感想を述べる
そして、外にある氷に、自分だけ瞬間移動できる方法を用いて崩壊した影の幻想郷を脱出する
〜時は少し遡り陰極サイド〜
「あと少しでこの異変も終わるな」
目の前で行われている弾幕を観ながら陰極は察する。弾幕の数が先程から明らかに減っている。そしてなによりもお互いが疲弊しきっていること
ここで陰極が参戦すればドッペルゲンガー側の勝利が確定する
だが、陰極はそれをしない。異変を起こした張本人が目の前の勝利に手を伸ばさない。伸ばそうともしない
「全く、どうしてこうなったんだろうな」
陰極……本名、
・この力は細部まで見たものしか作り出せず、同じ物を2度作り出すことはできない
・本物が偽物によって破壊されれば、偽物が本物になる。その逆もあり得る。その場合、性能が2倍になる
・影に自分が描いた空間を作り出すことができるが、細部までは再現できない
それを知ってからは軍の基地に乗り込んで様々な武器を分解して、見る。そして影から創り出す。そして、本物を破壊する。それを繰り返していくうちに大量の武器を手に入れた。人目につかないところで試し撃ちしたりなどもした
そんなある日、陰極は特に意味もなく、強いて言うなら気まぐれで森の中を歩いていた。しばらく進むと、江戸時代の風景をそのまま残したかのようなところに出た。一瞬、京都かと思ったが、違った。行き交う人々の着衣している服が昔のものであると確信した。一度引き返してみるが、歩けど歩けど、景色は一切変わらず、歩いて来た道とは全く別のところ歩いていると自覚した。その瞬間に、陰極の常識を超えたものが目の前に現れた。後に陰極は知ることになったが、それは魔獣であった。魔獣が唸り声をあげながら陰極に襲いかかる。それを紙一重で回避した陰極は影の世界へと逃げた
それから、陰極は森を抜け出してから情報を集めることにした。それにより得た情報は常識からはるかに超えるものであり、同時にどこか安心した。外の世界では自分のような『力』をもつ人物がいないと思っていたためだ。ここであれば、自分の『力』を人の目を気にせずに使用できるのだと
それから半年を過ぎると外の世界が恋しく思う。どうにか戻る手段はないかと考えたが、自分ではできない。ならば他人に協力してもらうと言う手もある。が、それには博麗の巫女の助力が必要であり、頼んでみることにしたが、能力をもつ人物は外に出せないと言われてしまった。他に方法はないかと考え、考え、考え、そして、1つの方法を思いつく。『自分の【影から同じ存在を作り出す程度の能力】で異変を起こして結界を破壊すればいい』と。そして、半年、幻想郷住民を観察し、ドッペルゲンガーを創り出す。異変を起こしてみるが、誤算があった。異変が1ヶ月程度で小康状態になってしまったのである。それから2ヶ月間、全く異変は進展せずにいたところに、彼と同じような存在が現れた。最初はその人物に協力を仰ごうかと思っていたが、その人物は異変を解決する側についてしまったらしく、陰極ができることがなくなってしまった。次第にどうでもよくなり、現在は目の前の戦闘が終わったらドッペルゲンガーを全て消して、外の世界に行くための手段を探そうと考えている
「さて、どうしたものか」
幻想郷から脱出する手段を模索している陰極の目にあり得ない光景が映る
巨大な氷の上に突如として現れた白髪の人間に陰極は驚きを隠せなかった。脱出不可能だと思っていた影の世界から抜け出したその存在が現れたと思ったらまっすぐ陰極を視界に収めて斬撃を飛ばしたのである
「あとちょっとよ!みんな頑張って!」
本物の霊夢が目の前の自分のドッペルゲンガーに弾幕を飛ばしながら大声で他の戦っている少女たちを応援する
「よそ見してるんじゃないわよ!」
ドッペル霊夢が本物の霊夢に肉薄しようとするとその中間に斬撃が通過する
「「……っ!」」
2人の霊夢が同時に背後に跳ぶと、その斬撃の行き先を目で追うと1人の男が飛び降りるようにして回避する
「アイツは……」
「陰極!」
ドッペル霊夢が自分たちの大将の名前を叫んでから全速力で飛ぶ
それを見た他のドッペルゲンガー達もドッペル霊夢と同じように陰極の方に飛ぶが、自分に背を向ける好機を本物達が黙って見逃すはずがなかった
「みんな今よ!」
どこからか聞こえた紫の指示よりも早く本物達はスペカを唱える
「みんな避けて!」
ドッペル霊夢の指示も虚しく、ほとんどの少女達は避けることができずに、消えていく
そんな中、陰極は落下地点にぽっかり開いているスキマに入ろうとそのまま重力に身を任せていた
「させるかぁぁぁ!」
そんな叫び声とともに、針のように小さい氷の斬撃が陰極の目の前まで来るが
「甘いな」
影から適当な銃を持ち、素早く氷の斬撃を撃つ。キンっと小気味良い音とともに銃弾は斬られたが、衝突の際に一瞬だが、陰極に届く時間が伸びた。それだけあれば陰極がスキマに入るのに十分だった
「甘いのはそっちだ」
そんな声が聞こえたと思ったら陰極の体はガクッと揺れ、重力とは真逆の方向に飛ばされる
「クッ」
陰極は下手な受け身を取ると、自分を飛ばした人物を睨みつける。その先には斬撃の先端に瞬間移動した雪が白雪を納刀したままで構えを取る
「雪。こっちは私たちがやっておくからさっさとそいつを倒してちょうだい」
本物の紫がドッペル紫と対峙しながらスキマの中に消える
「さあ、馬鹿騒ぎをさっさと終わらせるぞ」
次回で異変が終わり、その後はドッペル異変の解説をしてから現幻夢を再開します