東方終焉雪   作:カミユ

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第47話 お騒がせないとこ

「あたしは心月 ミィル。帰国子女ってやつだ。雪の従妹で、好きなとこは戦闘と体を動かすこと。嫌いなことはじっとしている事だ。みんなよろしくな!」

 

新月 ミィル。俺の従妹にあたる関係だ。母さんの妹の子供で小さい頃からよく会っている。父親がアメリカ人なので日本人とアメリカ人のハーフ

ミィルは運動神経が良く、体を動かすことで誰かに負けると、勝てるくらいになるまで練習し、勝たなければ気が済まない性格だ。これには禊は含まれない

母親が格闘家で、小さい頃から武術を叩き込まれている。俺もそうだが、剣術を主としているので、無手だとミィルに勝つことは厳しい。空手や柔道など、手広く武術を教えられ、最近のメールだと、八極拳にも手を出したとか

趣味が戦闘と体を動かすことで、じっとしているとイライラするらしい。危険人物だな

 

とはいえしっかりとした所もあるし、悪い奴ではない。何かと勝負を挑んでくるのが鬱陶しいが、こちらを慮ってくれる。イルカミアと相性が良さそうだから会わせてみよう

 

「そんなわけだ。とりあえず」

「雪、気を付けてください」

「は?」

 

ミィルのことを思い出して、燈に促されミィルの居る教卓の方を見ると、上靴が目の前に迫っていた

 

「うおお!」

「良く避けたな雪!」

 

椅子に座っている状態から真横に飛んでミィルの蹴りを避けた。いきなりの事なので急には止まれず、隣の席の奴に突っ込んでしまった。その際に足をくじいた

ふっざけんなよ……マジで!

 

「喧嘩っぱやいお前だけどいきなり蹴りに来るか!?普通!」

「油断するんじゃねぇぞ!」

 

俺の使っていた机からそのまま蹴りが飛んでくる。俺の頭を正確に狙っている蹴りだ。とてつもなく早い

こっちは足くじいているのにこの速さは……

 

「くっそ!」

 

痛みがある足を無理やり動かして地面を蹴って回避する。俺が突っ込んだ奴の机の寸前でミィルが床を踏みつける

そのまま俺は教室を出て、屋上に行くために廊下を走る。足が痛む

 

「待ちやがれ!」

「こっち来るな!」

 

そのまま俺とミィルは昼休みまで校内を鬼ごっこするわけだが……どうすんのこれ。燈が上手く誤魔化してくれることを願っている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゼェゼェ……」

「くっそまだまだだなあたしも」

「この狂人が……」

 

校内の構造に詳しい俺に理があったため上手く逃げられたが、ミィルが詳しかったら疲れていたぐらいで済むわけがない

そんなわけで禊がミィルを止めてくれたために現在俺は保健室で腫れに腫れた足を冷やしている

 

「はぁお前に言いたいことは沢山あるが、それは先生方に任せよう。前から変わってないようで目から涙が出そうだ」

「いつから雪は涙もろくなったんだ?」

「前からだよ」

 

今は大人しいミィルは椅子に座りながら腕を組んでいる。顔は笑っており、非常に殴りたくなる

 

「それで、お前はどうしてきたんだ。アメリカに居たんだろお前」

「そうだが、叔父さんや叔母さんが死んだって聞いたからな。それにお前それから3日くらい行方不明だったらしいじゃないか。血縁者として不安になるだろ」

「お前に似つかわしくない言葉が出てきたな」

「あ、そうだ。父さんや母さんはアメリカに居るから」

「は?待てよ。お前どこに住む気だ?」

「お前の家だが?」

 

………………は?待て待て待てよどういうことだってばよ

 

「先生にも許可は出ている」

「命雛家に泊まろうかな」

「なんでだ」

「命が何個あっても足りないからだよ!」

「寝ている時に殴り合うとかは流石にない!」

 

2人で言い合ってると、保健室のドアが開く

 

「お二人共。保健室で騒ぐのはいけませんよ」

「や」

 

命雛兄弟が入ってくる。それで俺とミィルは黙る

 

「さて、6限目に文化祭について話します。早めに知っておいて良いでしょう」

 

燈と禊は椅子に座って話し始める

 

 

 

 

まあ簡単に言えば、翠刹高校と長紅高校との合同の学園祭。通称翠紅祭

詳しくは前に回想したからそっちを見てくれ(43話)

 

「参加しないわけないよな!」

「知ってた」

「予測通り」

「では申し込みしてきましょうか」

 

燈が席に立つと同時に俺はひとつ聞いておかなければ行けないことを思い出した

俺が口を開こうとしたら、燈がこちらに向き直る

 

「そう言えば私たちのクラスで行う催しは、メイド喫茶です」

「はぁ?」

「メイド喫茶です」

「メイド喫茶」

「誰がメイドやるんだよ」

「クジです」

 

……はぁ?

 

「今回の学園祭休もうかな」

「ダメです」(ニッコリ)

 

クッソこのイケメンの満面の笑みを殴りたい……!

メイド喫茶にはいいイメージがない。母さんがコスプレが好きで、良くメイド服を着させられて何枚も写真を撮られたことがある。俺は嫌だと言ったのに……それ以降俺はメイド服に拒絶反応が出る。これは他人なら問題ないが、自分が着るとなると……うっ嫌な記憶が…

 

「あ、そういえばこの写真送りましょうか?ミィルさん」

「あっはっはっはっ!雪お前コスプレ趣味あったんだな!」

「ねぇよ!」

 

燈いつ俺のコスプレ写真撮ったんだよ!

ミィルに関しては大笑いしやがって……

 

「あ、そうだ。雪気をつけてください。最近あなたの周りが不穏なので」

 

なんだこの空気の変わりようは!

 

「……どう不穏なんだよ」

「あなたに挑戦的な気配が漂うんです。おそらく、学園祭の時に攻撃すると思いますが、いつ攻撃するか分からないので、気を付けてください」

「忠告感謝するよ」

 

学園祭に仕掛けてくるとか野暮なんてもんじゃねぇぞ。楽しむ場所で戦闘とか俺は嫌だね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある空間では1人と人間が立っていた。日本刀を片手に、血を拭う。足元には1人の動かぬ肉塊が転がっていた。次に狙う戦いの場は決まっている

 

次の対戦相手を思い浮かべて、彼は心躍らせる




次回、学園祭

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