前話が10ヶ月前ということに驚いています…
白雪を支えに血を流しながら雪は対戦相手、鬼刃のさっきまでの動きを思い返す
お互い居合の構えをとりながら静寂な時間が流れた。2人はピクリとも動かずに対戦相手を見据えている
最初に動いたのは雪だ
「さっさと終わらせてもらう! 真楼の居合 瞬」
「良い技だ!」
白雪の刀身に薄く霊力を纏わせ神速の居合抜きと共に針のように飛ばす
それを鬼刃は雪を超える抜刀で針のような攻撃を打ち消す。と、同時に真っ直ぐに駆け出す
「今度はこちらから行かせてもらう!」
「来んな」
雪は鬼刃と一定の距離を保つように霊力の斬撃を飛ばしながら何も無い地面に氷を作り出し、徐々に自分の有利な空間を広げる
鬼刃は氷の地面を難なく進み、雪との距離を縮める
「追い詰めたぞ!」
鬼刃が雪に迫り、刀を振るう。その動きは流麗で長年の鍛錬の賜物だ
雪はその刀を白雪で受け流そうとする……が
「遅い!」
「んな!?」
雪が受け流そうとした瞬間に、鬼刃の動きが変わり、刀の軌道が明らかに変わった。刀が意志を持ったかのように白雪を避け、雪を狙う。刀が雪の肌を斬り裂いていく
「チッ!」
「ほう」
雪は予め広げていた氷に瞬間移動し、致命傷になる前に退避する
「中々とユニークな移動方法だな」
「ふう」
鬼刃は感嘆したように雪に称賛を送る。それは、呼吸を整えている雪には届いていないようだが……
「白雪。本気で行くぞ」
(えぇ、彼は雪よりも強いです。油断せずに行きましょう)
刀傷を氷で塞ぎながら居合いの構えを取る
「良い覇気だ」
鬼刃は雪を迎え撃つべく、正眼に構える
「真楼の居合 隆」
白雪の刀身に大量の霊力を纏わせ、雪の低い姿勢で地面に刀を擦り付けながら振り上げる。白雪の切っ先から氷の地面が隆起して鬼刃に迫る
「甘いな!」
「コイツ……どうなってるんだ……能力か?」
隆起している足場を、鬼刃は何も無いように躱して、越えていく。が、氷は雪のフィールドだ
「後ろだ」
「見えているぞ!」
鬼刃は背後に瞬間移動した雪を一拍の間をおいて反応する
それを見越して雪は再度鬼刃の背後に瞬間移動する
「良いぞ! そう来なくてはな!」
雪は無防備な背中を斬ろうとするが、背後を振り返った鬼刃は超人的な速さで回避し、雪を斬り裂こうと反撃する
「クソが!」
腹部を数ミリ斬られたところでまた瞬間移動し、致命傷を避ける
「ハァ、ハァ、フゥ……」
「息が上がってきたようだな」
「うるせ」
先程から瞬間移動の連続使用により、雪の体力と霊力がじわりじわりと削られていく。息が上がってきている雪に対し、鬼刃は余裕の表情だ
「少し賭けだが、やってみるか」
(危険ですよ!)
「やらなきゃこっちがやられる。それにもしかしたらあいつの能力が分かるかもしれないからな」
雪はひとつ鬼刃を倒す方法を思いついた。だが、安全性は無く、さらに傷を負うことになるだろう。それでもやらなければこちらがやられる、雪はそう考え、実行に移す
「飛ばすぞ、白雪!」
雪が叫ぶのと同時に、雪の背後に大量のスコップ程の大きさの氷柱が出現し、鬼刃に向かって飛ぶ
「こんな小細工ばかりでは俺を倒すことは出来ないぞ!」
鬼刃は真っ直ぐに雪まで駆け出す。向かってくる無数の氷柱を髪の毛、衣服にかすらせることも無く、雪との距離を縮める
「ハッ! そう来るだろうなぁ!」
雪は鬼刃に氷柱が当たらないことに驚かずに、白雪を居合の構えで迎え撃とうとする。
「さあ、来い! 博咲 雪!」
雪が抜刀する瞬間、鬼刃の背後に飛んでいる氷柱に瞬間移動する。白雪の刀身は正確に鬼刃の首の側面を捉えていた。それに対し、鬼刃は予期していたかのように刀で防ごうと間に割り込ませるが、雪はさらに鬼刃の正面に瞬間移動し、鬼刃が防ごうとした反対側の首に白雪の刀身が迫る
「甘いわ!」
鬼刃は叫ぶのと同時に身をかがめ、回避する。と、同時に刀を収め、居合の構えをとる
「やべ……」
「もらった!」
雪を超える神速の居合抜きが放たれる。あまりの速さに、立会人がいたならば、雷撃が放たれたと思うだろう。白雪を振り抜いている雪は瞬間移動することも出来ずに、なすすべもなく斬られる……はずが、一瞬、ほんの一瞬だけ鬼刃の刀身が雪の身体を斬り裂く寸前で止まる
「なに!?」
「うおおおお!」
一瞬の出来事に動揺する鬼刃だが、直ぐに冷静さを取り戻す。雪は腹を微かに斬られたが、バックステップで距離をとりつつ、鬼刃の周りに氷柱を形成し、放つ。回避する隙間も作らないほどの量の中に雪は瞬間移動し、鬼刃を攻撃する。鬼刃は避けながらカウンターし、雪は深手になる前に、別の氷柱に瞬間移動し、攻撃する。それに反応した鬼刃が避けながらカウンターする。雪は背後に、真横に、時には真上に瞬間移動するが、鬼刃は完璧なタイミングで避け、カウンターで雪に傷を負わせる
「ハァ……ハァ……クソっ」
「どうした、こんなものではないだろう?」
霊力が続く限りそれを行ったが、鬼刃に白雪の刀身が届かなかった。全身から血を流す雪に対して、鬼刃は傷一つなく、余裕の表情だ
(なんだアイツは……全身に目でもあるのか? これだけやっても能力が分からないし……)
先程までの攻防を思い返し、雪は焦りと困惑の表情を浮かべる
相手は自分よりも剣術、身体能力が高く、白雪の瞬間移動にも確実に反応する。白雪の氷を全く刀で防がずに躱す。これだけ圧倒的な差を見せつけられたら誰もが困惑するだろう
(どうやってアイツに一撃与えるか……どうやって白雪を届かせる……)
雪は焦りと困惑を押し潰し思案する。それを遮るように鬼刃が雪に問いかける
「お前の事はヤツから少し聞いた。何でも規格外の能力を持っているようじゃないか。なぜ使わないんだ?」
「……分からないからだ。自分の能力がなんなのか考えたことは無いからな。周りの奴は氷を操るとか言っているが、それは白雪の力だからな」
(もしかしたら燈は気づいてるかもしれないけどな)
雪は話しながらも鬼刃を倒す方法を考える
(距離を保ったまま戦うのはジリ貧だ。先に俺の霊力の方が尽きる……都合よく俺の能力が分かる、なんてことは無いだろうしな。捨て身の特攻なんて愚の骨頂。頭を冷やせ。考えろ……)
「さあそろそろ決着をつけようか」
「……」
鬼刃が居合の構えを取ると、雪は黙ったまま正眼に構え思考に没頭する
(マトモに戦うな。不意をつけ。間合いに入れるな)
「片桐 鬼刃。参る!」
鬼刃は叫ぶのと同時に雪との距離を一気に縮める。
それでもまだ雪は考える。微かに冷気が漏れだしていることにも気づかずに
(動きを一瞬でもいい。動きを止められたら一撃与えられる……不可視の……これでやるか!)
雪は考えをまとめると白雪に大量の霊力を纏わせ、素振りをするように振るう。白雪に纏っていた霊力が鬼刃を迎え撃つようにして飛ぶ
「見えているぞ!」
それを鬼刃はスピードを落とさずに避ける。そのまま雪まで走るのだが
(今のを避けるのは想定内。次は……)
雪まで後1mと言うところで鬼刃は急に軌道を右に変え、居合抜きをしようとする。
「今のが見えるとはな」
「言ったはずだ。見えているとな!」
雪は大量の霊力の9割を斬撃として飛ばし、残りの1割はその場で留まるようにしたのだ。留まっている斬撃はほぼ透明で9割の斬撃を見たあとだとそこには何も無いように見えるだろう。それを鬼刃は完全に見抜き避けた
「これで終わりだ!」
「まだだ!」
鬼刃の居合抜きを斬り上げるようにして防ごうとするが、刀同士が触れる瞬間に鬼刃は軌道を変えてそのまま雪の身体に刃が届く
(やべ……)
雪が死を覚悟した、その時
(結界も張られている。さて、異能のない真剣勝負で勝て)
どこか中性的な、しかし重い声がどことなく響くと、白雪によって作り出された氷が霧散する
と同時に雪に届いた刃が何かによって弾かれる
「なに!?」
鬼刃は驚きの声を上げると共に距離をとる
「これは……」
雪は身体から出てきた小刀を見て困惑する。小刀は独りでに雪の体から離れ、2人の間の上空に移動する
(さあ、剣士たちよ。決着をつけろ)
小刀からそんな言葉が響くと小刀は霧散する
「どうなっているんだ」
「わからん。しかし、白雪の力が使えなくなるとはな」
雪は何度か氷を作ろうとするが、できない。先程の小刀の『異能のない』は嘘ではなかった。異能が無くなったことで、止血していた氷も消えていて、じわじわ血が出てきている
「あの小刀に従うのは癪だが、お前を倒さないと外に出られないからな」
「ああ、第2ラウンドということだな」
二人はもう一度、最初のように居合いの構えを取る
「行くぞ!」
「来い!」
次話がどれほど先かわかりませんが、気長に待って貰えると嬉しいです