機動戦士ガンダム 裏切り者の愛国者   作:風鈴P

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第12話 サイド1鎮圧作戦

UC0085年。

この頃になると一年戦争終結後の連邦政府による地球再建を大義名分とした地球環境破壊の深刻化、またスペースノイドへの圧政が横行していた。

これに対して地球連邦軍内のスペースノイド融和派や弾圧対象となっていたサイドの住民達は各地で反地球連邦活動を展開した。

 

 

 

連邦政府のスペースノイド鎮圧部隊であるティターンズは、エゥーゴの動きを強硬策で弾圧することにした。

この日ノーラ・サヴィツキー少尉が所属する部隊は、反地球連邦活動が激しく行われていた『サイド1鎮圧作戦』に参加することになった。

後に『30バンチ事件』として白日に晒されることとなったこの作戦で、ノーラは二度目の悲劇を目の当たりすることとなったのである。

 

 

 

 

 

「作戦の概要を説明する。」

ここはアンティータム級補助空母『ファン・デン・ブレーケン』のブリーフィングルームだ。

 

話しているのはファン・デン・ブレーケン中隊の指揮官、ルドルフ・ノルドハイム少佐である。

 

 

 

「現在サイド1では地球連邦政府に対する、反体制運動が激化している。地球連邦政府はティターンズに対し、反地球連邦分子の鎮圧を命令した。」

 

ノルドハイムの言葉に、ブリーフィングルーム内がざわついた。

ここまで語った様に、ファン・デン・ブレーケンに所属している者はジオン公国出身者だ。

本来の思想的にスペースノイドへ共感する者が多い。

 

 

 

 

「諸君等も色々思う事があるだろう。だが我が中隊もティターンズに所属する部隊として、この作戦の一翼を担うこととなった。サイド1駐留の地球連邦軍は全てが味方では無い。そこで…」

ノルドハイムが説明を続けた。

サイド1にも当然、地球連邦軍が駐留している。

サイド1はファン・デン・ブレーケンが駐留しているティターンズ拠点であるコンペイトウがあるサイドでもある。

だが連邦軍内にも幾つかの派閥があり、サイド1駐留軍の中には『反地球連邦』の影響を受けた者が多くいた。

 

この作戦が発動されれば、そのような連邦軍部隊はこちらの敵に回る事になるだろう。

 

 

 

「我々、ファン・デン・ブレーケンは側面支援の任務を任されることになる。ティターンズの特殊部隊は反連邦分子に対する作戦を展開。我等とその他一部の部隊が“敵に回った連邦部隊”の相手をすることとなる。」

 

 

「へっ! 俺達は“味方”の相手をすることになるんかい。ノーラ…、いや、サヴィツキー少尉。あんたはどう思うんだい?」

ノーラの横にいた兵士が話しかけてきた。

彼は同じモビルスーツパイロットのアレクシスだ。

一年戦争時は同じ階級であったが、今は上司・部下の関係だ。

 

 

「・・・」

ノーラは目を閉じたまま答えなかった。

 

「反地球連邦ってコトは、ジオンに近い考えかも知れねえ。だが俺達は…」

 

「それ以上は言わない方が良いよ、アレクシス。」

 

「け、違えねえ。」

アレクシスは大げさに肩をすくめた。

 

 

 

「以上は概要だ。詳細は作戦開始までに各自の端末に送る。解散!」

 

ブリーフィングが終わり各自部屋を出て行った。

ノーラも自室に戻ろうとしたが、ノルドハイムに呼び止められた。

 

 

「サヴィツキー少尉、ちょっと良いか?」

「は、何でしょう? 少佐。」

「まぁ座ってくれ。」

 

ノルドハイムに促され、ノーラは席についた。

 

 

「この作戦で、私達は本格的にティターンズの一員として動くことになった。兵達はどう考えているだろうか?」

 

「どう、どは?」

ノーラはノルドハイムを見た。

 

 

「地球至上主義の組織の一員として戦う事になる訳だ。兵達も色々と思う事があるだろう。」

 

「そう言う事ですか。彼等は軍人ですから、上からの正当な命令であれば任務を遂行するでしょう。本心でどう思っているかは、分かりませんけどね。」

 

「少尉個人は、どう思うかね?」

 

「私の本心を、知りたいのですか?」

 

「うむ。差し支えなければな。」

 

 

 

ノーラは少し俯いた。

 

「私は正直葛藤しています。私達の本来の上官筋は公国軍でありました。しかしあの戦争では命令を受けることなく、結果的に正反対の組織に所属しています。」

 

「うむ、そうだな。」

 

「少佐が言われるように、ティターンズが地球圏の混乱を収め、結果的に平和になればそれはそれで良いでしょう。ですが…」

ノーラはそこまで言って首を振った。

 

「私にはどうなるか分かりません。…では、失礼します。」

 

「ああ…。作戦前に妙な事を聞いてすまなかったな。」

 

「いえ、それでは…」

ノーラはノルドハイムに向かって敬礼すると、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

数日後、サイド1に対する作戦が発動された。

ノーラ・サヴィツキー少尉率いるモビルスーツ隊12機は出撃、母艦のファン・デン・ブレーケンは数キロ後方に待機した。

 

 

 

『モビルスーツ隊隊長機より各機へ。我々はサイド1右翼方向に展開する。事前の情報ではサイド1駐留連邦軍の半数は敵対行動を示しているとの事だ。』

隊長のノーラが通信でモビルスーツ隊に呼びかけた。

この通信はジオン時代からの特殊周波数であるから、部隊外に聞かれるリスクは少ない。

 

 

 

『こちら第2小隊アレクセイ。作戦行動に関する情報が洩れているという事か?』

 

 

 

『我等の動きに対して、ならそうなる。私達にも詳細を知らされていない、ティターンズ特殊部隊の行動に対しては分からないな。』

 

 

 

『け! 味方にも秘密主義とかひでぇ奴等だ。』

 

 

 

『そうだな…』

ノーラは拳をきゅっと握った。

どうも嫌な感じがする。

この宙域には、モヤモヤとした、何か嫌な空気が渦巻いている気がしてならない。

 

 

 

『先行の第3小隊より各機! レーダーに感! ミノフスキー粒子干渉の影響で正確な数は不明だが、複数のモビルスーツがいるようだ。戦術データリンク。』

 

 

 

『了解した。第3小隊へ、我々が到着するまで無理に戦闘する必要は無い。』

 

 

 

『へ。駐留連邦軍なんて中古のジムばかりの筈だぜ! 片や俺達は見た目はジムだが最新の技術でアップデート済みだ。 ビビる必要はねえよ』

アレクシスが口を挟んだ。

 

 

 

『油断は禁物だぞ、アレクシス。』

 

 

 

『心配性だな少尉。アンタの機体なんか俺達のよりも高性能な、特殊部隊に配備されてもおかしくない機体の筈だぜ?!』

 

 

 

ノーラのモビルスーツはジム・ナイトシーカーである。

一年戦争でも高性能なものであったがティターンズに配属されてからは各部が改修され、最新の機体にも劣るものでは無かった。

もちろん、この場にガンダムMkⅡやZガンダムのようなものがいたとしたら話は別であろうが。

 

 

 

 

『それでも、だ。油断は禁物だぞ。…よし、見えた。』

ノーラは全天周囲モニターの一部に映し出された情報を見た。

先述の通り正確な数は不明だが、複数のモビルスーツが映し出されていた。

 

 

 

『これより攻撃を開始する。敵モビルスーツ隊の右からやろう。第1小隊、我に続け。』

 

 

 

『第3小隊は3分後に突入。第2小隊は少し離れた距離からの援護射撃を。』

 

 

 

『ち、俺達は後詰かよ!?』

 

 

 

『アレクシス、君は少し頭を冷やした方が良い。それに援護射撃は重要な仕事だ。突入する私達が無事に戻れるか、は援護に掛かっているんだよ。』

 

 

 

『ははは、分かってるよ』

 

 

 

ノーラは自らが先頭に立ち、敵に向かって行った。

ノーラの第1小隊はノーラと副官が先述のジム・ナイトシーカーに搭乗、残りの2機も機動性の強化したジム・クゥエルだ。

 

 

 

『散開!』

ノーラの号令で、小隊各機が一気に散開した。

 

その瞬間、敵方からのビームの閃光が通り過ぎた。

 

 

 

『各機回避行動を取りつつ敵に接近。』

 

ノーラ機が回避行動の間に射撃を折り曲げつつ、敵に接近した。

射撃については当てようと思っているわけでは無い。

あくまでも牽制だ。

 

 

そして一気に接近し、ビームサーベルを展開した。

 

 

 

 

バシュゥ!

 

 

 

 

一閃、敵モビルスーツの肩口から両断した。

ノーラの部下達も遅れることなく続き、そして後方の第2小隊からは効率の良い援護射撃が飛んでくる。

諸撃で2機の敵機を行動不能にすることに成功した。

 

 

 

『第3小隊、突入!』

第3小隊長の号令が聞こえた。

4機のジム・クゥエルが接近してくるのがレーダーに映し出された。

 

 

 

『第1小隊は反転!』

 

 

 

『了か、うわ!』

叫び声だ。

 

 

 

『3番機被弾!』

第1小隊の内の1機が敵の攻撃を受けた様だ。

 

 

 

『損害知らせ!』

 

 

 

『機体中破。動作可能ですが、左マニピュレータ使用不能です!』

 

 

 

『了解、3番機は最後方から援護に切り替え!』

 

 

 

『了解致しました。』

 

 

 

ダメージを受けている仲間を前線に立たせる必要は無い。

今の所優位な状況だから、無理をさせることは無いのだ。

 

 

 

(しかし、何だこの感じは…!?)

 

 

 

(自分達に脅威が迫ってる感じはしない。だがこれは…?)

 

 

 

敵と戦っている最中にも、この“予感”が大きくなってきていた。

この感じは以前にも覚えがある。

 

 

 

そう、この感覚はあの時、6年前に感じたものと同じだ。

 

 

 

『ノーラ、左だ!』

レシーバーに大声が響いた。

その声に従って左を確認すると、敵のジムが斬りかかってきているのが見えた。

 

 

 

『く…!』

ノーラ機はギリギリで攻撃を躱すと、返す刀で敵を攻撃した。

 

 

 

閃光と共に敵の機体が爆発し、動作を停止した。

この敵機が、この辺りの最後に1機だったようだ。

 

 

 

『あ、ありがとう。アレクシス。助かったよ。』

 

 

 

『なんだよ、お前らしくも無ぇ。どうしたんだ? 人には頭を冷やせとか言っておきながら…』

 

 

 

『あ、ああ。そうだな、すまなかった。』

 

 

 

ノーラはヘルメットのバイザーを開け、汗を拭った。

しかし、このモヤモヤする感じ、不快感が解消することは無かったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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