機動戦士ガンダム 裏切り者の愛国者   作:風鈴P

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第3話 艦隊戦

「大尉、間もなく当該艦隊との有効通信距離に入ります。」

「入って3分後に公国軍Cバンドで通信を送れ。…併せて例の通信周波数で連邦艦に中継しろ。」

 

 

 

「当該艦隊のIFFを確認。重巡のチベ級及びヨーツンヘイム級輸送艦2隻の様です。」

「それなりの数のモビルスーツを搭載していそうだな。砲雷科、シチュエーション5で行く。メガ粒子砲2門へエネルギーを充填。60%で良い。」

ユリウスはマイクで各所へ命令を出していく。

 

 

 

『大尉。モビルスーツ隊の運用はどうする?』

モビルスーツ隊隊長のグルーバー曹長からの通信だ。

 

 

 

「戦闘になったとしても、俺達はあくまでもオマケだ。前は連邦の狸共に張らせればいい。9時方向にデブリが濃い所がある。後はいつも通りだ。」

『了解した。』

グルーバー曹長は歴戦のパイロットである。

叩き上げの(つわもの)だ。

必要以上に命令を下す必要は無い。

 

 

 

「大尉、当該艦隊との通信回線を開きます。」

「最初から俺に回しておいてくれ。」

「了解しました。」

 

 

 

ピィピィ!

 

 

 

「こちらムサイ級軽巡洋艦『アルブレヒト』、指揮官のユリウス・クリーゼル大尉だ。応答を願う。」

 

 

 

『こちらチベ級重巡洋艦オーレンドルフだ。貴艦の所属は?』

 

 

 

「失礼した、本艦は突撃機動軍所属だ。フォン・ブラウン市から退避中だ。」

 

 

 

『突撃機動軍か…。本艦は宇宙攻撃軍所属、随伴の2艦も同様だ。私は臨時艦隊指揮官のベルトラン中佐だ。』

 

 

 

「失礼致しました、ベルトラン中佐。」

ユリウスが画面に映るベルトラン中佐に敬礼をした。

 

 

 

『良い。貴艦はフォン・ブラウン市から退避中と聞いたが、どこへ向かう気だ?』

 

 

 

「…我々はとりあえず連邦の警戒の隙間を縫って退避している所です。中佐の艦隊はどちらへ?」

 

 

 

『うむ。我等は捲土重来を期すべく転進中だ。詳しくは言えんが、ザビ家の中枢に近いお方が仲間を募っている。我々はそこに合流するつもりだ。』

 

 

 

「・・・」

彼等はやはり“そういう連中”だったようだ。

説得は厳しいだろうが…。

 

 

 

『貴艦が祖国の為に戦うと言うのなら、我が指揮下へ入るが良い。共に来るか?』

 

 

 

「お断りします。」

 

 

 

『…何だと?』

 

 

 

「中佐、残念ながら公国軍は敗れました。ジオン共和国が連邦と休戦協定を結んだのはご存知でしょう?」

 

 

 

『何を馬鹿な! あのような売国奴が結んだものなど無効だ。』

 

 

 

「俺は“祖国”とは自分が生まれ育った地だと思っている。確かにダイクンの思想は立派だが、思想を“祖国”だと俺には思えない。」

 

 

 

『この売国奴共めが…! 貴様等など、我々が沈めてくれる!』

通信が切断された。

 

 

 

「やはり…こうなるのか…。」

 

 

 

「ノルドハイム少佐、分かっておりましょうな…?」

ユリウスはファン・デン・ブレーケンのノルドハイムの名を呼んだ。

 

 

 

『分かっている。既にモビルスーツ隊が発進した所だ。5分待て。』

 

 

 

「大尉、オーレンドルフがミノフスキー粒子の散布を開始。解像度が悪くなって不鮮明ですが、熱源を多数感知しております。」

 

 

 

「メガ粒子砲、2門斉射! 照準はどうでもいい。斉射と同時に急速回頭、9時方向にあるデブリ帯に向かう。」

数秒後、ブリッジからも前方に放たれた二筋の閃光が見えた。

(ふね)のメガ粒子砲が発射されたのだ。

 

 

 

そしてすぐに(ふね)に向きを変えた。

デブリが濃い方向に向かい、(ふね)の姿を隠すためだ。

幸いにもこの(ふね)のクルーは優秀だ。

命令は大抵の事はやってのけることが出来る。

 

 

 

「デブリ帯に到着…!」

 

 

 

「よし、モビルスーツ隊は出撃しろ!」

 

 

 

『了解した。隊長機、ヅダ・スナイパーカスタム、出るぞ! 小隊各機はデブリを使い、敵機を牽制。』

モビルスーツ隊が出撃した。

 

『アルブレヒト』のモビルスーツ隊は4機構成である。

隊長機はグルーバー曹長が駆る、ヅダ・スナイパーカスタムである。

EMS-04 ヅダはツィマッド社が開発したモビルスーツだ。

ヅダは一年戦争が勃発するより前、モビルスーツ開発競争においてジオニック社が開発したザクに敗れた機体である。

性能自体はザクを上回っていたものの、その性能に機体が耐えられずテストパイロットの死亡事故が起きた欠陥品である。

 

とは言え性能自体は高い為、製造された少数の機体に対する改良実験などは継続されていた。

グルーバー曹長の機体はその内の1機である。

特別な武装としては135ミリ対艦ライフルを装備している。

この小隊のフォーメーションとしては小隊機であるザクⅡ3機が敵を牽制し、後方から敵を狙撃するのが基本戦術だ。

 

 

 

 

「よし、モビルスーツ隊の展開を確認した。メガ粒子砲第二射発射準備、充填率60%。砲雷科、後の運用は任せる。オペレーター、敵の動きはどうか?」

 

 

 

「ミノフスキー粒子干渉下の為不鮮明ながらも、10機程度のモビルスーツが発進している模様。敵艦からの対艦ミサイル等の発射などはありません。」

 

 

 

「よし。砲雷科、準備出来次第メガ粒子砲斉射。対艦ミサイル5発発射、予測座標1-5-0。」

 

 

 

『了解致しました。』

 

 

 

目の前のモニターには戦場の情報が映し出されていた。

敵艦隊は既にミノフスキー粒子を戦闘濃度で散布しており、レーダー上では敵をロストしている。

その為映し出されているはロストした時の位置と、現在の“予測位置”である。

 

 

 

「グルーバー曹長、データリンクで情報を送る。敵モビルスーツは10機前後、ロスト位置、現在の予測位置だ。」

ユリウスは部下に命じ、味方モビルスーツ隊へ情報を送った。

 

『受領した。このパターンは…、ククク、連中バカ正直な奴等だな。』

通信越しにグルーバーの笑い声が聞こえた。

 

『大尉、この連中の動きはジオン戦闘教本そのままの様だぞ。』

グルーバーは敵をロストするまでの情報から、敵の動きを予測できたらしい。

 

「予測位置の修正は必要か?」

 

『必要無い。モビルスーツ戦闘教本、3章第1項で良い。』

グルーバー機が135ミリ対艦ライフルを構えた。

 

『小隊各機、俺はコイツを20秒後に発砲する。装填から照準までは25秒を稼いでくれ。』

 

 

グルーバー機がデブリ帯の影から第一射を発射した。

 

 

遠くの方で光が見えた。

何かに命中したのだろう。

 

 

 

 

「大尉、4時方向から連邦艦が2、モビルスーツ約12機接近中。」

「ノルドハイム少佐の部隊の筈だ。あの連邦の少佐殿が約束を違わない人ならば、援軍の筈だな。」

 

 

 

『ハッハッハ…!通信は秘匿回線で繋がっているのだ。聞こえているぞ、クリーゼル大尉。』

画面に声の主が映し出された。

 

 

 

「な…? ノルドハイム少佐、自ら出撃されているのか?」

画面に映し出されたのはノルドハイム少佐であった。

ノルドハイムはなんとノーマルスーツを着用し、モビルスーツに搭乗していた。

 

 

 

『そうだ。私は元々パイロットだからな。』

ノルドハイムが登場しているのはジムの様だ。

カラーリングが独特であるから、カスタム機かもしれない。

 

 

 

「ノルドハイム少佐、宜しければデータリンクにて現時点での分析データをお送り出来ます。この指定回線でお送り致しますか?」

 

 

 

『おお、よろしく頼む。』

意外にもあっさり了承した。

部下に指示し、データを連邦機に送信させた。

 

 

 

『フム、了解した。我等は前に出る。我が部隊の機体は任務の特性上、不意の戦闘でも生存性が高くなる様に装甲強化を施している。多少なら被弾しても問題ない。グルーバー曹長と言ったな? 援護射撃を期待しているぞ。』

この男はアルブレヒトの戦い方を掴んでいるのだろうか?

 

 

 

『了解致しました。恐らく敵の動きですが…』

グルーバーは第二射の準備をしながら説明しようとした。

 

 

 

『説明は不要だ。貴官は当初やろうとしていることをしてくれれば良い。…各機、これより敵と接触するぞ。幸運を祈る(グッドラック)!』

 

 

 

連邦のモビルスーツ部隊が敵部隊に向かって突撃していった。

狙撃手(スナイパー)であるグルーバー機を除くアルブレヒトのザク3機も連邦部隊の後ろから敵に近付いていく。

 

 

 

『大尉。連中、中々の手練れの様だな。』

グルーバーが援護射撃をしながら言った。

 

 

「あ、ああ…」

ユリウスは腕を組んだ。

ノルドハイム少佐率いる連邦のモビルスーツ隊は確かに手練れの様である。

 

だがユリウスは違和感を感じていた。

モビルスーツの操縦と言うものはどの組織でも“基本”は同じである。

だが所属組織によって少しずつ特性が違う事もある。

それは言わば言語における“方言”のようなものである。

 

あの連邦のモビルスーツ隊の戦い方は、どうも連邦とは違うような気がする。

いや、連邦のモビルスーツの運用は良く知らないが、どうもあの戦い方はジオンっぽいのだ。

 

 

ノルドハイムはジオンの暗号技術を使ってこちらに通信を送って来た。

 

 

一体彼等は何者なのだろう?

 

 

変わりゆく戦況を見つめながら、ユリウスはそう考えた。

 

 

 

 

 

 

 

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