機動戦士ガンダム 裏切り者の愛国者   作:風鈴P

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第二章 『ファン・デン・ブレーケン』
第6話 ダークサイド


一週間戦争。

ジオン公国が地球連邦政府に対して突如宣戦を布告してから一週間の間に行われた戦いの事を指す。

 

 

この戦いにおいてジオン公国軍のうちドズル・ザビ率いる艦隊は地球連邦軍艦隊を攻撃。

一方キシリア・ザビ率いる艦隊は月面都市グラナダを制圧。

その後地球連邦側に組していたサイド1、サイド2、サイド4の各スペースコロニーの住民をNBC兵器で虐殺した。

そしてその内のコロニーの1基を地球に落下させたのである。

 

 

これはジオン独立戦争における暗部(ダークサイド)とも言える一週間戦争に参加した一人の女性兵士の物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(やめてくれ…!)

 

 

 

(苦しい…、苦しいよ!!)

 

 

 

この部隊は“作戦終了”まで対象のコロニーの周囲を警戒した。

スペースコロニーには太陽光を取り込む透明の部分がある。

その為、外部から中の街並を見ることが可能だ。

 

 

 

『“先遣部隊”は敵コロニーに取り付き、作戦を開始した。第2小隊および第3小隊は周囲の警戒を継続せよ。』

 

 

 

作戦本部からの情報が僚機に届けられた。

 

 

 

『ノーラ、お前はマップコード2を警戒せよ。ミノフスキー粒子でレーダーが効かないから、最大限の警戒態勢を継続しろよ。』

 

 

 

指揮官からノーラを呼ばれた女性、

ノーラ・サヴィツキー伍長はジオン公国軍の新米パイロットである。

士官学校を出ているわけではないがモビルスーツへの適性が見出された女性兵士である。

出身はサイド3、3バンチ“マハル”。

所属する部隊はほとんどが同郷者である。

乗機はMS-06 ザクII。

今回の作戦が初陣である。

 

 

 

「隊長、命令の通りマップコード2、後方を警戒します。フォーカスは13時方向、コロニー外壁付近に布陣します。」

 

 

 

『了解した。1機を共に付け、警戒に当たれ。』

 

 

 

「了解致しました。」

指揮官の許可を受け、ノーラ・サヴィツキー伍長の機は僚機とともにコロニーの外壁に接近した。

目的の場所に到着すると、即座に警戒態勢に移行する。

 

 

 

ピッピッ!

 

 

 

ノーラは前方のパネルを操作した。

コックピット内のモニターに映し出された映像が変化した。

 

ノーラはこの作戦の詳細までは知らされていない。

作戦司令部が言うには、この作戦は地球連邦との戦いを優位にするための“重要作戦”とのことである。

ノーラの部隊は“重要作戦”に直接携わる訳ではないが、その後方支援を任されたのだ。

 

 

 

『“重要作戦”っていったいどういう作戦なんだろうな。ノーラ、あんたは何か聞いてるかい?』

僚機のパイロットが話しかけてきた。

 

 

 

「いや、私も詳しくは聞いていない。コロニーに取り付いて何かをするらしいが…」

ノーラはそういうと、再びパネルを操作した。

メインカメラを望遠にすれば、“重要作戦”を遂行中の部隊の姿を捉えられるかもしれない。

 

 

 

「あれは…?」

ノーラは何気なく自機のカメラをコロニー内部に向けた。

 

前述の通り、このコロニーには太陽光を取り入れるために透明な部分がある。

ノーラはカメラを最大望遠に調節した。

 

 

 

「な、何だあれは…!? ま、まさか…!!」

言葉を失った。

 

 

 

モニターに映し出されたのは何かに苦しむ人々の姿であった。

しかもあれは軍属ではない。

どう見てもこのコロニーに住む住民、民間人である。

 

 

人々は一様に苦悶の表情を浮かべていた。

ある者は血が出るまで喉を掻き毟り、そしてある者は吐血を繰り返していた。

 

そして、既に絶命している者もいた。

 

 

 

 

「うっ…!?」

ノーラは食道の奥から熱いものが込み上げてきた。

慌ててヘルメットのバイザーを開け、横の荷物入れから袋を取り出す。

 

 

 

「ぅ…、おぇ…」

 

 

 

あれはまともなものじゃない。

 

 

 

あれはおそらくコロニー内に毒ガスのようなものが散布されているのだろう。

 

 

 

あんなものが“重要作戦”な筈がない。

 

 

 

 

『ノーラ、どうした? 何かあったのか?』

僚機のパイロットがノーラの異変を感じたらしい。

嘔吐する前に通信を切ったつもりだったが、少し音を拾っていたのだろうか。

 

 

 

 

「い、いや、何でもない…。ちょっと外周への警戒を変わってくれるか?」

 

 

 

 

『ん? ああ、了解した。』

僚機のパイロットはコロニー内の惨劇には気付いていないようだ。

 

 

 

 

「・・・」

もう一度サイドモニターを見た。

やはり多くの住民が苦しみ、命を落としている様子だった。

 

 

 

(やめてくれ…!)

 

 

 

(苦しい…、苦しいよ!!)

 

 

 

聞こえる筈もないが、その光景はこのような声が聞こえてくるようだった。

 

 

 

カチ!

 

 

 

ノーラはパネルを操作し、カメラの向きを変えた。

自分はジオン・ダイクンの思想に共鳴し、高い志を持ってパイロットになったつもりだった。

 

 

 

祖国の、スペースノイドの独立の為には多少の犠牲も致し方ない、そう思っていた。

 

 

 

だがあれはそんな生易しいものではない。

 

 

 

一体どれくらいの人々が命を落としたのだろう?

 

 

 

 

 

 

『作戦司令部より、友軍各機へ。“重要作戦”の終了を確認した。直ちに所属艦へ帰投せよ。繰り返す…』

 

“重要作戦”とやらは終わったらしい。

恐らく、このコロニーの住民は全滅した、と言うことだろう。

 

 

 

 

『ノーラ、帰投命令だ。母艦に戻ろうぜ。“重要作戦”が成功したのなら、酒くらいは振る舞ってくれるかもしれねえな。』

僚機のパイロットが呑気な発言をした。

彼はあの惨状を見ていないから、ただ単純に作戦の成功がめでたいことだと思っているのだろう。

 

 

 

「…そうだな。母艦に戻ろう。」

ノーラは元気なく答えた。

この後も僚機のパイロットが何かを言っていたような気がしたが、何も覚えていない。

 

 

 

 

後で分かったことだがこの作戦を含む、独立戦争開戦から一週間の戦いで、地球圏の総人口の約半数が命を落としたそうだ。

自分達はスペースノイドの自主独立を掲げた筈だったのだ。

だが命を落とした者たちの中には、スペースノイドが多く含まれていた。

 

 

 

 

この戦いは、一体何のための、誰のための戦いなのだろう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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