機動戦士ガンダム 裏切り者の愛国者   作:風鈴P

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第8話 慣熟訓練~実戦へ

「サヴィツキー曹長、調子はどうだ?」

上司であるノルドハイム少佐が声を掛けてきた。

 

 

「はっ! 今の段階としては上々、と言うところだと思います。」

“地球連邦軍パイロット”のノーラ・サヴィツキー曹長は元気よく答えた。

 

 

この日、ノーラ達は連邦製モビルスーツの慣熟訓練に出ていた。

併せて同じ部隊に所属する戦車隊3個小隊も随行していた。

ここにいる“地球連邦軍”は全てジオン公国・突撃機動軍からの“潜入部隊”である。

 

 

 

「ふむ、貴官等は中々腕が立つようだ。海兵隊司令部からのデータ通りだな。」

ノルドハイム少佐が腕を組みながら満足そうに頷いた。

 

 

「そう言って頂きますと、私達としては嬉しい限りです。」

ノーラも訓練を続ける部下達を見ながら答えた。

 

 

「供与されたモビルスーツの方はどうかね?」

「は…、モビルスーツですか?」

ノーラは自らの乗機を見上げた。

 

 

「私には高性能過ぎて、勿体ないくらいです…」

ノーラはそう言いながら苦笑した。

 

ノーラに与えられたモビルスーツはRGM-79V 『ジム・ナイトシーカー』である。

この機体は地上拠点の奪還を任とする空挺部隊用に開発されたもので、高高度からの強襲・奇襲を行なうために胸部と背部に計6基のスラスターが増設されている。

加えて通常のジム・ナイトシーカーと違う所は、機体が緑色に塗装されている所か。

 

所属する中隊には2個小隊の小隊長用に2機が配備された。

その2機は中隊長兼第1小隊長のノルドハイム少佐と、第2小隊長であるノーラに割り当てられた。

 

「スラスターをうまく使えば、複雑な戦闘機動が出来そうです。ザクではそうはいきませんね…」

 

「まぁ…、そのあたりが連邦とジオンの国力差とも言えるな。」

 

 

国力差。

ジオンの国力は地球連邦の30分の1とも言える。

ジオン公国はその差を埋めるべく電撃戦を展開、そして様々な戦局に対応すべく多様な“シリーズ”の兵器を開発した。

 

一方で地球連邦軍は序盤こそ押されていたが、V作戦を皮切りに劣勢を挽回していった。

モビルスーツの開発に至ってはジオン公国程多くの“シリーズ”があるわけでは無い。

量産機の“ジム”を基本に、“バリエーション”を広げる形での開発を進めてきた。

もちろん成功しないものもあったが、それぞれの“バリエーション”が一定の成果を収めてきた。

 

 

「部下達に支給されたジム・ライトアーマーも、機動性においては引けを取るものでは無い。ジオンが必死に作り上げたものを、連邦は簡単に作ってしまう。」

 

 

まさに、この一言が国力差を如実に現してるとも言えるのだ。

 

 

ピィピィ!

 

 

ノルドハイムが持つ通信機の音が鳴った。

 

 

「こちら第3中隊、ノルドハイムだ。」

ノルドハイムが通信機を手に取った。

何か基地司令部から命令が入ったのかもしれない。

 

 

「了解した。直ちに作戦行動に入る。」

通信を終え、ノルドハイムは通信機をしまった。

 

 

「何かありましたか?」

「まずはモビルスーツに搭乗しろ。詳しくはそれから説明する。」

「は、了解しました。」

 

 

ノルドハイムに促され、ノーラは自機のジム・ナイトシーカーに搭乗した。

ノーラはコントロールパネルを操作し、オペレーティングシステムを起動した。

機体自体はアイドル状態にしてあったので、その操作はすぐに完了した。

 

 

 

『中隊各機へ。基地司令部より命令が入った。』

ノルドハイムからの通信だ。

この通信は部隊内での独自周波数で行われているものだ。

 

 

 

偵察部隊(スカウト)からの情報だ。この先30キロ程先にジオンのモビルスーツを発見したそうだ。データリンクで情報を送る。』

 

 

モニターに情報が映し出された。

情報によると、この先の丘の向こうジオン軍のモビルスーツ部隊がいるらしい。

数は不透明ではあるが5機前後との事だ。

 

 

 

『司令部より敵を叩け、との命令だ。これより我が中隊は敵部隊と交戦する。』

 

 

 

『し、しかし…。それでは我々は同胞と戦うことに…!?』

部下の一人が動揺した声で言った。

 

 

 

『今更何を言っている? 今の我々は連邦軍としてここにいるんだぞ。彼等から見たら、我々は敵でしか無いのだ。』

 

 

 

ノルドハイムの言う通りだ。 

我々は今、連邦軍の制服を着て、連邦軍のモビルスーツに乗っている。

“同胞”の筈の彼等のレーダーには、我々は敵として映るだろう。

 

 

 

『作戦を説明する。私と第2小隊長のサヴィツキー曹長のジム・ナイトシーカーが先行する。小隊各機は50メートル後方から援護しろ。』

ノルドハイムの説明と共にモニターの情報が更新されていく。

 

 

 

『戦車3個小隊は当該地域から5キロ後方に待機。モビルスーツ隊が地図上のBポイントに達したら準備砲撃。榴弾(HE)を装填しろ。照準はどうでもいい。』

 

 

 

準備砲撃による砲弾の雨を降らせ敵を撹乱し、その間に優位立つ作戦なのだ。

ノルドハイム中隊は行動を開始した。

 

 

十数分後、敵が確認された位置から2キロ程のところに到達した。

モニターには偵察部隊(スカウト)の情報を元にしたデータが映し出されている。

たがこれはあくまでも数分前の情報だ。

 

 

 

『よし、間もなく敵に接敵する。戦車隊、準備砲撃を開始!』

 

 

 

頭上を数発戦車砲弾が通過していく。

数秒後に前方で爆発を起きているのが確認された。

 

 

 

『戦車隊、装填後第二射を斉射。モビルスーツ隊は接近を継続。』

 

 

 

「少佐、後退していく敵モビルスーツ隊を視認!」

ノーラは煙の合間に、逃げていく敵部隊を確認した。

 

 

 

『よし、全員掛かれ!』

 

 

 

モビルスーツ戦が開始された。

ノーラはノルドハイム機の動きを見た。

ノルドハイム機はスラスターの向きを頻繁に変え、複雑な戦闘機動を見せていた。

ジム・ナイトシーカーはドムの様な熱核ジェットによるホバー機能を持ってないが、あの動きはまるでそれを髣髴とさせる機動だ。

 

 

 

「ようし、私も行くぞ!」

ノーラもノルドハイムの起動を真似すべくレバーとアクセルを操作した。

 

 

 

ブワァァ!

 

 

 

大きなスラスター排気音と共に、機体が大きく傾いた。

 

 

 

「う、うわ!」

ノーラは思わず大きな声を上げた。

 

 

 

『サヴィツキー曹長、こいつは結構なじゃじゃ馬だ。私みたいな機動をするには繊細な操縦をせねばな。』

ノルドハイムが笑いながら言った。

そして先頭のザクⅡの左腕を両断した。

その後、後方小隊機からそのザクⅡに向かって射撃が行われた。

射撃はザクⅡの手足を捉え、作動不能にした。

 

 

 

『まずは1機だ…。ム!?』

 

 

 

敵部隊の内の1機、グフがこちらに向き直った。

 

隊長機を思しき機体。

シールドには眼帯を着けたドクロと稲妻の様なマークが描かれていた。

 

 

 

『これはとんだ外れクジだ。』

 

 

 

「外れクジ? それはどういう事です?」

ノーラが聞き返した。

しかしノルドハイムは答えなかった。

 

 

 

『…ジオンの秘匿周波数で話す連邦軍部隊とは、実に訳の分からん連中だな。』

 

 

 

突然部隊の通信周波数に割り込んできた声。

それは目の前のグフであった。

 

 

 

『やはり貴様は“荒野の迅雷”、ヴィッシュ・ドナヒュー中尉の様だな。』

 

 

 

「こ、荒野の迅雷!?」

 

 

 

何と目の前のグフのパイロットはエースとして知られる“荒野の迅雷”、その人だったのである。

 

 

 

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