捻くれた少年と猫っぽい少女   作:ローリング・ビートル

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自己紹介

 

 自分のことを卑下しながら俯いたショートカットの女子は、俺とは小町の視線に気づいたように、はっと顔を上げた。

 

「ご、ごめんなさい!失礼します!」

 

 頭を下げ、そそくさとその場を後にしようと……

 

「にゃにゃっ!?」

 

 したが、足をもつれさせ、その場にすてんっと転んでしまった。

 俺と小町は慌てて駆け寄る。

 

「大丈夫ですか?」

「あはは……だ、大丈夫にゃ……うん」

 

 自分で自分に大丈夫と言い聞かせるように、彼女は立ち上がり、デニムをぱっぱっとはたき、照れ笑いを見せた。

 その時、春風が彼女の髪をさらさらと揺らし、仄かに甘い香りが鼻腔をくすぐった。

 黙って突っ立ったまま見ていると、彼女は今度こそと言わんばかりに駆け出し……

 

「……にゃぁ」

 

 て行かずに、何故かその場でピタリと立ち止まった。

 もしかしてと思い、声をかけてみる。

 

「……足、痛めたのか?」

「……にゃぁ」

 

 振り向いた彼女は、涙目になっていて、こくりと頷いた。

 そんなやり取りをしている間も、行き交う人波はその流れを止めることなく、緩やかに流れていた。

 

 *******

 

「……ほら、これ……」

 

 ベンチに座っている彼女にペットボトルを手渡す。受け取った彼女は申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「あ、ありがとうございますにゃ……」

「いや、別にいい……」

 

 視線を合わせたまま、小町にもジュースを渡す。見ろよ、このさり気ない気遣い。俺が女だったら惚れるまである。小町は「ありがと~」と言って受け取り、さっそく飲み始めた。

 

「…………」

「…………」

 

 しばらく絡み合った視線はやがて離れ、どちらも明後日の方向を向く。小町は何故か溜息を吐き、ショートカットに話しかけた。

 

「あの~、私、比企谷小町って言います。こっちは兄の八幡です。これも何かの縁ってことで、お名前聞いてもいいですか?」

 

 まじか……初対面の相手に名前聞いちゃうのか。我が妹ながら、コミュ力の違いに驚かされる。俺ならそのまま無難に別れた後、再び初対面状態に戻れるまであるのに。

 ショートカットはキョトンとしていたが、すぐにぱあっと笑顔になり、自分の名を告げた。

 

「全然オーケーだよ♪私の名前は星空凛!よろしくね、小町ちゃん!……比企谷さん!」

「はい、よろしくお願いします!凛さん♪」

「……おう」

 

 申し訳程度に会釈して応じる。別に、俺を呼ぶときに間があったことなんて気にしていない。いないったらいない。

 この時、まだ俺達は知る由もなかった。

 この出会いが…………なんて。




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