それでは今回もよろしくお願いします。
自分のことを卑下しながら俯いたショートカットの女子は、俺とは小町の視線に気づいたように、はっと顔を上げた。
「ご、ごめんなさい!失礼します!」
頭を下げ、そそくさとその場を後にしようと……
「にゃにゃっ!?」
したが、足をもつれさせ、その場にすてんっと転んでしまった。
俺と小町は慌てて駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
「あはは……だ、大丈夫にゃ……うん」
自分で自分に大丈夫と言い聞かせるように、彼女は立ち上がり、デニムをぱっぱっとはたき、照れ笑いを見せた。
その時、春風が彼女の髪をさらさらと揺らし、仄かに甘い香りが鼻腔をくすぐった。
黙って突っ立ったまま見ていると、彼女は今度こそと言わんばかりに駆け出し……
「……にゃぁ」
て行かずに、何故かその場でピタリと立ち止まった。
もしかしてと思い、声をかけてみる。
「……足、痛めたのか?」
「……にゃぁ」
振り向いた彼女は、涙目になっていて、こくりと頷いた。
そんなやり取りをしている間も、行き交う人波はその流れを止めることなく、緩やかに流れていた。
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「……ほら、これ……」
ベンチに座っている彼女にペットボトルを手渡す。受け取った彼女は申し訳なさそうに頭を下げた。
「あ、ありがとうございますにゃ……」
「いや、別にいい……」
視線を合わせたまま、小町にもジュースを渡す。見ろよ、このさり気ない気遣い。俺が女だったら惚れるまである。小町は「ありがと~」と言って受け取り、さっそく飲み始めた。
「…………」
「…………」
しばらく絡み合った視線はやがて離れ、どちらも明後日の方向を向く。小町は何故か溜息を吐き、ショートカットに話しかけた。
「あの~、私、比企谷小町って言います。こっちは兄の八幡です。これも何かの縁ってことで、お名前聞いてもいいですか?」
まじか……初対面の相手に名前聞いちゃうのか。我が妹ながら、コミュ力の違いに驚かされる。俺ならそのまま無難に別れた後、再び初対面状態に戻れるまであるのに。
ショートカットはキョトンとしていたが、すぐにぱあっと笑顔になり、自分の名を告げた。
「全然オーケーだよ♪私の名前は星空凛!よろしくね、小町ちゃん!……比企谷さん!」
「はい、よろしくお願いします!凛さん♪」
「……おう」
申し訳程度に会釈して応じる。別に、俺を呼ぶときに間があったことなんて気にしていない。いないったらいない。
この時、まだ俺達は知る由もなかった。
この出会いが…………なんて。
読んでくれた方々、ありがとうございます!