Fate/Lyrical cross ☓はやて【凍結中】   作:貫咲賢希

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第9話 魔刻

「では、まず始めに君達が出遭ったグラディエールと名乗った男のことでも教えよう」

 

 言峰汞の言葉に一瞬、八神はやてが気にするようにリインフォースを見たが、その視線に気づいた彼女は気遣い無用とばかりに穏やかな笑みを自分の主に向ける。

 

「あの男は率直に言ってしまえば転生者と呼ばれる輩だ」

 

 はやては咄嗟に今度はミコト・ベルンハルトへ視線を向けようとしてが、慌ててそれを制する。

 ミコトが転生者であることは簡単に打ち明けるものでもないし、そもそもリインフォースを襲った人間と自分の大切な友達であるミコトを一緒にしたくないのが本音だった。

 そんなはやての反応に気づいているのか、それともワザと無視しているのか、汞は含みある笑みを浮かべて話を続ける。

 

「まぁ、簡単に言えば前世の記憶を持ったままこの世に生を受ける存在だ。あれらにはそれ以外の統一された特徴が無くてね。前世の力、記憶を引き継いだままこの世に生を受ける者。前世に由来する力を発揮できる者。あるいは前世では持ち得なかった力を持つ者もいる。

 傍迷惑なことに、この世界がまるで物語の中であると妄想し、自分以外は作り物だと考える愚か者も中にはいるのだが、そういった存在は前世自分が最も惹かれた世界に引きつけられてやって来たと考える者もいる。あくまで考えの一つであり、正解か不正解かも分からない。

 だが、彼らの元がなんであるか、そんなものは些細なことだ。重要なのは見た目に反して多くの知識や力を持つ者、あるいは既に強者であった者を考えておくれ」

 

 汞の説明をはやては理解する。元々、ミコトが以前に転生者というのはどんな存在であるか教えてもらった事があるので、その事に関しては不可解な気持ちにはならなかった。

 だが、世界が物語の中であると妄想し、自分以外は作り物だと考える愚か者。そんな存在がいることを知った時、彼女は嫌な気分になった。つまりは、その者にとって自分以外の存在は虚像でしかないのだ。

 はやても本が好きなので、物語の中に行ってみたいという気持ちは今でもある。だが、そこにいるのはきっと自分達と同じ感情を持った存在なはずだ。それを作り物だから、というどこか上から視線で見られるのは、仮に自分だったら我慢できないだろう。

 はやてが内心憤慨するのを余所に、汞の話はまだまだ続く。そもそも、彼の話はまだ始まったばかりなのだ。

 

「そういった転生者の他にも様々な力を持ち存在がいる。元からこの世界にいた人間以外の妖怪やら吸血種。それに敵対、対抗する存在。一般的にはそれこそ物語でしか現われないような存在が上げれば切りがないほど跋扈している。君たちもまたそうであろう? 外界から来た存在、あるいはその恩恵を受けた者なのだから」

 

 面白そうに自分達を見る汞の視線に、はやてもあまり良い気持ちにはならかった。まるで、標本された虫でも眺めている視線。ヴィータなど、あからさま不愉快そうに汞を睨んでいた。

 もっとも、自分たちが既にどんな存在であるか知られているのかはさして驚かない。既に彼は自分たちを異界の魔術師と呼んでいた。はやてやリインフォースたちが使うベルカ式の魔法を知っているような素振りをしたリニスの存在を考えると、こちらの素性は在る程度向こうには筒抜けなのだろう。

 

「そして、当然、強大な力にはそれを管理する存在がいる。この日本を始めとする多くの先進国では国自体が裏でそういった存在を認知し、管理する。そして、国々以外でそういった団体をあげるなら二つ。

 一つは魔術協会。そして、もう一つは聖堂教会」

 

 その言葉を聞いてアーチャーの眉がピクリと動く。本当に僅かな動きだったが、汞はそれを見逃さなかった。

 

「どうやら、君はこの二つのことを知っているようだ。ああ、名前は——」

「どうしても呼びたければ、アーチャーとでも呼べ」

「ふふ、アーチャー。なら、この二つの団体を詳しく知らぬなら後で彼に聞くと良い」

 

 アーチャーの粗雑な態度を軽く受け流した汞は更に話を続ける。

 

「各国の政府、そして魔術協会と聖堂協会がそれぞれの思惑で異能や神秘を管理しているのだが、共通している点が神秘を秘匿していること。そして、それらを破ったものは然るべき処置を取り行っている」

「しょ、処置って?」

 

 思わず訊ねてしまったはやての言葉を、汞は当たり前のようにすんなり答える。

 

「殺している」

「ころ——」

「あるいは生きたままホルマリン漬けだろうか? まぁ、ロクなことにはならない」

 

 それを聞いたはやては益々顔が青くなった。

 自分が歩む魔法の道は生死に関わる危険なモノだと認識をしていたはやてだったが、汞の言葉は想像以上だった。

 

「ああ、そんなに怯えなくても心配いらない」

 

 怯えさした張本人がどの口を吐くのか、至祈以外からの非難の視線を流しながら汞は白々しく言う。

 

「聞けば君たちはリニスと同系統の神秘を扱うそうではないか? それなら、外界と遮断する結界も持っているだろ? 神秘の秘匿にはそれで十分なので、結界の中で神秘を行使すれば、とりあえずは狙われることもないはずだ。見たところ悪用するような人間にも見えない。犯罪者でなければ、知られたところで国は関与することはないだろう。基本的にどの国も事が起きない限り、神秘に対しては不可侵と決めているらしい」

 

 それを聞いたはやては一瞬だけ安心したが、直ぐに疑問が浮かぶ。

 彼は犯罪者でなければ国は大丈夫そうだ。

 だが、残る魔術協会と聖堂教会はどうなのだろうか?

 

「さて、私からの話は以上だ。何か質問はあるかね? 答えられることは少ないが、最大限譲歩しよう」

 

 それに対し、真っ先に手を上げたのはアーチャーだった。

 

「なにかね、アーチャー」

「言峰といったか。貴様はなぜ我々にそれを教えた? ここが教会であり、貴様が神父ならば、貴様が先程の話にあった聖堂教会の一員、あるいはそれに関係する者なのは考えつく。そして、目的は違えど、神秘の秘匿はどの組織も一緒のようだ。

 態々、神秘の漏洩を部外者にすることは信義に反するのではないか?」

「確かに私は聖堂教会の一員だが、君たちが部外者というのは違うだろ、アーチャー?

 君たちは常人では持ち得ぬ神秘を扱うこちら側の存在。しかし、この世界での最低限のルールを知らないと見えたので、迷える子羊のため親切心を働かした。これでは駄目かね?」

 

 そんな汞の言葉を聞いたアーチャーが鼻で笑う。

 

「ふん、親切心だと? 自ら理に反するものは排除する輩が随分と優しいことだ」

「誤解を招いているようだが、私は聖堂教会でも穏健派に部類する。過激派と違って節度は守っているつもりだよ。現に君たちには一切手を上げていない」

「今は、な」

「アーチャー、駄目だよ!」

 

 いぶしかむように汞を睨んでいたアーチャーを制したのは慌ててミコトだった。

 そして、直ぐにミコトは汞に顔を向けると頭を下げた。

 確かにアーチャーの態度は褒められたものでもないが、汞の相手の逆撫でするような態度も同時に褒められたものでもない。更に言うなら汞は見るからに怪しい。アーチャーが警戒するのも納得できる。

 だがミコトは汞に対してアーチャーの非礼を謝罪した。

 

「貴方の親切に対し彼が無礼を働いて、すみません! ですが、彼も僕達の身を按じているだけですので、どうか許してください!」

 

 頭を下げるミコトに対して、汞は気にしていない素振りで微笑みを向ける。

 本当に最初から気にしている様子はなかったのだが、汞がミコトに対して向ける笑みはどこか感心めいたものがあった。

 

「私は気にしてない。彼が私を警戒するのは尤もであり、私も落ち度があったことは認めよう。だから、どうか頭をあげてはくれないか?」

 

 先程とは違った優しい声色に周囲は逆に異常と感じた。

 前から汞を知る佐津間至祈も、彼の行動は不可解に映ったらしく奇妙なモノでも見るような眼差しを向ける。

 そんな周囲の反応に気づかず、ミコトは顔を上げると汞に礼を言う。

 

「ありがとうございます。重ねて、色々と教えてくれて、ありがとうございます!」

「私も、今日は教えてくれてどうもありがとうございます!」

 

 ミコトに続くようにしてはやても汞に礼を言った。彼に対してはやても色々と思うことは芽生えたが、無知な自分たちに世間の事情を教えてくれたのは事実なので、そこは素直に感謝している。

 自分たちの主たちが礼を言ったので、リインフォースも「感謝する」と短く礼をする、ヴィータも渋々ながら軽く頭を下げた。アーチャーだけは変わらず汞を警戒するように睨んだままだっただが。

 

「かまわない。いや、しかし、今どき珍しいほど良い子供達のようだ。君たちの力になれたのなら、これ幸いだろう」

 

 汞は満足そうに頷くと、彼が話している時ずっと黙っていた至祈を見る。

 

「随分と良い友人ができたものだな、至祈よ」

「だから、友達じゃねぇつってんだろ」

「てめぇ——」

「ヴィータ、駄目やって」

 

 至祈の言葉に再び突っかかろうとしたヴィータをはやてが止める。

 そして、一瞬の沈黙の間が広まったのを見て、アーチャーが「さて」と、声をあげる。

 

「話が終わったなら、我々はこれで失礼させてもらうぞ。思った以上に時間が過ぎた。

 まだ幼いミコトたちをあまり夜道を歩かせたくないのでね」

「そうだな」

 

 アーチャーの言葉にリインフォースが直ぐ賛同した。アーチャーもそう思っているだが、リインフォース自身、あまりここに長居したくなかった。

 教会は神聖なる場所であるのだが、目の前の言峰汞という男のせいなのか、どこか居心地が悪い。こんな場所に自分の大切な主や仲間を居させることはあまりしたくなかった。

 

「ええと、まぁ、確かに遅い時間やし、今日のとこは帰ります。今日は本当にありがとうございました」

 

 急に帰ろうとする二人にはやて戸惑いながらも、アーチャーの言い分は正しいので、少し申し訳ないと思いながらも、はやては頭を下げて汞に再び礼を言った。

 

「ありがとうございました。また、何か分からないことがあればここに来てもいいですか?」

 

 はやてに続くようにして言ったミコトの言葉を聞いて、汞はどこか嬉しそうに顔を崩す。

 

「ああ。何時でも歓迎するよ」

 

 そんな汞にアーチャーは苛立ちながら、それまで周囲を見守っていたリニスに近づく。

 いきなり自分のとこにやってきたことに驚くリニスを余所に、アーチャーはもっていた紙袋を彼女の前に差し出す。

 

「遅れたが手土産だ。後で君の主とそこの神父とで分けろ」

「おや? 私の分もあるのかい?」

「いらぬなら捨てろ」

「ええと、どうもです」

 

 リニスは汞を睨むアーチャーに戸惑いつつも、丁寧に差し出された手土産を受け取る。

 

「わざわざこんなものを買って来てくれるなんて、意外と律義なんですね」

「買ったのではない。私が作った」

「え?」

 

 本当に意外そうにリニスがマジマジとアーチャーを見た。至祈も意外だったのか、可笑しなものでも目にするようにアーチャーを見る。汞といえばもう興味がないのか、帰ろうとするミコトたちに視線を向けていた。

 

「なんだ、その反応は?」

「いえ、すみません————うわぁ、美味しそう。これ、本当に貴方が?」

 

 不作法だとは知りつつも、リニスはその場で中身を確認すると、クッキーやらスコーンの焼き菓子があり、どれも店で買ってきたように見栄えが良かった。おそらく味も見栄えどおり良いのだろう。

 

「だから、そうだと言っているだろ」

「そう、ですか。ああ、なぜだが食べる前から敗北感を感じるのは気のせいすかね」

「なにをブツブツと言っている? 味の文句は食ってからにしろ」

「すごい自信ですね! なんかもうすでに色々と感服しますよ」

「ん? なにを言って——」

「おい、アーチャー。渡したなら帰るぞ」

 

 アーチャーとリニスがとこへ割ってくるようにリインフォースがやって来た。

 

「ああ、なんだか止める形ですみません。今日は色々と失礼をしました。私たちはまだここに用が残念ながらあるので、今回の謝罪はまたの機会に」

「いや、こちらこそ世話になった」

 

 頭を下げるリニスに何故か若干戸惑いながらもリインフォースは自分も頭を下げる。

 そうして、五人は教会を後にした。

 

 五人が教会から外に出た時、空はそろそろ日が沈みかけている時間だった。

 

「あの——」

 

 そして、教会の扉がバタンと閉まった瞬間、ミコトがなにか言いたげに声をあげる。

 

「うん? なに、ミコトくん?」

 

 はやてが首を傾げながら問い掛けると、ミコトは申し訳なさそうな口ぶりで四人に言った。

 

「あの、お願いがあるんだけど———」

 

 *

 

「どういうつもりだ?」

「さて、なんのことかね?」

 

 はやて達が出て行った瞬間、至祈が汞を睨む、が、直ぐに諦めたように視線を外した。

 

「どうせ時間の無駄だからいい。それよりも、別件だ」

「ああ、そうだね。忘れていたよ」

 

 汞の言葉に至祈は不愉快そうに眉を顰め、隣にいるリニスも憮然とした顔になる。

 正直、至祈とリニスは汞のことが苦手だ。嫌っているといっても差し支えない。会う必要がなければ一生会いたくないと思っている。

 だが、そうはいかない。

 なぜなら相手は、大事な取引相手なのだから。

 

 *

 

 日が沈み、夕陽色に赤くなった空。教会を出た至祈はそれを見つけた。

 

「なにしてやがる?」

「あっ——」

 

 それは先程帰ったはずのミコトだった。

 ミコトは至祈が現われると、相も変わらず彼に微笑みを向ける。

 至祈はそれが不思議で堪らなかった。自分が彼にした態度は悪いと自覚している。自覚して上でしており、それを治す気も、謝る気も至祈にはなかった。

 なのに、この少女のような外見の少年は変わらず自分に笑みを向ける。

 それが至祈には不思議だった。

 

「うん。シキに言いたいことがあって。今、帰るとこ?」

「いや、外の空気吸いにきただけだ。直に戻る」

「そっか」

 

 どこか残念そうにするミコト見て、至祈は顔を顰める。

 

「要件があるならさっさとしろ」

「ああ、うん。ごめんね。あの——」

 

 いったい何を言うつもりなのかと至祈は思考を巡らせた。

 自分が友達だと否定したことの文句だろうか?

 そうであるならば、至祈は直ぐに無視して教会に戻るつもりだった。至祈は彼と友達になったつもりはない。仮にミコトが思っていようが、それは一方通行のものだ。自分に圧しつけられても鬱陶しいだけと至祈は感じる。

 それで泣かれても至祈は無視する。身内でない赤の他人に気にする気概を彼は持ち合わせていない。

 

「ありがとうね」

 

 だから、それを聞いた時、至祈が感じたものは「こいつは本当に馬鹿なのか?」、だった。

 

「君が言峰さんに会わせてくれたおかげで僕達はこれから多少なりとも安全に暮らせるよ」

「馬鹿か? さっき、あの神父が言ったように、異能持ちとかそういった奴ら腐るほど居る。そんな奴らがいて安全と言えるのか?」

「それでも、知っているのと知ってないのとでは全然違うよ。危ない事したら、怖い人が来るのも知ったことも助かった。これも元を正せば君のおかげだ、ありがとう」

「・・・・・・・・・・・・」

「さっきは言うタイミングを逃したから、遅れてごめんね」

「馬鹿か、てめぇは?」

 

 至祈は溜息交じりで再び罵る。

 

「わざわざ、そんなことを言うために待っていたのか?」

「うん、そうだけど?」

 

 首を傾げるミコトを至祈は奇怪なものでも見るような眼差しを向ける。

 なんて人の良さだ。明らかに怪しい言峰汞にも素直に謝罪や礼を尽くし、邪険に扱っている自分に対しても真摯な行動をする。

 至祈はそんなミコトの良心的なものに反感を持った。なぜなら、それは今まで彼は体験したことのないもの。物騒なもの、危害を与えるものは誰しも敬遠、嫌悪するものだ。

 それが分からないほど彼は鈍感なのだろうか? ならば、分からすべきだろ至祈は判断する。

 

「いいか。てめぇが少しでも安全などを望むなら、俺やアイツに関わるべきじゃない」

「え?」

「俺の家は暗殺を生業にしている。そして、俺は家業を手伝っている。てめぇの連れを襲った奴らも、仕事で追っていた奴らだ。俺はそんな奴らを相手にしてる」

 

 その言葉に場の空気が急激に冷えた。ミコトの表情も凍りついたように固まる。

 

「飽きるほど殺しまくった。殺して、殺して、殺して、これからも俺自身が殺されるまで、何かを殺し続けるだろうな。

 てめぇが平穏無事にアイツらと居たいなら、余計な事には突っ込むな。

 興味本位で俺やあの似非神父に近づくとそのうち死ぬぞ」

 

 至祈は後ろに振り向き、その場で立ったままのミコトを残して教会の扉を開く。

 

「最後の忠告だ。後はてめぇがどこで死のうとも俺は知らん」

 

 至祈はそう言い残すと、教会の中に入り、大きな扉を内側から閉めた。

 閉じられてら扉をミコトはしばらく見つめた後、切なげな笑みを浮かべる。

 

「うん。やっぱり、君は強いね」

 

 *

 

 聖堂教会。

 “普遍的な”意味を持つ一大宗教の裏側。

 神の教えを説く彼らは、その教義に反したものを認めていない。“異端”という存在を表向きでは存在しないものと扱うが、中には熱狂的に排除しようとする者たちがいた。

 その『異端狩り』に特化し、巨大な部門になったものを聖堂教会と呼ぶ。

 彼らは代行者と呼ばれる悪魔退治を擁し、全ての異端を消し去り、人の手に余る神秘を正しく管理する存在する。

 当然、そのような考えの組織では、神秘の秘匿、あるいは管理し自身の富と変える組織とは折り合いが悪く、今まで幾度と争ってきたが、現在では所々で協定が結ばれ、仮初の平穏を謳っている。

 だが、彼らにとって敵である『吸血種』や『異端者』は手に負えないほど多く存在していた。それによって以前は敵対していた組織たちとも協力し合う場合もある。

 佐津間の家もその一つ。

 『佐津間という姓の表記は世を忍ぶ隠し名で、本来の表記は『殺魔』になる。

 本来は人を食らう魔のみを殺す退魔の末裔だったが、狩るべき相手の数が減るにつれて、生きるために人の暗殺も仕事として請け負っている。

 しかし、減ったとはいえ、害ある魔は未だ存在し、それらは聖堂教会とって排斥するべき『異端』なのだ。両者共利害関係にあるため、一種の協力関係にあった。

 グラディエールという転生者を捕縛するのも、元は聖堂教会が佐津間に依頼したものだ。

 最も、転生者であるからといって、聖堂教会は抹殺すべき『異端』とは認知しない。転生者の中には、前世が聖人であった人間も存在し、実際、聖堂教会に在籍するものもいる。

 グラディエールという転生者は、その力を使って淫らな欲望に手を染めた。

 普通なら“ただ排除するだけだった”のだが、彼らが襲った人間の中に聖堂教会の上に位置する人間の親族が混じっていたため“生きたまま捕縛し、然るべき場所で処断”するというのが前回の依頼内容だった。

 そして、聖堂教会の新たな依頼が、汞の口から佐津間の家の者である至祈に言い渡させる。

 依頼内容はとある僧侶の抹殺、可能であるなら捕縛。実行は今夜だ。

 

 *

 

「ふぅ・・・・・・」

 

 夜、八神家。

 湯気が漂う風呂場で、ミコトは白い濁り湯の浴槽に漬かりながら今日知ったことを思い返していた。

 汞が語った世界の裏側、そして、帰宅後アーチャーが教えた聖堂教会と魔術協会のこと。

 魔術協会とは国籍、ジャンル問わず、魔術という神秘を学ぶ者たちによって作られた自衛団体。もっとも、それは名目上であるらしい。

 魔術を管理し、隠遁し、その発展を使命とする。

 自らを脅かす者達から身を守るため武力を持ち、魔術の更なる発展のため研究機関を持ち、魔術による犯罪を抑止するために存在する。

 それを聞いたはやて達は、次元世界の魔管理局に似ていると感想を洩らしたが、己が利益のためなら如何なる行動も厭わず、汞が語ったような研究になるものならば生きた人間でもホルマリン漬けで保存、もしくは人体実験をするそうだ。無論、人徳的な人間もいるのだが、己の魔術のためなら道徳に反することを簡単に行える人間も多く、はやてなどは再び顔を青くしていた。

 また同時にアーチャーがこの世界で魔術師であるとも同時に語られた。時代は言わなかったが、アーチャーはこの世界から生まれた英霊だということだ。

 それを聞いたミコトが彼に不安げな視線を向けたが、それに気づいたアーチャーは「自分は魔術師としは未熟者ゆえ、他人を使って研究したことはない」と言うと、ミコトは安心しつつ気分を害したのではないかと謝ると、アーチャーは「気にするな」と告げて話を戻した。

 汞の言葉が真実で、アーチャーが語った聖堂教会、魔術協会の存在が彼の知るものなら、公然で魔法や魔術を使うのは危険であること。ただ、結界内で人知れず使う分には問題がないようなので、魔法を使う際は目立たないようにするか、人目につかないよう結界内で行うようにと決められた。

 もっとも、元々彼は人目につかないようにしていたので、より注意をするという意識で留まる。

 具体的にこの件に関しては、これからは独自にこの世界の情報も収集することも決まった。魔術協会などの存在を管理局も把握しているのか、明日にでもグレアムに聞くことにもした。

 ただ、話し合いの中、ミコトは至祈が暗殺をしていることは言わなかった。

 至祈に礼だけでも言うと皆から離れて、至祈と話した後で合流すると真っ先にはやてが心配そうに「なにかあった?」と問いかけたが、その時にもミコトは何でもないと告げている。

 至祈に関しては彼個人の事情であり、はやて達は至祈に対して良い印象も持っていないので、全部話すことは躊躇い、話すべきではないとミコトは判断した。

 

「ミコト、湯加減はどうだ?」

 

 ミコトが今日の事を思い浸っていると、扉の向こうの脱衣場からアーチャーの声が聞こえてきた。

 

「うん、いい感じだよ」

「そうか、なら私も入ろう」

「え———」

 

 ミコトの戸惑いの余所に、アーチャーが脱衣所で服を脱ぐと、そのまま風呂場に入ってきた。

 

「な、ななななな」

「なにを焦る? 別に男同士だから恥ずかしがる必要もないだろ?」

「そ、そうだけど・・・・・・」

 

 そう言いながらも、頬を赤くしながら自分の身体を相手に見せないように沈めるミコトを見て、アーチャーはとても罪悪感を抱いてしまったが、今更ここで立ち去る方が余計に後で気まずくなると考えたので、そのまま素早く自身を洗ってから浴槽に身体を沈める。

 八神家の浴槽はそこまで大きくないのだが、ミコトがまだ小柄のこともあって、長身のアーチャーがともに漬かっても、そこまで窮屈な思いにならなかった。

 ただ、ミコトは他人に肌を晒すことが習慣的になかっためなのか、恥ずかしそうに俯いているものの、ちらちらとアーチャーの身体を見ては、更に顔を俯かせていた。

 その様子にアーチャーは溜め息を吐きながらも、本題に入る。アーチャーの名誉のために説明するなら、別に彼はショタでもないので、理由もなければ、態々他人が入る風呂に入ることもないのだ。

 

「色々と考え過ぎるな」

「え?」

「どうせお前のことだ。魔術協会や聖堂教会、そして、あの佐津間至祈のことについて悩んでいるのだろ? だが、彼女たちの手前、無様な姿を晒したくないから抱え込んでいる。だが、分からんのなら一人で悩んだところで無駄だ。

 ミコトはまだ子供なのだから、悩み事は直ぐに吐け。これは他の連中にも言えることだが、自分だけで悩みを抱えるほうが心の贅肉だぞ」

「アーチャー・・・・・・」

 

 呆けるミコトの様子にアーチャーは苦笑する。

 

「なんだ、私がこんなことを言うのは意外か?」

「うん、ごめん。そうだね」

「謝る必要もないし、私が似合わんのも分かる。このような役回りは、はやてが適任なのだろうが、今回に関しては主張を押しつけてしまうかもしれなかったからな。

 まぁ、それが分かっていてミコトがまた抱えているのに何も言ってこないだろうが」

「そうか、八神さんにまた心配かけちゃったんだね。まだ、駄目だね、僕は」

「最初から完璧な人間が存在するほうが恐ろしい。で、だ。魔術協会や聖堂教会のこともあるだろうが、ミコトは佐津間至祈ことで未だ悩んでるな」

「うん、やっぱり分かる?」

「ああ。もっとも、彼女達にからすれば、さっさとあんなのは忘れてしまえ、と言うだろうな。彼女達はミコトのことを気に入っている。そんな相手に悪く接する人間などは一発殴らないと気が済まないだろうな」

「そんな——」

 

 乱暴なことはしない、とミコトは言いたかったが、実際ヴィータが至祈に攻撃をしかけたので何も言えなかった。

 言い方を変えれば、彼女たちはそれだけ自分を思ってくれているのだろう。

 そんな彼女達に感謝しながら、ミコトはアーチャーに問いかける。

 

「じゃあ、アーチャーはシキのことをどう思う?」

「正直、良い印象は無い。口も悪ければ、内面に潜んでいるのも危険なものだろう。関われば、冗談抜きで命に関わる事態になりかねん」

 

 アーチャーの言葉にミコトは押し黙る。それは至祈自身も言っていた事なので、アーチャーの言葉はミコトの胸に深く突き刺さった。

 

「だが、私の印象など、この際どうでもいい」

「え?」

「ようはミコトがどうしたかいに集約される。他人の意見を無視するなとは言わんが、結局他人との関係は自身で決めることなのだ。ここには相手の気持ちも含まれない」

「えっと、それは一方的なもので、迷惑とか思われない?」

 

 相手の気持ちなど関係なく自身の気持ちを優先する人間関係など、ストーカー行為に近い。そんな当然のことをアーチャーも認める。

 

「迷惑だろうよ。だが、それがどうした? 他人に言われて変る気持ちがあるだろうが、他人に言われて変らん気持ちもあるだろ? ならば本能のまま突き進むのも道の一つだ。

 その結果が間違ったもの、罰せられるべきものになるかもしれないが、相互にとって良かったものになる場合もある」

「アーチャー・・・・・・」

「それを踏まえた上で聞く。ミコト。君にとって彼はどんな奴なのだ?」

 

 アーチャーの問いかけにミコトは少しだけ考えた後、ゆっくりと言った。

 

「えっと、シキは——」

 

 *

 

 そこは廃ビルだった。老朽化が激しく、ただ取り壊されるばかりの廃墟に至祈はいた。

 建物中に足を踏み入れると、夜よりも深い暗黒が視界に広がる。まるで、そのまま進めば戻って来られないような闇だったが、それに怖じ気づくことなく至祈は脚を踏み入れる。

 灯りが硝子のない窓から零れた光だけの場所、至祈は迷う素振りをせず進む。

 ここに今夜、至祈が戦う相手がいる。ここはその相手の仮初の根城。どこから入ろうが相手には解るため正面から至祈は正面から侵入した。

 態々、今夜向かったのは、ここが相手の仮初の根城だからだ。その相手は明日にもなれば、行方を眩ませるので、居場所が解る内に攻め込む必要があったのだ。

 ちなみにリニスは連れてきていない。昼間ならともかく、夜になった場合、彼女には別の役割があったからだ。

 そして、ただ一人でやって来た至祈がしばらく進むと、目的の相手と遭遇する。

 

「おや? どんな相手かと思えば、まだ子供じゃないデスカ」

 

 人がいないはずの廃ビルの中、そこには長身の異国人がいた。一瞬、特徴のない顔に特徴のない風貌にも見えたが、彼が放つ雰囲気もあって爬虫類てきなルックスを思わせる。人間性を感じさせず、街中で会えば嫌な意味で忘れられなくなるだろう。

 サンクレイド・ファーン。もっとも、これは偽名。

 彼は元々テンプル騎士団の僧侶だったが、あまりにも多くの人間を殺害したため枢機卿でも庇いきれなくなり、公式の場で処断されるはずだったが、彼は逃亡。アメリカで国籍と今の名を手に入れて、神父をしながら異端者狩りを行っている。

 その異端狩りは、彼個人によるもの。聖堂教会が定めた異端者も中にはいたが、無害な異端者も多く存在した。中には神秘を秘匿できなかったという言われもない言いがかりをつけられて殺された者もいる。

 これ以上被害が増えないように、聖堂教会は佐津間の家に彼の抹殺、可能であるなら捕縛を依頼した。

 何故、態々、聖堂教会が佐津間に依頼したかと言えば、人手不足もあるが、サンクレイドを相手にするなら至祈は都合がよかった。

 彼は魔法陣と共に移動しており、その防御力は魔術師的ならば最高クラス。それを突破できるほどの火力を持つ存在も聖堂教会にはいるが、その場合周囲にも被害を多く与える、あるいは与えられる存在が別件で不在など様々な問題を孕んだ。

 だが、至祈が持つ《事象殺しの魔眼》なら、そこに存在するなら間違いなく消せる。どんな壁でも無効化できる。よって、佐津間の家は至祈にサンクレイドの抹殺を支持した。

 サンクレイドはやって来た至祈を見ると面白そうな笑みを浮かべる。

 

「東洋人の餓鬼デスカ。やれやれ、明日にはこの田舎くさい東洋の島から出るというのに、最後の最後でこんなのに出遭うなんて私もついてまセ—ン」

 

 嘆くように額に手を当てるが、言葉とは裏腹にサンクレイドは品定めするように至祈を観察していた。

 まるで、今から実験をするモルモットでも見る眼差しだったが、至祈は不愉快な気持ちは抱かず、サンクレイドに確認する。

 

「サンクレイド・ファーンだな? 分かっていると思うが、聖堂教会がお前の身柄を欲している。抵抗しないなら、今は命だけ保障しよう」

「子供なのに随分な自身デース。余程、自分の実力を信じているようダ。忠告ですが、過信は早死にしますヨ?」

「投降は?」

「するわけないでしょバーカ! お前はさっさと死になサーイ!」

 

 瞬間、至祈は駆けだしていた。最初から至祈は相手が投稿する気がないのは分かっていたが、態々至祈が至サンクレイドに話しかけたのは、魔法陣以外に何かないか探っていたためだ。

 既に至祈の瞳は赤く光っている。障害が魔法陣しかないと確認した至祈は、そのままサンクレイドに急接近し、抜き放った小太刀で突き刺そうとする。

 その動きはまさに、夜の闇に紛れて襲う獣のような速さ。

 サンクレイドは僅かに目の開きを大きくするがそれだけだ。彼が相手にしてきたのは生粋の異端者も多い。中には赤子のような容姿で、弾丸のような動きをした存在もいたのだ。

 彼を守る魔法陣は強固。一見、相手が握る刃物は相当な業物だろうが、特別な礼装には見えない。

 だが、さっきほど自分の言葉どおり、彼は自身の力を過信していなかった。もとより彼は用心深い性格。常に魔法陣と共に移動するのも奇襲などを恐れてだ。

 そして、自分を狙う相手も聖堂教会からの使いなら、魔法陣の存在は知っていても可笑しくない。ならば、対抗手段を持っていても不思議ではないのだ。

 それでも、サンクレイドは笑みを崩さなかった。

 迫りくる至祈に対して彼が行ったのは短い一言。なにも神秘もない、ただの命令だった。

 

「やれ」

「!?」

 

 至祈は進めていた足を直ぐに制止させて、その場から離脱した。

 別にサンクレイドが何かしたわけでもなかった。

 ビキ! ビキビシバシバキガキガキゴガン!!

 だが、至祈とサンクレイドの間に位置する天井がクモの巣のような亀裂が一瞬で走ると、瓦礫と共にソレは現われた。

 死、そのものだった。至祈と比べると五倍近いほどの体躯は在る巨人。波打った髪は白く、筋肉隆々の肌は鉛色、手には刃こぼれしたような漆黒の大剣。理性を感じさせぬ瞳で真っ直ぐと至祈を見ていた。

 

「使い魔?」

 

 至祈が疑問を溢した時には、巨人は動いていた。手に持っていた大剣を大きく振りかぶって、振り落とすだけの剣技とすらよべない行為。

 恐ろしいことに、たったそれだけで圧倒的な脅威だった。振り落とした大剣は暴風を生み出し、床を木っ端微塵に砕ける。

 直感的に危機を悟った至祈はすぐさま離脱してした。それは離れ過ぎるほど、まるでそのまま逃げ出すのではないかという距離を空けた。だが、至祈の判断は正しい。

 生半端な回避は、直撃を避けられても剣圧だけで人体に損傷を与える。それだけの威力を巨人の攻撃を持っていた。そして、その暴力は休むことなく至祈に襲い掛かる。

 まるで暴風だ。全てが必殺の一撃を、巨人は絶え間なく繰り返し、至祈はその一撃一撃を危機一髪で避けていた。砕けた床の破片が何度も至祈の身体を傷つけるが、そんなものは巨人の直撃の受けることに比べれば微々たる負傷だ。仮に一撃でも受ければ、至祈の命はそこで終わる。

 気づけば周りはボロボロだった。元々廃墟だった場所は、まるで爆弾が何度も破裂したかのような荒れ果てた空間へと更に成り下がった。これがたった一人の巨人によって齎された結果だと知れば誰もが絶望を感じるだろう。

 その猛威を今まで避け続けていた至祈は賞賛に値する。だが、その賞賛は彼にとって無意味だろう。事態の打開ができない現状、また微々たる損傷が確実に至祈へ負担を与え、動きが鈍る。

 だが、至祈は脚を止めない。止めればそこで終わりだかだ。

 なにも至祈はここままやり過ごすつもりなど思ってもいない。もとより、至祈も異形を何でも狩り続けていた人間。人ならざる化け物の相手は初めてではないのだ。そして、その度に殺し合って、今の今まで生きている。

 既に至祈は相手が最初の予測どおり使い魔だと断定する。こんな動き、普通の人間では無理だ。更に理性を感じさせない瞳も妙だ。おそらく、サンクレイドが何かしらの手段で契約した存在なのだろう。

 幾ら恐ろしい力を持っていようが、存在しているなら消滅できる。至祈にはその力を持っている。

 焦りはしない。既に至祈は策略を巡らせていた。傍観するばかりのサンクレイドは気づいている様子はなく、理性を感じさせない巨人は元より相手が何を考えているか判断できるかも怪しい。

 再び、巨人が漆黒の大剣を振り落として、壁を砕いたその時だった。

 

「ふっ!」

 

 至祈は跳躍した。

 それは愚行。本来なら先程までしていたように縦横無尽にさけるべきだ。空中ならば、空中での移動手段がないかぎり、次の動きが取れない。

 空中に停滞する至祈に、容赦なく巨人は剣を薙ぎ掃おうとする。

 ガゴオン! だが、突如、として巨人の足場が沈み、態勢を崩した。更には巨人がいた場所に更なる亀裂が走って、床が倒壊した。

 至祈がなにかしたわけではない。元よりこの場所は老朽化しており、それを巨人が何度も暴れ回ったことによって崩れやすい個所ができたのだ。

 至祈がしたことと言えば、そこに誘導しただけ。

 

「——もらった」

 

 同じく一瞬空中で動きが取れなくなった巨人の懐に、至祈は重力の落下で飛び込んで、その身体に小太刀を突き立てた。

 至祈が持つ魔眼、《事象殺しの魔眼》。あらゆる現象を読み取り、生命であるなら活動すら停止させる。

 そして、至祈の眼は、巨人が持つ一つの命を、一撃だけで確実に消滅させた。

 

 *

 

「———陰険でぶっきらぼうで人間嫌い、かな?」

「酷いな。まぁ、擁護するつもりはないが」

 

 ミコトの言葉にアーチャーは呆れる。その様子もミコトは苦笑するしかなかった。

 

「まるで一人でも平気みたいで、実際僕なんかよりも賢くて、運動もできる」

 

 ミコトは至祈本人から、今まで何度も暗殺をしたことを訊いた。実際の実力は確実に彼のほうが上だろう。

 

「それが自分で分かっているから妙に自信家で、でも本当にそうだからどうしようもない。僕と違って堂々としていて、それを凄いと思う」

「・・・・・・・・・・・・」

「シキはとても強い人だ」

 

 *

 

 至祈は横殴りされて、吹き飛ばされた。

 

「がはっ!」

 

 まるで、ボールの如く吹き飛び、地面に転がる。体中に痛みが走る。骨も何本か折れていることだろう。

 しかし、それでも幸いだ。仮に大剣で斬りつけられていた至祈はそれで死んでいただろう。

 だが、損傷は酷い。それでも身体に鞭を打って無理遣りでも立ち上がり、先程命を奪ったはずの巨人を睨む。

 

「■■■■■■■■■■■■■■■!!」

 

 巨人は狂ったように吼えながら、至祈を威嚇していた。

 至祈の眼は確かに巨人の命を奪っていた、だが、巨人は変わらず立っている。その現状が至祈には理解できなかった。

 

「お前、今、バーサーカーの命を奪いましたカ?」

 

 困惑する至祈にサンクレイドは静かに問いかける。先程の愉しげな空気はどこに言ったのか、冷静な瞳で至祈を観察していた。

 

「さて? 本当に命を奪ったならアイツが動けるのは可笑しいだろ」

 

 表面上は悠然とした態度で答えた至祈の言葉にサンクレイドは首を横に振った。

 

「別に可笑しくはありまセ—ン。なぜなら、バーサーカーはギリシャの大英雄ヘラクレスなのですカラ」

 

 その言葉で至祈は初めてその場で他の人間でも分かるぐらい驚愕を表した。

 ヘラクレス。神話において幾度なく戦場を駆け巡り、勝利した英雄だ。その報酬で命を貰ったとされている。それが事実なら複数の命を持っていても不思議ではない。

 しかし、至祈は驚きを隠せない。

 

「阿呆か、貴様は。人間が英霊を使役できるわけないだろ(、、、、、、、、、、、、、、、、、、、)

「貴方の言葉通り、個人で英霊の使役なんてできるわけありまセン。

 私達よちも上位の存在である英霊を従わせるなの奇跡の領域。ですから、この使い魔、サーヴァントにはちょっとした秘密がありマース」

「サーヴァント?」

「しかし、そんなことよりも今は貴方。そのさっきから光ってる眼、とても興味深いデース!! おそらくは、一撃でバーサーカーの命を奪ったのもその眼の力! 貴方には過ぎた神秘デス。私が貰ってあげマース!」

「くっ!」

 

 至祈は床に突き立る。

 瞬間、至祈が立っていた場所が霧散したように消え去り、そのまま至祈は下のフロアに移動した。

 

「逃げた? いや、違う、態勢を立て直した? まぁ、どの道、結界も張ったのであの体じゃあ直ぐに逃げられないでショウ。

 行きますよ、バーサーカー。今から狩りの時間デス。調子に乗った東洋人の餓鬼に神の洗礼を与えて上げまショウ」

「■■■■■■■■■■■■■■■!!」

 

 狂いし巨人が吼える。夜の戦いはまだ終わらない。

 




 展開がまんまプリマ。
シキの今回の相手は悩みました。下手な相手なら攻略できてしまうし、だからオリジナルを作るのも、この作品は他作品をできるだけ出したい感じがあるのでやめました。
で、ヘラクレスとプロト外道神父なわけです。
なら、展開的にプリマでいいんじゃない?と思いました。どうせなのは×Fateメインの話なので許容範囲だと信じたい。
次回には、ようやく作者が出したかったキャラが出ます!!
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