ペルソナ使い鳴上悠と魔法科生   作:ローファイト

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第六十話 決戦前夜

 

ドッペルゲンガーによる松戸基地大規模襲撃。

その言葉だけで国防軍だけでなく、日本国政府や魔法協会、十師族といった日本の防衛根幹機関は衝撃を受けた。

だがそれ以上に、十分に備えていたハズの松戸基地の第二防衛ラインまで、ドッペルゲンガーに単純な戦力で押され基地存亡の危機にまで落ちいった事、さらにその戦力をたった一人のペルソナ使いを名乗る青年鳴上悠が覆したこと。

そして、戦術級魔法級の威力の攻撃を乱発する基地を飲み込むかのような巨大な化け物共が現れ、基地はもはや風前の灯に思えた。

鳴上悠はそれすらも巨大なペルソナで防ぎ、仲間の加勢があったにしろ、さらには前代未聞の凄まじい威力の魔法を放ち、化け物を一瞬で消滅させる。

それだけじゃない、基地中の傷ついた兵士達を一瞬で癒したのだ。

基地司令官や幹部から速報を受けた政府や国防軍本部は、ドッペルゲンガーを撃退できた安堵よりも、真偽の判断ができないような情報とその量に困惑し続けていた。

 

 

 

その頃、特別遊撃隊は……。

松戸基地から引き揚げた面々はヘリで一度七草家へ引き上げた後、千葉家で待機していたメンバーと共に、次の作戦会議を行うために悠の自宅へと合流していた。

 

そこに自宅で待機していたハズのりせが笑顔を振りまきながら現れた。

「みんな、お疲れさま~」

皆はそれぞれりせに思い思いに挨拶を返すのだが……。

 

「りせ、ここに来ても大丈夫なのか?」

「うん、大丈夫。私がいた方がいいでしょ?」

「助かる」

「それよりも悠先輩の方が心配よ。疲れは取れた?」

「ああ、多少休めた」

悠は次の作戦もりせに自宅からのサポートを頼んでいたが、まさか、ここに来るとは思わなかった。

そのつもりで悠は特別遊撃隊の皆にも、りせは今迄通り自宅からのサポートを行ってもらう事と、さらに悠の個人的な協力者が一名ここに来る事を伝えていた。

 

真由美もりせがここに来た事に少々驚いた顔をしながらこんな事を聞く。

「りせさんも……でもよく来れたわね。ボディーガードはどうしたの?十文字君、この前りせさんにいつの間にか外出されたとかで、警備を強化したって言っていたわよ」

真由美がこんな事を聞くのも無理もない。

りせの自宅は現在も、魔法協会ががっちりガードを固めているのだ。

りせが仕事に行く際も、十文字率いるりせの警護班が常に付き従っている状態である。

しかも悠と四葉家との交渉(襲撃)の際、りせはボディーガードの魔法師達を巻いて悠の自宅に訪れていため、何時の間にかりせが居無くなっていたとこに、十文字率いる警護班は大慌てであった事は言うまでもない。

その後、無断で抜け出したりせに注意を行いつつ、十文字は自分たちの失態だとし、警護人員を増やすなどの対処を行い、より一層ガードが強固となったという経緯がある。

 

「また、巻いてきちゃった。あれくらいで私を抑えようなんて甘い甘い、私にはヒミコがいるんだから」

りせはそんな十文字や魔法協会の苦悩も知らずにあっけらかんと言う。

 

「……十文字君も大変ね」

真由美は真面目な十文字が護衛対象のりせに巻かれたと知った時の焦り様を思うと苦笑するしかなかった。

 

「大丈夫ですよ。今回はちゃんとアリバイを用意しましたので、彼らの失態にならないようにしておきました。本来はアリバイを解く方なのですが……」

りせの後ろについて来ていた美形の小柄の少年が、ハンチング帽を脱ぎながら答える。

 

皆がその少年に注目する。

 

「りせ、この子誰よ?」

リーナがこの少年の素性をぶっきらぼうにりせに聞く。

確かに悠からは個人的な協力者が一名こちらに来るとは先ほど聞いていたが、自分達より年下に見える華奢なこの少年がドッペルゲンガーと対峙するための協力者には見えなかったため、りせの単なる付き人か友人を連れてきてしまったのではという疑問を抱いていたのだ。

対外的には悠の有志による集まりとは言え、日本政府からも正式に戦力として活動が認められている政府公認のドッペルゲンガー対策部隊だ。

例外として、りせは政府には知られていないが、皆が認めている仲間である。

そのりせの知り合いだとしても部外者がここに来ていいハズが無いのだ。

 

「えっと……この子が協力者の方?」

真由美も直接的な言い方をせずに、りせと悠を見渡し聞く。

 

だが……。

「た、探偵王子?なんでここに?」

「探偵王子って、確かりせ姉様と友達だって雑誌に載ってたし、確か一緒に水着写真もあった……」

幹比古とエリカだけはこの少年の素性を知っているようだ。

そう、りせの同行者は先ほどのドッペルゲンガー襲撃の際、自宅でナビゲーションを行っていたりせを知識的にサポートを行っていた探偵王子こと白鐘直斗だった。

 

「探偵王子ってなんだ?」

レオは幹比古とエリカに聞き返す。

達也もレオと同じく探偵王子について知らず、聞き耳を立てていた。

 

エリカはレオに詰め寄り怒り気味に説明する。

「あんた知らないの?ちょっと前までよくテレビに出てたわよ。警察で解決できないお蔵入りの難事件も解決しちゃうって」

「このちびっ子が?」

「あんた!年上よ。しかも女の人!女性ってバレてからテレビには出なくなったけど、今は男装の令嬢って事で雑誌とかで人気なんだから」

「まじか……」

レオはまじまじと直斗を見て、茫然とする。

 

「レオはほんと何にもしらないよね」

幹比古もレオに呆れ気味だ。

 

「綺麗な方だと思ってました。なぜ男性の恰好を?」

「何で男の恰好なのかしら?」

深雪もリーナも純粋に直斗が何故男装をしているのか疑問に思う。

この頃は直斗も多少女性らしい恰好をするようになっていたが、今日はきっちり男装を施していた。

そもそもエリカと幹比古以外は、探偵王子こと白鐘直斗の事を知らないようだ。

 

「直斗君は女の子よ。こんなにかわいいのに」

「直斗は俺とりせの友人で、俺が個人的にドッペルゲンガー事件について前々からいろいろとアドバイスを貰っていた。りせの替わりに現場サポートの協力を頼んでいた」

「白鐘直斗と申します。久慈川さんと鳴上先輩とは友人です。知っている方もいらっしゃるようですが探偵です。なぜ男装をと疑問をお持ちなのかもしれませんが、この格好の方が戦いやすいので悪しからず」

直斗はりせと悠から紹介を受け、自己紹介をする。

 

 

「え?戦う?白鐘さんもペルソナ使いなんですか?」

真由美は直斗が戦うと聞いて確認をする。

 

「はい、僕もペルソナ使いです」

 

「私よりも直斗君の方が凄いんだから」

りせは自分の事に用に胸を張ってそう言い切る。

 

「りせさんよりも?」

「りせ姉様よりも?」

りせのドッペルゲンガーとの戦闘を間近に見ていた幹比古とエリカは、りせのその発言に疑問顔を浮かべる。

 

「純粋な戦闘力や能力では、先輩や久慈川さんにはかないませんよ」

直斗は真面目にそう返答するが、直斗のペルソナはスピードが高い以外では他の仲間のような圧倒的な力は無い。

だが、補助と戦闘をこなせるオールラウンダータイプで弱点が無いのが最大の特徴だ。

さらに戦術を重視し思考しながら戦闘するタイプの直斗とは相性が良い。

いうならば、魔法師の真由美と同じタイプのペルソナ使いなのだ。

 

「それと、直斗くんがペルソナ使いでここに居る事は内緒ね♡」

りせは人差し指を縦てて唇に軽く当て、笑顔で黙っているように皆に釘を刺す。

りせを恐れている幹比古は首を激しく上下させ頷き即了承。

その他の皆も軽く頷くか返事をし、異存がない様だ。

 

 

 

 

直斗の紹介をそこそこに、悠の自宅リビングでは特別遊撃隊の作戦会議が始まる。

参加者は国防軍からの派遣名目の七草真由美、司波達也、司波深雪。

警察組織からの派遣名目の千葉エリカ、吉田幹比古、西条レオンハルト。

USNA軍からアンジェリーナ・クドウ・シールズ。

悠の個人的な協力者として、ペルソナ使いの久慈川りせと白鐘直斗。

 

さらに、りせのヒミコによる秘匿映像通信で、警視庁対シャドウ組織シャドーワーカーの桐条美鶴がタブレット越しに参加。

「ドッペルゲンガー対策室参謀役兼シャドーワーカーの桐条美鶴だ。よろしく頼む」

美鶴の自己紹介で、言うまでも無く皆は直斗の時同様かそれ以上に驚く。

桐条美鶴は桐条グループの総帥として世界に轟くビッグネームだ。

USNAのリーナもその名と顔を知っているぐらいだ。

 

美鶴の映像越しの参加は戦力としてのシャドーワーカーとの共闘は勿論、ドッペルゲンガー対策室の幹部として参加してもらい、ドッペルゲンガー対策室にも即動いてもらいたい案件があったからだ。

 

 

「まずは私と直斗くんで今の状況を説明するね」

りせはヒミコを顕現させ、リビングのテレビ画面に東京近郊の地図を映し出す。

 

直斗が続きテレビ画面を示しながら説明を始める。

「久慈川さんのペルソナ能力でこの程の戦いで逃げたドッペルゲンガーを追跡した結果、ドッペルゲンガーは使われなくなった昔の地下鉄や下水道などの地下遺構を利用し移動していた事が判明しました。この地下遺構は東京近郊、西は八王子、東に千葉、北にさいたま市、南に横浜まで続いてました。ドッペルゲンガーが神出鬼没だった理由はこれです」

テレビ画面に映し出された東京近郊の地図の上に、地下を網目のように広がる地下遺構が重ねて映し出される。

 

「こんな所に潜んでいたなんて」

「うわっ、広っ」

「流石に広いな」

「まるで地下迷宮ね」

「蟻の巣みたいだな」

皆はドッペルゲンガーの隠れ家が見つかった事と、その地下遺構の広さに驚く。

 

「………」

だが達也だけは、テレビの映像を見ながらもりせに意識を向けていた。

りせが機器等を一切触れずにペルソナを顕現させただけで、テレビに詳細な映像を移しだし、グラフィックの編集まで行い再生しだす様子に、これもりせのペルソナ能力によるものなのかと、気になって仕方がなかったのだ。

そもそもこの膨大な情報をどうやって手に入れたのか、まるでドッペルゲンガーの根城をその目で見て来たかのような精密さだった。

しかも、松戸基地襲撃後のわずか数時間で手に入れている事になる。

これだけの情報量を僅かな時間で得る事が出来るりせは、一人で日本国、いやどの国の情報機関よりも圧倒的な情報収集力に、戦慄を覚える。

これまでりせの風貌や立ち振る舞いからは、あまり脅威を感じていなかったが、悠よりも警戒すべき存在ではないかと、思わず目を向け視線が鋭くなる。

 

 

「これだけ広いとドッペルゲンガーを探すだけでも骨が折れるわね」

「私達だけでこの範囲をカバーするのは流石に厳しいわ。ドッペルゲンガー対策室の警察組織や国防軍部隊の協力も必要だけど、それだと準備に時間がかかり過ぎるのがネックね。こちらが時間をかけている間に、ドッペルゲンガー側も体制を整えてしまうわ。その前に叩きたいわ」

テレビ画面に映る東京を中心に広がる地下遺構を見て少々難しい顔をするリーナと真由美は、特別遊撃隊のメンバーだけでこの広範囲に広がる地下遺構の中でドッペルゲンガーを追うのは厳しいと判断する。

 

直斗はそんな皆の懸念を払拭するように話を進める。

「いえ、ドッペルゲンガーは地下遺構を移動手段として使用していたのは間違いありませんが、そのすべてがドッペルゲンガーの根城と言うわけではありません」

 

りせはヒミコでテレビ画面の地図を拡大させながら説明を捕捉する。

「異界化した範囲はこんな感じかな、渋谷を中心に新宿、杉並、世田谷、目黒の一部分に跨ってるの」

テレビ画面には地下遺構の渋谷を中心とした異界化した部分のみが青色で示されている。

 

「この範囲ならなんとなりそう」

「これで無数にあった迷路みたいな地下遺構も随分と絞られるわね」

「中心部はちょうど明治神宮辺りかな」

皆も青色で示した部分のみであれば、この人数でも対処可能だと口々に言う。

 

『我々シャドーワーカーも直ぐにでも動けるように準備は万端にしてある』

会議の成り行きを見守っていた美鶴がここでようやく話に入る。

美鶴達シャドーワーカーと警察組織は入間特殊刑務所の戦闘ではドッペルゲンガー数体倒してはいるが、囚人に紛れドッペルゲンガーが既に内部に潜り込んでいたという予想外の事態によって囚人を鏡の牢獄で連れ去られていた。

 

 

「助かります。心強いです」

悠は美鶴に画面越しに礼を述べる。

 

 

真由美はしみじみと悠達に語りだす。

「……ようやくね。りせさんのお陰で居場所もわかったし、今回の事でドッペルゲンガーもかなり消耗したはずよ。これから」

 

「ああ」

 

直斗は真由美の話を受け、説明を続ける。

「七草さんのおっしゃるように、皆さんの奮闘のお陰で、先の八王子特殊鑑別所から松戸基地に至るまでのドッペルゲンガー襲撃は失敗に終わるだけでなく、手痛いダメージを与え、戦力を削ぐこともできました。ドッペルゲンガーの戦力もかなり落ちています」

 

 

そこで悠が皆を見渡し宣言する。

「ようやくドッペルゲンガーに先手を打てる。ここで一気に叩く」

皆は頷く。

 

この後、予め悠と直斗が立案した作戦を皆で詰めていく。

 

 

 

 

 

そして翌朝、ドッペルゲンガー反攻作戦が開始される。

 

 

 

 

 


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