ポケットモンスターーシンオウに潜む影ー   作:きいこ

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第2話「失敗作」

「…よし、とりあえずばこれでいいかな」

 

 

ミュウの身体に包帯を巻き終えたトウヤはふぅ…と一息つく、全身傷だらけのミュウを見つけたトウヤはすぐさまフレンドリーショップへ走ってポケモン用の傷薬と包帯を購入して手当をし、ベッドに寝かせ終えた。

 

 

「…本当にミュウなのか…?」

 

 

今は落ち着いてきたのか、すぅすぅと寝息を立てて眠っているミュウを見てトウヤは首を傾げる、ミュウといえばポケモントレーナーであれば一度は絵本や伝承、お伽話などで名前を聞いたことがあるポケモンだ、決して人間の前には姿を見せない習性を持ち、実際にその姿を見た者は数えるほどしかいないとされている。

 

 

伝承ではミュウはあらゆる技を使いこなす高い知能を持ち、どんなポケモンにも化ける事が出来る特殊な変身能力があると言われている、普段は別のポケモンに変身して人の目を欺きながら身を隠し、危害を加えようとするポケモンや人間が現れれば持ち前の豊富な技を使って追い払う、ミュウというポケモンはそういった話と共に人々に伝えられている。

 

 

しかし、今トウヤの目の前で眠っているミュウはその伝承のモノとは少し違う点が見受けられる、伝承の中でのミュウはピンク色をしているとされているが、このミュウは水色だ、それにこの水色のミュウは左目の周りにバツ印のような赤い模様がある、これが天然のモノなのか人為的なモノなのかは分からないが、いずれも伝承の中でのミュウには無い特徴だ。

 

 

「…って言っても、伝承はあくまでも伝承だし、個体差があるのかもな」

 

 

そんな事を考えながらトウヤは洗面器に張っていた水を替えるために一階に降りようとする。

 

 

「…ん…んぅ…?」

 

 

すると、ミュウが目を覚ましたらしく、その小さな双眸が開かれる。

 

 

「…あれ…ここは…?」

 

 

まだ意識がはっきりしていないのか、ミュウは寝ぼけ眼といった様子で辺りを見渡す。

 

 

(ミュウは人の言葉を話すことが出来るって聞いたことがあるけど、あれって本当だったんだな…)

 

 

ミュウ自身が言葉を話せるのか、それともテレパシーのような能力で翻訳されているのか、どちらにせよ言葉が分かるのであれば意思疎通に問題は無いだろう。

 

 

「目が覚めたみたいだな、大丈夫か?」

 

 

トウヤはミュウに声をかけてみる、するとミュウはゆっくりとこちらを見て数秒首を傾げていた。

 

 

「っ!?人間!?」

 

 

すると、意識がはっきりしたのか、ミュウはトウヤを認識するなり慌てて飛び退こうとするが…

 

 

「いっ…!!」

 

 

まだ治りきっていない傷が痛むのか、うまく動けないでいた。

 

 

「おいおい、急に動くなよ、傷が開くぞ」

 

 

トウヤはミュウの傷をの具合を見ようと側に寄ろうとしたが…

 

 

「来ないでください!」

 

 

ミュウは声を張り上げて、はっきりとトウヤを拒絶した、あまりに突然の出来事にトウヤは事態を理解できずにいる。

 

 

「それ以上近寄れば技を使いますよ」

 

 

ミュウは依然警戒した状態でこちらを睨みつけている、やはり傷が痛むのか、ゆっくりと身体を引きずるようにして後ずさり、トウヤから距離を取ろうとする。

 

 

「お…おい、落ち着けよ、何もしないって…」

 

 

「信用できません!」

 

 

ミュウに自分が敵でないことを伝えようとしたが、ミュウは聞く耳を持たずに警戒を続けている、その様子を見てトウヤは何となく察した、このミュウは過去に人間から危害を加えられたことがあり、それで人間不信になっているのだと。

 

 

「…………」

 

 

それを察したトウヤは何も言わずに立ち上がると数歩後ろに下がる、そして部屋着やズボンのポケットを全て裏返し、さらにシャツを捲り上げて上半身をさらす。

 

 

「…何の真似ですか?」

 

 

「お前は過去に人間に乱暴されたんじゃないのか?じゃなきゃそんな風に警戒はしない、だから俺がモンスターボールなんかを何も持っていないと証明してるんだ、いつまでもそんな状態じゃ話も出来ないからな」

 

 

「…………」

 

 

「俺のことは別に信じなくてもいい、けど、せめて会話をする事を許してくれないか?」

 

 

ミュウはトウヤを値踏みするようにじっと見つめる、自分にとって脅威になりうる存在であるかを判断しているようだ。

 

 

「…分かりました、少なくとも、今は危害を加えるつもりじゃないことは信じます、でも何か変なことをしようとしたらすぐに技を使いますからね」

 

 

ミュウはそう言って臨戦態勢を解く、半信半疑といった様子だが、ひとまず話をする許可はもらえたようだ。

 

 

トウヤは服装を元に戻すと、ミュウに一歩だけ近づいてもう一度座る。

 

 

「まず聞きたいんだけど、お前はミュウで合ってるよな?」

 

 

トウヤは絵本に載っているミュウのページを見せながら青いミュウに問う。

 

 

「…はい、私はミュウです、けどそれはほんの少しだけ間違っています」

 

 

トウヤの問いかけに対し、肯定しつつも含みのある言い方をするミュウにトウヤは首を傾げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私はミュウの遺伝子をもとにシャドウ団に作られたクローンポケモン…()()()()()なんですよ」

 

 

「…はぁ!?クローンポケモン!?」

 

 

ミュウの口から飛び出した衝撃発言にトウヤは驚愕する、しかしそれ以上にトウヤにとって気になるワードが混じっていた。

 

 

「シャドウ団って、今シンオウ地方で暴れ回ってるあの…?」

 

 

「はい、あのシャドウ団です」

 

 

クローンポケモンというだけでも十分トウヤを驚かせたが、今シンオウ地方中で悪事を働いているシャドウ団がそれを生み出したという事実がトウヤをさらに驚かせた。

 

 

「何でシャドウ団がクローンポケモンなんかを…?」

 

 

「さぁ?それは私にも分かりません」

 

 

トウヤの疑問にミュウは興味ないといった様子でサラッと流す。

 

 

「ミュウのクローンって事は、お前も変身したり技を沢山使えたりするのか?」

 

 

「…いえ、確かにオリジナルはそうなのかもしれませんが、私は違います、言いましたよね、私は失敗作だと」

 

 

「…失敗作?」

 

 

「オリジナルの能力をそのままコピーしたクローンを作るつもりだったみたいですけど、実際出来上がった私はオリジナルの大幅な劣化クローンでした、変身能力も無ければ技も多くは使えない、その結果私は失敗作と見なされて捨てられました、このバツ印がその証拠です」

 

 

そう言ってミュウは自嘲気味に嗤いながら左目の赤いバツ印を手で撫でる。

 

 

そんなミュウを見て、トウヤは静かに怒りの感情を滲ませていた、シャドウ団が凶悪犯罪を繰り返していることは連日の報道で知っていたが、こんな命を弄ぶ非道な行為にも手を出していたという事にトウヤは怒らずにはいられなかった。

 

 

「…それで放り出されてあちこち彷徨っている間にお前の姿を見たトレーナーが幻のポケモンであるミュウを捕まえようと襲ってきた…って事か」

 

 

トウヤの予想にミュウはコクンと頷いて肯定する。

 

 

(ミュウ)がとても珍しいポケモンだという事はトレーナーの反応を見て理解できました、だからトレーナーは何とか私を捕まえようと執拗に追いかけ回してはポケモンを使って攻撃してきたんです、それでも何とか必死に逃げ続けて、気がつけばこの町で力尽きて倒れていたんです、あとはあなたが見たとおりです」

 

 

自身のことを一通り話し終えると、ミュウはふぅ…と息を吐いて身体の痛むところをさする、さっき勢いよく動いたのが良くなかったのか、痛みがひどくなっている。

 

 

「…どうしたんですか?」

 

 

ふとトウヤの方を見ると、うつむいた状態で拳を握りながら小さく震えている事に気づく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…シャドウ団の野郎…!何の罪もないミュウをこんな目に遭わせて、許せねぇ…!」

 

 

トウヤが言葉と共に吐き出しているそれが自分を生み出したシャドウ団に対する怒りだという事、そしてそれに自分への同情も混じっている事を理解するのに、それほど時間はかからなかった。

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