ポケットモンスターーシンオウに潜む影ー   作:きいこ

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第4話「影との邂逅2」

 

「…ぇ…」

 

 

両親の亡骸を見た瞬間、トウヤの頭は真っ白になった、何だこれは?一体何が起こっている?。

 

 

『…ん?何だお前は?この家のガキか?』

 

 

トウヤの存在に気付いた団員はそうトウヤに問い掛ける、フードと仮面で顔は分からないが、声から察するに男だろう。

 

 

「…………」

 

 

一方のトウヤはというと、まだ状況を飲み込めず呆然と突っ立っていた。

 

 

『何だよリアクションが薄いな、もっと何か反応しろよ…な!』

 

 

男はそう言いながらその辺にあった瓦礫で父親…タクヤの頭を叩き潰した、割れた頭蓋から脳や眼球が撒き散らされ、父親“だった”モノがあった場所には大きな赤い染みが広がっていく。

 

 

 

それを見た瞬間、トウヤの中で何かが切れた。

 

 

「てめえええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」

 

 

トウヤは足元に落ちていた石を持って男に向かっていき、男の頭めがけて振りかぶる、既にトウヤは理性を失っており、彼の脳内にはこの男を殺す事しか頭になくなっていた。

 

 

「ぐがあっ!」

 

 

しかしその時、トウヤの身体は凄まじい衝撃によって後方へ吹き飛ばされる、腹部に激しい痛みが駆け巡り、内臓が潰れたのではないかと思うほどであった。

 

 

トウヤが身を起こすと、リングマが男を守るように立っていた、今トウヤを吹き飛ばしたのもリングマだろう。

 

 

 

 

『…リングマ、トドメをさせ』

 

 

男がそう指示すると、リングマの身体の周囲に白色のエネルギーのようなモノが漂い始める。

 

 

これは“パワーポイント”…通称PPと呼ばれるモノで、ポケモンが技を使用するときに使われる潜在的なエネルギーだ。

 

 

ポケモンたちはこのPPを“技”へと変化させてバトルを行う、その姿形は様々で、同じ技でもポケモンによって姿形が異なる。

 

 

リングマの周囲を漂っていたPPはリングマの右手に集約し、白銀色の刃へと姿を変える、ノーマルタイプの技『きりさく』だ。

 

 

『きりさく!』

 

 

リングマは白銀色の刃をトウヤ目掛けて振り下ろす、既にトウヤはリングマの技の射程圏内に入っており、かわすのはまず不可能だ。

 

 

(やべぇ…!)

 

 

万事休すかと思ったその時、意外な所から助け船がやってきた。

 

 

「させません!」

 

 

背中に背負っていたリュックからミュウが飛び出し、トウヤを庇うようにリングマの前に現れたのだ、そしてリングマと同じノーマルタイプのPPを両腕にまとわせ、巨大なボクシンググローブの形を模す、ノーマルタイプの技『メガトンパンチ』だ。

 

 

「てやぁっ!」

 

 

ミュウのメガトンパンチはリングマの腕に命中、その衝撃でリングマの技はキャンセルされ、きりさくは元のPPへと戻り霧散していく。

 

 

「あ、ありがとうミュウ、正直もうダメかと思ったぜ」

 

 

「どういたしまして、間に合ってよかったです」

 

 

トウヤはミュウにお礼を言いながら立ち上がり、ミュウはメガトンパンチを霧散させてリングマと対峙する。

 

 

『ほう、お前はミュウ…の失敗作か、まさかトレーナーに引き取られてるとはな、驚いた』

 

 

「それはどうも、それよりこの惨状は何の真似よ」

 

 

『なに、いつもの“実験”だよ、こいつらクローンポケモンの戦闘データを取る為のね』

 

 

ミュウの問い掛けに男は悠然と語る、正気の沙汰とは思えないその答えにトウヤは血が出るほど拳を握り締める。

 

 

「ふざけんじゃねぇ!そんな事のために父さんと母さんを…!許さねえ!」

 

 

『許さない?そんな台詞はオレのリングマを倒してから言うんだな、もっとも、あっさり吹き飛ばされちまったお前には無理な話か』

 

 

男はトウヤの事を鼻で笑う。

 

 

「テメェ…!!」

 

 

トウヤは再び激昂し飛びかかりそうになるが…

 

 

「確かに、人間であるトウヤさんではそのリングマには勝てないでしょう、ですがポケモンである私ならどうですか?」

 

 

それよりも前にミュウがシャドウ団の男にそう言い放った。

 

 

「トウヤさん、私に指示を下さい、私もこの男の発言に腹が立ってきました」

 

 

「ミュウ、それって…」

 

 

「私が、あなたの代わりに戦います、トウヤさんのポケモンとして!」

 

 

ミュウがそう言うと、改めて“敵”であるリングマに向き直る。

 

 

(ミュウ…お前…)

 

 

ミュウのその言葉に、トウヤは一瞬呆気にとられていた、戦えない自分の代わりにバトルをする、他ならぬトウヤのポケモンとして…

 

 

それは即ち、出会った当初はあれだけ人間不信だったミュウが、トウヤにそれだけの信頼を寄せているという事だった。

 

 

「…あぁ、分かった、頼むぜミュウ!」

 

 

 

それならば全力で応えるのが“トレーナー”の義務だろう、幸いにもミュウの習得している技は以前ミュウ本人から聞いている、技の指示なら問題なくこなせる。

 

 

『ヘッ!失敗作の分際で何が出来る!行けリングマ!』

 

 

男の指示でリングマは再びPPを辺りに漂わせ、再び白銀色の刃を形作る。

 

 

『きりさく!』

 

 

「かわしてメガトンパンチ!」

 

 

ミュウはリングマの技を紙一重で回避し、メガトンパンチをアッパーよろしく突き上げる。

 

 

「ッ!?」

 

 

強烈な一撃を受けてリングマだが、それほど大きなダメージにはなっていない、リングマの練度(レベル)自体は中堅程度と見られるが、それ以前にミュウ自身の練度(レベル)が圧倒的に不足しているのである。

 

 

「はたく!」

 

 

さらに畳み掛けようとトウヤが指示を出す、ミュウの周りに漂ったノーマルタイプのPPが両手に集約され、それがハリセンの形を取る。

 

 

「はああっ!」

 

 

ミュウがハリセンをリングマに振り下ろすが、やはりダメージは大きくない、そして軽微なダメージはリングマに反撃の隙を与えることになった。

 

 

『アームハンマーだ!』

 

 

リングマの右腕にかくとうタイプのPPが集約し、仰々しい形の籠手(ガントレット)へと姿形を変える。

 

 

「ーッ!!」

 

 

リングマが籠手(ガントレット)でミュウを力一杯殴りつける。

 

 

「ごぼおっ!?」

 

 

ミュウの小さな身体でまともにアームハンマーを食らい、勢いよく吹き飛ばされる。

 

 

「ミュウ!?」

 

 

「だ…大丈夫です…!」

 

 

ミュウは何とか起き上がるが、ダメージが大きいのかふらついている。

 

 

(相性が良くなかったから致命傷にはならなかったけど、かなりヤバいダメージだったな…)

 

 

ポケモンには水や炎、草や電気といった様々なタイプが存在し、それぞれが弱点や耐性を持っている、リングマはノーマルタイプなのでかくとうタイプの技を弱点としており、ゴーストタイプの技を無効化する耐性を持っている。

 

 

そしてミュウはエスパータイプ、ゴースト、あく、むしタイプが弱点であり、同じエスパー、かくとうタイプに耐性がある、今リングマが繰り出したアームハンマーはかくとうタイプの技なのでミュウには耐性があるのだが、練度(レベル)差が災いして軽減されたにも関わらずダメージが大きくなってしまった。

 

 

(リングマに有効打を与えるには弱点であるかくとうタイプの技を食らわせるのが一番だ、でもミュウの習得している技にかくとうタイプは無い…!)

 

 

フラフラになっているミュウを見てトウヤは必死に策を巡らせる、ミュウは自分をトレーナーと認めて指示を待っている、だから無様を晒すことは許されない、勝てないにしても無力化する程度には戦えなければ話にならないだろう。

 

 

(っ!!そう言えばミュウの習得している技に“アレ”が…!)

 

 

ここでトウヤはミュウの覚えている技を思い出し、ある作戦を思い付く。

 

 

(ぶっちゃけ穴だらけだけど、やるしかねぇ!)

 

 

トウヤは一層精神を集中させ、目の前の男とリングマを見据えた。

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