節分に合わせて節分ネタとなっています。
これ一作でお話は完結します。
途中で若干のヤンデレ描写があります。
稚拙な作品ですが、現在もてる力を最大限発揮できたと自分では思っています。
もし最後まで読んでくださった読者様がいるならば、作品に対するコメントやアドバイス等いただけますと、とても嬉しいです。
~2月3日 津島家にて~
「鬼はー外福は―内」
リリーが豆を投げる。
「福はー内て」少し「桜内」に似ているなとか私は逡巡する。
「どうしたのよっちゃん?」
「ちょっと考え事をしてただけよ」
「そう、ならよっちゃんも早く豆投げちゃいなよ」
「ただでさえ不幸体質なんだからね?」
「わかってるわよ!!」
ちょっとリリーが驚いている。もしかして強く言い返しすぎたかな。
「ごめんね、やっぱり不幸体質とかいわれたくないよね?」
やはり強く言い返しすぎたみたいだ。
「ううん、いいの」
「事実なんだから」
そう言って私は少し俯いた。
気まずかったていうのもあるけど、「またやってしまった」ていう後悔の念が襲ってきたから。
そんな私をリリーは心配そうに見つめてくる。
だから私はリリーの言う通りに豆を投げることにした。
「鬼はー外福はー内」
堕天使を自称する私が、悪魔の同類のような鬼を追い払うなんて少し滑稽に思えてくる。
リリーも同じように思ったのか、クスクスと上品に笑っている。
「やっぱりよっちゃんでも、鬼は外に追い出すんだね」
「何よ!堕天使だって世俗の慣習を大事にすることだってあるのよ」
「リリーは上級リトルデーモンなんだからそんぐらい察しなさいよ!」
「はいはい」
リリーが「仕方ないなー」といった感じに返事をする。
いつからだろうか。
リリーがこんなにも愛おしいとおもうようになったのは。
一緒に迷える子犬のお世話をしたときからだろうか。いや違う。
閉校祭で私のためにピアノをひいてくれたときからなのか。それともその夜にキャンプファイヤーで無意識に手をつなぎ合ったときからだろうか。そんな気もするけれど、やはり違う。
きっと明確にこれだとわかる瞬間なんてないのかもしれない。
大事なのは、今はとにかくリリーが好きで好きで堪らないということで。
最初は可愛らしいけれど、おどおどしていて頼りない先輩だとしか思っていなかった。
でも今は、とても美人で私のことを理解してくれる優しくて大好きな先輩になっている。
いやそれ以上にリリーのことで頭が一杯で、迫りくる「ラブライブ」の決勝でさえどうでも良いことのように思える。
「よっちゃん豆は片づけ終わったよー」
「さすがねリリー」
「なんで上から目線なのよ」
「それは私が堕天使で、リリーが上級リトルデーモンという立場だからです」
こんな何気ないやり取りでさえ鼓動が高まるほどに嬉しくて堪らない。
リリー相手だと自分のペースがどうも上手く守れていない気がする。
何というか、他の誰と接するよりも素直になれる。
「ねぇよっちゃん」
「なーに」
「このお豆を食べたらさ、私が作ってきた恵方巻一緒に食べてくれない?」
「さすが上級リトルデーモンね」
「気がきくじゃない」
やっぱり前言撤回。
手作りの料理を食べられるなんて嬉しくて堪らないのに、素直に感謝できてないじゃない。
「どうかな?」
リリーが作ってきてくれた恵方巻は一般的なものだったけれど、一口で食べきれるサイズにカットされているところがリリーらしいと思った。
「おいしそうじゃない」
「良かったー」
リリーはとても嬉しそうな笑顔をしている。
その表情を見ていると、なんだか胸のあたりがキュンキュンしてくる。
「それじゃ、一緒に」
「いただきまーす」
味もとてもおいしかった。やっぱりリリーは料理が上手で女の子らしいなって感じる。
「ごちそうさまでしたー」
恵方巻を食べ終えた直後だった。
「ねぇよっちゃん、最近私に隠し事していない?」
「そうね」
つい自然に答えてしまった。
本当にもうこういうドジなところが嫌になる。
「もしよかったらさ、私に教えてくれないかな?」
リリーがじーっと真剣な眼差しで私を見つめてくる。
もうこの際この気持ちを打ち明けてしまえば楽になれるんじゃないか。
むしろこの気持ちを告白するならば、今こそが絶好のチャンスに違いない。
だから私の心のパラメーターは「告白する」に一気に傾いた。
「いいわ、話してあげる」
「あなたに隠している気持ちがあるの」
「もしかしたら、この気持ちを告白したら今日までの関係性は壊れてしまうかもしれない」
「だから怖いの」
「でもやっぱりリリーに隠しごとはしたくないから、少しだけ心の整理をする時間が欲しいの」
「いいよ」
リリーは優しく微笑んでくれた。その表情に一抹の不安と期待が込めれているように思えた。
私の素直な気持ち。
リリーが愛おしい。大好き。愛してる。
そんなんじゃ、言葉が足りない。リリーに対する気持ちの半分も表現できていない。
本心ではリリーを独占してしまいたいと思っている。
リリーの美しい姿を他の誰にも見せたくない。その通りだ。
リリーの綺麗な声を他の誰にも聞かせたくない。その通りだ。
リリーのなめらかな肌の感触を他の誰にも味合わせたくない。その通りだ。
リリーの繊細で優しい心を他の誰にも知られたくない。その通りだ。
もしもリリーを檻に閉じ込めて監禁できるならば、そうしてしまいたい。
最初は抵抗するかもしれないけれど、私が生殺与奪を握ることでリリーが屈服するまで支配したい。
そんな危険な願望さえある。
これはきっと私の心の中に潜む「鬼」だ。
さすがにこの気持ちをそっくりそのまま伝えるわけにはいかないから、私は言葉を選ぶ。
その間もリリーは静かにして、私が語りかけるまで待ってくれている。
だから私はこう言葉を紡ぎだした。
「ねぇリリー」
「私はあなたを愛してます」
「それもあなたを独占したいと思うぐらいに」
「きっとあなたが思っている「愛している」よりも強く」
「だからリリーさえ良ければ、私と付き合って欲しいの」
そう言うと私は俯いた。
リリーの表情を見る勇気が足りなかったから。
でもリリーは私が考えているよりも、ずっとずっと大胆だった。
なんと私の唇に接吻したのだから!!!!!
「これが私の気持ちだよ」
「・・・」
私は嬉しさと困惑でただ唖然とするしかできなかった。
「本当はね」
「よっちゃんに嫌われているんじゃないかなって、怖かったの」
「でもね、今の言葉を聞いたら私も気持ちが抑えられなくなっちゃたの!!」
「本当にいいの?」
「私きっとリリーのこと束縛しちゃうし、すぐに嫉妬するかもしれないのよ」
「面倒だって思わないの?」
「私だってよっちゃんのこと愛してる!」
「それもきっとよっちゃんが思っているよりも強く強く」
「だから束縛されたって面倒だなんて思わないわよ」
「むしろ嬉しいぐらいよ!」
そこまで聞くと私も気持ちが抑えられなくなった。
だから嬉し泣きしながらリリーの唇にキスをした。
キスの味は涙でしょっぱかったけれども、心はぽかぽかと温かい気持ちで満たされていく。
「リリー」
「よっちゃん」
二人は互いに名を呼び合うと再度接吻した。
今度は相手を抱きしめながら長く深く舌を互いに交える情熱的な接吻だった。
親密な関係にある恋人同士がする、いわゆるディープキスというやつだ。
「ねぇリリー今度はどこでデートしようか?」
こうしてしばらくデートの計画やらお互いの好きなところなど話あって、終バスの時間まで恋人らしい時間を過ごした。
リリーが終バスに乗るのを見送った私は、帰路につく過程で再度考える。
私の心にはきっと醜い「鬼」が潜んでいる。でもそれは私だけじゃなくてリリーもきっとそうだと。
だから私はこの「鬼」を心から追い出すんじゃなくて、上手にコントロールしようと決心する。
「鬼」だって愛情の一部なんだから、居場所があっていいじゃないと私は思う。