緋弾のアリア -瑠璃神に愛されし武偵-   作:あこ姫

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お久しぶりです。
今回は特殊な理由で何時ものまえがきはお休みです。
それでは『第013弾 魔術師の対峙』どうぞ。


コラボ先》https://syosetu.org/novel/68453/
このお話の原案》https://syosetu.org/novel/68453/4.html

何時ものスタイルはお休みで以前のスタイルな短いまえがき⑭ 完


第013弾 魔術師の対峙 ★

Side_Nayu

 

 アリアの母親・かなえさんとの面会から数日が経ち、私はアキと中間報告ついでに通信をしていた。

 

「……これが今のところ判明してる事ね」

「そうか。凪優の予想は的中してたな」

 

 私が報告を終えて、アキの言葉。

 確かにその通りだと私も思う。

 

「リストにもあって習得技術も一致してたしね」

「でも確実な証拠が無かったんだろ?」

「まぁね。だから前一緒にバイトした時に仕込んだ」

「よく瑞穂のやつに見つからなかったな」

 

 私の報告にアキは驚愕していた。

 瑞穂さんはアキにとっても(|| ゚Д゚)トラウマーな人物なのだ。

 故にこの反応は当然なのである。

 

「多分黙認でしょ。把握していたみたいだし」

「マジかよ」

 

 瑞穂さんのやり手に戦慄のアキ。

 

「確証は言うまでもないわ。……でアキはどうなの?」

「サポートだけに限られるだろうな」

「そう……。ちゃんとサポートしてよね」

「んな事、百も承知だっての。しなかったら瑞穂に殺されるわ」

「あー、確かにそうかも」

 

 アキの言葉に納得する私。

 確かに粗相したら瑞穂さんに殺される。私も確実に。

 

「お前はお前でヒメの奴にも気をつけてろよ」

「あぁ……結衣ね。アイツもサポート要員にするし問題ないわ」

「だといいんだがな。ほら遠山がいたら強引にも行きそうなんだが」

 

 アキの懸念もご尤もだ。

 間違いなくダダこねる結衣が容易と想像できてしまう。

 

「まぁ……それもあり得るわね。だから瑞穂さんにちょいと頼んだ」

「何を……??」

 

 アキが私の方策を尋ねた。

 

「イ・ウー内での同系統能力者の指導の依頼を」

「そら、アイツも断れんわな。瑞穂の頼みを断ったらどうなるかは想像つくだろうしな」

 

 アキは納得といった感じだった。

 

「でしょ? 下手に暴走されても困るでしょ? 唯でさえ不安定なのに」

「まぁ……な。暴走時の抑制が厄介だからな。アイツの場合」

 

 アキの言う事は最もだった。

 結衣の能力は私の扱う能力形態と酷似している。

 だが、適性の違いなのかは不明だがかなりピーキーな代物なのだ。

 一度バランスが崩れてしまえばいとも簡単に暴走してしまう。

 実際に3年前に暴走を起こしてしまい、メンバー総動員でなんとか抑えたのだ。

 その時に施したパトラの封印によって事無きを得ている。

 封印が解かれたらあの時以上の惨劇は目に見えている。

 

「だからアイツをメインで出すわけにはいかない。だからサポート要員」

「それが最善策だな。それで俺が抑制に回れば良いんだな?」

「そうね。察しがよくて助かるわ」

 

 こういう時のアキは頼りなる。

 故に幾度なく組むのだろうけど。

 

「……で、突入方法はどうするんだ?」

「真正面から突っ込むけど……」

 

 アキにそう告げると

 

「マジか……絶対に妨害されるだろ、それ」

 

 ご尤もな指摘を受ける。

 そんなの解っている。ここ数日明らかに私は誰かに監視されてるしな。

 そいつらを誘き出す為の敢えてでもあるからだ。

 

「解ってるよ。だから予備プランも考えてあるわ。……つっても、これはどっちかって言ったら『潜入』にちかいかもね」

「詳細を教えろ」

「わかった。じゃあ―」

 

 私とアキは作戦の詳細を詰めていった。

 

 それから数日が経った今日はアリアがロンドンへ帰国する日。

 この日が作戦の決行日でもある。

 アリアは今日こそは来るかと思ったが、来なかった。

 アリアもアリアでごたごたがあったっぽいが、それを私が知る由もない。

 そのパートナーであるキンジ。

 全ての真実を知ったキンジは「心、此処に在ラズ」的な状態だった。

 ま、無理もないか。知ってしまったからな。アリアのこと。

 だが、それは私が介入した所で解決できるもんじゃない。

 これはキンジ自身が解決することだし……ね。

 ちゃんと、仕事しろよ? パートナーなんだから。

 そう思ってたら、キンジは理子からの呼び出しを喰らったようだ。

 おそらくは……か。

 もう推測でもなく断定できるわ。()()()()

 

 私は単身、愛車を走らせていた。目的地は無論、羽田空港である。

 

「いや、私も居るんだけど……」

 

 助手席に座る花梨は不服な顔をしていた。

 

「どうしたのよ?」

「しらばっくれないで! サラッと私をハブらないでくださいますかねぇ?」

「あー。メンゴメンゴ」

「心が篭ってないっ!!」

 

 そんな他愛の無い会話を交わしていたその時だった。

 何者かによる狙撃をFT86の前輪に受ける。

 着弾と同時に派手な爆発音と衝撃が発生し、車体を軽く浮かび上がらせる。

 コレは……炸裂弾(グレネード)の改造モンか……。

 お蔭様で前輪タイヤが吹き飛んで運転不能と来やがった。

 

「いたた……なんなの、もう。凪優、大丈夫?」

「つう……大丈夫、エアバッグ起動したから。ああもう、やってくれるよね遠山潤。干渉は消極的で最小限、って言ってた癖に」

 

 花梨に安否を聞かれ、私は大丈夫、と答えてこの狙撃犯に悪態をついた。

 

「それは『緋色の研究』の継承者である神崎・H・アリアに対してであって、あなた達は範疇外です、っと」

「……ご丁寧に、刺客まで用意してるってわけ」

 

 爆風で歪んだドアをこじ開けて脱出した私は、信号機から飛び降りてきた、白髪碧眼の女性を睨み付ける。予想内といえばそうだけど、ウザったい事この上ない。

 

「初めまして、水無瀬凪優さんと瑠璃神様。……ああ、研鑽派の『魔術師』殿と呼ぶべきでしょうか?」

「……今の私は武偵よ、その名前で呼ばないで欲しいね。それで、あなたは誰? 『魔術師』の名前を知ってるってことは、イ・ウーの人間でしょうけど」

「はい、ボクはイ・ウー主戦派の一人、西儀|(さいぎ)天音《あまね)です。水無瀬さんが休学後に入ったので、知らないのも無理はないかと」

「随分簡単にばらすんだね」

 

 瑠璃神となった花梨が目を細めつつ、宿主の私と同じように臨戦態勢となる。

 

「潤さんから、正体を明かしても別に構わないと言われてますので」

「……やっぱりあいつが関わってるか。じゃあさっきの狙撃もそうだよ、ね!」

 

 喋りながら、私は腕を振るう。

 

魔法の射手(サギタ・マギカ)連弾(セリエス)氷の17矢(グラキアリース)

 

 手から出現したのは、17本の氷の矢。鋭利な先端は右上──この状況の元凶である遠山潤がいる屋上に向けて、真っ直ぐ飛んでいく。

 

『おーやや、バレてたか。こわいこわい』

 

 軽口を叩きつつ、遠山潤(げんきょう)はHK417を掃射。フルオートで放たれた17の弾丸は、迫りくる氷の矢を狙い違うことなく打ち砕く。

 盗聴していた私は想定内に事が進み、不敵に笑う。

 

『ざーんねん、あたらな──』

 

 リロードしながら喋っていた時、先程砕いた氷が飛んできて、潤の周囲を漂っていた。

 

氷爆(二ウィス・カースス)

 

 魔術式を宣言し、私は笑いつつも視線を潤の方へ向けた。

 

『……矢はブラフ、本命はこの氷の微粒子ってわけか』

 

 やるねえ。そのつぶやきは、冷気を纏った爆発音にかき消された。

 天音と名乗った女性を見つつ、私はビルの屋上──潤がいるだろう場所で爆発が起こるのを確認した。長距離攻撃だから上手くいくか正直不安だったが、あの様子なら問題ないだろう。

 

「どう、瑠璃?」

「……うん、気配は消えた。詳細は分からないけど、しばらくは動けないはずだよ」

「そっか、それは重畳。さて、西儀さんだっけ? 狙撃手は潰したんだし、大人しく降伏してくれたら痛い目見なくて済むけど?」

「……ふふっ」

 

 私の警告に対し、天音は着ている和服の袖口に手を当て、含み笑いを漏らす。

 

「……何笑ってるのさ」

「いえ、大したことでは。一人倒したくらいで有利を確信しているのが、おかしくておかしくて……」

 

 クスクス、と余裕ぶった笑い声をあげる彼女に、私は眉を寄せる。不愉快だが明らかな挑発だし、誘いに乗ってやる気はない。

 

「へえ、まだ私達に勝てる気でいるの?」

「さあ? それはどうでしょうね。ただ──」

 

 天音が口元を抑えるのとは反対の手を広げると、真横に『穴』のようなものが出現し、中から身の丈以上の長さを持つ、大鎌が這い出てきた。

 

「潤さんに『お願い』された以上、ボクに断る権利はありませんし、断る気もありませんから」

 

 大鎌を両手で抱えるように握る彼女の目は本気で、退く気はないようだ。

 

「……なにあなた、潤に脅されでもしてるの?」

「(瑠璃、一度戻って。あと、第一形態開放準備)」

「〈おっけー、あと十秒で準備は整うよ〉」

 

 会話で時間を稼ぎつつ、瑠璃との融合準備を進めていく。天音は気付いていないのか、形のいい眉を僅かにしかめ、

 

「脅す? 潤さんはそんな非効率的なことはしませんよ。……これは地獄のような状況から救ってくれたあの人への恩返しであり、ボクの意志です。ええ、もし潤さんが命じるなら、この命だろうと喜んで捧げましょう。例え万人が、いえ、潤さんが命の尊さを訴えようと──ボクにとって、彼の『お願い』は何よりも優先され、幸福なことなんですから」

 

 何の迷いもなく言い切る姿は、狂信者のそれに近いものを感じさせる。

 ……自分の意志だとしても、遠山潤は人を狂わせてるね。

 私は推測が確証に変わった。

 

「そう。じゃあそのお願いとやらは──達成できないな!」

 

 瑠璃との『心結び』が終わった私は、叫びながら小太刀二刀を構え、突進する。

 それに反応して、天音も構えを取るが──その動きは、瑠璃と心結びを行った私に比べ、明らかに遅い。

 

(もらっ──)

 

「!?」

 

 あと一歩というところで、強化された聴覚が左側からの音を感知する。

 

「ちいっ!」

 

 私は舌打ち混じりに咄嗟に持ち替えた拳銃、マテバオートリボルバーを片手撃ちし、飛んできた7.62mm弾にぶつけて弾く。

 

「〈ど、どういうこと!? 〉」

「(瑠璃、状況説明!)」

 

 狼狽した様子の瑠璃を落ち着かせるため、敢えて強めの口調で説明を促すが、

 

「足を止めるのは、悪手ですね」

「くっ、この!」

 

 銃撃の間に迫ってきた天音が、上段から鎌を振るってきたので、残った小太刀によって受け流す。

 思ったとおり、格闘戦では私の方が遥かに上だが、

 

「ああもう、鬱陶しい!」

 

 確実に当たる一撃を振るおうとしたその瞬間、今度は真正面、天音の後ろから飛来した弾丸に妨害される。

 

「〈凪優、あいつの気配がそこら中からする! 1、2……9!? ちょうど私達を囲んでる形! 〉」

「(はあ!? 何あいつ、分身でも出来るわけ!? 何でもありか!?)」

 

「さて、もう隠れる必要はなくなったし。遠慮なくいきますか」

 

 その声と同時に気配が浮かび上がった。

 おそらくは気配遮断をやめ、再びHK417を構えたのだろう。 

 別方向からの分身が、私が放った銃弾を再び叩き落とす。

 ……あの野郎のこの戦法、ストレス溜まるって中々の評判だったっけ。

 

「さてさて、本物の俺はどこでしょーか?」

 

 笑いながら、再度HK417から鉛玉が吐き出された。

 

「何人目で当てられるかな?」

 

 とか思ってるんだろうな。バカジュンの奴は。

 上等だ、その誘い乗ってやんよ!! 

 

 

「この、くたばれ!」

 

 銃弾の方向から位置を割り出し、逃げられないよう氷爆で吹き飛ばす。これで四人目、確実に潤の分身を減らしているけど──

 

「はっ! ──ぐっ……!」

「また一歩届かず、ですね。疲れてきたのでは?」

「言って、ろ!」

 

 天音の一撃を避け、攻撃──しようとしたところで、またも後方からの妨害射撃。集中も途切れてしまい、魔術は霧散してしまう。

 

「くそ、本当にうざったい……!」

 

 攻撃が命中する瞬間、魔力を集中させて放とうとした瞬間。確実に妨害の狙撃が入り、こちらの手を潰してくる。

 

 ここまで戦ってると、相手の目的も見えてきた。これは私を倒すというより……

 

「〈凪優、ペース落として! このままじゃ保たないよ!? 〉」

「(分かって──ああもう!)」

 

 大鎌による横凪の一撃を避けてすぐ、追撃の銃弾。瑠璃に言われたばかりだが、足に超能力を回して大きく跳躍し、距離を取る。ほぼ密着状態からでも正確に私だけを狙って技量は凄まじく、性質が悪い。

 

(ジャンヌの奴、どこが一流には程遠いだ!)

 

 内心でイ・ウーの同期兼弟子を罵倒しつつ、間合いを空けて呼吸を整える。今のところ状況は互角かやや有利だが、消耗を強いられている以上逆転は時間の問題だ。

 

「は、あ……」

 

 妨害のための狙撃によるストレス、心結びによる消耗、そして──

 

「──っ!?」

「『音』が効いてきましたね」

 

 天音が使っている大鎌から聞こえる、甲高い風のような音の不快感。これが、私の動きを鈍らせる。先程考えたけど、こいつらの狙いは消耗を強いること。だからこそ、短期決戦で決めたいのだが、

 

「この、ちまちまうざったい……!」

 

 何度目か分からなくなるくらい受けた狙撃での妨害。変わらず続く嫌らしい手口に、思わず苛立ちの声を上げつつ拳銃を構え──

 

「そうかい。じゃあ一気に決めようか」

 

 その声は、突如後ろから聞こえた。天音から距離を離していた私は、思わず振り返ってしまう。

 

「〈!? 嘘、気配は減ってない……最初から隠れて……!? 〉」

 

 瑠璃が感知したとおり、三歩ほど後ろで笑いながらUSPの銃口を向けている潤は、狙撃をしていたどれとも違うものだ。

 背後を取られるという致命的な状況──

 

(……ん?)

 

 だったが、ふと、彼の動きに違和感を抱く。

 

「じゃあさよな──ぷげらっ!?」

 

「は?」

「〈へ? 〉」

「──え?」

 

 故に私は回避でなく、振り向く勢いのまま小太刀を振るい──柄がにっくきアンチクショウの鼻っ柱にクリーンヒットした。

 心結びで通常より速度の乗った一撃をまともに喰らい、潤は受け身も取れず吹っ飛び、電柱に激突する。潰れたカエルみたいになったぞ、ナニコレ。ワケわかんないんですけど。

 

「……潤さん、何やってるんです?」

 

 天音が明らかに演技ではない呆れた様子ながら駆け寄る姿を、私は心結びで昂った動悸を鎮めつつ、推測を口にする。

 

「……もしかしてあの分身、自分のスペックを割くものだった?」

 

 そう予測を立てる。幾らイ・ウー最弱を自称してるからって、さっきの動きは並の武偵かそれ以下の動きだったし。

 

「〈ええ……バカなの? 〉」

「(私もそう思う)」

 

 さっきまで焦っていた瑠璃も、間抜けな急展開に困惑している。何この空気。

 あの野郎、さてはシリアスブレイカーだったっけ。いや、間違いないわ。

 

「おおお、鼻骨完全に折れてやがる……」

「……とりあえずティッシュを。潤さん、見せられる顔じゃないですよ」

「いやそれじゃ治らんから。とりあえず止血用には欲しいけど」

 

 ゴキン、とやたら痛々しい音を立てて折れ曲がった鼻の位置を自分で元に戻す潤。戻した勢いで余計溢れてきたけど、鼻血。

 

「うわあ……」

「引くなよ」

「いや引くでしょ。今最高にカッコ悪いけど、あんた」

「格好つけて死ぬくらいなら、多少の恥は許容すべき」

「今のあんたの状態だと、説得力が凄いわね」

 

 女子に介抱されながら鼻血拭ってるとか、間抜けにもほどがある。完全に鼻声だし。

 これ程の有言実行を見た事があろうか。

 遠山潤、ある意味で末恐ろしい奴である。

 

「〈……あ、凪優。周りの分身が消えたよ。多分、治療のために魔力足りないから、戻したんじゃないかな〉」

「(……自分から有利な状況捨ててない?)」

「〈だねえ……バカかな? 〉」

「(頭のいいバカってやつだと思う)」

 

 もう戦う雰囲気じゃなくなり、瑠璃とそんな雑談を交わしていると、やっぱり聴き取れてるのか潤はジト目を向けてくる。いや事実でしょ、というか人の会話(心中)を覗くんじゃない。プライバシーの侵害で訴えてやるかんな? 

 

「とりあえず、器物損害と傷害罪諸々で逮捕するから、大人しく連行された方が身のためだよ? あと車は弁償してもらうから。慰謝料とか諸々マシマシで」

「弁償の方がガチボイスな件」

「潤さんのせいで不利になりましたけど……どうします? ボクじゃなくて、潤さんのせいで」

「二度言わんでいいわい、知ってるから。目的達成したし、逃亡一択で──え、ちょっと天音さん、何故俺はお米様抱っこされてるんです?」

「潤さんに合わせて逃げるより、魔術込みならこっちの方が速いので」

「事実だけど言われたくなかったなあ」

 

 女子に担がれる男子という、大変間抜けな構図にため息を吐きつつも、抵抗する様子はない潤。コイツにプライドはないのだろうか。

 まあ、当然だけどさ、

 

「逃がすと思ってる? 氷槍(ヤクラーティオー)──」

「逃がして欲しいねえ」

 

 足止めをしようとした矢先、抱えられた状態の潤がUSPを向ける。引鉄に掛けた指の動きは分身が消えたためか、先程の比ではない……でも、同時なら問題ない。

 

弾雨(グランディニス)!」

 

 

 発砲と同時、詠唱を終えると先程の氷の矢より一回り以上も大きい、槍と言えるサイズの氷塊が、二人に向けて猛然と迫る。

 

 進路上の9mmパラベラム弾と氷の槍が対峙し、衝突──した次の瞬間、銃弾から暴力的な光が放たれ、視界を潰してくる。

 

「うっ!?」

「〈うわ、まぶし!? 〉」

 

 反射で目を閉じながら、自分の失敗に歯噛みする。武偵弾は最初に使われていたというのに……! 

 

「それでは、次回の公演をお楽しみにー」

 

 ふざけた言葉の後、銃声。音は一発だったが、空気から感じられる銃弾の数は六発。キンジが言っていた、十八番の速射(クイックドロウ)か。

 

 視界を潰されながらも小太刀で全弾叩き落としたため無傷だが、逃げるだけの時間は与えてしまった。

 

「(瑠璃、追うよ──)」

「〈ううー、まぶしい、まぶしいよお……〉」

「……」

 

 ダメだこりゃ。目を抑えてうずくまってる姿が容易に想像できる瑠璃のセリフに溜息を吐き、心結びを解除する。

 

「〈うー、ようやく普通に見えるようになってきた……凪優は大丈夫? 〉」

「平気、咄嗟に庇ったから。追跡は……無理か」

 

 感じられる二つの気配は、随分遠ざかっていた。瞬間移動なら追いつけるかもしれないが、減っている魔力をさらに消耗してしまうし、待ち伏せされているかもしれない以上、リスクは避けるべきだろう。

 

「〈逃げられちゃったね……それにしても遠山潤、本当にふざけたやつ! 〉」

「でも、少し厄介だ。次は最初から潰す気でいかないと」

 

 瑠璃が憤っている中、私は顎に手を当て先程の戦闘を振り返る。

 今回のように消耗を強いられる戦いを避けるには、やはり短期決戦が一番だろう。ダメージは大したことないが、心結びの消耗が思ったより激しく、全力の戦闘は一日は無理だろう瑠璃も既に眠たそうな気配を感じるし。次からはタロット要るな、こりゃ。

『武偵殺し』の一件、予定変更しないとかな。予備プランの正面からじゃなくて、変装して先に侵入しておいて……

 

「……っと。ようやく来たか」

 

 遠くから響く、サイレンの音。あれだけ銃声どころか爆発音も響いていたのに、随分な重役出勤である。

 

「〈あー、それは……結界、じゃない、かなあ……〉」

「結界? ……ああなるほど、さっき感じてた違和感はそれか。瑠璃、何か痕跡とか……瑠璃?」

「〈くー……すぅ……〉」

 

 ……もう寝てるし。相変わらずと寝るのがお早い事で。

 

 脳内で響く寝息に、私も疲労が蓄積しているのを感じてしまうため眠った瑠璃を羨ましく感じてしまう。

 だが、文句も言っていられない。とりあえず警察との面倒な接触を避けるため、私もここから立ち去ろうと──

 

「……あ」

 

 するも、前輪が吹き飛ばされ、焦げた状態で放置されているFT86を思い出した。

 直撃部分は基盤が歪んでいてすぐ直せる状態じゃないし、置いていこうにもナンバープレートがあるから、特定は容易いだろう。

 

「……遠山潤。ぜっっったいに捕まえて弁償させてやる」

 

 とりあえず捕まえたらOHANASHI直行だ。停車するパトカーから余計時間を喰わされることが決定した私の姿は、出てきた警官が怯える程度には不機嫌だったという。

 

 続くんだよ。




葵 「如何だったでしょうかっと」
理子「あ、あとがきはこのスタイルなんだね」
葵 「向こう様でこのスタイルでやってるし」
理子「本家がやらなきゃどうすんのって訳か」
葵 「そゆこと」
理子「珍しくあおちーと二人なんだね」
葵 「そうね」
理子「そういやさ、あおちー」
葵 「ん?どした?」
理子「パトラってさ、なゆなゆにどんな事させられてたっけ」
葵 「忘れたの?理子」
理子「んにゃ。あんな事忘れたくとも忘れらんないよ」
葵 「だよなー。氷と水と雷と炎からひたすら逃げるって言うね」
理子「そんでパトラの逃げる時と、被弾した時のリアクション愉しむって言うね」
葵 「いやぁ……アレは」
理子「あの出来事は……」
葵理「「オモクッソワロタwwwwwwww」」
葵 「アレでパトラの方向性決まったよな」
理子「だよねー。もうリアクション芸人だもんね」
葵 「その御蔭で収入ガッポガポ」
理子「マジでパトラ様々」
葵 「それはある。」

その割にパトラの扱いが酷い思い出し寸劇なあとがき⑭ 完
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