公式とは解釈違いしそうだけど暫定事象ということで
発案はやっぱりこころだった。
「バレンタインには、みんなでチョコレートの交換会をしましょう!」
なんでも、今までバレンタインというイベントをやったことがなかったらしい。なので是非ともやりたい、どうせやるならみんなで交換し合った方が絶対楽しい、ということだった。
結論から言うと、チョコレートの交換会にあたしは行かなかった。あたしという代理人ではなくミッシェル本人が行った。
理由は2つ。
1つは、単純にあたしよりミッシェルからのチョコレートを貰った方が、みんなが喜ぶと思ったから。
もう1つの理由は、あたしから渡すのは何か、違うかな、と思ったからだ。
もちろん、ハロハピのみんなに感謝する気持ちはある。今まで見ないようにしてきたものと、少しだけど向き合えるようになったのはハロハピのおかげだ。でもあたしがそうなったのは、あくまでミッシェルを通してだ。みんなが変えてくれたのは、あたしじゃなくミッシェルだ。あたしはミッシェルという仮面があって初めて、ハロハピのメンバーとしてステージに上がれる。
それを考えると、みんなに感謝を伝えるのは、あたしじゃなくてミッシェルの方に思えた。だからあたしは、ミッシェルとしてチョコレートを配った。
ミッシェルの配ったチョコレートは、みんなに好評だった。みんな美味しいと言ってくれた。けれど。
「ねぇミッシェル、美咲からのチョコレートは?預かっていたりしないのかしら?」
「あ、えーと……美咲ちゃんは、恥ずかしくて作ってないって言ってたよー……」
「そうなの……?それは……とっても残念だわ……」
こころのその悲しそうな顔を見て、私は自分の選択が間違っていたことに気づかされた。
こころにとっては、ミッシェルもあたしも、どちらも大切な存在だったんだ。ミッシェルじゃないあたしも、居ていいんだ。
それに気づいたあたしは、1人で帰るこころを追いかけた。
「こころっ!」
「あら、美咲!先に帰ったのだと思っていたわ」
「あのさ、……今日、行けなくて、ごめん。それで、これ」
「これは……?」
「あたしからの分。ミッシェルじゃなくて、あたしから、こころに。……その、いつもありがと」
「……美咲!私、とっても嬉しいわ!だって美咲からは貰えないと思っていたんだもの!うんと大事に食べるわ!」
「そんな大したもんじゃないから……」
「そうだわ!私からも、はい!」
「え?もうミッシェルには渡したじゃん」
「? ミッシェルの分と美咲の分が別なのは当然でしょう? 美咲にはどうしても直接渡したかったの!」
「あ……。……うん、ありがとう。嬉しい」
「きっと美味しいわよ!」
夕暮れの帰り道、2人だけの交換会でこころの笑顔を見れたことが、他の誰からチョコレートを貰ったことよりも、嬉しかった。
そんな、2月14日だった。
「ホワイトデーのお返しは何がいいかしら……? 等身大ミッシェルのクッキーとかいいかしら?」
「いやそんなの貰っても食べ切れないから!」