…この世に生まれなければ良かったと思ったことはあるか?
…自分が何者なのか知りたいと思ったことはあるか?
…死んでしまいたいと心から思ったことはあるか?
…自分の存在を不思議に思ったことはあるか?
…この世界に疑問を思ったことはあるか?
そしてそれを
まあ、自分が教えてくれるわけでもないが。
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眠い…
だけど、後五分寝るともれなく遅刻する。とりあえず弁当作って、朝ご飯食べて、身支度整えて教室に向かおう。
そして私は、弁当を作り、朝ご飯を食べている途中で今日がポイントの支給日だったことを思い出した。そのまま朝ご飯を食べ終え、ポイントを確認したがポイントは前回最後に見たポイントから変わっていなかった。私のテストの点数があまりよくなかったとしても、クラスポイントがいきなり0になるようなことをした覚えはない。恐らく学校側で何か不手際があったか、
予想としては後者の方が大きいと思うが、前者のパターンもないわけではない。人間が動かしているシステムである以上、ヒューマンエラーが起こらないとは言えない。これに関してはクラスに行けば真嶋先生が説明するだろうから問題ないと思われる。
問題は後者だった場合だ。
クラス間の争いが私の知らないところですでに動いていることが考えられる。別にもうAクラスのことを考えるようなことをする必要がないのでそこまで気にしなくてもいい気はするが、Dクラスが関わっているなら主人公勢に恩を売る機会かもしれない。何らかの形で彼らとの関わりを持ちたいと思っていた以上、これはチャンスになり得る。
結局、6月中には彼らと接触するようなことはなかった。
無理矢理関係を築きに行けるほどの仲ではなかったし、クラスメイトの目もあった。特に、坂柳さんは放課後に頻繁に呼び出して話をするようなことが多かったし、康平にも呼び出されることがあった。なぜかは知らないが、二人からクラスのことについて相談されることが増え、今後の方針について私に話を振ってくることが多かった。適当に口裏を合わせてはいるものの、正直興味がないので他の人と相談してほしいと思う。
クラスのことが私の目的に関係ない以上、無視しようかとも思ったが、明確にクラスと敵対することは私の望むところではなかった。クラスのことなんてどうでもいいが、
クラスメイト全てを敵に回して無事にいられるほど私は強くない。彼らに執拗に嫌がらせをされたら学校生活を送りづらくなるのは明白だ。だから、クラスと仲良くするような立ち回りをするつもりはないが、
そのため、誘われたら茂たちと遊びに行くこともしたし、坂柳さんに誘われてカフェに行くようなことも何回かあったし、康平に呼ばれてクラスのことで相談されたりもしたが、どれも断ることはしなかった。
いいや、
入学式の日に自己紹介をしないで教室を出ようとした「私」ならともかく、何をトチ狂ったのかクラスのサブリーダーみたいでまとめ役ポジションになってしまった「私」が今更クラスメイトを無碍にするようなことをできるわけがなかった。
一回二回なら問題ないだろう。
だが、それが毎回となると次第にクラスの中で発言力がなくなり、そのうちいないものとして扱われ、今回の中間考査のようなことが続けばあいつなんていなければというような風になりかねない。勝負している上に、クラスのリーダー格の一人である坂柳さんなら、間違いなくそういう風に持っていくだろう。
『めだかボックス』の
そう思ったから、無理にクラスメイトとの関係を蔑ろにしてまで、Dクラスに突撃する勇気が出なかった。したところで、Aクラスの私がすぐに話しかけて馴染めるようなタイプじゃないのは目に見えているし、綾小路君はともかく、前に図書館で居合わせた他のDクラスの人たちは私のことを警戒するかもしれない。
それに、Aクラスの私がわざわざDクラスに足を運んだなんて他のクラスメイトに聞かれたら理由を問いただされるのも目に見えている。
だから、Dクラスに接触するための大義名分が欲しかった。
今回のポイントの支給が遅れているのが、Dクラス絡みのことならば、これを利用して綾小路君経由でDクラスとの関係を作ることができるかもしれない。Aクラスの人、特に保守派とも言える康平からなんか言われるかもしれないが、適当に流せば問題ないと信じよう。
……ここまで考えて、実は今日がポイントの支給日じゃなかったら笑えるが。
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教室に入ると、すでにクラスメイトの大半が教室にいた。適当にあいさつを交わして、席に座るとクラスのあちこちからポイントの支給に関しての話が聞こえてくる。
「ポイント振り込まれてたー?」
「いや、私振り込まれてないよー」
「先輩は振り込まれてたって言ってたから、今日が支給日であってるはずなんだけどなー」
「一年だけなんか遅れてるってことか?」
…なるほど、これは予想通り他のクラスで何かあったのかもしれない。クラス全体を見渡しても、この話題を意図的に避けているような人もいないし、一人だけ暗い顔をしているような人もいないことから、まずこのクラスが原因ではないだろう。
ボッチ組も最近ボッチ組で固まってきた以上、何かあれば他のクラスメイトに話すはずだし、一人で抱え込んでいたらこの空気で平静を保ったままにすることはかなり難しいだろう。いや、一人だけ
そう思った私は、隣を向いて話しかけた。
「坂柳さんもポイント振り込まれてなかった?」
「ええ、私の方もポイントは振り込まれていませんでした。その口ぶりからすると、小坂君も振り込まれてなかったということですね?」
「ああ、朝起きて確認してみたけど昨日と変わってなかった」
そう言って顔を前に向ける。彼女が本当のことを言っているのかわからないが、何か仕込んでいるならここで含み笑いの一つでもしそうだ。いや、それ以前にクラスで決めた方針を無視してクラス全体を巻き込むような仕掛けをこの段階でするような人じゃないか。
そうなると、Bクラスはリーダーが
だから、クラス間での争いがあるとしたらCとDだろう。独裁者が独裁政権を取っているCクラスがDクラスを蹴落として、DクラスがCクラスに絶対上がれないようにするために起こしたのか。それとも、DクラスがCクラスに仕掛け始めたのか。どちらにせよまだ情報量が少なくて何とも言えないな。個人的にはCクラスが攻め入ったっていう可能性が高いと思うが、まだ憶測の範囲を出ない。
まあ、それはあくまで大義名分を手に入れるための副産物であって私に直接関係あることじゃないからいい。とりあえず今するべきことは、綾小路君にポイントが支給されたかメールで聞いてみることだ。
そう思った私はクラスメイトに画面をあまり見られないように気を付けながら、綾小路君にメールを送った。今すぐに返事が来なくても、そのうち気づいてくれるだろう。
そんなことを考えていたら、真嶋先生が教室に入ってきた。
「全員揃っているな。後で聞かれるだろうから先に言っておこう。こっちの不手際でプライベートポイントの支給が遅れている。クラスポイント自体は出ているから黒板に貼っておく」
そう言って、持ってきた紙を黒板に張り付けた。
Aクラス 1002cl
私が足を引っ張っても、クラスポイントが上昇することには変わらなかったようだ。だが、個人的にはそんなことよりも気にかけるべきところがあった。
Dクラス 87cl
Dクラスの伸び幅が高すぎる。元々が0だったことを考えると脅威にはなりえないと思うかもしれないが、逆にいうと
これが主人公の力なのか、それともこのclの上昇は同じことをしても元のclが高ければ高いほど上昇率が悪いのか、どっちにしろ60近くしか伸びていないAクラスではどこかで抜かれることも考えなくてはいけないだろう。
なにせ、まだ3年もある。1年のこの時期でこんな有様じゃ、私がいるいない関係なくこのクラスはそのうち落ちていくかもしれない。この結果を見て隣にいる少女はわからないが
他のクラスも結構に伸ばしているが、0から一気に87まで上げたDクラスこそ一番警戒する必要があるだろう。他のクラスの伸び方も十分脅威だが、0から上げたDクラスほどじゃない。こんな浮かれ切った脳内お花畑モードの
死に物狂いで上に上がろうとする集団と、元々優秀と言われてある程度の結果ならすぐに出せるような集団だったら、前者の方がよっぽど怖い。死に物狂いでやるってことは、後先を考えないし、他のことに惑わされないということでもある。何かあったらすぐに保身に走りそうなエリート集団ではどうしようもないだろう。
まあ、そんなこと
別にDが上がろうが、Aが死のうが私にはどうでもいい。私に求められていることは、退学をしないで卒業すること。無駄に勝てない喧嘩を売りに行って、ボコボコにされるようなことをする気はない。適当に坂柳さんとの勝負をしながら卒業まで生き残ること。彼女との勝負には全力で取り組むが、それで退学なんか食らったらたまったもんじゃない。故に
負けたくはないが、それで人生の全部を棒に振りたくはない。勝負の上でどうしても必要なら考えるが、必要ない危ない橋を渡る気はない。それに、すでに
気づかれるようなものではないが、問題があるとしたら私の運が悪いことだけだ。せっかく仕掛けた仕掛けが『運悪く』不発に終わることもあるだろうし、『運悪く』気づかれるようなことがあるかもしれない。
まあ、ばれたらばれたで知らない振りすればいい。仕掛けに気付いたところで私が仕掛けたものだと気づくかどうかはまた別問題だし、私だとばれなきゃ問題ない。ばれたら適当に流すしかないとも言えるが。
そんなことを考えているうちに、いつの間にか真嶋先生は消え、もう授業が始まる時間になっていた。思考を切り上げ、授業の準備をする。そして、授業の先生がやってきたのを機にチャイムが鳴り、今日の1時間目が始まった。
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放課後になった。坂柳さんと茂から放課後にどこかに行かないか誘われたが、今日は用事があると言って断った。あまりしたくなかったが、どうしてもやっておかないといけない用事があったので仕方ない。一回目ならまだ大丈夫だろうと思いたい。
昼休みに、綾小路君からメールがあったが彼もポイントが振り込まれておらず、原因もわからないようだった。知らないふりをしているのかもしれないが、言わない以上詳しく聞いても教えるようなことはしないだろう。いや、そもそも彼はクラスのことにそこまで関心がなかったような気がする。
そうだとしたら、彼が知らないのも納得できる。まあ、これに関してはポイントの支給が遅れるような事態だ。
ここが学校で、現金ではなくポイントだから実感が薄いが、私達は
そのポイントの振り込みが遅れているのが、
ただ、これらのことはあくまで憶測でしかない。証拠とも言えるようなものがあるわけじゃないし、単に聞いてこないから担任が説明していないだけなのかもしれない。
だから、
職員室の中に入り、少しあたりを見渡すと真嶋先生を見つけた。真嶋先生に近づき、話しかける。
「真嶋先生、少しよろしいでしょうか?」
「小坂か、どうかしたのか?」
「少し聞きたいことがあってお尋ねしたのですが、お時間よろしいでしょうか?」
「ほう、いいだろう。答えられないような内容のものは黙秘するが構わないな?」
「話したくないようなこと、話せないようなことを無理矢理聞き出す気はありません」
「いいぞ、言ってみろ」
「では早速、クラスごとで優劣が評価されていると聞きましたが、それは先生にも当てはまりますか?」
「…そうだ。
結構あっさり言ってくれたな。となると、別にそこまで秘密にするような情報じゃなかったのかもしれない。
「では、クラスの担任を受け持っている先生が他のクラスの成績を落とすための工作をして、成績を下げるようなことはありますか?」
「あまりにもひどいものは許容されていないが、担任である以上受け持ったクラスに思い入れを持つことはあってもおかしくないな」
予想の範囲内だ。許容されていないということは、あまりにも露骨なものは学校側に訴え出たら処罰の対象になり得るということだろう。滅多にないだろうが覚えておこう。
「聞きたいことはこれで全部か?」
「いえ、最後に一つ聞きたいことが」
「なんだ?」
「
話さない…職務上に差し障ることだったか?
だけど、その表情で全て察した。もっと底のしれないようなイメージがあった人だと思ったけどそんなこともなかったみたいだ。表情と雰囲気ですぐに答えを教えてしまうような人なら、そこまで脅威じゃない。
「……何故そう思った?」
「簡単な予測ですよ。Aクラスのリーダー格の二人には、動きがない限り他のクラスには手を出さないような方針に
反対にCクラスは独裁政権を立てているから仕掛けるなら早いうちの方が好ましく、Dクラスはそういう目で見たら標的にしやすい。ですので、恐らくCクラスがDクラスに何か仕掛けたという予測です」
「…そこまで考えていたか」
「先生は、クラス全体の評価がポイントになるとおっしゃりました。そのポイントの支給が1年だけ遅れているとなれば、どこかのクラスが何か問題を起こしたと考えるのが一番です。
システムの都合上、クラス内だけで終わるような内輪もめならそのクラスのポイントの支給を遅らせれば済む話ですが、1年全体のポイントが振り込まれていないのであれば、クラス同士で何かあったと考えるのが普通かと思いました」
「…職務的に
「お褒めに預かり恐縮です。テストに関しては運が悪かったとしか言えないのであまり触れないでくださると助かります」
そう言って、まだ軽く包帯を巻いている右手を見せる。もうだいぶ治ってはいるが、元々貫通していたことを考えると念のために包帯を巻いておいたほうがいいと思ったためいまだに包帯を巻いている。
真嶋先生が苦笑いしていた。
「この件については恐らく明日あたりに説明が入るだろうが、クラスメイトに話すのか?」
「いえ、自分の中で確証を持ちたかっただけですので他のクラスメイトに言う気はありませんでした。
それに、
「ほう、ではなぜ聞きに来た?」
「クラス間の抗争がすでに起こっているのであれば、何か手を打つ必要があるかもしれないと思ったからです。自分の知らないところでことが勝手に進むのが一番怖いですから。それに、もし学校側で説明が行われないようであれば、クラスメイトに話していたかもしれません」
これについては本当だ。Aクラスがどうなっても知ったことではないが、Aクラスの一員と言う肩書がある以上、他のクラスからすれば敵として見られることは間違いない。だから、クラスの抗争がすでに始まっているのなら情報が少しでもほしいと思っていた。
主に、Dクラスと仲良くなるという目的のためだが。
「そこまで考えを巡らせらせられるなら、私が言うことはないな。これからも、Aクラスのために頑張ってくれ」
「わかりました。微力ながら頑張らせていただきます。それではこれで失礼します」
そう言って職員室を出た。真嶋先生には悪いが、Aクラスのために頑張る気はこれっぽっちもない。別にエリートがどうなろうが知ったことじゃないし、そもそも
普通にAクラスまで到達しそうだ。今回のポイントの伸び幅を見ても、0からあそこまで上げた彼らならそう遠くないうちにAクラスまで届くだろう。
そもそも三年間もかけてAクラスを守り抜くという段階でやる気が起きない。報酬も、好きな大学と就職先に行けるというようなもので正直そこまで魅力的じゃない。好きなところに行ったところで、能力が追いついていくかは別問題だし、努力しないで好きなところに行って打ちのめされるようなことがあってもめんどくさい。
私は私らしく、私の実力にあったところに自力でいくのが合っているだろう。背伸びしたところで良くなるとは思えないし、何せ天涯孤独の身である今、そこまでしていい大学に行きたいとも思わない。普通に就職したほうがいい気もする。まあ、その辺はもう少し経ってから考えるか。
とりあえず、CクラスとDクラスが何かやらかしていて、恐らくCクラスが吹っ掛けたと。詳しくは明日クラスで話すそうだから、その話を聞いた後にでも綾小路君にメールをしてみよう。わざわざ干渉しなくても彼が何とかしてしまいそうだが、これを利用してDクラスとの関わりを持っておきたい。Cクラスには悪いと…思わないな。別にどうなってもいいし。
動くのは明日だ。今日はもう夕食の買い出しに行った後に寝る準備をして寝よう。明日の動き次第で今後のことが変わる。これ以上Aクラスに踏み入りたくないし、この機会を逃すと次の機会まで待たないといけなくなる。
そう考えた私はスーパーで買い出しをした後に、夕食を作り、明日の弁当の仕込みをして寝た。
Aクラスが60近く伸ばして、Dクラスが90近く伸ばしているというところだけ見るとDクラスがとても優秀に見えるかもしれません。
主人公がAクラスに居ることで、原作より少しclが減りました。
追記
どこかに書いていると思っていて書き直している途中で書いていないことに気付きましたが、主人公は中間テストを乗り切った時に100ポイント貰っていることを聞いていません。
そのため、Dクラスがやたらと主人公の中で過大評価されています。