ようこそマイナス気質な転生者がいるAクラスへ   作:死埜

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16話目 七月の初め 次の日 Ⅱ

 放課後になった。昼休みに綾小路君に送ったメールの返信が来ていたので内容を確認すると、「協力してくれるなら放課後にDクラスの方に来てほしい」という連絡が入っていた。

 Aクラスの人間が協力することがDクラスで受け入れられるのか少し気になったが、綾小路君からの紹介なら問題ないと思いたい。どちらかというと、ここまでうまくいっていることの方が怖かった。綾小路君とは時々メールのやり取りをしていたぐらいだが、ここまで色よい返事がもらえるとは思っていなかったので正直驚いた。

 いいところ、綾小路君単体との話し合いだけだと思っていたのに、クラスの方にお呼ばれされるとは思っていなかったので嬉しい誤算だ。

 

 内心テンションを上げながら、放課後になったことで「どっか行こうぜー」って言ってる茂に、「悪いが今日は無理だ。また今度な」と言って教室を出る。

 茂には今度埋め合わせをすることにして、とりあえずDクラスの方に行くことにした。昼休みに口出ししたからか、クラスメイト達の視線を少し感じた。それを気にしないで、Dクラスに直行する。既に言質はとってあるが故にDクラスに行こうが問題はない。

 

 

 

 

 

 

 Dクラスに向かって歩いていたら、正面から堀北さん(メインヒロイン)がやってきた。私を見て少し立ち止まると、何事もなかったかのようにそのまますれ違って歩いて行った。

 

 彼女は今回の件にあまり関わりたくないのだろうか?

 

 もしかしたら、彼女は自分が良ければ他の人はどうでもいいタイプの人間だったのかもしれない。そうだとしたら、こっち(過負荷)側に引きずり込むこともできそうだが、私の実力じゃあ無理だろう。裸エプロン先輩ならともかく、私みたいに過負荷(マイナス)を隠して生きているような人じゃあ、他の人を過負荷(マイナス)に引きずり込むことなんて無理なのだろう。

 

 そもそも、過負荷(マイナス)であることを隠しながら、過負荷(マイナス)を増やしていくのはかなり無謀だろう。かといって過負荷(マイナス)を出したら『縁』を切ることになって、恐らく忘れられるだろうから意味がなくなるとかいう悪循環が生まれるのではと考えたのはつい最近のことだ。

 

 出しすぎないで、ちょっとマイナスに振る舞えばできるのかもしれないが、あまりやりすぎると自分で歯止めが利かなくなってしまう。無理に仲間(マイナス)を増やす必要もないし、今はそんなことよりも重要なことがある。

 

 

 そんなことを考えながら、Dクラスの教室に入った。教室内では結構な人がまだ残っていて、話し合いの途中だったみたいだ。事件があったのにいきなりやってきた部外者を見て、Dクラスの中でざわめきが起こる。特に、この前図書館にいた綾小路君以外の三人は私を見て露骨に顔を顰めた。そんな中、いきなり部外者が入ってきたのにあまり驚いた様子のない、どこかで見たことあるような女子が私に話しかけてきた。

 

「君が小坂君でいいのかな?」

 

「綾小路君が言っていた小坂君ならそれであってるよ」

 

 そう言って綾小路君の方を見た。彼は申し訳なさそうな顔をしながらこっちにやってきた。

 

「昼休みのメールの返信をどうしようか迷っていたら、他のクラスメイトに見られてな。事情を話したらこうなった」

 

「そういうことなら別に問題ないよ」

 

 そう言って私と綾小路君で話しているが、他の人たちの視線がいろいろ訴えかけてきているので自己紹介から入ることにした。ここで失敗はしたくない。

 

「とりあえず自己紹介から、私の名前は小坂零だ。1-Aクラスに所属していて、今回は()()の綾小路君の力になれないかということでここに来た」

 

 私がそう言うとクラスの中がさらにざわついた。「Aクラスのやつが何で来たんだ!?」みたいな会話が所々で起こっている。そんな中で、目の前にいる少女はそんなことを気にしない感じで自己紹介を返してきた。

 

「私は櫛田桔梗って言います。綾小路君の携帯の画面が目に入って事情を聞いたら協力してくれるってこと言ってたから来てもらったんだけど迷惑だったかな?」

 

 そう言って彼女は上目遣いで男に媚びるような視線でこっちを見てくる。他のDクラスの生徒達も、櫛田さんが言うならいいかみたいな空気が漂い始めた。

 

 個人的には彼女のおかげでDクラス(主人公たち)に取り入ることがやりやすくなりそうだ。この少女をどこかで見たことあると思ったら、バスの中で老婆を庇っていた少女だと言うことに気付いた。

 

「こっちとしてはありがたいけど、他のクラスの人たちはいいのか?」

 

 私は自分が考えていることを表には出さずに、そう言いながらクラス内を見渡した。私と目線が合うと、怯えを見せる人や、睨みつけてくる人、目線をそらそうとする人などその人の個性がすぐにわかるような反応をしてくれる人が多い。

 

「私はAクラスの人にも協力してもらえるなら心強いと思うんだけど、皆はどうかな?」

 

 そう言って彼女がクラスメイトの方を見ると、クラス内で仕方ないかという雰囲気に一瞬で変わった。彼女がこのクラスで大きな影響力を持っている証拠だろう。そういえば、Dクラスのリーダー格は『平田 櫛田』だったはずだ。恐らく彼女がその『櫛田』なのだろう。

 

「いいっていうなら協力させてもらおう。ただ、ここにいる私は『Aクラスの小坂零』じゃなくて、『綾小路君の友人の小坂零』として来てるってことにしてほしいんだ。Aクラスそのものの方針としては、首を突っ込まないようにするみたいだからな」

 

「それって、小坂はここにきても問題ないのか?」

 

「クラス単位での協力はできないけど、個人的に協力する分には問題ないってリーダーから言質とったから大丈夫だ。だから、個人的にしか協力できないけどいいかい?」

 

「私としては、少しでも協力してくれる人がいてくれると助かると思うんだけど…」

 

 彼女がそう言っただけで、クラスの中で私が協力することに反対する人が消えていくのだから不思議だ。最初に顔を顰めていた三人も一人を除いて賛成派に回っていた。

 

「そうしたら、とりあえず現状を説明してほしいのだが、いいだろうか?

 Aクラスの方でも軽い説明はあったのだが、詳しいことまでは教えてもらってないんだ」

 

「そうだね。協力してもらうならちゃんと知ってもらうう必要があるよね」

 

 

 

 …彼女(櫛田さん)たちの説明によると、須藤君というバスケ部の生徒がCクラスのバスケ部の生徒に呼び出されてついて行った。そして、そこで殴りかかってこられたから正当防衛で殴り返したら、次の日には須藤君が殴りかかったことになって学校側に伝わっていたと。

 

 …どう考えても詰んでる気がする。殴られたから殴り返して良いってのは幼稚園か小学校低学年までの発想だろう。しかも、相手側には殴られたことを証明できてもこっち側が相手が殴りかかってきたことを証明することはできない。

 仮に、相手側から殴りかかってきたことを証明できたとしても、殴った事実は変わらないんだから下手するとそのまま停学まであり得る。須藤君はバスケ部のレギュラーに選ばれてそれから外されたくないってことは、ここで一番目指すべきなのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そう考えたら手口だけで三つ。方法としては二つはあるな。

 

「事情は大体把握した。言いたいことはいっぱいあるけど、とりあえずアドバイスできそうなことは解決の手口を三つで、解決の方法としては二つだな」

 

「そんなにあるの!?」

 

 私の言葉に、櫛田さんは露骨に驚き、Dクラスの生徒たちは騒然となった。

 

「解決の手口は三つあるのに、解決の方法としては二つとはどういうことなんだ?」

 

「手口としての二つは方法的には一緒なんだ。アプローチの仕方が若干違うだけで内容的には全く変わらないからな。

 手口として数えたら三つだけど、方法としてみたら二つってこと。実質三つまで解決策があるってことかな。実際にやるのは君たちだから、どうするのかは君たちが決めてほしい」

 

 綾小路君の質問にそう返すと、クラス内では入ってきた時の雰囲気とは打って変わったような明るい雰囲気となっていた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、どうしてそこまで楽観的に考えられるのか不思議だが、綾小路君だけは私を見たまま動かない。

 

「とりあえず、その解決策を教えてほしいんだけど、いいかな?」

 

「いいよ。でも、どのやり方を選ぶのは君たちだからね。リスクが大きいのと、リスクが小さいのどっちから話そうか?」

 

 リスク、という単語に反応してクラスの中で起こっていた熱が少し冷える。彼らは無条件で須藤君が無罪になるような魔法を期待していたのだと直感的に感じた。

 

「やっぱり、リスクはあるのか…」

 

「私が考えた方法だったらそうなる。というより、君たちは今回のことについてどうやったら解決すると思うんだい?」

 

「そりゃあ、当然あいつらが頭を下げて詫びを入れることだろうが」

 

 それまで沈黙していて、櫛田さんの意見にも流されないで私を睨みつけていた須藤君がそう言った。彼からすれば、正当防衛だと言っていたぐらいだから自分が100%被害者なのにこんな状況になっておかしいとかそう言う感じだろう。

 

 だが、現実はそんな甘いものじゃあない。

 

「詫びを入れる段階はもう過ぎている。既に1年生全体のポイントの振り込みが遅れている段階で、相手が訴えを取り下げない限り須藤君が停学になるか、相手が停学か退学になるっていうのが基本だと私は思うよ」

 

 そう言った直後、教室内がまたざわめき始めたが、綾小路君が漏らした言葉が私に聞こえた。

 

「相手が停学…じゃなくて、退学もあり得るのか」

 

「相手が虚偽の情報でDクラスを嵌めようとしていたなんてばれたら、訴えた人が退学になってもおかしくはないと思うよ。まあ、それじゃあ釣り合わないって思うかもしれないけどそこは諦めてほしい」

 

「釣り合わないってどういうことだ! お前もやっぱり俺を見下してるんじゃねぇか!?」

 

 私の言葉が悪かったのか、須藤君がいきり立って私に怒鳴ってきた。それを見て、他の人は小さい悲鳴を上げた。

 

「ごめんごめん、そう言うことじゃないんだ。話によると須藤君はバスケのレギュラーに選ばれたんだろ?

 一年生のこの時期にレギュラーになることの難しさは私の想像を超えた難しさを持つものだと思う」

 

「……」

 

「そんな優秀な人間と、相手にいちゃもんを付けて蹴落とそうとするような人とどっちがいいかなんてわかりきってるだろう?

 私としては、Cクラスの一人よりも君の方が優秀だと思ってるからね。そういう意味で釣り合いが取れてないって言ったんだ」

 

 私がそう言うと彼は落ち着いたのか、席に座り込んだ。

 

「脱線したけど、解決策について話していいかな?」

 

「ああ、こっちこそすまなかった」

 

「気にしてないからいいよ。彼も人に知られたくないことを他のクラスにまでばらされて、いい気分じゃないのは予想できてた。それにもかかわらず、言葉選びを間違った私に責任がある。

 須藤君、ごめんなさい」

 

 そう言って、私は須藤君の方に向かって頭を下げた。他の人たちは、Aクラスの私が問題を起こした須藤君に向かって頭を下げたのに驚いたのか、沈黙が場面を支配している。

 

「いや、俺も悪かった。急に怒鳴り散らしてすまねえ」

 

 その言葉とともに顔を上げると、「須藤が謝った!?」と言う声が聞こえてくるが、それを無視してもう一度頭を下げて綾小路君の方を向く。

 

「それじゃあ、解決策について話をしようと思うのだが、まず前提としてDクラスの人全員が協力することが必要なんだが、大丈夫か?」

 

「どうしても全員じゃないとダメか? 今このクラスに居ないような奴が協力してくれない可能性がある」

 

「ここにいる人全員が協力してくれるなら問題ないと思うけど、嫌って人はいるかい?」

 

 そう言ってみるが、誰も反応を返さない。沈黙は肯定とみなして先に進めることにした。

 

「それじゃあ、先にリスクの大きい方法から話そうと思う」

 

 私のその声で教室内が静まり返る。私の解決策に期待して今か今かと待っているような状態だ。だから私はそれに応えようと思う。

 

 とびっきりの最低(マイナス)私らしい(マイナス)な策を。

 

 

 

 

 

 

__________________

 

 

 

 

 

 小坂は俺たちに協力してくれると言ってDクラスにやってきた。本当は呼ぶつもりはあまりなかったのだが、櫛田に言われて仕方なくと言った感じだった。

 それでも、少しひと悶着あったが概ね問題ないように進んだし、前に図書館で見たときの()()()()()雰囲気が消えていたので問題ないと思っていた。

 

 

 

 …あいつが解決策を具体的に話すまでは。

 

 

 

 

 

「そんな難しい話じゃないよ。彼のことを訴えてきた相手をDクラスの生徒全員で監視して、階段を下りようとしたら背中を押してあげたり、廊下で足を引っかけてあげたり、靴の中に画びょうを仕込むぐらいのことを1週間も繰り返せば、彼も訴える気なんてなくなるさ」

 

 

 ゾワワワワッ

 

 

 小坂は、さもそれが一番正しくて、それしかないと言いたげな笑顔でそう言い放った。この瞬間に、オレはやっぱりこいつを呼んだのは間違いだったと確信した。この前図書館で見たときの()()()()()雰囲気がそのまま戻り、さっきまでの小坂とはまるで別人のような印象を持っている。

 この雰囲気の変化を察したのか、他のクラスメイト達も絶句し、この前居合わせた須藤たちも図書館でのことを思い出したのか硬直してしまっている。

 

 

「あれ、どうしたのそんなお通夜みたいな雰囲気になって。もしかして他の人の人生をめちゃくちゃにするような勇気もなしに須藤君のことを助けようなんて思ってたの?

 これが成功したらCクラスの人は良くて心が折れて、悪くて階段から落ちて死亡、もしくは階段から落ちて半身不随とかかな?」

 

 それが当たり前だと言う風に、そう言い放つ。そのあまりの気持ち悪さに、Dクラスのクラスメイト達は怯えている。

 

「でも大丈夫、安心して。もしそれでCクラスの生徒がひどいことになっても、()()()()()()()()。だって先に仕掛けてきたのはCクラスの方なんだろう?

 先に人の人生をめちゃくちゃにするようなことを仕掛けてきたのは相手なんだ

 だから、君たちが彼を殺したとしても、彼が二度と運動できなくなったとしても、彼が部屋から出てこれなくなっても()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 そう言いきった彼に、オレたちは何も言えなかった。痛いような、突き刺さるような静寂が教室内を支配する。そんな中でかろうじて言葉を発したのは櫛田だった。

 

「でも…でもそれは良くないことだよ。いくら須藤君がはめられたとしても、相手が死ぬかもしれない解決策をするなんておかしいよ」

 

「それじゃあ、君たちは何か他の策があるのかい? あくまで私の言った解決策だから、やるのも見ないことにするのも、()()()()()()()()()()君たちの自由だよ」

 

 ここで、今一瞬須藤を見捨てればこんなことにはならなかったんじゃないかと思っている自分がいたことに気付き、頭を振ってその考えを追い出す。

 

「ちょっと待ってくれないかい?」

 

 震えた声でそう言いながら、小坂のほうに歩いてそう言ったのは平田だった。

 

「君は誰だい? 一応名乗ってもらえるとやりやすいんだけど」

 

「僕は平田洋介。急に入ってきて悪いけど、僕もその策には反対だ。いくら何でもやっていいことと悪いことがある。それに、リスクが大きい方ってことは小さいほうもあるんだろ? そっちの方を先に教えてくれないか?」

 

 そういえば、確かに小坂はリスクの高いほうと言っていた。解決策も一応三つあるとも。

 

 …解決策は三つあるのに、リスクが大きいほうと小さいほうの二つしかないのはどういうことだ?

 

「まあ、この解決策がだめっていうんなら実質、私が解決策を提示できるのはあと一つだよ。もう一つもこれと似たようなやり方だから、こっちがだめっていうんなら君たちは嫌がるだろうしね」

 

「さっきみたいな方法なら、僕はそれに賛成できない」

 

「申し訳ないけど、私も同じくかな」

 

「小坂には来てもらって悪いが、オレもだ。流石にそんなことはできない」

 

 そういうと小坂の纏っていた()()()()()雰囲気は霧散した。

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

 …やってしまった。彼らが乗り気じゃなかったから、今は冷静になっているけど、結局解決策を考えていたあたりからどんどん思考がマイナス寄りになって、結果的にみんなを怯えさせることになってしまった。これじゃあ、何のためにここに来たのかがわからない。

 とりあえずリカバリーが効きそうな範囲内でリカバリーできないか試みよう。

 

「…なーんてね、流石に冗談だよ。いくら私でも、他のクラスの人に人殺しを進めるようなほど酷いことはしないさ。第一、教室に監視カメラがあるからこの方法はもう使えないしね」

 

「…なんだ~、冗談だったんだ。冗談にしては質が悪すぎるよ~」

 

「でも意味のない冗談ってわけでもないんだ。あくまでこんな型破りな方法もあるってことを教えたかったんだよ。凝り固まった視点だとわかる物もわからなくなるしね。

 どうしてもこの方法をやりたいっていうんなら個人的に聞きに来てほしいけど、そんなこともないでしょ?」

 

「そうだね。少なくとも僕は絶対にしたくない」

 

「私も~」

 

「オレもだ」

 

 とりあえずはごまかせたか?

 

 かなり怪しいし、結局警戒心を抱かせてしまったことには変わりないから悪い方向にはなっているが、櫛田さんがノってきてくれたからだいぶ雰囲気が穏やかになった。

 

「じゃあ、リスクの少ないほうの解決策だけど、こっちの方は実際できるかどうか怪しいっていうのを抑えておいてほしい」

 

「どんな策なんだ?」

 

「単純にいえば、彼らの弱みを握って彼らに直接交渉するって話だね。彼らが殴りかかってきたっていう決定的な証拠を陰で彼らに突き付けて、彼らに訴えを取り下げさせるっていうのが一番穏便で平和的に解決できると思う」

 

「別にその証拠を直接話し合いで突き出せばいいじゃねえか」

 

「須藤君はそうしたいかもしれないけど、それだと君が殴ったことも追及されて確実に大会には出れなくなるよ?」

 

「ああ!? なんでだよ!」

 

「たとえ正当防衛で殴ったとしても、殴ったっていう事実は変わらないんだから、相手が仕掛けてきたとしても喧嘩両成敗になるのが妥当だと思う。

 だから、君が大会に出たいんだったら彼らに訴えを取り下げてもらうのが一番なんだ」

 

 須藤君は、私の言葉に納得できないというような感じを表に出しながら、渋々引き下がった。

 

「でも、その証拠はどうやって手に入れるんだ?」

 

「それに関しては、君たちが頑張ってとしか言いようがないかな。だからこそ、確実性は低いし、リスクもそこまで大きくない。さっきのやつはリスクは膨大だけどやり込めさえすればほとんど確実に決まるからね」

 

「結局はそこになるのか…」

 

「まあ、どうしても見つからないんだったら弱みを作るってのも手だと思うよ。()()()()()()()()()()()()

 

「だが、それをどうするかが問題だろ?」

 

「そこまでは私も難しい。相手のことをもっと詳しく知ってればできるかもしれないけど、少なくとも今の私に無理だ」

 

「そうか。無理言って悪かった」

 

「いいや、私もDクラスの人とこうして話せて楽しかったから別にいいよ」

 

 そういってDクラスの生徒を見渡すが、少し警戒されているのかあまりいい反応は帰ってこない。やっぱりさっきマイナスっぽかったのが敗因だろう。櫛田さんが私の良いように動いてくれたのにその機会を結局無碍にしてしまった。

 

「じゃあ、私はそろそろ帰るよ。君たちもまだ話し合わなくちゃいけないと思うし、私がいたら話せないこともあると思うしね」

 

「そうか。この後Bクラスの方に行ってみようと思っていたんだが、小坂はついてこないか?」

 

「Bクラスはパスかな。Aクラスの私がいることでBクラスの人に警戒心を持たせると協力してもらえなくなるかもしれないし」

 

「それもそうか」

 

「じゃあ、また今度」

 

 そういって教室を出た。私はもうこれ以上いても無駄に警戒させるだけになってしまいそうだから、帰ろうと思ったのだが、教室を出て少しして後ろから人が来ていることに気付いた。後ろを振り向くと、櫛田さんが付いてきてた。

 

「どうしたの櫛田さん?」

 

「ねえ、小坂君。何でDクラスに協力してくれるの?」

 

 何で…ときたか。多分彼女は私が綾小路君のために来たとは思っていないんだろう。

 実際、私は綾小路君と仲良くなりたいと思ってはいるが、綾小路君のために協力しているわけじゃあない。

 

「Cクラスの生徒が気に食わないってのが一番の理由かな。当然、綾小路君の手助けをしたいってのもあるけど」

 

「気に食わない?」

 

「あいつら、自分じゃ何もしないでリーダーに全部任せっきりのくせに、A~Cは大差ないだの、Dクラスは不良品だの言ってるんだぜ? 自分で上に上がろうともしないあいつらの方がよっぽど不良品だろうよ」

 

「……」

 

 彼女の望む答えとは違ったらしい。彼女はこっちを見たまま帰ろうとしない。

 

「まあ、君がどう思うかは自由だけど、私はそっちの君じゃなくて本当の君の方が興味あるなぁ」

 

「…なんのこと?」

 

「とぼけなくてもいいよ。君の性根がひん曲がってるのは初見でよくわかったから。そこまで濁りきってるのは昔の施設の人(あいつら)並みだよ。だからこそ、君の本性に興味があるんだけど」

 

 少しだけマイナスの雰囲気を纏うことを意識して彼女に話しかける。彼女は、私の方を怯えるような目で見始めた。

 

「……あんたなんなの…?」

 

「私? 私はただのマイナス(出来損ない)さ。なんでAクラスに居るのかもわからないね」

 

 もっと話したいけど、あまり時間をかけると彼女のクラスメイトも心配するだろうし、この状態の彼女と話してもおびえるだけでつまらなそうだ。そう思った私はこの場を離れることにした。

 

「まあ、また縁があったら会おうよ。それじゃあ、()()()()()()

 

 そう言って、後ろを向いて振り向かずに彼女に手を振りながら私は寮の自室に帰った。

 

 

 

 

 

 

______________

 

 

 

 

 

 

 寮の自室に戻った私は、結局自分から彼らとの協力体制を崩すようなことをしてしまったことを自己嫌悪した。過ぎたことは仕方ないけど、何であそこまで御膳立てしたのに我慢できなかったのか。

 

 結局、どこまで行っても最後には失敗するのだろうか?

 

 今回に関しては100%自分が悪いが、少し仕込みを入れただけにこの結果にはショックだった。しかも、最後には調子に乗って櫛田さんを威圧するような形になってしまったし、恐らく彼女からは常に警戒されることになるだろう。

 

 しかも、最後に次につなげるようなことをしなかったために、次に彼らとかかわりを持つ機会もない。

 

 これでは結局前と変わらないかもしれないが、前よりはDクラスとの関わりを持てただけ良しとしよう。彼らのAクラスに対する反応からするに、恐らくクラス全体で関わったAクラスの生徒は私だけのはずだ。

 

 だが、一番敵に回したくない綾小路君に敵認定されてるのかもしれないと思うと少し怖い。もし彼が敵になったら、おとなしく諦めよう。彼と直接対決して勝てるような未来はない。

 

 結果的には失敗したが、前よりも少しは好転したと思いこむことにして、私はこれからの準備をすることにした。




 主人公の言うリスクの大きい策は、主人公が学校内の監視カメラの場所を把握しているから可能なことです。実際にやろうとしたら、廊下とかには監視カメラがないという設定だったのでそこまで難しくはなさそうです。
 しかし、やったことがばれた瞬間に自分たちの首を絞めることになるので現実的ではありません。

 主人公本人が同じ状況になったら、マイナス全開で1時間ほどお話して徹底的に心を折りにいって、自主退学させることになる可能性が高いです。
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