ようこそマイナス気質な転生者がいるAクラスへ   作:死埜

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主人公はよう実をアニメがやっていることを知っていてちらっと見たぐらいで、残りは小説を少しと舞台設定ぐらいしか知りません。
その記憶も15年以上前のものなのでかなりあやふやになっています。


2話目 入学

 桜が舞い落ちる季節とはよく言ったものだ。前世で北海道にいたときは「4月とか普通に雪降る日もあるし、何なら吹雪の日もあるけど?」とか思っていたけど、東京にいる今では桜が舞い落ちる季節と言われると納得できる。

 

 はらはらと散っていく桜を見ると、春の(プラス向きな)季節がやってきたんだなと思う。とは言っても、マイナス的には正直どうでもいい感が否めない。むしろ新品の制服に花びらが付いて鬱陶しいまである。

 これから通うことになる「高度育成高等学校」は現金の類を一切持って行ってはいけないそうだ。尤も、施設で暮らしていた私はほとんど現金なんかもってないし、持っていくものも勉強道具の類と衣服ぐらいしかない。

 

 私は制服が届いてから入学するまでの間にマイナス成長ができないか試みた。が、結局それは達成出来なかった。もし出来ていたのなら、好きに鉈をとり出せるようになって便利なのではないかと思ったのだが、精神的なものを無理に変えるのは今の私では無理だった。裸エプロン先輩みたいに螺子を出す感覚で鉈を出せるんじゃないかと思ったが、今の私ではマイナス的にもっと成長しないとダメなようだ。

 施設での居心地を良く(プラスに)しすぎたのが敗因だと思う。今では職員も子供もみんな慕ってくるようになったから(マイナス)を抑えずにはいられなくなっている。だからといって、入学してからぶっつけ本番で出すのも怖い。

 

 記憶が正しければこの学校、結構な箇所に監視カメラがあるのだ。生徒の行動を見張り、クラスポイントの減点をする用途であったはずだ。その監視カメラにどこからともなく表れた鉈を持っている私が映ろうものなら、もれなく研究所送りは免れないだろう。

 そんなことになったらわざわざ勉強してまでこんな学校に来た意味がなくなってしまう。それは避けたいので感情(マイナス)を爆発させないようにしなくてはいけないが、学園物的には感情とかラブコメとかの世界なはずだから抑えきれるかが心配だ。

 

 そんなことを考えながらバスに揺られていると、前の方からなにやら騒がしい声が聞こえてきた。どうでもいいが、大きい声で言っているため嫌でも耳に入ってくる。

 

「席を譲ってあげようとは思わないの?」

 

 声の感じからして若い女性といったところだろう。朝っぱらから鬱陶しいことこの上ない。

 

「君、おばあさんが困っているのが見えないの?」

 

 煩いなと思いながら前の声のする方を見た。予想通り若いOL風の女性が私と同じ制服を着た金髪の男子高校生に言っているみたいだ。女性の隣には何となく辛そうなおばあさんが立っている。

 

 露骨に優先席の前で辛そうにしていて席譲ってほしいんですアピールでもしているのかな、あのおばあさんは?

 笑っちまうくらい馬鹿らしい。

 

 そんなことを思った。実際辛そうにしているから本当かどうかは知らないが、過負荷(マイナス)な私としてはそんな風に思ってしまう。きれいごとでしかものを見れないなんて正直くそくらえだ。

 

「実にクレイジーな質問だねえ、レディー」

 

 そんな声が聞こえた。もしかして彼もマイナスなのかと思ったが、そんな雰囲気はまるでしない。むしろ、特別(スペシャル)な人間だと直感的に感じた。自分とはまるで反対なプラスの人間。

 

 しかし、そんな人間が何故そんなことを言うのか興味が湧いた。

 

「何故この私が、老婆に席を譲らなければならないんだい? どこにも理由はないが」

 

「あなたが座っているのは優先席よ。お年寄りに席を譲るのは当然のことでしょ?」

 

「理解できないねぇ。優先席は優先席であって、法的な義務はどこにも存在しない。この場を動くかどうか、それは今現在この席を有している私が判断することなのだよ。若者だから席を譲る? ははは、実にナンセンスな考え方だ」

 

 …なるほど、そういう考え方もあるのか。プラスの人間というのはどいつもこいつも道徳的で、倫理的なものとばかり思っていた。実際、前世の私も社会貢献としてボランティアをした経験がある。

 だが、今考えてみたら道徳とか倫理で義務は()()()()()。ぱっと見自己中心的でマイナスな考え方にも見えなくはないが、正しいことともいえる。

 

 

「そ、それが目上の人間に対する態度!?」

 

「目上とは年上ではなく、立場が上の者をさすのだよ。それに君も私より年上とはいえ、随分と生意気で図々しいと思うが?」

 

「くっ…あなたは高校生でしょう!大人の言うことは素直に聞きなさい!」

 

「あ、あの、もういいですから…」

 

 …正論で聞かないから年上であるということを誇示して無理やりいうことを聞かせようとする。気持ち悪い。吐き気がしそうなほど自己中心的(マイナス)な考え方だ。尤も、マイナスの私には誇示するようなものさえないが。まあ普通(ノーマル)の人間なんてこんなものかと思ったら納得できる。

 普通(ノーマル)か、特別(スペシャル)か、いるかわからないけど異常性(アブノーマル)か、過負荷(マイナス)かでいったら一番怖いのは私は普通(ノーマル)だと答える。単純に数が多い。それだけで少数の意見というものは封殺できるのが社会だ。

 能力面で見たら劣っている普通(ノーマル)も、権力と集団の力を利用すれば異常性(アブノーマル)にさえ勝てるだろう。

 

 

「どうやら君よりも老婆の方が物わかりが良いようだ。いやはや、まだまだ日本社会も捨てたものじゃないな。残りの余生を存分に謳歌したまえ」

 

 いい笑顔でそういった彼のことを、私は評価したい。この状況でそんなことを言えるような人間は希少だ。バスという閉鎖空間で、周りは言葉を放たずとも「早く席を譲ってやれ」という空気で満ちている。

 そんな中で、自分を曲げずに発言している彼はなかなかの大物だろう。

 周りの人間は我関せずとしているが、後ろのほうの席に座っていなかったら前に行って話してみたいと思うほどには彼は素晴らしいと思う。

 

 それこそ、一歩道を外せばこっち(マイナス)側になるんじゃないかというほどには。

 

 

 

「あの、私もお姉さんの言う通りだと思うな…」

 

 近くにいた同じ制服を着た少女がそういった。ここまできてようやく私は、これが原作の場面だということに気付いた。確か、高円寺君?と櫛田さん?が主人公に見られる的な場面だった気がする。

 というと、どっかに主人公(綾小路君)がいることになるが、まあ正直どうでもいいので放置することにする。

 

 もしかしたらマイナスになれるかもしれない人間が、まさか原作登場人物だったとは思わなかった。まあ、原作に出て来るような人間がマイナスになることはないだろうから、私の思い違いということになるだろう。

 少し悲しい気もするが、そもそも私以外にマイナスの環境の人間はいても、マイナスの気質を持った人間には未だにあったことがない。裸エプロン先輩みたく、仲間を増やしてエリートを抹殺と言っても仲間がいないんじゃ話にならない。

 そうは言っても、今の私にはエリート抹殺なんてどうでもいいが。

 

 原作の場面だと思ったらなんかどうでもよくなってきた。とは言っても、これ以外の場面はあまり知らないし、話もあらすじ的なものしか覚えていない。主人公(綾小路君)は確かDクラスだったと思うが、正直他のクラスになった場合ほとんど知らないことだらけになると思う。

 まあ、そうだとしても私には関係ないか。原作知識だけで生きていけたとしても、詳しく見ていたわけではない上に10年以上前に見たものを全て記憶しているわけではない。

 

 

 そんなことを考えているうちに前の方がまた騒がしくなったが、今の私はもう前の方に対する興味を失っていた。

 今大事なことは、これからの学校生活でどのように振るまうのかだ。

 

 マイナス全開で行くのか、マイナスを抑えたまま生活するのか。全開にした時の利点は、マイナス成長できるかもしれないということ、抑えることに無駄に精神力を使わなくていいことがあげられる。マイナス成長した場合、私は無冠刑(ナッシングオール)を好きに使えるようになるかもしれない。

 さらに、鉈を裸エプロン先輩の螺子みたいに出せるようになればもう言うことはないだろう。マイナスを抑えるのに、無駄に集中力を割かなくてもいいし、何より素の自分をさらけ出したいと思うところはある。

 だが、デメリットが多すぎる。まず、そもそもマイナス成長して無冠刑(ナッシングオール)が自在に使えたとしても、私は人間を辞めたいわけじゃないので正直困る。

 むしろ、狙われるようなことを避けたい以上マイナスをさらけ出すのも悪手だろう。クラスのみんなから省かれ、いじめにあうのが目に見えている。

 中学校の時に部活に出てきて部員を潰していったOBを潰した時にマイナスを解放したが、十分ぐらいお話しただけで彼は引きこもりになり高校を辞めてしまったそうだ。

 

 そんなものを常にさらけ出していたら学校崩壊が起こるだろう。それは私の望むところではない。私は卒業して就職しなくてはならない。学校崩壊を起こした学校を卒業してやってきたなんて言われたら、何を言われたかわかったもんじゃない。生活していくうえでそういう面倒なことにはあまりかかわりたくないのが本音だ。

 

 マイナスを持っていても普通に暮らす。

 それが私の目標なのだ。

 

 そのためにはどんなに底辺(マイナス)だろうと卒業しなくてはいけない。原作ではAクラスじゃないと望む進路は得られないと言っていたが、個人の成績が優秀ならばある程度のところへは就職や進学ができるはずだ。金銭的に厳しいから、進学はできなくても就職できればとりあえずいい。

 もし、国立大学に自力で入学できるだけの学力があれば、奨学金を借りながらの苦学生もできるだろう。無理に大学に行くことに意味があるとは思えないが、いいところの大学に入ればいい就職ができるのはこの世界でも変わらない。

 

 平和に、普通に、マイナスで生きる。

 そのためなら私は何でも利用しよう。

 

 

_____________________________

 

 

 

 そんなことを考えているうちに、バスが停止し、目的地についた。赤いブレザーという、「二次元かよ!?」と言いたくなるような制服の集団が一斉に下車した。

 見ていた(読んでいた)側としては、内心テンションが上がっていることを隠しきれない。

 学校についた私はとりあえずクラス分けの張り紙を見に行った。他の赤い連中に合わせて後ろからついて行き、張り紙を確認して自分の名前を探した。

 

 そして私はクラス分けの紙から自分の名前を見つけた。それによるとどうやら私はAクラスになったようだ。原作知識がほとんど絡まないようなところでうれしい反面、私みたいなマイナスがAクラスになれたということに内心ほくそ笑んだ。

 

 マイナスでもやればできるんじゃないだろうかと思えた瞬間だった。

 

 今まで、バットで殴られたり、はさみで太ももを切られたり、鉛筆で手のひらを突き破られたり、熱湯を背中にかけられたり、殺虫剤を吹きかけられたり、食器を投げられたこともあったけど、マイナスでもAクラスに入ることぐらいはできるんだと思うとなんだか嬉しくなった。

 

 そんなことを考えているうちに教室についた。入ってすぐに、教室内の監視カメラがあることを見つけた。

 よく見ないとわからないような場所や、意識しないとわからないようになっているものがあるが、他人からの悪意にさらされて生きてきた(マイナス)にとってはこれぐらいすぐに感知できる。

 壁の一部の色が違う部分を見ながら、私は頭の中にカメラの場所を入れてておくことにした。

 

 とりあえず周りに合わせて席に座った。一通り周りを見渡すと、個性的な人がいると感じた。特に隣の席の銀髪でベレー帽をかぶった特徴的な美少女と、スキンヘッドの真面目そうな男が印象に残った。

 

 …あの男とてもプラスな人間な気がする。あくまで雰囲気でそう感じただけだが、堅実に何かを積み上げれば何でもうまくいくと思っているような考え方。そんなものを持っているような感じだと私の中のマイナスが訴えてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……気に食わない。

 

 

 そう思った瞬間、私の中のマイナスが少し漏れた。鉈のようなマイナスが私という外殻から漏れ出す。私の周りの空気が一瞬で別の世界のものと錯覚するような気配に変わる。私の周りの空気が断ち切れて、細切れになるような錯覚。

 それを自覚した瞬間、私はマイナスを急いで封じ込めた。周囲の人間はまず気づかないような刹那の中で起こったはずだが、クラスメイトがみんな鳥肌を立たせているのがわかる。

 

 やってしまった…。

 そう思った直後、隣のベレー帽をかぶった銀髪の美少女がこっちをめちゃくちゃ見ていた。間違いなく、今の寒気の原因が私だと気付いた様子だ。私は寝るふりをしてそれをやり過ごすことに決めた。

 

 腕を枕代わりにして机に前のめりになると、ふと右側から悪意を感じた。

 具体的には路地裏に入った時に、不良が殴りかかってきた時に感じたものと同じものだ。

 

「!?」

 

 私が咄嗟に身を左側に寄せると、私がいた位置に少女が持っている杖の先端があった。そして少女がこっちを笑顔で見ている。私はその少女の笑顔に笑顔で返すと、また机に向かって寝る体勢を作った。

 

 

「っ!?」

 

 今度こそ私の脇腹に杖の先端が刺さった。変な声が出そうになるのをこらえながら少女の方を見ると、とてもいい笑顔で少女がこっちを見ていた。

 

「ずいぶんと酷いことをするね?」

 

「一度躱した後にまた寝ようとした方がどうかと思うのですが?」

 

「いきなり杖でつついてくるような、言語も交わせないような奴と話す気はないと思っただけだよ」

 

 私がそう皮肉で返すと、少女は少しむっとした顔になった。

 

「これは申し訳ありませんでした。私は坂柳有栖(さかやなぎありす)といいます」

 

「私の名前は小坂零(こさかれい)です。それで、どうかした?」

 

 そういうと彼女は少し考えるような顔をした。

 

「…さっきのはあなたですか?」

 

 

 直球で聞いてきたか。

 少し驚いたが、周りの人を見ると他のクラスメイトと話していてこっちのほうを見ていないように見える。

 それなら、下手なことをして注目を集めないほうがいいだろう。

 

「なんのことですか? 

 もしかして中二病が抜けていないとか?」

 

 手っ取り早くとぼけることにした。

 他の人に聞かれたらめんどくさいし、馬鹿正直に話す気もない。

 

「中二病…?まあいいです」

 

 そういうと彼女は前を向いてしまった。あわよくば気のせいだったと思ってほしいが、最悪退()()()()()()()()()()()()

 マイナス全開で話をすればそのうち相手から「私が悪かったです」とか「もうしません」とか言ってくるようになる。それに「私には関係ない」とか「私は悪くない」って合わせて心を折りに行くまでがワンセットだ。

 裸エプロン先輩の真似だが、それだけで普通の人なら心はあっさり折れてくれる。中学の時にも一度実践していることもあり、隣にいる彼女もその例に漏れないだろうと思っていた。

 

 そんなことを考えていると、担任と思わしき先生が教室に入ってきた。短髪のスーツを着た男の先生だ。

 

「おはよう、Aクラスの諸君。私はAクラス担当の真嶋智也だ。初めに言っておくが、この学校において、学年ごとのクラス替えは無い。卒業まで私が三年間君たちの担任、ということになる」

 

 そう言った後、真嶋先生はこの学校の説明をした。多くの人は配られた資料を見ながら、話を聞いていた。

 現金を必要としないポイントシステム。開幕から10万ポイントがもらえるという胡散臭さ全開のあれだ。毎月頭にポイントを支給されることになっているが、10万ポイントが毎月支給されるとは言われていない。

 

 つまり、そういうことだ。

 

 原作でもそうなってたはず。

 

 故に実力主義の教室。

 

 この説明をしている時にクラスがざわついた。まあそうなるなと思う反面、冷静に考えると頭がおかしいように見える。1クラス40人。それが4クラスで160人。合計1600万円。

 高々エリートを育成するのにそんなにお金をつぎ込むことがいいのか理解に苦しむ。マイナスから搾取したお金はこういう風に使われることになるのかと思うと、裸エプロン先輩がエリート抹殺とか言っていたのもわかる気がする。

 

 しかも、これが毎月入るとか考えているやつらは頭がおかしいとしか思えない。3学年合わせて480人(退学者は考慮しない)。4800万を12か月。5億7600万円。1年間で毎年この額を何もしないで吹き飛ばすって考えるなんて正直馬鹿なんじゃないだろうか。

 うまい話には裏があるとはよく言ったものだ。前のプラスの中にいると思っていた私がこの話を聞いたらそっち側にいたかもしれないと思うと鳥肌が立つが、今の私はそんなことは思わない。

 

 善意に騙されて悪意を受けてきた私はすぐに裏のことを考える頭になっている。

 

 

 そんなこと思っていると、真嶋先生の話が終わったようだ。

 スキンヘッドの彼が自己紹介を切り出した。葛城康平というらしい。Aクラスの中で親睦を深めようときれいなことを言っている。

 

 自己紹介の様子を見ていると、坂柳さんの方に固まっている集団と葛城君の方に固まっている集団が見える。早くもグループというものができたのだろう。普通(ノーマル)の怖いところはこれだ。すぐに群れを作って他のグループを蹴落とすこと。悪意も善意もないただ堕落した集団が善意と悪意を退けるなんて様は割とよくある話だ。

 

 

 

 私には関係ないが。

 

 

 

 自己紹介をしているクラスメイトをしり目に、他の人に気付かれないように教室から出ようとした。

 

「小坂君、どこに行くんですか?」

 

 気づかれないように出るつもりだったが、坂柳さんに見つかってしまった。席が隣だったから仕方ないといえば仕方ないが、他人との縁がすぐ切れる私を見つけることができたことに驚いた。

 

 いや、よく考えたらさっき話して縁をつないでいたことになるのか?

 

 そう考えると見つかるのも当たり前と言える。特に考えなしに行動していたのが裏目に出てしまった。

 

「大勢の前で自己紹介をするのは苦手なんだ。先生にも聞きたいことがあったから抜けようと思ったんだけど…」

 

 とりあえずこう言って教師に用事があったことにしておく。こう言っておけば、用事があったから仕方ないとも取れるし、人見知りだったから仕方ないとも取れるだろう。

 

「そうだったんですか…。三年間一緒に過ごしていくことになりますから、自己紹介をと思ったのですが…」

 

 彼女はそう儚げな雰囲気を纏って言ってきた。ここで断ると私の心証は最悪になるだろう。体の弱い美少女のお願いを断った屑として扱われることになりそうだ。

 普通(ノーマル)ならまずここで自己紹介をするんだろう。(マイナス)を抑えてなければ全力で返すのだが、そんなことをする意味も特にない。

 

 無価値で無意味で無力で無責任であるとは自覚しているけど、普通(ノーマル)を取り繕う上ではそういったものを隠さないといけない。

 

「……そうしたら、自己紹介を先に済ませてから職員室に行くことにしようと思ったんだけど、今してもいいかな?」

 

「今して、と言ってももう小坂君の番でしたよ?」

 

「あ、そうだったんだ。じゃあ改めて、私の名前は小坂零っていいます。中学校では空手をやっていたのですが、人見知りなところがあってこういう大勢の前で話をするのが苦手です。三年間よろしくお願いします」

 

 私が言い終わると、葛城君が拍手をしてくれた。彼の拍手を皮切りに、クラスのみんなが拍手をしてくれる。

 

 なんて気持ち悪い光景だろう。

 

 人見知りな人をここまで善意で辱めることができるなんて。これだから普通(ノーマル)は怖いんだ。

 

 私はそう思うと同時に職員室に向かって歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

_____________________

 

5月上旬時点

 

 

氏名 小坂零 こさかれい

クラス 1年A組

部活動 無所属

誕生日 6月6日

 

学力 A-

知性 A-

判断力 A-

身体能力 A-

協調性 C-

 

面接官からのコメント

入学時の成績も非常に高く、諸事情により小学校には通っていない模様だが中学校の成績を見ても問題ないと判断できる。コミュニケーション能力に少しばかり問題があるようだが、一般的な受け答えはできる上にクラスになじんでいるとの報告も来ている。面接時の応答も問題なく、身体能力も空手部の大会で地区大会決勝まで進んだことから問題ないと判断できる。以上のことを踏まえ、Aクラス配属が妥当である。

 

担任メモ

 

今のところ坂柳さんと一緒にいることをよく見かけます。他の生徒とは一線を置いているようにも見えますが、これからの人間関係の構築に向けて頑張っている様子なので引き続き経過を見ます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(備考:過負荷(マイナス)無冠刑(ナッシングオール)』)

 

 

 

 

 

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