ようこそマイナス気質な転生者がいるAクラスへ   作:死埜

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 評価、感想、お気に入り登録、誤字報告ありがとうございます。

 今までお付き合いいただいてありがとうございます。
 突然で大変申し訳ないのですが、作者のリアル事情で定期的な更新ができそうにありません。
 来週までは問題ないのですが、それ以降が忙しく見通しが全く立っていない状態です。

 そして、今更ながらチラシの裏という形で投稿できることを知ったので、通常投稿の形からチラシの裏に移ることにしました。
 こちらの方で不定期ながら投稿していこうと思っています。
 何かご意見がある方は、作者に送ってくださると幸いです。

 ご迷惑をおかけして大変申し訳ありません。お付き合いいただける方は、今後ともよろしくお願い申し上げます。


33話目 特別試験Ⅱ 二日目Ⅲ

 結局、私は昨日あれから何もしなかった。

 

 いや、()()()()()()()()()()()()()()()()

 あの後、茂から色々話しかけてきたような気がするが、考え事をずっとしていたので上の空で話を聞いていた。そんなことよりも重要なことが、私の中にあったからだ。

 気が付いたらベッドの中にいて、朝日で目が覚めて自分が眠っていたことに気付いた。その後もベッドの中でずっと思考を巡らせていた結果、再び眠ってしまったらしい。

 時刻を見ると既に昼頃を指していて、部屋には誰もいなかった。

 今の今まで、私は思い起こしてしまったことについて考え続けていた。

 

 

 昨日無意味に捨てた空の炭酸飲料のペットボトルが、私に根本から間違っていることを思い起こさせた。

 

 『小坂零』は既に死んでいる。

 

 容器(身体)を捨てて、中身()を他のペットボトルに移した。

 

 それが今の『私』だということに気付いてしまった。

 

 今名乗っている「小坂零」という名前は、物心ついたときに自分で決めた名前だ。

 前世からの名前でそのまま通したつもりだった。

 誕生日である6月6日は私が一番古く居たときの記録から取ったものだが、名前に関しては自分でそう名乗ったら周りの人は何の疑問も持たずに納得していた。

 自己紹介した次の日には忘れてしまうのだから、捨てられた本人が名前を知っているかも怪しいことなんて忘れてしまうのだろう。0歳で捨てられたのだ。言葉を理解できていると思っているほうがおかしい。

 もしくは、過負荷()が単純に気持ち悪かったから名前の本質なんてどうでもよかったのかもしれない。

 

 それに気づいてしまったことで、全てが意味のないものなのではないかという虚脱感に襲われた。

 『小坂零』でいようとしたことそのものが無意味なことだったのではないかと、「小坂零と名乗っている何か」が『小坂零』の真似をしようとしているだけなのではないかと思ってしまった。

 

 死んだ者が生き返った場合、果たしてそれは同一人物だといえるのだろうか?

 一度燃えた紙を灰から復元させたとして同じ紙になるだろうか?

 そもそも、この体はこの世界のもので『前の世界』のものではない。

 入れ物()が違うものの中身()が同じという…これは全く同じものだと言えるのだろうか?

 いいや、缶コーヒーとボトルコーヒーぐらい違うものになる。 

 最後に、クレイジー・ダイヤモンド(壊れたものを治す能力)でも死者の蘇りはできない。

 

 これらを踏まえた結果、『私』というパーソナリティーを『小坂零』に縋りつくことで『固定』しようとしていただけだという事実に気づいてしまった。

 

 『無冠刑(ナッシングオール)』は確実に『私』が手にしたものだ。

 それだけは胸を張って断言できる。

 ルーツが『小坂零』にあったとしても、『小坂零』が死ぬ直前に発現したとしても、『無冠刑(ナッシングオール)』を『スキル』という形で発現させたのは『私』だ。

 

 今思考を巡らせているのは『私』だ。

 『小坂零』ではない。

 彼はもう死んだのだ。

 記憶を引き継いだ、性質を引き継いだ、感性を引き継いだ、性格を受け継いだ、思考を受け継いだ。

 そうだとしても、『小坂零』は既に死んだのだ。

 この世界(よう実)という知識がある。『転生』したという実感がある。

 その二つだけで、『小坂零』が死んだことを証明するには十分だった。

 

 

 それは、私が『小坂零』を模した『クローン』だったかもしれないと、『小坂零』を基盤とした『スワンプマン』だったのではないかと、『小坂零』の記憶を引き継いだだけの『他人』だったのではないかと、思わせるには十分すぎた。

 

 昔読んだ漫画で、自分以外の周りにいる人たちは中に別の生物が入っていて、常に自分の前では人の皮を被って中の人を隠しているのかもしれないと考えている場面があった。

 もしかしたら自分だけ違う生命体なのではないかという恐怖。

 他の人物たちは全て宇宙人のような偽りだったのかもしれない恐怖。

 そして、その思い込みは本人のみの現実になり、日常生活を蝕んでいく。

 それを人は偏執病(パラノイア)と呼んだ。

 

 『俺』という人格も、『小坂零』の記憶から引きずり出しただけの『作り物』である可能性もあれば、『小坂零』という『転生前の』残骸だったのかもしれない。

 『俺』自身がどう思っているのかは知らないが、ここまで強く意識や記憶を引き継がせることができるのであれば、()()()()()()()()ぐらいの指向性を操作するぐらい造作もないだろう。

 

 わかりやすく言うと、『俺』がただのNPCだったという可能性だ。

 若しくは、私が作り出してしまった人格にも似たものなのかもしれない。

 

 これらに関しては転生させた存在がいたと仮定したもので、もしそれができるのであれば『私』も『俺』も『小坂零』も思考操作をされている可能性がある。

 そうであれば、考えたところで好転することはないだろう。結論に達しそうになったら、記憶を消される可能性まである。

 少し脱線したところで思考を戻すことにした。

 

 

 『小坂零』は死人である。

 

 そんな簡単な事実から、『私』は目を逸らしていた。

 

 

 単純に『小坂零が死んだ』という事実を認めたくなかった。

 通っていた大学を卒業して独り立ちしたかった。表面上の付き合いしかしていなかった友人に別れを告げるぐらいしてもよかった。母親に最後に一言ぐらい何か言えればよかった。

 そして、それを為すことがもうできないという単純な事実に今更気づいた。

 

 

 結局、何もできなかったのが『小坂零』の人生の結果だ。

 

 そんな事実から、今まで目を背けていた。

 

 

 だからこそ、『私』は()として今を生きなくてはいけない。

 『小坂零』の形に拘る必要性はないのだ。

 『小坂零』ではない、『私』としての在り方を作り出さないといけない。

 

 そんな思いが、私の中に木霊している。

 

 ()()()()()()()

 

 そのためにどうすればいいのか、何をすればいいのかが全く分からない。

 目を背けていたものに目を向けた、受け入れた、認識した、理解した。

 そこからどうすればいいのかがまるで分らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………………結論はそう難しいことではなかった。

 既に意識は浮上しており、日光を感じられる感覚を得ている。

 つまり、私は『答え』を出していた。

 

 なんでこんな簡単なことに気づかなかったのだろうか?

 

 結論なんて既に分かり切っていたのに。

 

 『小坂零』に綴るのがダメなのなら、『小坂零』との『縁』を切ればよかっただけの話だ。

 

 『私』として生きていくのならば、『前世の小坂零』なんていらない。

 

 『何かが』それを止めようとしているが、そんなことはどうでもいい。

 

 どんなに考えたところで、私は『私』でしかないんだから。

 

 コギト・エルゴ・スムの彼方へ踏み出すことにしよう。

 

 そうしないと、『私』として生きていくことができなくなる。

 

 

「…この世界はどこまでも主観で回っている。

 どれだけ言葉を紡いだところで、どれだけ死者を弔ったところで自分が他人になることはできない。どんなに他の人のことを思ったところで、その人の視点を共有することは不可能だ。

 『相手のことを考えて』ってよく言うけどさ、立場も環境も状態も条件も違う他人のことを、理解することもできないくせに考えて行動することができるって本当に思っているのかい?」

 

「同じ10vの電気を受けたところで、人によって感じるものは違うんだぜ?

 すごく痛かった、結構痛かった、それなりに痛かった、我慢できる程度の痛み、痛いというよりは熱かった、痛くも熱くもなかった、帰って寝たい。

 パッと考えられるところだとこんなものかな?」

 

「『おなかが痛いです』って訴えたところで、本当に痛かったとしても顔が笑顔なら信用されないし、欠片も痛くなかったとしても演技力が高ければ相手に信じ込ませることもできる。

 信じたなら信じた人の中ではそれが真実さ。本人がどう思っていたとしてもね。

 同じ腹痛…まるっきり同じ病状の急性腸閉塞になった患者がいたとして、二人の痛みまでまるっきり同じである証拠はどこにもないだろ?」

 

「痛みなんて電気信号なんだから、同じ電気信号を送れば同じ痛みを味合わせることができるっていう人はさ、人間の感覚が全員まるっきり同じ尺度を持っているっていうことだぜ?

 痛がり、我慢強い、暑がり、寒がり、こういうのは個性だろ?

 人によって違うに決まってるじゃないか。

 それをまるっきり同じ状態だから同じって言いきるのは、人間の個性を否定することと同じだぜ?」

 

「よく正義の味方がさ、『俺とお前は分かり合える』っていうじゃん?

 あれ嫌いなんだよね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってなることを度外視して、分かり合ったんだから俺のこと好きになれよって言ってるみたいで気に食わない。

 分かり合うっていうことは、お互いを理解するってことさ。

 その後にどう思うかは個人の自由のはずなのに、『自称正義の味方』は助けた恩を押し出して懐柔しようとする。

 そんな風に見えているのは、私が捻くれてるからなのかもしれないけどね!」

 

「人間が本当に分かり合いたいなら、その人の人生をまるっきり同じ状態でなぞるのが大前提さ。

 痛覚も味覚も視覚も嗅覚も聴覚も条件も状態も環境も立場も価値観も、呼吸の回数から思考した内容、お風呂に入ってどこから洗うか、何分何秒に出るか、何時に起きようとして5分早く起きちゃったとか、挙句の果てには第六感まで、そういうことも全て踏まえて相手の人生をなぞる。

 そんなこともしないで分かり合ったなんて言うのはただの傲慢だと思うよ」

 

 

「ま、そんなことできる人がいるとは思えないけどね。

 そんなことができる人がいるなら、それはもう『人』を超えた何かさ。

 私の過負荷(マイナス)を用いれば、もしかしたらできるかもしれないけど、先に『私』の精神が持たなくなると思うよ」

 

 

「だからさ、私は『私』がよければそれでいいんだ。

 他の人がどうなろうと、『私』には関係ない」

 

 

「だって、『私』には関係ないんだから!」

 

 

「だから、『小坂零』がどうなろうと、『私』が生きているのなら関係ないんだ!」

 

 

 

 

 

「というわけで、これにて『小坂零』の物語は終わりを迎えます」

 

 

「では、最後にみなさんご唱和ください」

 

 

It's(イッツ) Nothing(ナッシング) All(オール)!!」

 

 

 

 観客が誰もいない狂った舞台の上で、一人の道化(沼男)の出番が終わった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 竹本茂と葛城康平と坂柳有栖の話し合いは、比較的穏便に終わった。

 葛城、坂柳の両名は竹本が来るまでの間に済ませることは済ませて、竹本が来た段階で彼の話を聞く形になった。

 Aクラスのリーダーとしての話を、Aクラスの生徒に聞かれたくないのは仕方ないことだと竹本自身理解していたので、そこには深くかかわろうとしなかった。

 聞いたところで意見を求められても困るし、自分の意見でAクラスをどうこうしようという気は全くなかった。

 それは、良い方向にすることも悪い方向にすることも、どっちだろうがどうでもいいということを本人以外は理解していない。

 

 竹本が聞きたいことは、昨日の辰グループの話し合いで小坂零が何をしたのかということだった。

 

 その言葉を聞いて、一瞬膠着した二人を見逃さずに追い打ちをかけ、畳みかけるようにグループの話し合い後にも彼らだけで話し合いをしたことを聞いた。

 最初は言い澱んでいた二人だったが、食い下がる気配を見せない彼の様子を見て渋々昨日小坂零がやった『演説』について話した。

 それだけではないだろう、という竹本のセリフに再び硬直という反応を返してしまった二人は、仕方なく話し合いの後に3人だけで話し合いをしたことを話した。

 正確には坂柳は何とか話題を変えようと試みたが、葛城が最終決定を含めて話し合いをしたことを言ってしまったためにもうどうしようもなかった。

 また、このセリフによって竹本の評価はこの二人の中で大きく変わることになる。

 この件は誰にも言う気はないと宣言した竹本は、それらを踏まえて今の小坂がどうなってしまったかを考え始める。

 

 だが、それのどれもが小坂零の現状と結びつくことはなくて、一人頭を悩ませることになる。

 話し合いでやらかしてしまった自責の念という可能性はないだろうし。

 そして、話させていた両名に何故それを聞くのか問い詰められて、仕方なく小坂零が今どうなっているのかも説明した。

 

 それを聞いて本気で心配する様子を見せた坂柳と、心配はしているが裏でほっとした感情と何かに不安を感じている瞳をした葛城を観察していた。

 小坂零と話し合ってから、彼は自分の観察眼を養い、伸ばすためによく見ることを意識していた。

 相手の表情、瞳の奥の色、瞳の虹彩の大きさ、沈黙、雰囲気etc…彼は自分で知覚できる範囲の相手の反応を細かく観察することを意識していた。

 これまでの彼の人生経験も後押しし、自分の観察眼に確信めいた何かを持ち始めていた。

 相手の表情の変化から、相手の抱いてる感情を察する。

 相手の沈黙の長さから、相手の思考を辿る。

 竹本茂は、自分が最終的にこの学校内での闘争に生き残るためには、それぐらいできなければいけないと思ったから自分の長所を伸ばすことにした。

 

 先ほど、彼が他のクラスの集まった集団を一人一人眺めていたのも、それが大きな理由だ。

 自分の成長のために、他人の心情を覗き見する。

 自分が生き残るために、他人を踏み台にする。

 自分が勝ち残るために、他の人を利用する。

 それは、どこかの誰かの精神構造に近いものもあるが、方向性が伸ばす(プラス)向きである点が正反対のようにも見えた。

 

 坂柳が様子を見に行こうと提案するが、竹本は小坂がペットボトルをそこらへんに投げ捨てている惨状を思い出して、やんわりと断った。同室の吉田は正真正銘の事なかれ主義なので口出ししていないが、ベッドの脇にペットボトルが散乱している様はお世辞でも綺麗とは言えない。しかも、その大半が半分ぐらい残っている有様だ。飲み散らかすという言葉がそのまま当てはまっている状況だった。

 彼自身、片付けるのが面倒で放置したままにしておいたのが仇になるとは思っていなかった。うわぁ、と言わんばかりに頭を捻る始末だ。

 竹本の断りを聞いてなお、自分だけでも様子を見に行こうとした彼女だったが、本人が弱っている姿を見せびらかすことは友達としてしたくないとの言葉で少し考え直し始めた。

 止めとなったのは、夕食の時間になっても同じ様子だったら教員を呼ぶと宣言したことで、その場は落ち着いた。

 

 その後は話したいことも特になかったので、部屋を後にしようとした竹本だったが、部屋を出る前に坂柳に質問を投げかけた。

 

「綾小路清隆…あいつは()()?」

 

 不意を突くような一言で、彼女の笑みが一瞬だけ凍った。即座に何か返していたが、彼はそれを流してドアの方に振り返る。

 彼女の表情を見て答えを察した彼は、そのまま何も言わずに部屋を出て行った。

 

 ついでのようなものだった、小坂零が気にしているDクラスの人物が気になっていたということもあるだろう。

 だが、一番彼が注視したところは『見ようとすればするほどわからなくなっていく感覚』を齎す人物が、誰からもマークされていないことなんてありえないと判断したからだ。

 

 昨日の話し合いの中で、彼のグループの中の優待者候補は3人までに絞っていた。

 1人は一之瀬、もう一人は軽井沢という女子生徒、そして最後に綾小路だった。

 一之瀬の裏を読み切ることは今の彼には難しいと判断し、方針を持っていく方向を考慮すると確率としては低いものになるが、彼女が優待者ではないと棄却しきる要素を見つけることができなかった。

 軽井沢は最後のいざこざがあったから注目されたものの、彼の見た範囲内だと何かを知られたくないように携帯で顔を隠しているようにも見えたので確率としては、それなりにありえそうだと判断。

 他の生徒たちの大半が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という、彼が嫌いになった『長い物には巻かれろ』といった人間が多く、本心から興味を持っている人を省いた。残った人物も、何かを隠さないといけない使命感に近いものを持っているものも、話の流れで顔色を隠そうともしないものが殆どだったので彼らは違うだろうと判断した。

 

 問題は最後の一人だった。

 振られたときに返すぐらいのことしかしていない彼だったが、何回見ても『底』が知れない。

 いや、『底』というよりは『天井知らず』といった方がいいだろう。

 それぐらい、小坂零と正反対の何かを持っているように見えたと同時に、彼が何を思考しているのかが全く分からなかった。

 表面上の話の流れに感心したり、懐疑的になっている部分は察した。

 だが、表面上の表情は変われど本心とも言うべきものに変化は見えなかった。

 いや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

 そして極めつけに、さっきのBCDクラス連合ともいうべき集まりで彼がいた時だ。上に立つものとしての違和感はあれど、その場の誰とも格を落としていない。

 言うなれば、彼の偽装はクラスメイト以外に露見していなかった。

 それこそ、パッと見た限りだけでは場違いだろうと思うほどに。

 だけど、彼はそこに溶け込んでいる。Dクラスにいる『怪物』が彼じゃなければ、Dクラスは魔窟になってしまう。

 

 廊下を歩きながら携帯でクラスメイト達と連絡を取る彼は、大きなため息をついた。

 Aクラスがいずれ墜ちると言っていたことは、こういうことなのだろうと察してしまったからだ。

 『怪物』とは言いえて妙だったと、感嘆の呟きを漏らすことになった。

 少なくとも、今の坂柳だと勝てるか怪しい。クラス単位の総合力では勝っていたとしても、個人で彼を抜ける人材は今の処存在しないというのが彼の結論だった。

 それは当然、小坂零も含めている。

 方向性の違いもあるが、勝てるビジョンが全く思い浮かばなかった。

 それこそ、いつまでAクラスでいられるかなーと打算するぐらいに、綾小路の規格が自分たちとはまるで違うと理解してしまった。

 

 何か手を打たなければいけないだろうと思うと同時に、今はどうしようもないことを自覚した彼は、昼食まで他のクラスメイト達とこの船を満喫することにした。

 自室に戻ろうかとも思ったが、戻ったところで小坂の様子を見るか寝るぐらいしかやることがなかったためだ。

 それに、今更綾小路という『怪物』を見てもなお、平常でいられるほどメンタルが強くないことも理解していた。

 だから、気分転換がてらこの船を満喫することに決めたのだ。

 

 

 

 それが自分の嫌っていた彼ら(一般生徒)と同じ行動を、自分の意思で選択した事実に気づきながらも。

 

 

 

 

 

 

___________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …『敗北』との縁『切除』

 

 …『圧死』との縁『切除』

 

 …『気配』との縁『切除』

 

 …『餓死』との縁『切除』

 

 …『苦痛』との縁『切除』

 

 …『事故』との縁『切除』

 

 …『嫌悪』との縁『切除』

 

 …『即死』との縁『切除』

 

 …『憎悪』との縁『切除』

 

 …『自壊』との縁『切除』

 

 …『病気』との縁『切除』

 

 …『忘却』との縁『切除』

 

 …『運命』との縁『切除』

 

 …『溺死』との縁『切除』

 

 …『恐怖』との縁『切除』

 

 …『死』との縁『切除』

 

 …『』との縁『切除』

 

 …との縁『切除』

 

 …の縁『切除』

 

 …縁『切除』

 

 …『切除』

 

 『切除』

 

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 切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切切除除切除切除切除切除切除切切除除切除切切除切除切切除切除切除切除切切切除切除切除切切切除切除切除切除切除切除切除切除切切除除切除切除切除切除切除切切除除切除切切除切除切切除切除切除切除切切切除切除切除切切切除切除切除切除切除(セツ)(セツ)(セツ)(セツ)(セツ)(セツ)(セツ)(セツ)(セツ)(セツ)(セツ)()()()()()()()()()()()()()()(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)(きる)切切切斬切伐切切切斬切切伐伐キル切切伐切キル切斬キル切切きる切キル切斬切きる切切Kill切斬切切斬斬切伐切切Kill切切Kill切切切斬切伐切切切斬切切伐伐キル切切伐切キル切斬キル切切きる切キル切斬切きる切切Kill切斬切切斬斬切伐切切Kill切切Kill切切切斬切伐切切切斬切切伐伐キル切切伐切キル切斬キル切切きる切キル切斬切きる切切Kill切斬切切斬斬切伐Kill切切Kill切切切斬切伐切切切斬切切伐伐キル切切伐切キル切斬キル切切きる切キル切斬切きる切切Kill切斬切切斬斬切伐Kill切切Kill切切切斬切伐切切切斬切切伐伐キル切切伐切キル切斬キル切切きる切キル切斬切きる切切Kill切斬切切斬斬切伐切切Kill切切Kill切切斬切伐切切斬伐Kill伐斬Kill斬Kill切切………

 

 

 

 

 

 

 




 色々考えた結果、プロットを大幅に組み替えることになりました。
 それに伴って今まで構想していたものを修正することにしたのも、不定期更新化の原因になっています。
 また、不定期更新化の大きな理由として、無駄に文章を長く書きすぎて文字数ばかり多くなってしまっていることも理由の一つです。
 週一で投稿することを心がけているのですが、そのせいで話があまり進んでいないのに話数と文章量だけが増えていってしまっています。文字数ばかり多くて中味が薄くなってしまっているので、投稿する期間を決めて短い時間で書き上げるよりも、きちんと話の進む見通しを立てた書き方をしたいと思っています。
 正直なところ作者自身、長すぎて読者側だったら読むのを戸惑う文章量になっています。
 4巻が終わっていないのに40万文字もオーバーしている現状には、無計画さが露呈していると自嘲せざるを得ません。

 チラシの裏に移動した理由については置いておいて、今回の話のちょっとした解説に移ります。
 『転生』…一度死んだ者が生き返った場合、果たして同一人物と言えるかどうか?
 これについて悩んだ結果、無理やりな方法で自我を形成させることにしました。パラノイアのクローン、クトゥルフ神話の復活の呪文。
 『転生者』ってドラクエのザオリクとかのイメージじゃなくて、作者的にはパラノイアのクローンの方が近いと思ってしまっています。
 神様に会った会ってない関係なしに、(思考)はそのままで肉体(クローン)に移し替えている…というイメージになっています。
 これを自覚してしまった場合、人の精神で耐えきれるかどうか? という疑問です。
 精神が肉体に引っ張られるというものもよく見ますが、それで揺れ動いている自我は死ぬ前の自分のものと同じものと言えるのでしょうか?
 確認する手段がない以上、それに気づいてしまったらどこまでも疑心暗鬼になってしまうと思うのです。

 賛否両論あると思いますが、そんなめんどくさいことに気づいてしまった主人公が取った方法が『小坂零』との縁を切ることによって、確固たる自我を形成しようという方法です。
 『我考える故に我在り(コギト・エルゴ・スム)』を体現するために、『私』に混ざっている不純物を取り除こうとしています。
 その結果がどうなるかは次回以降で触れる形になります。

 後書きにて長々と失礼しました。
 次回の投稿は来週の土曜日の午前0時を予定しております。

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