「おかえりなさい」久しぶりに聞いた優しい声。お母さんの声だ。「ただいま」と僕は答え僕の部屋へ行く。僕の部屋は久しぶりに来ても何も変わってはいなかった。埃まみれではあったが。
「よーし、掃除するか。」埃が多いのでマスクをつけ、窓をすべて開けて掃除した。机の上、床、棚の本などなど...あらゆるところに埃は積もっていた。その埃が僕のいなかった期間を物語っているようだった。
掃除を終え、布団のシーツ、枕カバーを変え終えた。
「いま何時だ?」時計を見ると午後6時と出ていた。そろそろ腹も減ってくる。そろそろ食事にしよう。コンビニに出かけよう。近頃はコンビニの冷凍食品もバカにできないしな。
「いってらっしゃい」お母さんの声だ。「いってきます」僕は笑って答えた。
コンビニへ向かっている最中、警察が慌ただしく動いているのを見た。主婦たちが脱走犯がどうとか言ってたな...そのことで動いているのだろう。
「おじさんクッセー!!」子供の声だ。僕に言っているわけではないだろう。気にしない。
「おじさん無視すんなよ!」どうやらこのガキは僕に向かって言っているらしい。
「僕はおじさんと呼ばれるほどの年じゃないぞ?」と感情を押し殺し笑顔で言った。
「どうみてもおじさんじゃん、ひげボーボーだし」とガキが言う。
確かに髭はボーボーだった。
「わかった、気を付けるよ。」と優しく言ってやるとガキは去った。そうこうしているうちにコンビニにも着いた。
「い、いらっしゃいませー...」店員も臭いものでも見るような目で言う。なるほど、僕はいま相当汚く見えるらしい。冷凍食品のラーメン二つと、身だしなみを整えるために髭剃りなんかも買って帰った。
コンビニから家へ帰る途中、警察に少しにらまれた。まあ、汚い見た目だからかと思いそそくさと帰った。いま僕は家に帰って早く髭を剃らなければならないのだから!
家付近に着くと警察が家から出てきた。
「どうやらここにはいないらしい、だが帰ってきた形跡はあった!まだ近くにいるはずだ、隈なく探せ!!」との警察の声。
???疑問符ばかりだ。なぜ家から出てきたのか...僕が警察に追われている??いや、まさかそんな...
家に入ると「おかえりなさーい」とお母さんの声がした。「ただいまー」と僕も答える。
一応念のため、カーテンは閉めて電気もスマホのライトにしておいた。
「いまラーメン温めるから待っててー」とお母さんに言う。いまのラーメンは電子レンジでチンするだけで食べれるというのはすごいものだと感心する。
チーンとレンジの音が響く。後はポットの湯でスープを、と思ったが、湯が変な色をしている。お母さん洗ってないのかなあ?なんて思って僕は鍋で水を沸かした。湯が沸いた。スープもできたことだしお母さんも呼ぼう。
「お母さん、ラーメンできたよー!」「はーい」とお母さんもやってきた。
「「いただきます」」
ズズーッと麺をすする。なるほど、これはおいしい。だがお母さんは箸を置いたままだ。
「どうしたの?お母さん、お腹すいてない?」と僕は問う。そうか、あんまりお腹すいてないのか...
僕は二人前を食べた。結構途中からきつかったが、久し振りに温かい物を食べたこと、お母さんと食事をできた喜びでいっぱいだった。
「お皿洗っておくからお風呂先に入っていなよ」とお母さんに言い、皿を洗った。我ながら僕はできた息子だと思う。いい気になって鼻歌なんか歌っていたところ、ピンポーンとチャイムが鳴った。インターホンで訪問客を見てみる。あっ、この人はお母さんの友達でよく家にも来てたっけ。
「いま開けますね~」と僕はドアへ向かう。スリッパも準備しておこう。スリッパはどうやら埃はついていないらしいし。ガチャリとドアを開ける。
「警察だ!令状はある!大人しく署まで来てもらおうか!!殺人罪及び逃亡罪で逮捕する!」
「!?!?なにを言っているんですか!?僕は人を殺してなんかいない!!!」
「やはり、精神異常との話は本当だったようだな...おい!無理やりにでも連れてくぞ!!」
「えっ、ちょっ、お母さん助けてぇぇぇおがぁぁあさああああああああんんん...」
「やめろ、お前のお母さんはお前が殺したんだろ!!!」
あっ......お母さんが消えていく...さっきまでそこにいたお母さんが...
――お母さんは最後まで笑顔だった
ここで僕は思い出した。僕のしたことを。僕は自分の罪を受け入れ大人しく連行されたのだった。
一応終わり
概略 僕は愛する母を殺してしまったが、その事実を受け入れられず、まだ生きていると思い込むことにしていた。警察に殺人罪で逮捕されたものの、僕の中では母はまだ我が家で生きているので脱獄して母に会いに行った。というお話でした。
解説 1話の僕の部屋が埃まみれ、3話でのポットのお湯が変色していることから、母はもうすでにおらず、誰も掃除等はしていないことがわかります。2話のシーンで僕は髭がたくさん生え、体臭もすごいということで、どこか髭も剃れず、まともに風呂にも入れないような場所にいたことを暗示しています。4話は特にないです。(笑)5話では僕の警戒心を解くためにわざと警察は生前の母の友人に協力してもらっています。なお、スリッパがきれいなのは、警察が家に入った際に使ったものだからです。
小説を書くのは初めてだったのでわかりにくい?伏線ばかりになってしまいましたし、ところどころおかしな表現もあったかとおもいますが、最後まで読んでくださった方々ありがとうございました。
P.S. 実は2話の主婦たちは僕が逃走犯だと気づいていました。