転生超人奮闘記   作:あきすて

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サブタイは造語。
地上最強と言えばオーガのはず!


 


3分間の最強超人(インスタント・オーガ)! の巻

 アメリカ合衆国、ハワイ洲。

 

『この先がお前の行くべき場所だ』

 

 ジャスティスマンがそう言って作り出したワームホールに飛び込んだネメシスは、常夏の島(ハワイ)へとやってきていた。

 と言ってもネメシス本人はまだここが常夏の島(ハワイ)であるとは気づいていない。

 

「暑いな……」

 

 照り付ける日差し。

 超人閻魔によって快適温度で管理された超人墓場。そこで長く暮らしたネメシスが久しぶりに感じる暑さ。

 というより、半世紀以上振りに浴びた日の光。

 思えばこの男(ネメシス)は、青春時代に差し掛かって以降、まともな環境で暮らしていない。

 それでも、目的を見据えて邁進出来るのは超人故の事なのか。

 或いはネメシス故の事なのか。

 

――ワァァァァァっ!!

 

 日差しとは違う熱さが籠った大歓声がネメシスの耳に聞こえてくる。

 何か(ジャスティスマン)に導かれる様にネメシスは、その歓声を産み出す人だかりの元へと足を運んだ。

 

 

 

 

 すり鉢状の地形を活かして作られた特設リング。

 常ならばリングの周りを囲む様に人々が集うのであろうが、この日は少しばかり違っていた。

 リングの側に作られた大型モニター。

 その大型モニターの前側、会場の半分だけが人で埋め尽くされている。

 その人の群がりから少し離れた位置に陣取ったネメシスも、大型モニターに向けて視線を送る。

 

『さぁ! 第20回超人オリンピックもいよいよ決勝戦! 前大会の覇者・ロビン・マスクの入場です! この試合に勝利して偉大な父、ロビン・ナイトが成し遂げられなかったV2チャンピオンとなることが出来るのでありましょうか!? そしてっ、フロックに次ぐフロック! 大会前はノーマークながらここまで勝ち抜いてきたキン肉マンの入場です!』

 

『私はやはりロビン・マスクが有利ではないかと思いますです。ハイ。偉大なV2チャンピオン、キン肉真弓を父に持つキン肉マンではありますが、幼少期に豚と間違えられて捨てられたのは痛かったですねぇ。超人レスラーとして英才教育を受けてこなかったキン肉マン。果たしてロビン・マスク相手にどれだけやれるのか見ものなんじゃないでしょうか』

 

 聞こえてくる実況放送。

 そして、両手でピースサインを繰り返し、少しお茶らけた風なキン肉マンの姿が大型モニターに映し出される。

 

「あ、あれは……キン肉マン!」

 

 ようやくだ。

 闘ってみたい……そう願ってから半世紀。

 ようやくこの時代がやってきた。

 そして、実況放送の声に混じる“偉大”の二文字。

 やはり、人間達の前で強さを示せば“偉大”という称号は付いてくる。

 

 感慨と希望を胸に抱いてモニターを見詰めるネメシス。

 

――ワァァァァァっ!!

 

 時折起こる大歓声。

 モニター越しでの観戦にも関わらず、会場は大熱狂。

  

(むぅ……やはりまだまだこの程度か)

 

 その歓声に反する様な想いをネメシスは抱く。

 大型モニターに映し出される二人の試合。

 無量大数軍(ラージナンバーズ)が執り行うスパーリングに比べればスピードにも迫力にも欠ける。

 サイコマンが言っていた通り、自分と比べれば数段劣る実力に違いない。 

 だが、ネメシスの胸を打つ何か。

 周りの人間達を熱狂の坩堝に巻き込む何かが、この二人の試合には確かにある。

 

「そこだっ! キン肉マン!」

 

 いつしか食い入る様に試合を見ていたネメシスは、聞こえるハズもないのに声援を送る。

 

 そして、

 

『ここで、王家の宝刀、キン肉バスターが決まったーっ!』 

 

「良しッ! 見事だ!」

 

 見事なキン肉バスターを見て思わず拳を握りしめガッツポーズを決めたネメシスは、決まり手が変わっている事にも気付かず喜んだ。

 それでいいのか、転生超人。

 

 そんなネメシスの背後に忍び寄る影。

 

「もし、そこのお方……」

 

「む……?」

 

 呼ばれたネメシスが振り替える。

 そこにはトレンチコートにマスク姿の男が佇んでいた。

 

 なんだこいつ? 暑くはないのか?

 

 割とどうでも良いことをネメシスが考えていると、怪しげなの男の身体が揺らめく様にして()()()

 

「随分なご挨拶だな? 何の用だ?」

 

 側面に回り込んでからの怪しげな男のタックル。

 それを素早く反応したネメシスは、僅かに押されただけで受け止める。

 

「それはワシの台詞よ。見知らぬお方よ、()()に何の用かな?」

 

 ネメシスから離れた怪しげな男が放った一言で、二人の間に緊張の糸が走る。

 

「貴様っ!? 何者だ!」

 

 この世界には超人という名の宇宙人が数多くいる。もし、自分を単なる不審者として見咎めたならば、この地、もしくはこの()()という言い回しになるだろう。

 ()()という言い回しに反応したネメシスは、怪しげな男のマスクを剥ぎ取ろと顔面目掛けて()()()()()()()

 

――ブンっ

 

 当たればタダでは済まないネメシスのパンチが空を切る。

 怪しげな男はジャンプ一番飛び上がり、脱皮の様に残されたトレンチコートと何故かマスクも地面に落ちる。

 

 そして、正体を現した褐色の肌を持つ超人。

 

「お、お前はっ、プリンス・カメハメ!」

 

「フッフッフ……ワシの名を知っておるとは光栄じゃな」

 

「もう一度聞こう。何の用だ?」

 

 プリンス・カメハメ。

 漫画・キン肉マンにおけるキン肉スグルの師匠にして、最強との呼び声もある偉大な超人。

 可能ならば会って闘ってみたいとも思っていた一人だが、不老を優先した結果それは叶わぬ願いとなった。

 

 そのカメハメが何故ここにいる?

 しかも、気のせいでないなら明らかな敵意を向けられている。

 いつぞやのロビン・グランデの時は、よくよく聞いてみれば自分にも落ち度は有った。

 だが、今回は何もしていない。

 無駄に高い視力を活かし、遠くから大型モニターに映し出された試合を見ていただけだ。

 

 まさか、観戦料を払えとでも言うのか?

 だとしたらマズイ。

 ネメシスは無一文だ。

 

「ならばワシももう一度聞いてやろう。()()に何の用かな?」

 

「…………ふ。答えぬか。ならば、おあつらえ向きにリングも有ることだ。超人レスラーらしく、リングで決着といこうではないか!」

 

 何が“ならば”なのか分からないが、超人思考的にはこれで当たり前である。

 転生超人であるネメシスだが、この世に産まれて六十数年、すっかり超人思考に染まっていた。 

 別の言い方をするなら、脳◯である。

 

 大型モニターの前にあるリングを指差したネメシスは、高く飛び上がると放物線を描いて、ズンっ! とリングイン。

 

「「「キャーっ!」」」

 

 ()()()が終わり、興奮覚めやまない大型モニター特設会場。

 そこに突然、空から降って沸いた様に現れたネメシスに向け、悲鳴の様な()()()()()が上がった。

 完璧超人・弐式(パーフェクト・セカンド)シルバーマンの子孫であるネメシスの素顔は、完璧な造型美を誇っている。

 リングインに際し目元を隠す前髪が靡き、運良くその素顔を見た観衆が虜となったのである。

 

「仕方あるまい……若き日の力よ……今一度ワシに宿れっ!」

 

 想像以上の血の気の多さ。

 これは放っていくわけにはいくまい。

 覚悟の表情を浮かべたカメハメもまた高く飛び上がり、放物線を描いてリングイン。

 

 因みに、先に手を出したのはカメハメだ。

 

「「「うぉぉぉ!」」」

 

 続いて降ってきたかつての最強超人、()()()()()()()カメハメ登場に目の肥えた観衆から野太い歓声があがる。

 あのイケすかないイケメン超人をぶち殺せ!

 

 会場の男達の心が一つになった瞬間だった。 

  

「あ、アイツっ!? 何をやろうとっ……」

 

 リングサイドに居たこの会場の設営者にして、現ハワイ・ベビー級チャンピオン、ジェシー・メイビアは焦っていた。

 リングの上でカメハメが対峙する相手。

 あれは()()()()()()()()()()()()()()

 いや、まともにやりあうことすら不可能だと思わせる存在。

 

 決勝戦が始まる直前。

 何の前触れもなく全身に走った恐怖感。

 その恐怖感をもたらす元凶が、リングに立つ総髪の男に違いない。

 優れた超人レスラーでもあるメイビアは、人間では感じる事が出来ないネメシスが放つ完璧超人の気配に圧されていたのだ。

 

 そして、この気配こそがカメハメがネメシスを敵視する理由であった。

 完璧超人の出現は正義超人の粛清を表す。

 太古の昔からそうと決まっている。

 超人史にも詳しいカメハメは、いち早くネメシスが完璧超人、それも化け物クラスと気付き、若い超人達への最後の奉公とばかりに立ち向かったのである。

 

 話せばわかる?

 超人にとっての対話とは闘いである。

 

「おい、貴様っ。ゴングを鳴らせ」

 

 リング上のネメシスが居丈高に言い放つ。

 ネメシスに偉そうにしているつもりはない。

 これがこの男の普通であった。

 

「は、ハイっ!!」

 

 そうとは知らないメイビアは、萎縮しきったまま訳も判らずゴングを鳴らした。

 

 

――カーンッ!

 

 

 そして始まる、現時点での地上最強決定戦。

 

 この場に居合わせた幸運にして不幸な者達は後に語る。

 

 超人オリンピック決勝?

 あぁ、あの最強決定戦の前座ね!

 

 生観戦とモニター越しの違いはあれど、確実にイケメンVSカメハメ戦が上だった。

 これが誰もが抱いた感想だ。

 

 ただ、残念な事が一つ。

 

 試合開始3分程でカメハメが膝を付き、そのまま試合が終わってしまったことだろう。

 

 イケメンの方が強い!

 いや、カメハメだっ!

 

 この試合を見た不幸にして幸運な者達は、顔を合わせる度に結論の出ない議論に花を咲かせて楽しむのだった。

 

 

 

◇◇

 

 

 

 ごく短い試合を終えたネメシスは、興奮覚めやまぬ会場から逃げるように車内の人となっていた。

 

「何故ワシを殺さぬ?」

 

 メイビアが運転する後部座席。

 ネメシスと並んで座るカメハメが疑問の声をあげた。

 

「殺す意味が判らん。貴様を殺せばもう戦えないではないか?」

 

 おかしなモノが多い完璧超人の掟の中にあって、ネメシスが最も疑問を抱く掟こそ【敗者には死を】であった。

 力及ばず自分が死ぬのは構わない。

 だが、闘い敗れて生き延びた者を態々殺す必要性はどこにもない。

 勝てなかった相手に勝ってこそ、再び向かってきたリベンジャーに勝ってこそ、自分は成長しているというものだろう。

  

「ならば言い換えてやるかの。何故ワシに勝たなかった?」

 

 隣に座る(ネメシス)なら片膝突いた自分を如何様にも料理できたはずである。

 それをせずにネメシスが、「これまでだな」と矛を収めた事にカメハメは納得がいかなかった。

 老いたとはいえカメハメとて超人レスラーだ。

 もしも、お情けで敗北を免れたならばそれは屈辱以外の何物でもない。

 

 車内には依然としてピリピリとした緊張感が漂っていた。

 

(勘弁してくれ……)

 

 ハンドルを握るメイビアは気が気で無かった。

 そもそも本来なら運転するのは付き人であるカメハメの役割である。

 それが何故こうなっているかと言えば、「貴様が運転しろ」とのネメシスの一言。

 未だ年若いメイビアは完璧超人ネメシスが放つ気配に気後れしたままであった。

 

「そうだな……我等の掟の中には【弱点を突いてはならぬ】というものがあってな」

 

「それはまた変わった(セオリーに反する)掟よのう」

 

 長く生きるカメハメが初めて耳にする掟。

 そんな掟は地上の何処にもなく、やはりこの男は……と疑念を深めていく。

 

「全くだ。だが、掟は掟。思うに貴様の弱点はスタミナの無さだ。ならば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それ故にスタミナが尽きた貴様を攻撃する術はオレにはない。貴様に勝つ為には、弱点をさらけ出す迄の3分の間で仕留めねばならぬ、ということだ」

 

 そう口にしたネメシスは、中々に難しいがな、と小さな声で付け足した。

 カメハメ相手に3分で勝つのは、()()サイコマンを相手に3分で勝てというに等しい。

 もしも、サイコマンという格上との対戦経験がなければ、今日の試合で倒されていたのは自分だったかもしれない。

 そう感じずにはいられないほど、スタミナが切れるまでのカメハメは強かったのである。

 

「フッ……フッフッフっ!」

 

 答えを聞いたカメハメは愉快げに笑った。

 こんな馬鹿な男が危険なハズはない。

 例え完璧超人であったとしても、だ。

 

 そして、運転席でそれを聞いていたメイビアは、単純に「馬鹿じゃないか? 弱点は突いてこそだろ」と思った。

 ただ、怖いのでそれを口にすることは無かった。

 賢明な判断である。

 

 こうしてカメハメとの縁を持ったネメシスは、暫くの間カメハメ(メイビア)の元に身を寄せるのであった。






世界遠征に出たキン肉マンを待ち受ける運命とは!?



カメハメ若返りはオリ設定。
命懸けだったのです。
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