転生超人奮闘記   作:あきすて

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無法の男と秩序の女。 の巻き

 

 

 

 

 

 リングの上でキン肉マングレートとバッファローマンの睨み合いが続いていた。

 一連のやり取りで怒り心頭のバッファローマンであったが、不意を突いたハズのハリケーンミキサーが避けられたことで冷静さを取り戻していたのである。

 猛き猛牛とも呼ばれるバッファローマンだが、猪突猛進なだけでなくキレる頭も併せ持つ。

 又、1000万パワーを誇るだけでなく、かなりのテクニックも備えていた。

 勇猛さと冷静さ。

 パワーとテクニック。

 相反する特性を併せ持つ事がバッファローマンという超人の強さの秘密と言えた。

 

 一方、動きを見せないリング上に変わって慌ただしく動いたのが、実況放送席に座る二人――中野とアナウンサーだ。

 簡易の長テーブルとマイクを引っさげリングサイドのキン肉マンの側へと移動するやいなや、実況を再開させた。

 

「さぁ、ピラミッドリングに続いてここ田園コロシアムでも乱入者が出現! ここからはゲスト解説者にキン肉マンを迎えてお送りします!

 さて、キン肉マンさん。まず気になるのはウォーズマンの状態ですが、いかがでしょうか?」

 

「あと一撃でも攻撃を受けていたら危ない所でしたが、安静にしていれば大丈夫です。わたし達には超回復力が備わってますから、ウォーズマンは間もなく目を覚ましてくれるでしょう」

 

 ウォーズマンを慎重に寝かせたキン肉マン。

 簡易の長テーブルに着席すると真面目モード全開で実況放送に加わった。

 決して雑に扱っているわけではない。

 人間ならば緊急搬送されるようなダメージでも、超人であるウォーズマンには問題がないのである。

 

「なるほどぉ~。と言うことはですね、あのキン肉マングレートを名乗る超人は乱入の機を伺っていた――そう考えてよろしいのでしょうか?」

 

 この質問は事実を言い当てていた。

 ワームホールを使うことで距離の壁を無くしたネメシスは、幾分か前にはこの会場へと到着。

 しかし、闘う姿勢を示す超人の邪魔立てすることは如何なる理由があろうと許されず、ウォーズマンが意識を失うその瞬間まで会場の片隅で見ていたのである。

 その結果、謎の計算式により光の矢となったウォーズマンを目撃したネメシスは、あれは火事場のクソ力の発露ではないか? と考えた。

 直前の攻防ではロングホーンの前にあえなく粉砕されていたスクリュードライバー。

 それがロングホーンを折ったのだから実際にパワーが上がっていたのは間違いない。

 

 ウォーズマンも火事場のクソ力を備えているならば要注目すべき超人の一人である――そう見定めたネメシスは来た甲斐があったと御満悦だ。

 

「おそらくそうでしょう。あの男は自分にも厳しい男ですが、他人にも厳しい男です。ギリギリまでウォーズマンの奮闘を見た上で、命を救うためにやむを得ず乱入という行動に出たのではないかとわたしは考えます」

 

「それはどうでしょうかねぇ?」

 

「おや? 

 中野さん、随分含みがある言い方ですね。先ほどまでは、ただ者ではない! なぁんて誉めてませんでしたか?」

 

「名乗りを上げた事で思い出したのですよ。

 キン肉マングレートと言えば、凡そ30年前に行われた超人オリンピックであっさり棄権した曰く付きの超人でありますからねぇ。

 あれは忘れもしません…………戦争からの復興を掲げ、東京オリンピックに先駆けて行われた超人オリンピック。私たちの家族は家財を質にいれてまで観戦に駆け付けたのです。

 人気があったキン肉真弓が闘う会場には行けず、閑散とした会場での観戦となりましたが、それでも幼い私はワクワクと闘いのゴングを待ったのを今でも覚えてますよ。ですが、いつまで待ってもゴングは鳴らず、代わりに流れたのがキン肉マングレートの棄権を告げるアナウンスでした」

 

「そ、それはまた辛い思い出ですね」

 

「全くですよ。

 このキン肉マングレートはあの時のキン肉マングレートとマスクの形等が違いますから、同一人物かは分かりませんが、ロクな超人でないことだけは確かなんじゃないですか」

 

 幼い中野が見たキン肉マングレートは、キン肉真弓を模倣したと思われるシンプルなデザインであった。

 しかし、現在リングの上でキン肉マングレートを名乗る超人は、黒のボディースーツにタンクトップ姿までは同じだが、タンクトップは布地ではなく鎧であり、キン肉マンを模倣したと思われるマスクはタラコ唇に豚鼻である。

 キン肉マンとの違いをあげるなら、眉の辺りに備えたフェイスガードと額に浮かぶNkマーク。

 このように姿形が違い、活躍した年代までもが違うのだから同一人物と見るのは難しいが、好きにはなれない――これが中野の見解となる。

 

 尚、カメハメが用意したグレートマスクは単にキン肉マンマスクの色違いだったのだが、ネメシスが被る事で不思議パワーが働き変貌を遂げている。

 

「随分と辛口な評価ですが、キン肉マンさん。実際のところはどうなんですか?」 

 

「わたしは30年前の事はよく知りませんが、今のキン肉マングレートの事なら分かります。皆さんも見ていればわかりますよ……その底知れない強さってものがね」

 

 キン肉マングレートを悪し様に言われた事で、若干不機嫌になったキン肉マン。

 目立ちたがりのキン肉マンにしては珍しく、腕を組み勿体ぶった言い回しで解説を打ち切った。

 

「おっと、ここでリングの上のバッファローマンっ、ショルダータックルだぁ」

 

「先ずは力比べでしょうか?

 これなら確実に当たりますからね~」

 

「リングの上で両者が、激突!!

 おーっと!? これはどういう事でありましょうか!? バランスを崩したのはバッファローマンだぁっ!

 そして、追撃のローリングソバットがバッファローマンの側頭部に直撃!」

 

「グオっ……おのれっ」

 

 なんとか踏ん張りダウンを免れたバッファローマンが、キン肉マングレートに向け掌打の連打を繰り出していく。

 パンチではなく掌打なのは、隙あらばその身体を掴んで引き倒し、パワー勝負に持ち込んでやろうとの二段構えの算段だからである

 

 しかし、キン肉マングレートには当たらない。

 華麗な体捌きでかわし、いとも容易く掌打を払い除けていなしていく。

 

「そこだっ!」

 

 掌打をいなされバッファローマンが身体を泳がせると、キン肉マングレートが狙い済ませたかのように飛び上がり、頭部にマーシャルアーツキックを叩き込む。

 

「これは超美技っ、マーシャルアーツキック!!

 しかし、解説の中野さん、これは一体どういう事でしょうか? 私には1000万パワーを誇るバッファローマンが良いようにあしらわれてる様に見えるのですが……」

 

「私に聞かれましても……」

 

「ぱ、パワーだ……。二人の間には超人強度にして5倍以上の開きがある」

 

 目を覚ましたウォーズマンが解説に入る。

 

 朦朧とする意識の中でただ眺めていただけであっても、ウォーズマンのコンピューターは的確に二人の戦力差を分析していたのである。

 

「5倍、と言うことはウォーズマンさん、キン肉マングレートの超人強度は200万近いということでしょうか?」

 

「ち、違う……より超人強度が高いのはバッファローマンじゃないっ。あの、黒いキン肉マンの方だっ」

 

「な、なんだってぇ~!?」

 

 と、驚いてみたキン肉マンだが、あの男なら当然か――と直ぐに納得してみた。

 しかし、他の二人はそうはいかない。

 

「バッファローマンの超人強度が1000万パワーですから、それの5倍となればキン肉マングレートの超人強度は5000万ということになりますが!?」

 

「いやいや、さすがにそんな馬鹿な話はありませんよ。だってそうでしょ? キン肉マンが95万パワーで、ウォーズマンが100万パワー。ロビンマスクやテリーマンも似たような数字なんですから、いくらなんでも……ねぇ、キン肉マングレートさん」

 

 解説の中野がリングの上のキン肉マングレートに同意を求める。

 型破りな解説だが、これを見越した上でリングサイドに陣取っている。

 

「流石はファイティングコンピューターの異名を持つウォーズマンよ。如何にもこの俺の超人強度は6800万。だが、こんな数字にいかほどの意味があろうか」

 

 動きを止めたキン肉マングレート。

 同じくバッファローマンも動かない。

 

 試合はどうした?

 と、言いたくなるが、これも超人レスリングならではの光景であり、言葉を闘わせるのも醍醐味の一つである。

 

「で、デタラメを言うな! この俺のパワーこそが悪魔超人究極の1000万パワーだ! 6800万などありえんっ!」

 

「何を言う? 悪魔超人の中にも4000万パワーを誇る太古の化身超人がいるであろう。1000万を究極とする理屈は分からんでもないが、デタラメ呼ばわりは取り消して貰おうか」

 

 パワーはある方が有利に違いない。

 しかし、活かしきれないなら意味がない。 

 過ぎたパワーは無用の長物であり、適度なパワーこそが技やスピードを活かし実力を発揮する鍵となる。

 その適度な数値こそが1000万パワーであり、悪魔超人が1000万を究極とする理由であろうとネメシスなりに理解をしている。

 

「ナっ!? 貴様っ、どこでっ!?」

 

 バッファローマンが衝撃を覚えたのはネメシスが何気なく放った言葉の方だった。

 

 悪魔超人界とは閉ざされた世界。

 スパイや無関係な者が入り込む余地はなく、裏切り者が生きて出て行く事もない。

 悪魔超人が地上に現れる時は、()()()()の意思の元で手足となって動く時に限られる。

 現世代において地上行きを許されたのはバッファローマンをはじめとした七人の悪魔超人だけであり、その他の悪魔超人が地上で活動した事実はない。

 従って、他の悪魔超人の情報が地上に出回っていることなどありえないのだ。

 

(この男、何者だ?)

 

 これまでの攻防でこのキン肉マングレートを名乗る男の強度が1000万パワーを越えている可能性があると気付いていた。

 そして、にわかに信じがたいが1000万を越えるパワーにも関わらず、そのパワーに振り回されることなく使えている。

 更には、この得体の知れない知識。

 悪魔(サタン)に魂を売って以来、久しく感じていなかった恐怖にも似た感情を思い出したバッファローマンが大粒の汗を浮かべ、一瞬身体が強張った。

 

 その隙をネメシスは見逃さない。

 

 ジャンプ一番、バッファローマンの頭上を飛び越えると背中合わせに着地――否、背中合わせに組み合った。

 

「せっかくだ。ウォーズマンよ、しっかりと見ているが良い!」

 

 思えばウォーズマンという超人は、誰よりも優れた分析能力を持つはずが、死んでる期間が長過ぎて戦闘機会はおろか観戦機会にすら恵まれない。

 

 もし、生きて機会に恵まれたならば、果たしてどれほどの成長を見せるのか?

 

 期待を込めたネメシスが禁断の秘技を披露する。

 

「こ、これは?」

 

「ど、どうしてだ……どうしてあの黒いキン肉マンがあの秘技を使えるんだ」

 

「知っているのか? ウォーズマン!?」

 

「あ、あぁ……。

 オレがロビンマスクに見出だされた超人だと話した事を覚えているか?」

 

「確か、パロスペシャルを使うお前さんを見たロビンのヤツが惚れ込んだんじゃったかのぅ?」

 

「そうだ。だが、その話には続きがある。

 ロビンマスクはパロスペシャルを使えるだけでなく、もっと高難度にして高威力の業を思い描き“型”を完成させていた。しかし、それはロビンをして実戦で使える難度ではなく、パロスペシャルを使うオレならば使う事が出来るかもしれない――そんな期待を込めてこのオレを弟子にしたんだ」

 

「ま、まさか、その技と言うのは!?」

 

「その通りだ、キン肉マン。

 今まさに、リングの上で極められている技こそが、ロビンマスクが思い描き披露することが叶わなかった秘伝中の秘伝――OLAP(オラップ)だ!」

 

 リングの上ではバッファローマンの腕がネジあげられ、苦痛に顔が歪んでいる。

 

 パワー、角度、バランス。

 次々とインプットしていくウォーズマン。

 

(こ、これならオレの100万パワーでも……いや、極まった型にさえ持ち込めれば相手のパワーはなんの意味も為さない――この男はそれをオレに見せているのか!?)

 

 ウォーズマンの分析では今の黒いキン肉マンは殆どパワーを使っていない。

 逃れようと足掻くバッファローマンのパワーを巧みに利用して、もがけばもがくほど深みにハマる、正に蟻地獄のような攻撃を仕掛けている。

 

 このままギブアップをしなければ、そう遠くない内にバッファローマンの腕がへし折れる――ウォーズマンのコンピューターが結末を予測した、その時。

 

 

 

お止めなさい!!

 

 

 

 女の声が会場中に響き渡る。

 

「あっーと!? ここでジャクリーン・マッスルがリング上に乱入だぁ!」

 

 皆の視線がキン肉マングレートに注がれる中、ショック状態から立ち直ったジャクリーン・マッスルが自らの責務を果たそうと、マイク片手にリングの上に躍り出たのである。

 

「こらーっ! ジャクリーンっ!。

 何をしとるんじゃい! お転婆が過ぎるぞっ」

 

 キン肉マンはジャクリーンを苦手としている。

 勝ち気で男勝り。

 更には自分の顔を見る度にため息を吐かれていてはキン肉マンでなくとも苦手になる。

 

 それでも叱責せずにはいられない。

 

「貴様っ……神聖なリングの上にっ!」

 

 当然ながらネメシスも怒りを隠そうともせず、技を極めたままでジャクリーンを睨み付ける。

 

 しかし、並の超人レスラーなら震え上がる怒気を向けられてもジャクリーンは怯まない。

 

「何が神聖なものですか。こんなものはただの暴力だわ。宇宙超人委員会が認可したこの地での闘いはウォーズマン対バッファローマン。あなたの闘いは認めていません! 私が統括する会場において無法は許されないと知りなさい!」

 

 キン肉マングレートに対する私怨がゼロとまでは言わないが、ジャクリーンは彼女なりの矜持を持って試合運営に当たっている。

 というより、普通に考えれば乱入者の介入を認めないのは当然と言えた。

 ジャクリーンに言わせれば、先に行われたピラミッドリングでの裁定がおかしいのである。

 

「細かいことを言うでないわい。

 グレートがバッファローマンを穏便に倒せばこの争いは終わるっ。そうすればっ……もうっ……わたし達も、悪魔超人もっ、誰も死ななくて済むではないか!?」

 

 一方のキン肉マンは命が第一。

 グレートが圧倒的な力を以て悪魔超人達を制圧すれば、本当の意味で誰も死なずに済む。

 命の前では乱入程度は些事に過ぎないとのスタンスであり、規律を重視するジャクリーンとは正に水と油だった。

 

「あなたは何を言っているのですか? このような無法に頼った決着で悪魔超人達が納得するとでも思っているのですか?

 もう一度言います。私たち宇宙超人委員会の認可がない試合は単なる暴力です! 暴力に頼って問題を解決するのが、正義を標榜するあなた方のやることですかっ」

 

「む……」

 

 言われてみれば尤もな話である。

 それに、冷静になって考えてみると、バッファローマンはウォーズマンとの闘いを終えたばかりであり、疲労しているに違いない。

 そのタイミングで襲い掛かり勝利を得たとして、一体いかほどの価値があろうか?

 

 キン肉マングレートとなった事で少々浮かれていたと気付いたネメシスは、バッファローマンの腕を放すとリングに着地。

 

「ぐ、グレートっ!? どうして技を外すんじゃい」

 

「そこの女の言う通りだからだ。

 ジャクリーン・マッスルとか言ったな? 貴様に無法を詫びよう。それと……バッファローマン、貴様にもだ」

 

 そうは言いつつ頭すら下げないネメシスだが、これでもこの男なりの謝罪である。

 それでいいのか転生超人、と言いたくなるが、王族に産まれ、超人墓場においてもエリート集団の筆頭格として長く過ごしたネメシスは、謝罪の仕方を忘れてしまったようである。

 

「わ、分かったのなら良いわ。

 では、この試合、ウォーズマン対バッファローマンの対戦カードは、悪魔超人、バッファローマンの勝利とします!」

 

――カーンッカンっカンカンっ!

 

「これは大どんでん返しであります!

 ここで試合終了を告げるリングが鳴り響きました。さあっジャクリーン・マッスルが勝者となったバッファローマンの手を握り、今高々とっ」

 

「オレに触るなっ」

 

 掴まれた手を振りほどくバッファローマン。

 

 乱入されての連戦であったが、試合として受けたからには暴力であろうがなんであろうが、バッファローマンに文句はなかった。

 あのままでは敗色濃厚――そこを仲裁された事に苛立ちを覚えるのである。

 

 ギリっと歯噛みしたバッファローマンは痛めた腕を伸ばしてキン肉マングレートを指差した。

 

「キン肉マングレートに告ぐっ! 貴様の正体は必ずオレが暴き、血祭りにあげてやる!!

 そして、キン肉マンっ! いつまでも誰も死ななくて済むなんて甘っちょろい考えが通じると思うなっ」

 

 二人のキン肉マン。

 一人には憎悪を。

 もう一人に向けては何とも言いがたい感情を持ったバッファローマンは、そう宣言すると会場をあとにした。

 

 こうして様々な変化をもたらしたキン肉マングレートの初陣は、試合不成立という結果に終わったのであった。

 

 

 

 

 新両国国技館前。

 

 約束の場所で落ち着かない様子のキン肉マンがテリーマンの帰りを待っていた。

 キン肉マングレート乱入事件の最中、余り注目されない中でもテリーマンの試合は進み、対戦相手のザ・マウンテンと共にリングもろとも渓谷の底へと姿を消したのである。

 

 ブロッケンJr.は既に帰還しており、生きて無事ならテリーマンもそろそろ帰って来てもおかしくない頃合いなのに、姿を見せない。

 

「心配せずともテリーマンは無事だ」

 

 見かねたキン肉マングレートが安心させてやろうと言葉をかける。

 建築資材の上に腰を下ろしたネメシスはグレートマスクを脱いでおらず、このままキン肉マングレートとして過ごす腹積もりであった。

 

「そ、そうは言うがのぅ、グレート。こうも遅いと心配になるわい」

 

 夕陽を背にキン肉マングレートに向き直ったキン肉マンが、心配の程を訴えかけた。

 

 その時、近づいてくる一つの影。

 

「ただいま、キン肉マン」

 

 夕陽をバックにミートの胴体を抱えたテリーマンが姿を表した。

 

「おかえりっ、テリーマン!」

 

 喜びを爆発させたキン肉マンがテリーマンに走り寄って抱きついた。

 そこにブロッケンJr.も加わり勝利と健闘を称える小さな輪が出来上がる。

 

「貴様は混ざらぬのか?」

 

 輪に入れず佇むウォーズマンにキン肉マングレートが声をかける。

 

「お、オレは……」

 

「そう遠慮せずともよかろう。ヤツは勝敗よりも生きて帰って来たことこそを喜んでおるのだ。そういう男だ」

 

「あ、あんたは……?」

 

 筋肉の付き具合からして()()()()()()()()()()が、ロビンの秘伝の技を使ってみせた。

 それに、キン肉マンに向ける信頼とキン肉マンから向けられる信頼。

 

 一体この男は何者だろう?

 

 それは、ウォーズマンのコンピューターをもってしても答えがでない。

 

「お、お前は、キン肉マングレートっ!?」

 

 キン肉マングレートの存在に気付いたテリーマンが驚きの声を上げる。

 

「なんじゃなんじゃ?

 お前さん方、知り合いじゃったのか?」

 

 勿論、ネメシスとテリーマンに面識はない。

 

 これは、一族の秘伝として二人のキン肉マンの話をテリーマンが聞いていたからの反応である。

 一人は目指すべき高みとして。

 もう一人は、倒すべき敵として。

 このキン肉マングレートが倒すべき敵なのかは分からないが、両肩のスターエンブレムがいつになく熱を帯びて疼いている。

 

「い、いや……そういう訳でもないんだが……。

 すまない、キン肉マン。オレは先に休ませてもらう」

 

「変なヤツじゃのう?」

 

「なぁに、疲れているんだろう。

 オレ達もホテルに戻って休もうぜ」

 

 事情を知らないブロッケンJr.が締めくくり、それぞれが宿へと帰り身体を休めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 そして、その日の夜。

 

 都内某所のビル屋上に集う悪魔超人達。

 七人の悪魔超人と呼ばれた彼等も激戦の果てに数を減らし、三人だけとなっていた。

 それでも闘志は揺るがない。

 例え全滅の憂き目に逢おうとも、()()()()の意向に従い任務を遂行する。

 それこそが悪魔超人の誉れであり喜びであった。

 

「ケケッ。手酷くやられたようだな、バッファローマン」

 

「あぁ……あのキン肉マングレートという男は侮れん。ヤツにはパワーだけでなく、何か……得体の知れない何かがある」

 

 これでも控え目な評価になる。

 リングを降りたバッファローマンは冷静に彼我の戦闘能力を分析し、今の自分ではキン肉マングレートに敵わないと気付いていた。

 しかし、それを口にした所でなんの意味があろうか?

 

 闘い、敗れ、死ぬことで地上には七人の悪魔超人では太刀打ちできない強者がいるとの調査が完了するのである。

 そう。

 七人の悪魔超人達に課せられた使命とは、地上の調査であり闘いの口火を切る()()()()を起こすことにある。

 

 本命はあとに控える騎士達だ。

 

「お前ともあろう男が随分と弱気じゃねーか?

 良いぜ。次はオレがやってやる。

 このオレがあの豚マスクの下の正体を暴いてやるぜ。ケーッケケケッッ」

 

 バッファローマンの心中を知ってか知らずか、戦利品のロビンのマスクをお手玉代わりに遊んだ男が、次は自分だと名乗りを上げる。

 

 こうして、キン肉マンの願いも虚しく、悪魔超人との激戦は続いていくのであった。

 

 








教官。
4000万説を採用。
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