転生超人奮闘記   作:あきすて

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サダハルの強さはほぼ公式通りです。

二次的強化ではありません。


 


キン肉バスター誕生! の巻

 

 

 マッスルガム宮殿内にある室内鍛錬場。

 そこに特設リングが組み上げられていた。

 

 そのリングサイドでは今か今かと待ち侘びるサダハルと、いつも通りに付き従うハラミの姿があった。

 キン肉サダハル、12歳。

 前世で云うところの中学1年生に相当する年齢だが、176センチ80キロ。マスク姿も相まって中1と見ぬける地球人はいないだろう。

 

「やっぱりあの人達は王子の相手をしてくれないんですね」 

 

 少しトゲ有る言い方をしたハラミが言う“あの人達”とは衛士達の事である。

 サダハルに手解きらしい手解きをせず、遠巻きに見ているだけだった衛士達をハラミは快く思っていなかった。

 そして、今日のスパーリング相手も衛士達の中から選ばれた者ではなく、兄馬鹿を発揮させたタツノリが“サダハルに相応しい相手”と、大枚を積んで呼んだ超人レスラーであった。

 

「仕方がないだろ? 彼等は衛士として雇われているんだ。俺の相手をするのは仕事じゃない。彼等にはキン肉星を守り、マッスルガム宮殿を守るという使命がある。俺の相手をしている暇がないのは当然だ」

 

 一方のサダハルは衛士達に何ら思うところはなかった。

 そもそも自分は肉体一つを武器に闘う超人レスラーで、彼等は時には武器を用いて闘う城の衛士である。 

 闘うべき土俵が違うのだから、共に鍛錬に励むには無理があるとの認識だ。

 

「…………王子って、たまーにですけど良いこと言いますよね。普段からもっと話した方が良いんじゃないですか? きっと評判が上がりますよ」

 

「…っ!? べ、別に周りの評判なんてどうだって良いからな。俺は超人レスラーとして強くなる……それだけだ」

 

「ふーん? 王子がそう言うならそう言う事にしておきますね! じゃあ私は実況席に行きますから、頑張ってください」

 

 サダハル付きのメイドとなって7年。

 19歳となったハラミは、サダハルが意図的に王族として振る舞っていないと気付いていた。

 根は真面目なはずのサダハルが、王族としての振る舞いを求められる時に限って『面倒くさい』と渋り、時には役目そのものをすっぽかしていては、気付かない方が無理な話である。

 そして、その意を汲んでいるハラミは、サダハルを王族として必要以上に持ち上げる事なく、肩の力を抜いて気軽に接していたのであった。

 

 

『キン肉チャンネルを御覧の皆様こんばんは! 

 本日はキン肉サダハル選手による特別公開スパーリングを、解説に隊長さん、特別ゲストにキン肉タツノリ様とアレキサンドリア・メンチ様をお迎えして、実況、ハラミでお送りしたいと思います』

 

 マッスルガム宮殿の中でのみ放送されているキン肉チャンネルは遊び心で出来ている。 

 素人のハラミが実況アナウンサー役を買って出ても止め立てする人は無く、まんまとお偉方に混じって放送席に座っていた。

 

『こんばんは』

『宜しく』

『ヒョッヒョッ』

 

 バーベキュー族の隊長。

 キン肉族のタツノリ。

 シュラスコ族のメンチが揃って頭を下げる。

 

 ここにホルモン族のハラミを加える事で、奇しくも四大氏族が放送席に揃い踏みしたことになる。

 

『それにしても楽しみな1戦に成りそうですね。

 解説の隊長さん、ズバリ見所は?』

 

『サダハル選手はコレが初めての対人戦になりますから、どれだけやれるのか要注目です』

 

『そうなんです! 私が手にした情報によりますと、なんとサダハル選手は2年もの間、一人でシャドートレーニングに励んでいたそうです。一体、周りの大人たちは何をしていたんでしょうか?』

 

『それはですな……立派な体躯をしているサダハル選手ですが、実はまだ12歳。きっと、大事をとって大切に育てられたのでしょうな』

 

『上手いこと言いますね。さすがに解説の隊長さんです。そういうことにしておきましょう。

 さて、皆様が気になる対戦相手なんですが…………えっ? コレって大丈夫なんですか? ゲストのタツノリ様はどう思われますか?』

 

 対戦相手の資料に目を通したハラミが信じられないといった様相で、この相手を手配したタツノリに答えを求めた。

 ハラミが目を疑った資料には、“キン肉星系ヘビー級トーナメント覇者・レオパルゴン”と書かれていたのである。

 サダハルが天賦の才を持っているのは、格闘技を知らないハラミにでも分かる事であったが、初戦でチャンピオンが相手というのはいくらなんでも無茶ではないか。

 

『コレはあくまでもスパーリング。レオパルゴン選手が相手でも問題は無い。サダハル選手には超人レスラーの高みを知る良い機会になるだろう』

 

『ヒョッヒョッヒョッ……タツノリ殿の思惑通りにいきますかな?』

 

『2人とも、ちょっと何言ってるか分かんないですね。

 でも! サダハル選手ならきっとやってくれると信じて、皆で応援しましょう。

 あっ、今、サダハル選手がリングインしました。そして、反対側のコーナーにレオパルゴン選手が姿を現していますが、やはり大きいですね。資料によりますと身長223センチ、体重が427キロです…………って、ホントに大丈夫なんですか?』

 

『問題ない』

 

 リングの中央で向かい合う二人の姿は文字通りの大人と子供。

 そして、それ以上の体格差がある。

 ハラミでなくとも心配になるが、タツノリは腕を組んだままジッとリングの上を見ていた。

 

ーーカーンっ!!

 

『さぁっ、たった今闘いのゴングが鳴り響きました!

 先手を取ったのはサダハル選手! 猛然とレオパルゴン選手に突っ込んでいきます!』

 

『様子を探るよりも、自分が身に付けた基本のパンチが効くのか確かめたいのでしょうな』

 

『それはそうですね。長年続けたシャドートレーニングに効果が無かったら馬鹿みたいです。効果がなければ責任問題です!

 是非にも効果があって欲しいサダハル選手のラッシュ、ラッシュ、ラッシュ!! 巨体を誇るレオパルゴン選手を相手に怯む事なく打ち続けていきます! 

 コレは、効いているのでしょうか? ゲストのメンチ様』

 

『ヒョッヒョッ……見ておれば分かる事。全っく……騒々しい嬢ちゃんじゃわい』

 

 小さな体に大きな頭。

 シュラスコ族のメンチは愉しげにしている。

 

『えーっと……私は喋る為にココに、いえ何でもありません。

 おーっと、ここでサダハル選手のハイキックがレオパルゴン選手の左肩に当たったーっ!』

 

『おそらくは顔面を狙ったのでしょうが、身長差が有りすぎますな。レオパルゴン選手の顔面を捉えたいなら、頭を下げさせる工夫が必要ですぞ。しかし、実戦練習に乏しいサダハル選手にはそれは難しいですな』

 

『実戦練習に乏しいのは一体誰のせいなのか、問い詰めたいところではありますが、この間にもサダハル選手がローキックの嵐を繰り出しています!

 堪らずレオパルゴン選手が片膝を突いた! 

 そして、サダハル選手のローリングソバットだ!』

 

『これは…………見事な空振りですな。やはり実戦練習の少なさ故に距離感が掴めないのでしょう』

 

『だから、それは一体誰のせいなのか!

 あー見えてプライドが高いサダハル選手ですから、恥ずかしさを気にするあまり、引き籠もってしまわないか心配になります』

 

『問題なかろう。プライドの高さ以上に芯の強い男でもある。サダハルならばこの失敗をバネにすると確信を持って言える』

 

『ここでタツノリ様の兄馬鹿節が炸裂! あっ…いえ、すみません私もそう思います。

 あーっと、立ち上がり体勢を立て直したレオパルゴン選手のガードが崩れています! 左腕が下がっています。これはガードを下げてサダハル選手を誘う戦法でしょうか?』

 

『ヒョッヒョッ……やはり効いておるようじゃな』

 

『何がやはりなんでしょうか!? まるで後出しジャンケンですっ。あっ、ごめんなさい。

 

 ゴホン。

 

 ここでレオパルゴン選手が攻勢にでる模様です。無事な方の右腕を水平に構えてラリアットの体勢に入る! しかし、サダハル選手、それをダッキングで交わして背後に回り込んだ!』

 

『これはっ……投げ技に入る様ですな』

 

『果たして投げられるのかっ! サダハル選手の両腕に力が籠もりますっ。そして、浮いたぁ-! レオパルゴン選手の巨体が浮きました。後方に投げる……えっ? こんなのアリですか? 背中の砲身がリングに突き刺さり、レオパルゴン選手ダメージを負ってません!! ズルイです!!』

 

『これは、超人レスリングあるあるですな。相手の体格を考慮せずに技をしかけて不発に終わる。初心者だけでなく冷静さを欠いた時にも見られる現象ですな』

 

『なるほど。しかし、このレオパルゴン選手の砲身はアリなんですか? 私の目には身体の一部と言うより凶器を背負っているようにしか見えません。

 ゲストのタツノリ様の見解を伺ってみたいところです』

 

『問題あるまい。レオパル族は戦車の化身。砲身が有って当然。それに今回はスパーリング故に砲身を用いた必殺技は禁じ手としている』

 

『えーっと…………それってレオパルゴン選手は無用の重りを背負ってるだけになりませんか?』

 

『……』

『……』

 

 ハラミの鋭いツッコミに隊長とタツノリは言葉を失った。

 

『ヒョッヒョッ。面白い事を言う嬢ちゃんじゃわい』

 

『私は普通だと思いますけどね。

 さぁっ、気を取り直してリング上に注目です!

 素早く懐に飛び込んだサダハル選手! 今度は真っ正面からレオパルゴン選手を抱え上げ、リングに叩きつけるボディスラムだあ!』

 

『これはっ……レオパルゴン選手、受け身が上手く取れていません。あれだけの巨体です。自分が投げられるとはあまり想定していないのでしょうな。自重も手伝って効いているのではないでしょうか』

 

『なるほど、隊長さんは解説は上手いんですね。

 もんどり打つレオパルゴン選手の背中にサダハル選手が飛び乗った!

 そしてっ! 砲身に手を掛ける変則キャメルクラッチの体勢に入りました!』

 

『これはまさか……砲身をへし折るつもりでしょうか?』

 

『そうみたいですよ。あの砲身は邪魔ですからね。

 王子って結構コツコツやるのが好きですから、ほら、見て下さい。見事にへし折った砲身をリングの外に投げ捨てましたよ。やりました! これで王子の投げ技が邪魔されませんっ』

 

『ハラミよ。素が出ている。一方に肩入れしすぎるのも良くないぞ』

 

『あ、そうでした。私は実況アナウンサーでした。

 しかし、こんな理不尽な相手を向こうに回し、頑張るサダハル選手を応援したくなるのは当然ではないでしょうか!?

 さぁ、試合の行方はっ……サダハル選手、ボディを狙ってパンチを繰り返しています。

 これは、頭を下げさせようとしている、そう考えて宜しいのでしょうか?』

 

『そのようですな。頭が下がればハイキックが飛んでいくはずですぞ。ここは、レオパルゴン選手の耐えどころですな』

 

『とか言ってる内にレオパルゴン選手の頭が下がる!

 サダハル選手、レオパルゴン選手の頭を抱えて持ち上げましたよ!? 隊長さんの予想は大外れですね!

 これは、ブレーンバスターでしょうか?』

 

「うおおぉぉォっ!!」

 

『雄叫びを上げた王子がレオパルゴン選手を逆さに抱えたまま跳び上がりました! 何ですか!? この技!? 勉強してきたのに全く分かりません!』

 

「キン肉バスターぁ!!」

 

『心なしか光っているように見える王子の口から放たれた“キン肉バスター”、これが技の名前でしょうか!?

 レオパルゴン選手を逆さに抱え、両足を掴んで自由を奪うキン肉バスターの体勢のまま、リングの中央に着地ーっ!』

 

 サダハルにとってキン肉バスターは転生超人と成って以来、是非にもやってみたい技の一つであった。

 それが今、凄まじい音を立ててリングの中央をへこます威力で見事に決まったのであった。

 

 サダハルが掴んでいた両足を離すと、レオパルゴンは背中からリングに落着し、そのままピクリとも動かない。

 

『完全決着です! 

 終わってみれば6分20秒のスピード決着。

 

 王子やりましたね!」

 

 決着を見届けたハラミは喜びのあまり、途中でマイクを放り投げるとサダハルの元へと駆け寄った。

 

「い、いかんっ。ゴングを鳴らせ! 担架の用意もだ!」

 

 慌てたタツノリがスパーリングの終了と担架の手配をするも、室内鍛錬場には重苦しい空気が漂い始めていた。

 

 集う皆の思いは、ただ一つであった。

 

 サダハル王子は、強すぎる。

 

 過ぎた力は時に人の畏怖を生み出す。

 

「ヒョッヒョッヒョッ…………なんとも哀れな王子ですな。のう? タツノリ殿」

 

「何を仰有りたいのか分かりませんな……」

 

 人を食ったかのようなメンチの言葉にタツノリは、眉間に皺を寄せて適当にあしらうと、リングの上で満足そうに汗を拭くサダハルの元へと向かった。

 

「やったよ、兄さん! 出来る自信はあったけど、こんなに上手くいくとは思わなかった」

 

 純粋に喜ぶサダハルは年相応の子供にしか見えなかった。

 そんなサダハルを見たタツノリは、残酷な事実を伝える事が出来なくなった。

 

 元々のタツノリの目論見では、溢れんばかりの才能を持つサダハルであっても、現役のヘビー級チャンピオンには叶わないであろうと見込んでいたのである。

 敢えて強者を宛がう事でスパーリングの安全を確保しつつ、サダハルには超人レスリングの厳しさを知って貰いたいと考えていた。

 しかし、終わってみれば、超人レスリングの厳しさを教えるどころか、強すぎるサダハルの相手になる超人はいないのではないか? との事実が浮き彫りとなったのだ。

 

「そうか……見事なキン肉バスターだったぞ。しかし、アレは王家の秘技とする。今後のスパーリングでは無闇に使用することを禁ずる」

 

 生半可な超人ではスパーリングの相手は務まらないと思いつつ、それでも何とか相手を見つけてみせるとタツノリは硬く決意する。

 

(超人が強くて何が悪いというのだ)

 

「ん……まぁ、そうか。次からは気を付ける」

 

「んむ。今日のところはゆっくり休むが良い」

 

 こうしてサダハルのスパーリングは、良くも悪くも皆に強烈な印象を与えて終わったのであった。

 

 

 

 

 その日の夜。

 タツノリは王族専用リングで汗を流していた。

 サダハルが強すぎるのではない、平和な世が皆に超人としての強さを忘れさせたのだ、と。

 

 サダハルが披露したキン肉バスター。

 

 アレは伝え聞くキン肉族の秘技の一つ。

 サダハルだけが特別な訳ではなく、キン肉族ならば可能な技に違いない、と鍛錬に励んだ。

 

 そして、1週間後。

 

 見事にキン肉バスターを修めたタツノリは、皆を集めてスパーリングを行いキン肉バスターを王家の秘技として新ためて披露したのだった。

 これにより、サダハルの異様さは相対的にマシになり、二人の天才が存在するキン肉王族は、隆盛の時を迎え始めていると誰しもが確信したのである。

 

 

 

 尚、余談になるが、サダハルに敗れたレオパルゴンは、先手こそが必勝であると子孫に伝えていき、それがあの秒殺劇を産み出す一因になったりするのだった。

 

 

 







 進化を続けるサダハルに起こる悲劇とは!?
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