転生超人奮闘記   作:あきすて

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無茶ぶり&ゆで理論。


 



完璧超人始祖(パーフェクト・オリジン)を越えろ! の巻

◆◆◆◆◆

 

 

 凡そ半世紀前、キン肉大神殿地下深く。

 ネメシスがサダハルと名乗っていた頃の遠い昔の記憶。

 

『最後に一つ聞かせてくれ…………ハラミのことなんだが、あいつは今どうしている?』

 

 ただの一度も面会に来ない。

 それこそが答えであり、女々しいと思いつつもサダハルは、自分を慕ってくれていたハラミのその後をタツノリに尋ねた。

 

『ハラミか……………あの者は眠っておる』

 

『眠る?』

 

 合点がいかない答えを聞いたネメシスがおうむ返しに聞き返すと、タツノリが詳しい事情を説明していく。

 結論から言うと、ハラミはメンチが提示した方策に従い、時の神の力を借りて止まった時間の中で眠りについている。

 メンチが告げた『いずれ牢から出たサダハルは超人界の歴史の中で燦然と輝く偉大な超人になる』『その時がくれば目覚める様にしてやる故、眠って待ってはどうじゃ?』との言葉を信じたからだ。

 予知にも近しい能力なのか?

 それとも量子演算の果ての結論なのか?

 何故メンチがその様に考え、どのような条件で時の神と契約したのかは、当人が亡くなった今となってはわからない。

 

 一つだけ確かな事は、親兄弟も友人も()()()()()()ハラミは、既に10年以上も変わらぬ姿で眠っている――厳密に言えば眠ってすらいない――という事だけであった。

 

『ば、馬鹿なっ!? あいつはそんな世迷い言を信じたというのか!? ……っ!? そうだっ! 今すぐ解除してやってくれ。兄さんが大王の今ならっ』

 

『残念だがそれは無理なのだ。メンチ殿が亡くなられた今となっては誰にも解除はできぬ。下手に力を加えるとあの者の時間は永久に止まり続けることになるであろう』

 

『何かっ……何か手はないのか!』

 

『手は……ある。サダハルよ、メンチ殿が予見した“燦然と輝く偉大な超人”とやらにお前が成れば良いのだ。そうなればハラミは目覚める』

 

『俺が、か……。重いな、兄さん……人の命を背負うというのは』

 

 “燦然と輝く偉大な超人”とやらが何のことかは判らなかったが、サダハルにはやらない選択肢はなかった。

 

『そうだな。だが、サダハルよ。お前ならば出来るであろう。そして、あの者が目覚め再び姿を表した時には、誰に憚ることなく抱き締めてやるが良い』

 

 兄タツノリの激励に、無言で頷くサダハル。

 

 こうしてサダハルは、偉大な超人≒最強と仮定して、遮二無二最強を目指したのであった。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

「オレはっ、こんなところで負ける訳にはいかんのだっ!!」

 

 超人閻魔に意見してまで挑んだからには、この試練が果たせない時には死の制裁すら有り得る。

 なんだかんだで完璧超人界にどっぷり浸かっているネメシスは、死力を尽くした果てに闘い敗れ、()()()()()ならそれはそれで有りだろう、という考えを持つようになっていた。

 だが、()()()()は1人ではない。

 自分が敗れ死ぬことがあれば、ハラミの解放条件が果たされる事が無くなるに違いない。

 そうなればその魂(ハラミ)は時の牢獄に捕らわれたまま、未来永劫解放される事がなくなる。

 転生超人であり魂の存在を信じるネメシスには、それは死ぬよりも酷いことに思えてならなかった。

 

 そんな事は絶対にさせない。

 

 身体を発光させたネメシスが、強い決意を持って立ち上がる。 

 

「ニャガっ!? なんですかそれはっ!?」

 

 先ほどのクソ力とよく似た現象だが、明らかに違っている。

 ネメシスの超人強度は6800万。

 しかし、今のネメシスから感じるパワーはそれを優に越えている。

 

「行くぞ! サイコマン!」

 

「し、しつこいですよ! マグネットパワー!」

 

 両腕を伸ばし磁力の光を放つサイコマン。

 マグネットパワーの発見者であり、ネプキンの師でもあるサイコマンはかなり自在にこの力(マグネットパワー)を操る事が出来る。

 だが、それでも元は自分自身の力ではない。

 技の起点として伸ばす両腕。

 その伸ばす行為が今のネメシスにとっては、回避を行うに十分な時間だった。

 

「遅いっ! 円は直線を包むと知れ!」

 

 磁力の光をサイドステップで交わしたネメシスは、そのままサイコマンの周囲をぐるぐると回り始めた。

 

「意味がわかりませんよっ! マグネットパワー!」

 

 言葉の意味がわからないまま、とにかくマグネットパワーを放ってみせるサイコマンであったが、高速で動き回るネメシスを捉える事が出来ない。

 

 まさかのロビン戦法大活躍である。

 

「とりゃあ!」

 

 ステップを踏んで急激に円の軌道を変えたネメシスが、拳を握りしめてサイコマンへと迫る。

 

「掴まえまし、ニャガっ!?」

 

 素早く反応したサイコマンがネメシスの手首を掴むも、腕を内側に捻るスクリューブローに弾かれる。

 顔面を強打されたサイコマンがコーナーポストに向かって吹き飛んだ。

 

「そこだっ!」

 

 この試合で初めてコーナーポストの袋小路にサイコマンを追い詰めた。この機を逃すまいとネメシスが一直線にリングを駆ける。

 

「ニャガニャガニャガ。ここに飛ばされたのも計算の内ですよ! マグネットパワー!」

 

 両腕を伸ばし二本の光を飛ばしたサイコマン。

 一つを迫るネメシスに、もう一つを対角線上にあるリングポストに向けて命中させる。

 

「ニャガっーー! マグネティカボンバー!」

 

 ぶっこ抜いたリングポストとネメシスをマグネットパワーで引き寄せたサイコマンは、右腕を水平に上げラリアットの体勢で待ち構える。

 

「玉砕ボンバー!」

 

 引き寄せられる力に逆らわず、右腕を水平に伸ばしたネメシスが更に一歩踏み込んだ。

 

 リングの中央でぶつかり合う二人。

 

「うぉぉぉおっ!」

 

 肉体のぶつかり合いに打ち勝ち、右腕を振り抜いたのはネメシスであった。

 

(こ、こんな事はあり得ませんっ! ネメシスさんのこの力はなんなのですかっ!?)

 

 リングに大の字で()()()()サイコマンは、天井を見上げながら考える。

 あまりにも不可解。

 始祖(オリジン)であり、()()()()()()()()()()()()()()()()()している今の自分が肉体のぶつかり合いで負けることなど、計算上は有り得ない。

 天才である自分が知らない何か。

 何か、得体の知れない力がネメシスに宿っている。

 

(これは……少しばかり確かめてみる必要がありそうですねぇ)

 

 考えが纏まったサイコマンは、ブリッジから頭頂部を起点に逆立ちに起き上がると、コマの様に身体を高速で回転させる。

 

「イグニシォンドレスーーッ!」

 

 高速で回転する摩擦で炎を纏いネメシスにぶつかるサイコマン。

 易々と肉を切り裂く威力のハズだが、どこか感触がおかしい。

 

「そ、それはシルバーさんのっ!」

 

 起き上がったサイコマンが目にしたのは両腕でガードするネメシスの姿だった。

 一度破った技に自らの技を阻まれる、完璧超人にはあるまじき失態に僅かな動揺を浮かべた。

 

「これは()()()パーフェクトディフェンダーだ! シルバーマンの幻影を追いかけるサイコマンよ! 今こそ貴様に相応しい技でマットに沈めてやろう」

 

 強気に宣言したネメシスだが、余裕なんてものは全くなかった。

 溢れんばかりに吹き出てくるこの力。

 これこそが、真の“火事場のクソ力”であると理解は出来ている。

 だが、このままこの力を使い続けようものなら身体がもたない。多少攻め急ぐことになろうとも、早急に試合を決める必要がある、とネメシスは考えた。

 

 そして、恐らくこの力を完璧に使いこなすのがキン肉スグルの強さの秘密に繋がる。

 地上に拘ったのは正解だった。

 そうも考えるネメシスだが、今は目の前にある試合に勝つことが先決とばかりに動揺するサイコマンを捉え技を仕掛ける。

 

 ブリッジを繰り返したネメシスが、腹筋の力でサイコマンを上方高く運んでいく。

 

(む?)

 

 このブリッジには相手の力を奪う不思議パワーがあるのだが、それにしてもサイコマンの抵抗力が弱すぎる。

 何か企みがあるのか?

 思えば先程の“完肉・奥義(バトルシップ・シンク)”は返し技を持つサイコマンに()()()()()()()

 

(いや、迷うな。最早この技しかない)

 

 どちらにせよ、この技をしくじれば自分もハラミも終わってしまう。

 それならば、余計な事は考えず技を極める事に全身全霊をかけるのみ。

 

 ブリッジを繰り返し、十分な高さまで舞い上げたところでネメシスは翔んだ。

 

「ニャガっ!?」

 

 両腕をチキンウイングに掴まれ、更に首と左足まで極められたサイコマンが驚きの声を上げる。

 

「これで終わりだっ……パーフェクト・マッスル・スパーック!」

 

 空中で体勢を入れ換えたネメシスが、背中合わせにサイコマンを折り畳み、リングに向けて落下する。

 

(決まったっ)

 

 頭、両手、両足をほぼ理想通りにマットに叩きつけたネメシスは、勝利を確信してサイコマンを解き放つ。

 

「ニャガ……、ニャガニャガニャガ。な、何がパーフェクト・マッスル・スパークですか。こんなものはシルバーさんの奥義には遠く及びません。もう一捻りが足りないのですよ。ですから…………おどきなさい、ジャスティスさん」

 

 しかし、ネメシスが技から解放した途端、糸人形(マリオネット)の様な覚束ない足取りながら、サイコマンは立ち上がる。

 そして、リングに現れた乱入者――ジャスティスマンを睨み付けた。

 

拾式(テンス)よ。この試練、既に裁きは下った。貴様は()()()のだ」

 

 ネメシスとサイコマンの間に割って入ったジャスティスマンが試練の終わりを告げる。

 超人閻魔が課したネメシスへの試練とは【始祖を倒せ】である。

 それを()()()()に受け取れば、既に二度程サイコマンが倒れた事で試練達成となるのであった。

 

「ニャガ…ニャガ…ニャガ。何を馬鹿な事を。私はこの通り生きています。まだ勝負は終わっていないのですよっ!」

 

「オレとて勝ったとは思っていない。だが試練は終わりのハズだ。貴様がなんのつもりでオレの技を受けたのかは判らんが、結果的に戦闘不能となっているではないか?」

 

「ニャガ? ニャガニャガニャガ……あなたがシルバーさんの名を出したものですからね。試しに受けてみたのですよ。ですが……いえ、もう良いです。地上でも何でも勝手にすればよろしいのです」

 

 サイコマンの言葉は決して強がりではないと、技を仕掛けたネメシス自身が良く判っていた。

 技を受けたサイコマンは戦闘不能と言えるだけのダメージを負っているが、その気になれば技の入りそのものを潰す事は出来ただろう。

 だが、それはそれ。

 理由はどうあれサイコマンは倒れたどころか、ジャスティスマンの乱入が無ければ確実に敗北していたことに代わりはない。

 掛け手にも負担を強いるマッスル・スパークの反動でダメージを負ったネメシスだったが、立つことがやっとのサイコマンを仕留める程度の余力はある。

 これで試練達成とならないなら、地上に出るには完璧超人界から出奔するしかなくなる。

 

「貴様に言われるまでもなくそうさせてもらう。だが、5年……いや、10年でオレはここに戻る。そして、その暁には貴様は勿論、他の始祖達(オリジン)も完璧に倒してやろう」

 

 あの火事場のクソ力。

 あの力こそが億年を越えて生きる始祖達(オリジン)との期間の差を越える鍵となる。

 僅かな時間でもクソ力をその身に宿したネメシスは、そう確信していた。

 であれば、クソ力の体現者とも言えるキン肉マンを間近で見て学ぶのが一番。

 地上に降り立ち、火事場のクソ力をマスターすれば自ずから最強の二文字が見えてくる。

 そうなればハラミの解放も叶う、まさに一石二鳥の算段だ。

 

「シャババババー! その男、嘘はついてなーい。面白い、面白いぞ。ド下等上がりの半端者が、10年あれば我らを倒せると本気で考えておるわー!」

 

 ここまで黙ってみていた始祖(オリジン)の一人、一つ目姿のガンマンが真眼(サイクロプス)でネメシスを照らす。

 可能かどうかは別にして、たった10年。瞬き程の僅かな時間で始祖(オリジン)を越えられる。本気でそう考える馬鹿者(ネメシス)が愉快でならなかった。

 正統派と言えるファイトスタイルもガンマンの好むところであり、10年後には真っ先に相手してやろうと企むのであった。

 

 そして、ネメシスに興味を持った始祖(オリジン)はガンマンだけではなかった。

 ある始祖(オリジン)は門番として確かめてやると考え。

 ある始祖(オリジン)は速さ比べといこうではないかとカラカラ笑い。

 またある始祖(オリジン)は柔軟に考え、始祖(オリジン)越えを宣言する者が現れた事を喜んだ。

 

「五月蝿いですよ、ガンマンさん。ですが、ネメシスさんも大きく出たものですね。たった10年で何が出来るというのですか?」

 

「サイコマン。貴様は先ほど、地上の強者と比してオレが上と評したな」

 

「そうですとも、それが揺るがぬ事実です」

 

「それは事実かも知れぬ。だが、そうではないのだ! テリー一族、ロビン一族、そして、キン肉王家。代々強者を排してきたが、同じ時代に産まれたことがないのではないか? しかし、今はどうだ? 同じ時代にそれぞれが男子を排しているのではないか?」

 

 サイコマンの言葉と、漫画・キン肉マンの描写を組み合わせた推察を披露するネメシス。

 

「えぇ。あなたが何故それをご存知なのかは判りませんが、その通りです。ですが、それがどうかしましたか?  テリーマン、ロビンマスク、キン肉スグル。どなたも大したことはありませんよ」

 

「今はそうかもしれん。だが、同じ時代にその三人が揃った事に意味がある! 時には闘い、時には敗れ、互いに切磋琢磨し互いを高め合う事が出来るハズなのだ!」

 

「ニャガニャガニャガ。あなたが何を言っているのか判りませんし、判りたくもありません」

 

「貴様っ……ふざけているのか! 貴様ならば判っているばずだ!」

 

 始祖(オリジン)を呼ぶ時には、必ず“私達”と付けるのがサイコマン。それは裏を返すまでもなく、仲間意識の現れだとネメシスは読んでいた。

 そんな男が仲間(ライバル)が与えるミックスアップを理解出来ないハズはない。

 

「グロロロロ…………もうよい。ネメシスよ、地上に行くがよい。ただし…………完璧超人として敗北は許さぬ」

 

 紛糾仕掛けたところで、超人閻魔の裁定が下る。

 

 絶妙と言えるタイミングだ。

 

「ハッ!」

 

 片膝付いて恭しく頭を下げるネメシス。

 サイコマンに対してまだまだ言いたい事があったネメシスだが、ひとまず地上行きを優先させる形となる。

 

 こうして地上行きの権利を勝ち取ったネメシスは、ジャスティスマンが作り出したワームホールを抜けて地上へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして……。

 

 ネメシスが去り、始祖(オリジン)達も自らの持ち場へと戻り静まり返った謁見の間。

 

 そこに残された二つの影。

 

「グロロロロ……あの力、どうみる?」

 

「ニャガニャガニャガ。現状ではなんとも言えませんねぇ。要観察、といった所でしょうか? その為に地上へ向かわせるのでしょう?」

 

「グロロロロ…………」

 

「ニャガニャガニャガ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 




ホントのサブタイは
奇跡の愛情パワー! の巻き

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