みさここが雪花火を見てスカイランタンを打ち上げる話

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白い世界と光る君

「ねぇ美咲、花火って好きかしら?」

 こころがそんな事を言い出したのは、学校からの帰り道でのことだった。

「花火?まぁ、嫌いじゃないけど……なに、急に。時期じゃなくない?」

「雪花火っていうものがあるらしいの! 雪原の中で花火を打ち上げるらしいわ!」

 こころがキラキラした目で言う。

「きっと素晴らしいわ! 美咲、一緒に見に行きましょう!」

 ここまで期待の眼差しで見られると、断る訳にもいかない。それに、雪の中で見る花火というものに興味がないと言ったら嘘になる。

「……予定が合えば」

「決定ね! それじゃあ明日の朝迎えに行くわね!」

「わかった……って明日?!」

「あら、駄目だったかしら?」

「いや、予定は無いけど……また随分急だね……」

「早い分にはいいじゃない! あぁ、明日が楽しみだわ!」

 こうしてあたしは、こころと雪花火を見に行くことになった。……どのくらい寒いのかなー。分かんないし多目に着込んで行こう。

 

 

 

「起きて、美咲! もう到着するわ!」

「んー……」

 隣に座っていたこころに揺り起こされて、目を覚ます。窓の外は一面雪が積もっていた。

「……あー、雪花火見に来たんだっけ」

 寝ぼけた頭で思い出す。こころの家の車に乗ってここまで来たんだった。あたしはすぐ眠ってしまったので分からなかったけど、結構な時間乗っていたらしい。

「着いたわ、美咲! 凄いわ、こんなに雪が積もってるなんて!」

「あ、ちょっと待ってよこころ!」

 雪原へと飛び出していったこころを慌てて追いかける。雪の中を飛び跳ねている金色の髪が、雪の白さと対照的だった。

 

 

 

「こころ、そろそろ始まるみたいだよ」

「ようやくね! とっても楽しみだわ!」

 陽が落ちてしばらくして、開始予定時刻となった。

 すると、辺り一面の雪が、何色ものイルミネーションで照らし出された。

「わぁ……」

「見て見て美咲、あっちもこっちもカラフルになってるわ! まるでビーズみたいね!」

 言葉を失ったあたしの横で、こころが光に照らされた雪を、興味深そうにペタペタ触っていた。

 不意に遠くで大きな音が鳴って、あたしとこころが揃って顔を上げると、空にいくつもの花が咲いた。花火が打ち上げられ始めたのだ。

 それは赤色だったり青色だったり黄色だったりと様々で、冬の夜空を鮮やかに彩っていた。

 しばらくの間、2人とも静かに打ち上げられる花火を見ていた。すると、こころが小さく呟いた。

「とても綺麗ね……」

 夜空を見上げるこころの横顔に、あたしはしばらく見惚れていた。だって、花火の光に照らされて、雪の上に佇むこころが、あまりに美しくて。いつまでも見ていたいな、と思った。

「……うん、綺麗だね、こころ」

 あたしの口から溢れたその言葉は、花火のことなのか、こころのことなのか、自分でもわからなかった。

 ただ確かなのは、その光景もそこに佇むこころも美しいこと。そして、この光景をこころの横で見ることができた喜びだ。

 そしてまた、打ち上げられる花火を2人でただ見つめていた。

 

 

 

 やがて、全ての花火の打ち上げが終わった。

「あら、もうお終い? もっと見ていたかったわ!」

 こころが残念そうに言った。結構な時間が経っていたけど、あっという間に過ぎていた。辺りを見回すと、なにやら次のイベントの準備がされていた。

「ねぇこころ、スカイランタンの打ち上げができるみたいだよ」

「本当?! やりましょう美咲!」

 こころと一緒に受付へ向かう。説明を受けて、スカイランタンを受け取った。2人1組で打ち上げをするらしい。

「じゃああたしがこっちを持つから、こころはそっちを持って」

「これが空にいくつも浮かぶのね? 想像しただけでワクワクするわ!」

 2人でスカイランタンを持って準備する。やがて合図がかかり、点火をして打ち上げた。すぐに夜空は、無数に打ち上げられたスカイランタンの光で明るくなった。

「凄いわ……! まるで星みたい……」

 あたしはしばらく、どんどん高度を上げていく自分達のスカイランタンを目で追いかけていた。それを見ていたら、なんだかこころも、同じように空の向こうへ飛んでいってしまう様な気がして。

「どうかしたの、美咲?」

 気づいたら、こころの小さな手を握っていた。

「……なんか、こころが、遠くへ飛んでいっちゃうような気がしたから」

 あたしがそう言葉を絞り出すと、こころは少しだけびっくりしたような顔をした後、優しく微笑んだ。

「大丈夫よ、美咲。私はあなたを置いて何処かへ行ってしまったりなんてしないわ。だから、安心して?」

 こころはそう言って、両手であたしの手を握った。こころの体温が、じんわりと流れ込んでくるのがわかった。

「……うん」

 そうしてそのまま、2人手を繋いで、空を照らすいくつもの光を見ていた。

 いつまでも、いつまでも見ていた。


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