足柄辰巳は勇者である   作:幻在

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新シリーズ、のわゆ編のパラレル作品を書こうと思います!

二月三日は千景の誕生日という事で千景イベントを全力でやって、誕生日千景を手に入れましたァ!アハハハハハハハハハ!!!!

と、発狂はここまでにしておいて、本編をどうぞ。


プロローグ 始まりの日

――――バーテックス。

突如、天より襲来した、人類を殺す事だけを目的に、全世界を滅ぼそうとする、人類の天敵。

通常の兵器は効かず、人を、ただ殺す事しか考えていない存在。

そんな奴らの手によって、世界中は蹂躙され、人類の生存権は、一部を除いて、全滅した。

そんな無敵な存在に、唯一対抗できる存在。

各地で、特殊な力に目覚めた、少年少女たち。

 

神の力を使う『勇者』。

 

神の声を聞く『巫女』。

 

いずれも、神に見初められた少女たち。

ただ、それらにも例外はつきもの。その少女たちの中に、生き残った地域にたった一人、男の勇者が存在する。

 

これは、四国にてたった一人、男の勇者として戦った、一人の少年の物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

広島県岡山市

 

そこにある、和式の一軒家にて一人の少年が、夜にも関わらず木刀を振るっていた。

山鳩色の髪、それなりに鍛えられた体。男らしい顔立ち。

男子としては、完璧な容姿をしていると言っても良い。

ただ、彼のそんな欠点として、問題視されるのは・・・・

「九百九十七・・・・九百九十八・・・・九百九十九・・・・・ぬあ!?」

突然、頭上に何かが落ちてくる。

思わず手を止め、頭に付いたそれを触ってみると、ドロッとした白い液体。

カーカー、という鳴き声に顔をあげれば、そこには今まさに飛んでいく鴉の姿が・・・・

「ぶわ!?」

さらに、いきなり水をかけられる。

「・・・・火野・・・」

「えへへ、お兄は相変わらず運がありませんね」

そういうのは、彼の妹である『足柄(あしがら)火野(ひの)』。まだ、小学二年生だ。

その手には、水が溢れ出るホースの先端。

木刀を持つ少年、『足柄(あしがら)辰巳(たつみ)』は、少々運が無い。当時、小学五年生。

 

 

 

 

場面変わらず、縁側にて。

辰巳は渡されたタオルで体を拭いていた。

「酷い目にあった・・・・」

「ふふ。そうですねぇ~」

と、柔和に笑う火野。

だが、その直後突然、地面が揺れる。

「きゃ!?」

「火野!」

態勢を崩した火野を支える辰巳。

だが、揺れはすぐに収まる。

「最近多いな」

「そうですね」

辰巳の言葉にうなずく火野。

「おーい、辰巳、火野、大丈夫か?」

「あ、父さん」

「パパ!」

縁側へと出てきた父に飛びつく火野。

「お前はまた振ってたのか」

「まあ、日課だからな」

「本当に、俺の息子は剣術馬鹿になってしまったなぁ・・・」

幼いころから、剣士に憧れ、剣道を嗜んでいる辰巳は、その努力と相まって全国ベスト4に入る程の実力を持つ。

だからこそ、鍛錬は欠かせないのだ。

「父さんは相変わらず骨董品あさりか?」

「ああ!」

辰巳と火野の父は、比類なきアンティーク好きだ。

ネットで見つけた骨董品を見つけては競り落とし、そしてそれを部屋に飾る。

鑑定の眼もなかなかのものであり、少なくとも()()()()のものまでは偽物か本物かを見分けられる。

「今回競り落としたのはかなりの値打ちものだぞ!」

「へえ、どんなものだよ?」

「効いて驚け!バルムンクだ!」

「「ばるむんく?」」

二人揃って首を傾げる。

そんな二人を、父は部屋に案内した。

父の部屋は相変わらず、古い骨董品ばかりだ。

質の悪い事に、それら全ては本物だ。

本当に良い鑑定スキルだ。

そんな部屋の中、父の作業台ともいうべき机の上に、一本の錆びついた剣が横たわっていた。

「お前たち、グラムを知ってるか?」

「ぐらむ?」

「あれだろ?西洋のシグルドが使ってたっていう、魔剣」

「その通り!これはその実物だ」

「「ハァ!?」」

父の突拍子も無い事に、思わず驚く二人。

「見ろ、このフォルムを、この柄に輝く青い宝石を!伝承のものとは幅はかなり狭いが、この柄に埋め込まれてる宝石は本物だ。つまり、この剣は本物のバルムンクという事を証明してるんだ」

「流石にこればかりは偽物なんじゃ・・・・」

「いーや!絶対本物だ!」

まるで子供のように語り出す父親に呆れる辰巳に対して、火野は目を輝かせていた。

 

こんな父親だが、生計はしっかりしている。

母が事故で死んでいる中、美術館で働いているのだが、鑑定士としても活躍しているため、収入はかなりのも。

さらに、競り落とすのも、かなり気が向いた時であり、子供の事を第一に考える、父親の鑑とも言うべき人物だ。

だからこそ、辰巳たちはこの父親を憎めない。

 

「そんな訳で、これは本物のバルムンクだ」

「よーくわかったよ。分かりやすい解説どうもありがとう」

「とても勉強になりました!」

「そうかそうか!やっぱり火野は良い子だなぁ」

「えへへ」

父親に頭を撫でられ、顔を綻ばせる火野。

それに、呆れながらも笑みを零す辰巳。

「さて、俺はまた風にでもあたってきますよ」

「そうか。寝るのは早めにな」

「分かってるよ」

「あ、私も行きますー!」

そんな訳で、二人して庭に出た二人。

星の輝く星空を見上げ、辰巳は、黄昏る。

「・・・・お兄?」

「ん、ああ、悪い。ボーッとしてた」

「・・・ママの事を思い出していたのですか?」

「・・・ああ」

辰巳と火野の母は、事故で死んだ。

即死ではなく、まだ意識はあったが、溢れ出る血を止める事は出来ず、その場で絶命してしまった。

まだ赤ん坊だった火野と父は、家にいて知らないが、母親と一緒にいた辰巳は、苦しそうにうめく母の姿を、その眼に納めていた。

今でも鮮明に思い出せる。

母が最期に残した言葉を。

「・・・俺は、あの日なにも出来なかった。だからこそ、決めたんだ。苦しむ人々を、俺の手で守ってやるって」

それほど乗り気じゃなかった剣道に打ち込もうと思ったのも、その時だ。

「だから、今度は父さんもお前も守る。俺は、ただその為だけに、剣を振るってきたんだからな」

そう、言い終えた時だった。

 

今までにない程の地震が起こった。

 

「うわ!?」

「きゃあ!?」

立っていられない程の地震だった。辰巳は、中腰になって持ち前の足腰の強さでどうにか態勢を保つ。

火野は、小さく悲鳴をあげて尻もちをつく。

揺れは数十秒と続き、やがて収まった。

「ふう・・・・今まで無い程に揺れたな・・・・・」

火野の方を見た辰巳。だが、火野の表情は、酷く青ざめていた。

「火野?」

「・・・・怖い」

一言、そう呟いた。

「怖い・・・・何か・・・怖いものが・・・空から・・・・」

「空?」

辰巳は、空を見る。

そこには、満点の星空が輝いて―――――違う。辰巳は直感的にそう悟った。

星が、不規則に不自然に動いている。

鳥では無い。鳥はあんな風に動かない。

なら、なんだ?そう思う間もなく――――

 

 

 

 

絶望が、空から降ってきた。

 

 

 

 

ありとあらゆる場所で、何かが落ちてきて、大きな音が響いた。

その内の一つが、こちらに落ちてくる。

「火野!?」

それを見た辰巳の行動は速かった。

火野を抱え、すぐさま家から背を向け、飛ぶ。

次の瞬間、轟音と粉塵が巻き起こり、その衝撃波が、辰巳の背を叩く。

それが収まり、振り返れば、そこには、潰れた家があった。

「父さん!?」

「パパ!」

二人は、慌てて潰れた家の中に入る。

そこで、二人は見た。

 

白い異形を。

 

「なんだ、こいつは・・・」

「パパ!」

火野が叫び、そちらに視線を向ける。

そこには、木材の間に、足を挟まれ、腹に鉄柱が刺さった父の姿があった。

それで、辰巳は白い異形が父親に向かって、その巨大な口を開いている事に気付いた。

それを視認し、確認した瞬間、辰巳の中で何かが焼き切れた。

咆哮をあげ、そこらに落ちていた木材を手に取り、飛び上がって、上段からそれを叩き落す。

だが、その木材は呆気なく折れた。

さらに、白い異形はそんな辰巳を、コバエを払うかのように体当たりをかまし、壁に叩きつけた。

「お兄!?」

「げほ・・・父さんの所に迎え!」

打たれ強さに自信のある辰巳は、その衝撃に耐えられた。

それを聞き受けた火野は、すぐさま父親の元へ走り出す。

「パパ!パパ!」

「ぐぅ・・・火野か・・・」

「はい!そうです!しっかりしてください!パパ!」

背後では、白い異形が迫ってきている。

そんな白い異形を、辰巳が無理にでも食い止めようとしている。

そんな辰巳を、白い異形は鬱陶しそうに体当たりをかましていた。

父は、自分の体の有様を見る。

(ああ・・・これはだめだな・・・)

そう、悟ってしまう。

父は、何かを決したかのように、ある場所に指を指す。

「・・・火野、よく聞きなさい。あそこにある剣を、辰巳に渡すんだ」

「え・・・」

その指の先には、錆びついた西洋長剣、バルムンクがあった。

「あれを・・・でも、どうして・・・」

「良いから、速く!」

「わ、分かりました!」

火野は、それに向かって走る。

それを手に取り、持ち上げようとする。だが、あまりにも重い。

「うう・・・!」

とても、火野の力では持ち上げられない。

だが、そこで火野は思いいたる。

 

別に持って行かなくてもいいのでは?

 

「お兄!こちらに来て下さい!」

「!?」

「速く!」

「わ、分かった!」

火野にけしかけられ、走り出す辰巳。

「この剣を!」

「それは・・・ッ!」

火野の意図を察した辰巳は、バルムンクに向かって手を伸ばす。

その後ろからは、白い異形がそんな事させんとばかりに大きな口を開けて迫ってくる。

辰巳は、剣に向かって手を伸ばす。

その背後から、白い異形が噛みついてくる。

そして――――

 

 

 

 

それは、北欧の主神によって与えられた宝剣。

神々によって、息子を殺された屋敷の主の長男を討ち取った剣。

神々に逆らいし、竜の血を浴びた剣。

 

それは、神を憎む竜の怒り(グラム)を纏う、魔剣。

 

 

その名は―――――滅竜剣『バルムンク』。

 

 

 

 

 

白い異形が、両断される。

白い異形が倒れた、その場所には、鞘から抜き放った剣を、片手で天高く掲げる少年の姿。

抜き様に、白い異形を切り捨てたのだ。

錆びは、いつの間にか全て消え、刃は、白銀に輝き、光を反射していた。

「お兄・・・・」

そんな兄の姿を、火野は見上げる。

「父さん!」

辰巳は、バルムンクを鞘に納めると、すぐさま父親に向かって走り出す。

それを、火野も思い出したかのように立ち上がり走り出す。

「父さん!」

「パパ!」

「はは・・・凄かったよ辰巳。今まで一番きれいな斬り方だったじゃないか」

「そんなこと言うなよ!待ってろ!すぐに助ける!」

「いや・・・この鉄棒が肝臓に刺さっててな・・・たぶん、死んでる」

「それでも生きられるだろ!」

「いや・・・今の状況から考えて、病院も機能していないと思う」

澄ませば、聞こえてくるいくつもの悲鳴。

きっと、他の場所にもあの白い異形が現れたのだろう。

「辰巳・・・火野・・・・よく聞け」

「嫌だ!アンタ根性の別れとか言って死ぬつもりだろ!そんな言葉聞きたくない!」

「そうです!皆で一緒に生きるんです!パパはいないなんて嫌です!」

二人は、どうにかして足に挟まっている木材をどかす。

だが、腹に刺さっている鉄棒は、背後の木材から突き出ているものだった。

辰巳が、それをバルムンクで斬ろうとするが、

「いやぁあ!誰か助けてぇえええ!!」

「!?」

どこから聞こえた悲鳴に、思わず手が止まる。

そして、躊躇。

どちらを助ける?

父か?さっきの人か?

父さんはまだ助かる。だけどあの人が殺される。ならその人を助けるか?でもその間に父さんが死ぬかもしれない。なら見捨てるか?どうする、どうするどうする?

「迷うな」

「「!?」」

「俺はどうせ助からない。なら、助けられる命を助けろ。目の前にある、絶対に助けられる命を助けるんだ」

父は、二人の頭に手を置く。

「生きろ、辰巳、火野」

そして、口から血を吐き出す。

「父さん!」

「パパァ!」

「げほ・・・・行け、行くんだ・・・・そして、多くの人たちを助けろ・・・・お前たちなら、出来る。俺は、そう、信じている・・・・」

そして、手から、力が抜けた。

その眼から、生きていた光が、消えた。

「「・・・・・」」

二人は、絶句する。

「いやぁあああ!」

そのすぐあと、背後から、一人の女性が、子供一人抱えて、その場に入って来た。

その背後から、白い異形がやってきていた。

その脅威は、すぐその女性を、殺――――せなかった。

白い異形が、両断される。

「・・・・え?」

女性は、腰が抜けたのか、その場にへたり込む。

その白い異形の屍の上に、少年は立っていた。

頬から、涙を流して。

「・・・・」

そして、少年は、女性を見た。

少年の後ろから、いくつもの白い異形たちがやってきていた。

少年は、へたり込む女性に、一言。

 

「―――生きたいなら、ついてこい」

 

少年は、手に持つ剣を、両手で持ち、白い異形に向かって走り出す。

 

 

 

 

 

 

その後、辰巳と火野は、生き残っている人たちを引き連れ、火野の先導のもと、瀬戸大橋を進み、四国へと逃れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、三年。

 

 

 

 

 

 

 

 

丸亀城の外周を、一人、ジャージを着込み、フードを被った状態で走る、一人の少年の姿があった。

その背中には、武骨な西洋長剣。

石垣の名城として知られるこの丸亀城の外周は、かなり広く、走り込みには最適だ。

齢にして十四歳。

剣道を初めて十年。本格的に鍛錬を初めて十年。

 

始まりの日から、三年。

 

この日まで、奴らの事を、忘れる事はなかった。

一番下の広い石垣の上にて、少年は止まる。

そこから、瀬戸大橋の方向を見る。

「・・・・」

何を思ったのか、フードを脱ぎ、背中の剣を右手で抜き払う。

正眼の構えを取り、しばし心を落ち着かせる。

そして、少年、足柄辰巳は、剣を振るい始める。

様々な型をふるい、反復反芻する。

「精が出るな、足柄」

「ん?」

ふと、声をかける者が一人。やってくるものが二人。

「若葉とひなたか」

腰に、刀を携えた黄朽葉色の髪をしたポニーテールの少女『乃木(のぎ)若葉(わかば)』と低身長であるが、黒髪と大人びた雰囲気を醸し出す少女『上里(うえさと)ひなた』だ。

「おはよう」

とりあえず挨拶しておく。

「ああ、おはよう」

「おはようございます」

二人も、返事を返す。

ひなたが、顔を傾け、辰巳に問う。

「無理はしてませんよね?」

「ああ」

柔かい笑みに、辰巳も笑みを返す。

辰巳は、剣を背中の鞘に叩き込む。

「・・・・もう三年だな」

辰巳は、大橋の方を見る。

「ああ、そうだな」

若葉とひなたも、辰巳の隣に立つ。

「・・・・奴らは、私の友達を殺した。罪のない多くの人々の命を奪った」

若葉が、そう重々し気に、言う。

「必ずバーテックスに報いを受けさせる。そして、奪われた世界を取り戻す」

「ええ。私も若葉ちゃんについていきます」

「夫婦かお前ら。まあ平常運転だからいいけど・・・」

突っ込む気もないのだが、そう言ってしまう辰巳。

 

 

西暦二〇一八年――――足柄辰巳は、勇者の御役目を担っている。

 

 

 




次回『勇者たちの日常』

平和はいつまでも続かない。
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