足柄辰巳は勇者である 作:幻在
長野県諏訪湖周辺。
守屋山のふもとの平地。
そこで、ただ黙々と畑を耕す、いくにんもの、人影が見えた。
その中で、活発に鍬を振るう少女が一人。
「よっこいせ・・・っと!」
ざくっ!と土に鍬が突き刺さる。
そこで、額の汗を拭う少女。
そこへ。
「うたのーん!」
鍬を持つ少女に向かって、全速力で走ってくる少女がいた。
「ん?みーちゃん?どうしたの?そんなに慌てて」
「ハア・・・ハア・・・ハア・・・う、うたのん!」
くわっ!と息をあげながら、鍬を持つ少女に向かって何かを言おうとするが、息が上がっているためになかなか口に出せない。
「ストップストップ。まずは息を整えて。すってー、はいてー」
すーはーと深呼吸をする、少女『
そして、水都は目の前の少女、『
「うたのん、四国から、来るって・・・」
「・・・・!」
水都の言葉を聞いた歌野の顔色が変わる。
「本当?みーちゃん」
「うん。さっき、土地神様から、四国の――が、この間の大規模侵攻を凌いだから、こっちに、来るって・・・!」
水都は、必死に、そう言う。しかし、その声には、嗚咽が混じりに、どうにも、自分が最も言いたい事が、どうしても先に出てしまう。
「うたのん、やっと、やっとだよ・・・哮さんが、繋いでくれた、想いが・・・!」
水都の両目から、涙が溢れ出る。
「ええ、やっと、哮兄の、願いが、叶う・・・・!」
歌野の目からも、涙が流れる。
諏訪を囲む結界は、すでに存在しない。
だが、バーテックスは、その一切が入り込んでいなかった。
その理由は、諏訪を囲む、
まるで、壁のように燃え盛るその炎は、神を嘲笑う魔王のように、近付くバーテックスを全て焼き払っていた。
「それじゃあ、行くか」
ひなたを抱き、辰巳がそう言う。
「うわあ・・・」
「お姫様抱っこですね」
「というか見ているこっちが恥ずかしいわ!」
他の一同が、辰巳のその堂々とした姿に、思わず顔を赤面させる。
この間の大規模侵攻を凌いで数日。
火野の神託によって、四国外の生存者はいないと思われていた。
しかし、諏訪がまだ生きているという可能性が他の巫女からの神託で出てきており、前回の大規模侵攻によって大半の戦力を失ったバーテックスの侵攻は、しばらく沈静化するとの事で、勇者が四国外を離れる事が可能、諏訪生存の可能性の確認をする為の時間が出来たのだ。
結界外の瀬戸内海の離島にて行われた実験によって判明した事は、次の通り。
まず、第一に結界外でも勇者の力を行使できるという事。
第二に、結界外の空気は侵攻以前よりも清浄であるという事。
第三に、神の力を織り込んだ通信が可能だという事。
それらの事を踏まえ、結界外での調査は可能と判断。
しかし、やはり火野からの神託は残酷なものがあった。
この間の侵攻で現れた、バーテックス人間の存在。
それの出現によって、その存在は、空想のものから実在のものとなった。
結界外の事について、一度も神託を外したことのない火野の言葉であっても、その存在を見た事も無い者たちにとっては、流石に信じられない事だったが、勇者たちの証言で信じざるを得なかった。
火野の神託では、諏訪以外に生存者はいないとの事。
流石に、その事実には受け入れがたい事が大きい。
四国と諏訪以外に、生存の可能性はない。
その理由は、バーテックス人間の出現と大きく起因しているらしい。
バーテックス人間が現れたのは、諏訪からの連絡が途絶える数日前。
辰巳よりもたらされた『核』の存在から、おそらくバーテックスから核を与えられた人間が、それに成る事が可能らしい。
当初は、数十という数が確認されていたらしい。
その者たちのお陰で、全国に生き残っていた人類のほとんどが全滅。
生存の可能性があった沖縄や北海道も、すでに壊滅しているとの事だ。
だが、どういう訳か諏訪だけは無事だという。
その理由までは不明だが、とにかく、諏訪だけは生きている。
だから、諏訪の無事を確認する為に、勇者たちが遠征に出掛ける事になったのだ。
ひなたもいるのは、神託をいつでも受け取れる巫女が必要であるため、勇者たちと最も関わりの深いひなたが抜擢されたのだ。
そして、現在。
「ひなた、大丈夫か?」
「はい、辰巳さんが落とす訳が無いって分かっていますから」
「そうか」
四国を旅立ち、諏訪を目指す勇者たち。
その道中、もしかしたら、生存者がいる可能性を考えて、都市に一つ着くたびに、探索をする事をする事になった。
そして、瀬戸大橋を越え、最初についた倉敷市臨海部の工業地帯は――――見るも無残な状態となっていた。
「酷いな・・・」
建物を徹底的に壊し、潰し、人間の痕跡を消そうとしているかのようだった。
その先の倉敷市も、徹底的に壊されていた。
かつて、昔の風景を残す事でも有名だったこの街の姿は、いまやその原型を留めていない。
そして、次の神戸も、ビルや建物が徹底的に破壊されていた。
「ここは二手に別れて探索しよう」
若葉の提案の元、辰巳、ひなた、若葉、千景と友奈、球子、杏という形で別れる事になった。
「・・・・」
辰巳は、険しい顔で荒廃した街を歩く。
その後ろを、同じような表情で若葉と千景、そして、心配するような表情のひなたがついてくる。
「もう、本当にだれもいないのでしょうか・・・」
ぽつりとひなたが呟く。
「ここも、全滅したのよ・・・」
千景が、怒りを滲ませた声で、そう呟く。
あまりの大破壊に、人の痕跡が見つからない。
若葉は、何もいえない。
火野の神託がある以上、誰かが生き残っている可能性は、ゼロに等しいから。
「・・・・ッ」
ふと辰巳は、前方のある一点を睨み付けた。
そこで蠢く、複数の白い異形。
「バーテックス・・・!」
辰巳が、低く呟いた、その時。
その脇を一瞬にして駆け抜けていく者がいた。
「千景・・!?」
千景だ。
「お前・・・たちが・・・ッ!!」
怒りにその顔を歪め、数体しかいないバーテックスを切り刻んでいく。
やがて、バーテックスが動かなくなった時、振り上げられた千景の腕を辰巳が掴んだ。
「もう良い。次に行くぞ」
「・・・・・そうね」
短く、賛同する千景。
結局、生存者を見つけるには至らなかった。
「あー、美味しかった!」
「何故うどんしか持ってこなかった・・・」
六甲山近くのキャンプ地にて、勇者一同は休息をとっていた。
球子のアウトドアの知識によって、水源の確保、薪の確保などに成功した勇者一同は、問題無く、野宿にいそしんでいた。
ただ、食料担当の友奈が持ってきたのは全てうどんで、それに辰巳はショックを受けていた。
「えっと・・・なんだかごめんね?」
「いや、いいんだ・・・・どうせ俺なんて・・・」
どんどん沈んでいく辰巳。
そんな辰巳を、よしよしとなぐさめるひなた。
結局、生存者は見つからなかった。
おそらく、火野の神託は、きっと本当なのだろう。
それに、とても申し訳無さそうな火野の表情が思い出される。
「辰巳さん」
ふと、沈んでいた辰巳に、ひなたが安心させるように囁く。
「まだ一日目です。きっと、他で生きている人もいますよ」
「・・・・そうだな」
ひなたの言葉に、そう、答えるのだった。
「流石に冷たいね」
「夏だったらもっと楽しめたのにな、こうやって水の掛け合いとかしてな!」
「きゃ!つめた!やったな!」
バシャバシャと、背後から女子たちの仲睦まじくはしゃぐ声が聞こえる。
「冷たい水に浸かる時は、動かずにいるべきだ」
「体温が奪われますからね」
「あんなに動き回るなんて、銃撃戦の中に飛び込んでいくようなもの――――」
「うりゃあぁああ!」
「ひあぁあああ!?」
さらに一際大きな水の音。
「どうせ動いててもじっとしてても寒いのは同じなんだ」
「だったら皆で楽しもうよー!」
球子と友奈の楽し気な声が聞こえる。
「ほう―――だったら私たちも容赦しないぞ」
ざぱり、と、どうやら若葉も臨戦態勢に入ったようだ。
皆が楽しいのは良い事だ。
そう、良い事なのだが―――
(これはいくらなんでも生殺し過ぎるだろ・・・・!)
岩一枚挟んで一人見張りにいそしむ辰巳。
そう、今、他の女子一同は全員、岩の向こうで一糸纏わぬ姿で水浴びを楽しんでいるのだ。
それは、唯一の男である辰巳にとっては生殺しもいいところ。
「なんでこんな目ばっかり会うんだ俺は・・・」
本当にろくな事が無い。
それはともかく。
辰巳は日記を書く。
勇者になり、もし、自分たちの代でバーテックスが倒せなかった時の為に、次の代の者達の為に記録を残しているのだ。
「生存者見つからず。全滅の可能性有り・・・と・・・・はあ」
思わずため息が出る。
街の惨状、生存者を見つける事叶わず。
もともと火野の神託から、そのような事は分かっていたが、いざ確認してみると、とてもじゃないが堪える。
さらに、まだ遭遇していないが、バーテックス人間の存在もある。
気を緩めていられない。
と、そう思った時。
「どわぁ!?」
突如として頭上から水が降りかかる。
「・・・・」
「それそれ、まだ行くぞ!」
「うわ!?この、やったな!」
「きゃ!?もう!」
「喰らえぐんちゃん!」
「きゃ!?た、高嶋さん何を・・・」
「せぇい!」
「きゃああ!?今のは乃木さん!?ならばもう容赦はしないわ!」
水の掛け合いが激化したのか、辰巳の方へ雨のようにバシャバシャとかかっていく。
水は冷たい。だが、それでも辰巳の胸の中で疼くこの激情はどうしようもないほどに燃え滾っていた。
そして――――
「お前らァ!静かに水浴び出来ねえのかァ!!!」
辰巳は、
そこで、彼女たちのはしゃぎ声が消えた。
「お前らが飛ばした水がこっちまで掛かってくるんだよ!もう少し静かに遊べないのか――――」
そこではたと気付く。
今、彼女たちは水浴びをしている。
その為の水着を、彼女たちは持ってきていない。
よって彼女たちはいま、裸なのであって―――
「・・・・あ」
気付いた時にはもう遅い。
若葉の居合によって鍛え抜かれた体型的に美しい足。
球子の幼いながらも元気っ子ならではの体つき。
杏の病弱故の綺麗な白い肌。
友奈のしっかりと土台の作られ、鍛えられた腕。
千景の傷がありながらの女性らしさのある腰。
そして、ひなたのふくよかな裸体。
三者三様、十人十色。
それぞれが持つ裸体の魅力に辰巳は――――鋼の精神で耐えきった。が。
「ご、ごめ――――」
「この変態ッ!」
「石ッ!?」
時すでに遅く、石を投げつけてくる球子。
だが、辰巳は持ち前の反射神経でその石を回避する。
「避けるなッ!」
「無理な話だ!」
互いに怒鳴り合う球子と辰巳。
だが、どうでも良い所で運の無い辰巳だ。
石が辰巳の背後のなんの偶然か木で跳弾して辰巳の後頭部に直撃した。
「ぎゃんッ!?」
それで意識が吹き飛ぶ辰巳。
が、しかし、完全に吹き飛んだわけではないようで、持ち前の足腰でよろよろとする体を支え、やがて、水の中に入る。
「ん?」
そして、ついに倒れ込む――――千景に向かって。
「きゃあああああ!?」
「ああ!?ぐんちゃーん!」
「おいおい・・・」
もつれ合うように倒れ込む二人。
「いっつつ・・・ん?」
そこで意識が覚醒したのか、起き上がる辰巳。
頭を抑えつつ、閉じていた目を開ける。
すると、そこにはこちらを赤面した顔で睨み付けてくる千景の姿があった。
「・・・・・なんの状況だこれ?」
「それは、私が聞きたいわよッ!」
「ぐは!?」
強烈な平手打ちを顔面に喰らい、吹き飛ばされる辰巳。
その先には―――ー球子。
「え?なああ!?」
球子の
「たたた・・・・」
そして、辰巳は起き上がり、今度は目の前に球子がいる事を確認する。
その顔も、真っ赤に染まっていた。
「・・・・なんでさ」
「さっさとどけ!」
「そげぶッ!?」
今度はグーパンで吹き飛ばされる辰巳。
そしてまたもやその先には一人――――友奈だ。
「へ、きゃああああ!?」
「今度は高嶋さんが・・・・!」
またしても直撃。
「ぼがが!?」
しかし今度は辰巳が下になったようで、水が一気に口の中に入る。
慌てて顔を水面から出す。
「ぷはッ!」
そして、胸元に重く柔らかい感触。
そちらに視線を落とせば、友奈が真っ赤な表情でこちらを見ていた。
「・・・・・おい、お前は」
「ごめんなさいぃぃぃぃいッ!」
「今度は巴投げぇぇぇぇええ!?」
思いっきり体を反らし、辰巳の体を起こすと、その勢いのままに後方へぶん投げる友奈。
その先には―――杏。
「ひあああ!?」
ザッパァアアンッ!と水飛沫を上げ、水の中に飛び込む。
そして顔をあげれば、そこには他の者と同じように顔を真っ赤にした表情の杏がいた。
「あ・・・あ・・・あ・・・」
「・・・・・・・あー・・・!?」
何かを言おうとしたら突然両肩を掴まれる。
「あんずに手を出そうとは良い度胸だな」
「高嶋さんに手を出そうとするなんて良い度胸ね」
「・・・・勘弁してください」
ドスの効いた声で旋刃盤と大葉刈を向けてくる球子と千景に、もはや泣き始める辰巳。
「い、い、い・・・いやぁぁあああ!!!」
「いやお前まで追い打ちなんてないだろぉぉぉぉおおお!!?」
しかしお約束かな、杏まで辰巳をどついて吹っ飛ばす。
その拍子にどうやら後ろで生大刀を持ってきていた若葉と正面衝突する事になる。
「な!?うわぁああ!?」
「今度は若葉かぁあああ!!!?」
水飛沫があがり、二人して倒れ込む。
「くっそ・・・・なんで俺ばっかり・・・」
「おい・・・」
「ん?」
「一回死んでみるか?」
目の前には、若葉の赤面した顔。
そして、辰巳の手は、若葉の鍛えられた腹筋のある腹をむんずと掴んでいた。
胸、ではなく腹だ。
「・・・・・・」
「じゃあ死ね」
「まだ返答して―――うごあ!?」
流石、というべきか、若葉の強力無慈悲な一刀が辰巳の意識を刈り取った。
(不幸だ・・・・)
辰巳は、吹っ飛ぶ中で、そう思うしかなかった。
「こいつどうしようか?」
「とりあえずそこらの木にでも縛り付けておきましょう」
気絶した辰巳を木に逆さに縛り付けている球子と千景。
「はあああ、びっくりしたぁ・・・」
「これがラッキースケベをされる側の気持ちなんですね・・・・」
「アンちゃん?」
未だに鼓動が鳴りやまない友奈と杏。
「全く、日本男児にあるまじき行為を・・・・」
剣を鞘に戻し、そう失望の声を漏らす若葉。
「・・・・むう」
その中で、何故か残念そうな表情をするひなた。
そして、縛られている辰巳を睨み付け、あることを決意した。
「ん・・・んぅ・・・?」
気付けばすでに深夜。
「あ、起きましたか?」
「・・・・これは何の罰ゲームだ?」
目の前には、ひなたの顔。
後頭部には柔らかい感触。どうやら膝枕をされているようだ。
「ふふ、安心してください。もう全員水浴びを終えて今は寝ています」
「俺にはお前の腹黒い笑顔の理由を知りたいのですが?」
「あら、そんな顔をしてますか?」
「分からないとでも?少なくとも若葉ほどではないがお前の感情の変化に気付けるようにはなったぞ」
「そうですか・・・・では、思いっきり不機嫌になってみます」
すると、ひなたの表情は目に見えて不機嫌になった。
「・・・で、その不機嫌の理由は?」
「恥ずかしいので教えません」
「ああ、そう・・・・」
ぷいっとそっぽを向いてしまうひなた。
一方で鈍感な辰巳は何が何だか分からない。
ひなたが何故不機嫌なのかを考えていると・・・
「へっくし!」
くしゃみをした。
「そういや、濡れたまんまじゃねえか」
今は冬、そんな時期に濡れた服を着るのは、まさしく自殺行為。少なくとも風邪を引いてしまう。
「あ、そうでした。ごめんなさい、配慮が回らなくて・・・」
「いや、大丈夫、すぐに着替えれば大丈夫だろ」
起き上がり、自分の荷物の所に行こうとする辰巳。
そんな辰巳を見て、ひなたは一瞬の逡巡の後、何かの意を決したのか、辰巳に思いっきり抱き着いた。
「ひ、ひなた!?」
「こうしていれば、寒くないですよ?」
そう、いたずらに笑うひなた。
「お前なぁ・・・」
「いやですか?」
ぎゅむっ、と辰巳の体に自身の豊かな胸を押し付ける。
そして、辰巳はそんなか弱い
「・・・・いや、じゃない」
ひなたは内心でガッツポーズをする。
(やりました!何故か辰巳さんに限って中々一本を取れないところを今度こそ取ってやりました!)
内心歓喜に浸るひなた。
だが、そこで油断が生じたのだろう。
突然、辰巳がひなたの方を向いたかと思うと、片手でひなたの顎をくいっと持ち上げ、顔を思いっきり近づけ、一言。
「―――――お前が、キスしてくるならな」
「――――――ッッ!?!?!?!?」
一瞬にして体温をあげさせられ、顔を一気に赤面させる。
(はっ!いやいや何動揺しているんですか私は。私たちはすでに恋人同士なんですよ。キスの一つや二つ、いまさらなんだって言うんですか!)
「い、良いですよ。辰巳さんからしてくれるっていうならですけどね」
と、むふー、とやってやったと言わんばかりに答えるひなた。
流石に、この言い返しには動揺してしどろもどろに――――
「あ、そう」
と思って言ったらあっさり唇を重ねられた。
「んん――――ッ!?」
しかも、長い。
ロマンチックも何もあったものでもないキスではあるが、それでも完全な不意打ちであった事だけは言っておこう。
唇が離れ、辰巳が一言。
「うん、満足」
その瞬間、ひなたの中で何かが切れた。
「ど・・・・・」
「ん?」
「どうしていきなりするんですかわたしまだこころのじゅんびできてすこしはふんいきをかんがえてくださいしんじられないもうしんじられないなんでいきなりなんですかどうしていきなりなんですかこれでもはずかしいんですよあなたははずかしくないんですかそんなのひきょうですわたしのどうようをかえしてくださいさいていですさんざんきたいさせておいてこれですかわたし――――」
「いたたたたたたた!?わる、悪かった!だからポカポカ殴るな痛いから!」
もはや何言っているのかさっぱりなひなた。照れ隠しにポカポカと辰巳を殴る。
ちなみに、今のやりとりは全部
(たっくん大胆だなぁ)
(ぐへへ・・・・全部とってやりましたよ・・・・)
(甘い、なんか口の中が物凄く甘いッ!?)
(もう少し、時間と場所を、わきまえて欲しいものね・・・)
(ふっふっふ・・・仕返しの為の写真またとってやったぞひなたー!!)
結局、その夜は、ひなたの照れ隠しの叫びが響き続けた。
次回『残酷な現実』
その光景は、あまりにも凄惨だった。